分かりにくい、知られていない学童保育ですが、残念な情報に惑わされる人が増えれば更に学童保育が誤解される!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 今回は、インターネットで配信されている「学童保育の残念情報」について取り上げます。学童保育について、いろいろな方面で取り上げられること自体は歓迎すべきことですが、誤った情報や誤解を招く情報の発信は、学童保育の世界に不利益を招く可能性があります。自戒を込めて。

 12月11日(月)に見かけたのは、起業をテーマにしたウェブサイトの記事です。学童保育を自宅開業するためのノウハウを紹介している記事でした。おそらく、学童保育の世界の事情や構造、法令面についてあまりよく存じておられない方がウィキペディアなどネット記事を参照してまとめられたのだろうという印象を私は持ちました。
 学童保育はその種別はどうあれ、いずれも、多くの子どもの安全と安心を守る仕組みです。子どもの最善の利益を守る仕組みですから、どんな種別の学童保育であれ、事業を手掛けたいと言うならば、子どもの権利を守ることからすべての思考を始めるべきです。その上で、守るべき法令は当然ながら遵守した上で、必要な手順、手続きを指南するという記事の仕組みが必要だったと私は思います。

 さて、学童保育の自宅開業ですが、そもそも、当該記事が念頭に置いているのが、法令に基づく学童保育、いわゆる放課後児童健全育成事業(この事業を行う場所が、放課後児童クラブ。狭義の学童保育)なのか、法令に基づかない民間の営利企業の経済活動たる「民間学童保育所」(=広義の学童保育に含まれる事業形態)なのかがまったく区別されていないことが致命的な欠陥です。
 さらに混乱に輪をかけるのが、記事には放課後児童支援員と、その配置が必要だと言及されていることです。そうであれば法令で参酌基準ながら有資格者の配置が求められている放課後児童クラブのことを指すのだろうと想定できます。ところが、記事では有資格者配置が参酌基準であること、放課後児童クラブには児童1人あたりの必要な面積や設備について条例で定められていることへの言及がなく、その点において民間学童保育所を念頭に置いていると思われます。もちろん放課後児童クラブであるなら条例に示されていることを実現するには専用の施設が必要であって、自宅を改装してできるような事業では到底ありません。
 よって当該記事は結局のところ、「民間学童保育所、つまり学習塾の延長であるような施設を自宅で開業することのノウハウの紹介でありながら、放課後児童クラブに配置が必要な放課後児童支援員という知識をなまじ知っていたために盛り込んでしまった」と、私は想像しました。

 当該記事では、資金面から切り込んでいますが、それは大事なことであると私は思います。現実の学童保育(この場合は、放課後児童クラブ)の事業運営者にはビジネスの視点に欠けて事業の継続的な発展に興味関心がない方々ばかりなので、資金の手当てが大事だということは、強調しても、し過ぎることはないので、その点は評価できます。また、補助金を獲得して安定な事業、というひどいミスリードの記事が他にもある中では良心的な配慮があったとも思います。
ただ、学童保育の複雑な世界についての理解が足りなかった。これは、学童保育のあまりにも複雑な世界ゆえの出来事と言えるでしょう。

 さてもう1つの記事は、12日(火)にインターネットで見かけました。日本を代表する言論誌の記事です。執筆者は金融の専門家のようです。こちらは、「小1の壁」について取り上げた記事です。小1の壁は、直ちに打開されねばならない大問題ですから、小1の壁問題を取り上げたその着目点は評価できます。しかも、学童保育所に入れた後に保護者を悩ませることが多いながらもほとんど注目されない「行き渋り」について言及されていることは、大いに評価できます。行き渋りは、来春発売の私の書籍でも取り上げていますよ。

 ただこの記事の残念なところは、やはり記事の正確性において、学童保育の種別についての理解に欠けているところはさることながら、狭義の学童保育、つまり放課後児童クラブの本来の事業目的、すなわち育成支援について論じられていないところです。これこそ、まさに画竜点睛を欠くといえるでしょう。

 全体的に丁寧に書かれた記事ではあるがゆえに、誤解を招く点を指摘しておきます。
・公設の学童である放課後児童クラブ→放課後児童クラブは民設クラブもある。これは放課後児童健全育成事業が市町村以外でも実施できるという法令の規定の認識に欠けていたことが想像できます。
・共働き家庭の子どもたちのため→放課後児童健全育成事業は、保護者の「就労等」であるので、共働きだけとは限らない。就学や介護、看護、療養でも申請ができるとする市区町村がほとんど。当然、ひとり親家庭の利用は可能。
・離れていても学童の先生が放課後の時間に合わせて学校へ迎えに行ってくれます。→すべての放課後児童クラブの職員が小学校に子どもを迎えに行くとは限らない。全国でバラバラ。
・民間の学童施設は、21時や22時まで子どもを預けることができたり、晩ご飯を出してくれたり、学童から習い事への送迎もしてくれたりと、公的な学童に比べて保育内容が充実→充実しているのは「保育内容」ではありません。保護者の利便性に関する付帯的なサービスです。この点で、執筆者が、放課後児童クラブにおける育成支援について理解と興味関心が無いことがうかがえます。保育が何を指すかということへの決定的な理解が欠けています。
・民間学童→おそらく広義の学童保育に含まれる「民間学童保育所」でしょうが、放課後児童クラブである民間の学童もありますから、書き方には注意が必要です。
・自宅から実家が近ければ、学校帰りに子どもが祖父母宅に立ち寄って親の帰りを待つという選択肢→この記述があるために、この記事の執筆者は、「学童保育という仕組みは子どもの居場所、子どもの預かり場の機能を重視」という観点にあることが分かります。実家が近くにあって祖父母を頼れるなら有力な選択肢になるという記述は、放課後児童クラブにおける育成支援の役割と重要性について、まったく想定されていないことを伺わせます。

 私も記者として長らく記事を書いてきた人間です。世間に文章を発表することは大変勇気が必要ですし、それ以上に正確性が求められます。学童保育の世界は、ただでさえ、複雑怪奇であり、人の解釈によっていくらでもその定義や分析が可能な分野です。そうであっても、法令で規定されていることを間違うことは許されません。なかなかメディアで取り上げられることが少ない学童保育が、多くの場面で取り上げられ、話題になることは私はとてもうれしく思いますが、複雑怪奇な学童保育の世界だからこそ、より丁寧に、なるべく正確な情報を発信していかねば、世間に根付いている誤解や浅い理解がさらに広がってしまいますから。

 ちなみに、ぜひとも弊会にご相談いただければ、学童保育に関する記事や特集について、その中身の正確性についてご助言できますから、どうぞご用命くださいね。最後は商売っ気たっぷりで締めさせていただきます。

 子どもの最善の利益を守り育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。外部理事や監事として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能ですし、場合によっては運営陣営に加わってお手伝いもできます。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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