令和5年版の放課後児童クラブの実施状況を読む。やはり株式会社学童保育所は急増中。どうするどうなる?

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 引き続き国(こども家庭庁)が昨年末(12月25日)に公表した、令和5年5月時点の放課後児童クラブ運営状況(以下、「運営状況」と表記。)を見てみます。今回は、クラブの運営主体の区分に注目します。
令和5年(2023年)放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況【令和5年12月25日:公表】 (cfa.go.jp)

推移をみるために、2018年(平成30年)と、2023年(令和5年)の値を比較しましょう。
・支援の単位数と登録児童数 2018年 3万1648単位 123万4366人
              2023年 3万7034単位 145万7384人
              比較    117.0%   118.0%
・クラブ数         2018年 2万5328クラブ
              2023年 2万5807クラブ
              比較    101.8%
(本来なら、以下の運営主体との関連でクラブ数で比較したいのですが、前日のブログに記載した通り、2023年のクラブ数は、どこかの市町村が報告ミスをしたため大幅に減少しているので、誤差が少ないであろう支援の単位数での増減比較としました)

・公立公営クラブの数    2018年 8,740クラブ
              2023年 6,707クラブ
              比較    76.7%
・民営のクラブの数     2018年 16,588クラブ(公立民営11,486、民立民営5,102)
              2023年 19,100クラブ(公立民営12,859、民立民営6,241)
              比較    115.1%
・社会福祉法人クラブの数  2018年 3,585クラブ
              2023年 3,355クラブ
              比較    93.5%
・NPO法人クラブの数   2018年 1,555クラブ
              2023年 1,753クラブ
              比較    112.7%
・運営委員会と保護者会のクラブの数
              2018年 3,604クラブ
              2023年 2,724クラブ
              比較    75.5%
・株式会社クラブの数    2018年 1,088クラブ
              2023年 3,109クラブ
              比較    285.7%

 以上から考えてみます。
 全体の単位数は実質6年間で17パーセント増加しました。5,386単位、増えています。支援の単位数ですから、クラブの数ではこの数値より少ないでしょう(1クラブで複数の単位があるクラブが当然、あるので)が、いずれにせよ、放課後児童クラブは増え続けています。

 その増えている分の多くが、株式会社のクラブです。さらにいえば、公営クラブが減り、保護者会運営のクラブが減り、NPO法人のクラブと、社会福祉法人(ほとんどが社会福祉協議会だと思われます)は、ほぼ横ばいの中で、急激に株式会社のクラブの数が増え続けています。まさに「進撃の株式会社」です。すでに保護者会運営のクラブと比べ、数は上回りました。来年度には、社協のクラブの数も抜いてトップになるでしょう。

 つまり、学童保育の市場化は完成し、ビジネスとしての学童保育が成立し、今後、学童保育の世界において、株式会社が運営する学童保育の流儀、価値観、やり方が主導権を握っていくことになります。株式会社にも、もちろんいろいろあって、NPO法人より設立手続きが簡便なので、保護者会由来の任意団体が株式会社のスタイルで法人化したところもあるでしょうが、それは絶対数で言えば確実に少ないはずです。急激に増えたクラブのほとんどは、広域展開している企業が手掛けるクラブでしょう。シダックス大新東、明日葉、アンフィニという業界では大手の事業者はもちろん、人材派遣、学習塾や物流といった多くのジャンルの企業が相次いで学童保育ビジネスに参入し続けています。

 企業が各々、独自のサービスを展開して利用者(顧客)を集める、いわゆる民間学童保育所であれば、どの企業がどういうサービスを展開するかはもちろん独自の話であって、利用者たる保護者は、ニーズをかなえてくれる事業者を選択するだけです。問題は、補助金という税金から成り立つ公のお金が投入され、曲がりなりにも、児童の健全育成を行うとされている児童福祉サービスを、これら企業が実施するとして、公益性をしっかりと担保できているのか、また事業の目的を確実に遂行しようとしているのか、そして、そこに従事している従業員、職員の雇用についてしっかりと労働者としての権利が確保されているか、尊重されているか、その点について厳しく監視されねばならないはずです。

 公のお金が投入されている事業です。納税者たる国民は、補助金が適正に使われているかどうかをしっかりと確認し、監視する権利があります。また、その確認と監視をすることの意義をしっかりと理解する必要があります。

 なぜここまで急激に株式会社の運営する放課後児童クラブが増えているのか。市区町村が、指定管理者制度という地方自治法に定められた形式を使ってクラブの運営を委ねているからですが、それにしてもなぜ増えるのが株式会社が圧倒的なのかを、しっかりと考えてみる必要があります。当ブログでも考えていきます。

 もはや、株式会社のクラブは、例外ではありません。主流なのです。今や日本の学童保育は、株式会社が中心的存在です。伝統的な学童保育の世界に身を置く方々、私もその1人ではありますが、現状をしっかりと認識した上で、これからの日本の学童保育の世界がどうなっていくのか、どうなっていくべきなのかを、直ちに考え、その考えを実行するべきです。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その策定のお手伝いをすることが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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