学童保育で働く職員に出来る限りの福利厚生サービスの充実を図ろうシリーズ。職員を大切にする姿勢こそ重要!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育事業の質的向上のためにぜひ、講演、セミナー等をご検討ください。

 人手不足で大変な学童保育の世界だからこそ、採用した職員の離職を防ぐことが肝心です。職員の離職は、それまでに費やした費用(コスト)の損失である、という認識を学童保育の運営主体は認識していますか?これまでに、以下のことを提言しました。
・インフルエンザなどワクチン接種の費用補助
・特別な有給休暇の付与
・クラブ施設の防犯設備の整備(雇用者の安全配慮義務)
・労働基準法に規定された妊産婦の保護の各ルール(軽易業務転換、育児時間)の遵守、活用
 今回も前日26日に続き、コンプライアンス(法令遵守)の徹底で実現できる、職員を守る制度について説明します。

 前日は労働基準法を取り上げましたが、本日は「労働安全衛生法」です。この法律は、労働災害の防止や、働く人(労働者)の健康を守るために制定されている法律ですから、非常に重要な法律です。「人」が重要な財産である学童保育という事業の運営、実施には、欠かせない規定がたくさん盛り込まれている法律です。今すぐにでも学童保育の運営主体がこの法律に従って実施するべき事項を紹介しましょう。

 ・ストレスチェック制度の実施=学童保育の仕事は、子ども、保護者、そして同僚職員と濃密なコミュニケーションが必要です。そのため、職員には常に心理的ストレスが重くのしかかり、結果として精神面、心理面の変調をきたして休職、退職することは珍しくありません。よって、心の健康(メンタルヘルス)の不調を未然に防止することが必要であり、それが「ストレスチェック制度」です。
 医師や保健師など法律で定められた資格者が、1年以内ごとに1回、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査を行う仕組みです。実施者(医師等)は結果を受検者に通知することになり、ストレスの程度が重いと判断された労働者は、「医師との面接指導」を求めることができます。そして事業者(運営主体)は、医師の意見を勘案して、必要があると認めるときは就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮などの適切な措置を講じなければならない、と定められています。つまり、学童保育の職員がこのストレスチェックの結果、メンタルヘルスに不調があると判定された場合、例えば職場を変える措置を運営側は行わなければならないのです。

 この制度は、常時50人以上の労働者がいる「事業場」に実施義務があります。50人未満の場合は努力義務です。この法律に基づく種々の規定は、働く人の人数によって義務になったり努力義務になったりします。この「事業場」をどのように考えるかが、非常に重要です。
 事業場とは、それ1つが独立した組織と考えてください。それなりの規模の企業には、本社があり、支社があります。その支社に、支社で行われる活動や社員、職員の経費や給料を算定する仕組みがある場合、1つの独立した事業場となります。よって、その支社の従業員が30人の場合、メンタルヘルス制度を導入する必要は努力義務に留まるのです。
 学童保育所を複数運営する法人組織においては、「1つ1つのクラブが1つ1つの事業所になる。だから50人には到底及ばないので、メンタルヘルス制度を実施する義務はない」という見解を持っているところがあるようです。実施しなければ費用はかかりません。予算が常に厳しい学童保育の運営組織なので、予算が必要な事業に消極的になるのです。ですが、このような考え方は、私は絶対に間違っていると主張します。なぜなら、学童保育事業にとって最も大切な「職員」の「健康」を、組織として守ろうという姿勢を放棄しているからです。少々、費用がかかっても、組織として職員のメンタルヘルスを守っていくという姿勢を見せない組織に、職員は安心感や信頼感を寄せるはずがありません。

 なお、この「1つ1つのクラブが1つの事業所」であるという論法を行うのであれば、当然、その1つ1つが独立した事業所として機能するということになります。本当にそうですか?1つ1つのクラブで、独立して経費を精算し、給料計算をしていますか?そうではないでしょう。おそらく本部機能が経費を精算し、給料を計算しているでしょう。そのように、1つ1つの場所が完全に独立していない場合、例えば1つ1つのクラブがそのような場合は、上位の組織とまとめて1つの事業場と考えるようにと国は通知しています。
 もし1つ1つが独立した事業場であるとそれでも言い張るのであれば、事業場ごとに実施がひつような他の事項を実施しなければなりません。典型例としては、1つ1つのクラブごとに「就業規則(に準ずるもの)」の制定が必要となります。就業規則は10人以上の事業場に制定が必要です。10人に達しない場合は、就業規則の制定の必要はありませんが、その代わり、職場における職員に対する規範が存在しないことになります。それでは事業活動は不可能ですから(残業も命令できません)、就業規則に準じたものの制定が必要となります。それを1つ1つのクラブごとに策定しなければなりません。また、1つ1つのクラブごとに「36協定の締結」が必要となります。その分、労働基準監督署に提出が必要な届出の件数が増えます。仮に40のクラブを運営している学童保育の運営組織であれば、40+1(本部分)の就業規則(に準ずるもの)の制定や、41件の36協定の提出が必要となるのですよ。
 どこかを楽しようというのは、こと労働者の安全を守ろうという法律に対しては、不可能であると考えてください。

・産業医(+衛生委員会)の設置=ストレスチェックと同じく、働く人の健康を守る仕組みです。これも50人以上の労働者がいる組織で設置が必要です。おなじように、1つ1つのクラブは10人程度だから、という「言い逃れ」の姿勢ではなく、組織全体で50人を超えているなら、必ず設置してください。設置しないと罰則もあります。なお、産業医を選定する場合は、ぜひともメンタルヘルスの専門医を探しましょう。
 産業医を選定する事業場は当然、衛生委員会の設置が必要となります。同じように50人以上の労働者がいる事業場に必要です。衛生委員会を設置するには「衛生管理者」を確保しなければなりません。やや学力が高い職員に勉強してもらい、試験に臨んでもらいましょう。
 これらの制度は、職場における環境や職員の健康を守る重要な制度です。必ず導入しましょう。なお、組織全体で50人に達しない組織においては、「衛生推進者」という役職の者を置くことができます。ぜひ、衛生推進者を設置しましょう。講習を受ければ誰でもなることができます。

・雇入れ時と作業内容変更時の安全衛生教育=大事なことですが、ほとんど意識されていません。簡単にいうと、誰かを雇ったとき、あるいは仕事の内容を変更するとき(障害児加配担当職員が、正規常勤職員に業務内容を変更するとき等)に、事業者(運営主体)は、作業手順や業務関連疾病の予防(メンタルヘルスなど)、事故対応やその他必要な事項について、教育を行わなければならないという制度です。これはパートタイム、アルバイトにも行なうことが必要です。必要な業務内容について、その業務から起こりうる危険(腰痛や足のけが等)について注意するように運営者が説明しなければなりません。

・健康診断の受診に要した時間の賃金=これは法律上、事業者が支払うことが義務づけられてはいません。労使で話し合って決めるものとされています。もっとも、事業者が負担することが望ましい、というのが国の判断です。健康診断の時間分、賃金を控除している運営組織が多いでしょうが、数時間分ですから賃金を支払いましょう。そういうことが、職員の、組織に対する信頼感醸成につながるのです。

・危害防止措置=この法律では「安全面の措置」「衛生面の措置」「環境面の措置」の3点を事業者に求めています。また「作業行動(いわゆる仕事)から発生する労働災害の防止措置」を求めています。
 安全面であれば、クラブにおける危険な設備の改修が必要です。衛生面であれば、エアコンの整備が必要です。環境面であれば、照明の明るさや清潔に関する配慮対応が必要です。仕事から発生する労災防止では、例えば腰痛防止や転倒防止のためのマニュアル策定などが必要です。

 これら労働安全衛生法を守ることも、コンプライアンスです。コンプライアンスに従えば、働く人を守れるのです。人が資本の学童業界ですから、上記の事はぜひとも実施してほしいものです。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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