学童保育を支えるアルバイト職員。アルバイト職員であっても、法令遵守研修と業務チェック行動は必ず行うべし

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 学童保育に関して、また残念なニュースがありました。大学生のアルバイト職員による盗撮事案です。2024年1月17日7時35分にインターネットに掲載された読売新聞の記事を引用します。
「女子児童のスカート内を盗撮したとして、大阪府警門真署は16日、学童保育のアルバイトをしていた男子大学生(23)(大阪府門真市)を性的姿態撮影処罰法違反(撮影)の疑いで逮捕した。押収した記録媒体には他にも盗撮動画が残されており、同署が余罪について調べる。」
「大学生がバイトとして働いていた障害者施設で先月、トイレにカメラが隠されていたことから発覚したという。」
(引用ここまで)

 言語道断です。と、ただ怒るだけではなく、学童保育の運営に関わる立場や働いている立場であれば、この事案から考えることがあるはずです。考えねばならないはずですし、考えなければと思わなかったとしたら、責任感が欠けています。
・どうしたら防げるか
・どうしたら早期発見できるか
 この2点を考えることが大事です。

 まず、採用時に犯罪、特に性犯罪を起こすような人物かどうかを見抜くことは不可能です。「あなたは、盗撮などそのようなことはしないと誓えますか?」と質問したところで「もちろんです」と答えられるだけです。まさか採用面接時に「私は小学生に性的興奮を覚えます」と白状するはずもありません。ですので、「小学生を性的欲望を対象としている人物が事業者側に、そうとは気づかれずに採用されても、そのような人物が犯罪を起こさないような職場、組織の風潮としておく」ことが求められます。要は、次の点を実現することです。これは性犯罪に限りません。窃盗や横領でも同じことです。
・犯罪を起こそうと考えている人物が、「ここはダメだ」と、すぐに退職を選択する職場であること。もしくは、犯意を抑制して勤務を続ける職場であること
・そもそも、犯罪を起こそうと考えている人物が、「バレそうだからやめておこう」と就職先に選択しない事業者だと認識されること

 この上記2点をしっかりと踏まえた組織運営が必要です。これはリスクマネジメントの分野です。身内の者が犯罪、不法行為を起こさないようにするリスクマネジメントです。何が必要でしょうか。
・採用時に徹底した法令遵守の姿勢を新採用の職員に伝える。もちろん求人に応募してきた者にその段階で伝えることも重要だが、採用決定後はさらに厳しく「うちは犯罪、不法行為は絶対に許さない」と確実に伝える。
 →これは短期のアルバイト職員においても同様です。夏休みだけ、冬休みや春休みの学生アルバイトでも例外ではありません。たった数日だけ勤務するとあっても例外ではありません。所定のテキストを使い、担当者が厳格に、法令を守ることについて説明することです。「そんな面倒なことをしなければならないなら、辞める」という者がいても構いません。むしろ、子どもの命を守るべき職場で、法令を守ることを学ぶ時間を面倒くさがるような人物なら、辞めてもらって構わないのです。責任感が薄い人間が、子どもの命を、人権を、守れますか?
 アルバイト職員のことを軽視していはなりません。確かに組織運営について職務上の責任はほぼないでしょう。しかし、子どもの命を守る、子どもの人権を守るということでは、他の職員と同じです。そもそも、子どもから見たら、アルバイト学生も正規職員も、どちらも大人の職員です。アルバイト職員だから、ただ子どもと遊んでくれればいいという程度の認識しか持てない事業者は、子どもの命を守る資格はありません。学童保育の事業から直ちに撤退していただきたい。
 教える内容は、短期アルバイトであっても、「学童保育の使命や学童保育の関連法規」「こどもの最善の利益を守るということ。特に児童虐待への対応」「刑法など一般的な法令、社会人としてのマナー」のこの3分野は必須です。もちろん、ある程度の期間にわたって勤務するパート職員や契約職員は、ほぼ正規職員と同等程度の法令遵守の研修、講義を行うべきです。私はこれを、運営本部の責任者が行うべきだと考えます。(もちろん、私のような外部の者が行うことも極めて効果的ですが)アルバイトやパートを実際に使用する現場の正規職員では、その後の人間関係を考えて、「ユルユル」の、甘い内容の研修、講義になる可能性があります。この研修、講義は厳格に行うべきなので、現場の正規職員に任すことはやめましょう。
 (この行為は当然、やましい考えを持つ人物への警告です。しかし一方で、組織防衛の観点もあります。不幸なことに、事業者が法令遵守を徹底的に説いていたとしても職員が何か犯罪を起こしたとき、事業者が最善を尽くしていたことを実際の行動、実績によって明確に提示できれば、その後の刑事や民事の責任追及において事業者が不利を免れる可能性が出てくるからです)

 そして事業者が力を入れてほしいのが、あらゆる職員が実際に現場で業務を行っているとき、「犯罪、不正を見逃さない、早期に兆候をキャッチする」という心がけを、現場で働くあらゆる職員に徹底させることです。学童保育所で働く者は何人も、特に正規職員であれば、同僚であろうとベテランであろうと、まして新しく採用された人物であれば当然のこと、「子どもに対して不審なことはしていないだろうか。法令に違反する行為をしていないだろうか」というチェックの視点を必ず持って、他者の業務の動作を見ることであり、事業者は、特に正規職員に対しては、その意識を徹底させることです。これは、職員同士が常にあら捜し、欠点探しをしろ、というのではありません。他者の業務の様子を見る観点の中に、育成支援の観点、社会人の観点などいろいろな観点の中に、「犯罪につながるようなことはしていないだろうか」というチェックの観点=早期発見行動の観点をも含むというだけの話です。

 つまり、学童保育所の職員は、「早期発見行動」を必ず業務の一つとして組み入れるべきだということです。子どもとの距離があまりにも近すぎる、特定の子どもを連れて死角になるような場所に行って長時間過ごす、子どもが特定の職員に対して見せる反応が妙に気になる、ということを早期に発見する、そのために常にチェックの心構えをもって行動することが必要です。むしろ、当然です。
 そして、明らかに法令に違反する行為が認められた場合は、社内規定に従って厳正に対応する、ということも宣言することになります。

 厳しい研修や教育、そして早期発見行動の徹底が周知されている職場であれば、犯罪を起こす可能性はだいぶ抑えられるでしょう。また、「わたしたちは子どもやあらゆる人の人権を守るために、このようなことを行っています」と宣言できる組織ならば、やましい考えを持った人物が採用されようとして応募はしてこないでしょう。性犯罪に限れば今後、日本版DBSが実施される見込みなので、その認定を受けることと合わせて、性犯罪以外の不法行為についても絶対に許さないという姿勢を、学童保育所の事業者は徹底的に見せることです。

 また、犯罪行為の抑制という観点だけでなく、逆に「子どもが、家庭やその他の場所で虐待や不当な行為を受けていないだろうか」ということに気付くための観点もまた、職員に植え付けることが必要なのは言うまでもありません。休み期間だけの学生短期アルバイトであっても、子どもの体にアザがあるのを見つけたら「これは虐待?」と思いついてすぐ正規職員に報告する、という行動をとっさに取れるように積極的な行動を選択することの重要性を教えることも、犯意を抑え込むことと同様に必要です。

 今回の大学生の盗撮事案は、報道によれば、そのクラブで発見することはできなかったようです。他の勤務先で発覚した犯罪行為の余罪を調べる過程で発覚したようです。巧妙に行われた犯行であれば、確かに、確実に見つけ出すことができるかといえば、そうではありません。ですが、「常に、犯罪行為を起こさないように徹底していた」のであれば、そのような犯罪行為自体が行われなかった可能性を生じますし、早期発見ができた可能性もでてきますし、犯罪が見抜けなかったとしても、犯罪抑止に熱心だったことを子どもと保護者が理解している事業者であるということと、まったく犯罪の防止、抑止に留意していなかった事業者であるということの差は、その後の事後対応において決定的な差が生じます。

 春からの新年度にかけて、また春休みにかけて、新たな職員が採用される時期です。最初が肝心です。犯罪を許さないという強い覚悟を示すことに時間とコストをさきましょう。長い目で見ればそれが子どもと組織を守ることです。もちろん、あい和学童クラブ運営法人はそのお手伝いが可能ですよ。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その策定のお手伝いをすることが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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