世論の反発が強い「子育て支援金」。放課後児童クラブには使われないようですが、ぜひ保護者負担軽減に活用を!
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。いま、国会で議論となっている「子育て支援金」について、その使い道にぜひ放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)を加えてほしいという訴えです。
※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。
<子育て支援金とは>
「子ども・子育て支援金」と呼ばれるもので、2026年度から実施が想定されています。次元の異なる少子化対策の財源として政府が実施しようとしており、いまの国会で審議中です。
4月9日の衆議院特別委員会で、世帯の年収別の月ごとの負担額が示されました。この内容についてSNSやネット上ではものすごい批判が集まっています。負担額について4月10日の毎日新聞朝刊1面の記事から引用して紹介します。
(被用者保険の年収別の月ごとの負担額。つまり社会保険の上乗せ分として支払う月額)
年収 2026年度の負担額 2027年度の負担額 2028年度負担額
200万円の世帯 200円 250円 350円
400万円の世帯 400円 550円 650円
600万円の世帯 600円 800円 1,000円
800万円の世帯 800円 1,050円 1,350円
これらは医療保険料(健康保険料)に併せて徴収されます。強制的に徴収されるものですから事実上の税金といえます。「結局、増税だよ!」「毎年、負担額が増えていってそのうちものすごい高額になる!」と、それはもうものすごい批判です。止むを得ませんね。キックバック疑惑など与野党問わず政治不信に陥っている多くの国民からすれば、政府のやることなすことすべて信じられません。
<子育て支援金の使い道>
これまでの報道から、子育て支援金は総額1兆円といわれています。その使い道について、報道で伝えられるのは4つ挙げられています。2023年12月11日の朝日新聞の記事(13時05分配信)から紹介します。
1 妊産婦に10万円相当を支給する制度
2 育児休業給付の引き上げなど「共働き・共育て」支援
3 保護者の就労要件を問わずに保育所などを利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」
4 児童手当の拡充策
どれも重要な使い道だと私は考えます。特に「2」の、育児休業給付の引き上げがもっともっと充実することはぜひとも実現してほしい。なぜならば、育児休業制度が充実し、例えば子どもが小学校低学年、おおむね10歳程度になるまで育児休業や育児時短制度を、所得保障と合わせて充実すれば、現状よりはるかに育児時間を保護者が確保することができます。つまり、小学生の子どもが下校する時間帯に、保護者が育児休業や育児時短制度によって家にいることができることになります。
それは、極めて強い需要が続いている保育所や放課後児童クラブについて、相当の需要減になり、市区町村が整備に投じる予算額も軽減が見込めるでしょう。人手不足で満足に職員が確保できない状況で、施設を作っても働き手がいない現状(もっともそれは低賃金を余儀なくさせる構造的問題で、それはそれで解消が必要です)においては、施設を増やさないで済むことは望ましい状況です。
ですので私は、子育て支援金には賛成の立場です。毎月の財政負担は増えますが、「子育てを安心してできる社会」のために有効に使っていただけるなら、未来の子育て世帯がいろいろ苦しみ、悩まなくていいようになるのなら、財政負担はまったく苦になりません。
多くの国民もおそらく同じように、子育てに役立つのであれば賛成、という気持ちでしょう。ただ、政府が信頼できない、政治家が信頼できない、必ず徐々に徴収額が増えていきいずれ家計を相当圧迫するはずだ、という懸念や不信が増大しているので、受け入れたくないという状況なのでしょう。それはまさしく政治不信が招いた罪であり、残念です。
<子育て支援金の使い道に、放課後児童クラブを!>
私は、この子育て支援金の用途に、ぜひとも放課後児童健全育成事業(いわゆる学童保育)を加えてほしいと要望します。もちろんそれには大変高い障害が存在しますが、政府にはぜひとも取り組んでほしい。
事実上の税金たる子育て支援金ですから、実際に子育てを支援する用途に使ってほしいのです。上記の4つはそれに当てはまるのでしょうが、児童クラブや学童保育所こそ、働きながら子育てする保護者にとって極めて重要な仕組みだからです。
何度も紹介していますが、いまや、小学1年生のおよそ半数が、児童クラブを利用しています。
2023年(令和5年)には、全国の小学1年生が94万9202人いましたが、児童クラブを利用している1年生は44万4833人です。児童クラブの登録率は、46.86%。つまり、およそ5割の1年生は、児童クラブを利用しているのです。この登録率は右肩上がりです。令和元年は39.67%だったのです。必ずや、近いうちに5割を超えるでしょう。
(小学生児童数は文部科学省の学校基本調査。児童クラブを利用する1年生の人数はこども家庭庁の放課後児童クラブ実施状況から)
この登録率は高学年になると急減し、小学6年生にもなると4.14%まで下がります。しかし小学3年生では31.43%であり、3割の子育て世帯が児童クラブを必要としています。これほど、小学生の子育てに向き合う世帯が必要としている児童クラブにこそ、子育て支援金の使い道があるはずです。
児童クラブにはいま、「昼食提供」と「学校休業期間中(主に夏休み)の短期開所」に対応するよう国からメッセージが送られています。前者はすでに前年度示されましたし、後者は今年度、国は調査を行うことになるようです。いずれも、取り組む側にしては、新たに経費が必要となります。数年後、確実に実施されるであろう、いわゆる「日本版DBS」にしてもそうです。情報の管理システムを整える経費が必要です。ところが児童クラブの世界、学童の世界は、職員にも満足に賃金を払えない事業者が多いほど、お金がない業界です。
子育て支援金には、賛否両論ある「子ども誰でも通園制度」が使い道として挙げられています。であれば、今後、確実に新たな取組によって経費が必要となる児童クラブの運営にも、子育て支援金を加えてほしいのです。
児童クラブに子育て支援金を投じてほしい最も重要な理由としては、児童クラブを利用する子育て世帯の家計の負担の軽減です。国は、児童クラブの運営に際して、その経費の半分を利用者、つまり保護者が負担する旨、示しています。つまり児童クラブ運営に必要な経費の2分の1(5割)を保護者が負担し、残りの2分の1を、「国」「都道府県」「市区町村」が3分の1ずつ負担するように示しています。(全体を12等分して考えてみると、保護者が12分の6を負担し、国が12分の2、都道府県が12分の2、市区町村が12分の2、を負担するということ)
分かりやすく言えば、クラブの運営に1年間で1億2000万円が必要であれば(実際はもっと必要ですが)、保護者は1年間で6000万円を負担し、国と、都道府県と、市区町村は、2000万円ずつ負担するということです。
この、保護者が負担する額を、せめて半分にしてほしいのです。上記の例でいえば、3000万円にならないか、ということです。児童クラブの月額利用料は、国の調査(実施状況)でいえば、最も多いのは4000~6000円の層です(27.9%)。これに実費負担分(おやつ代など)が加わります。実費負担分で最も多いのは2000~2500円の層です。つまり、合計すると、6000~8500円の月額負担が、標準的な児童クラブの家計負担と考えていいでしょう。
この負担が「半分」になったらどうでしょうか。子育て支援金で月額負担するのは、年収600万円の保護者は600円ですし、2028年度でも1000円。子育て支援金が児童クラブに投入されてそれが保護者の運営経費負担の軽減に投入されて負担が5割減になったとしたら、毎月の子育て支援金の徴収額を上回る児童クラブの利用料の軽減となり、子育て世帯にしては「子育て支援金を支払ってメリットがあった!」と実感できることは、間違いありません。
利用料補助として小学1~3年生の児童を児童クラブに利用させる保護者限定でも構わないと私は考えます。
<おわりに>
子育て支援金という制度においては、国には、子育て世帯がその恩恵が実感できるような使い道をぜひとも決めてほしいと切に願います。放課後児童クラブにはすでに「子ども子育て拠出金」(これも社会保険料の上乗せとして徴収されていますが、全額が事業主負担)の一部が充てられています。これはれっきとした「税金」です。税金である子ども子育て拠出金を放課後児童クラブに使っているのですから、子育て支援金でも、児童クラブに使えない理由はありません。
次元の異なる子育て支援は、要は、大人が子どもをいかに安全な場所に確保してその間、仕事に集中してもらう、子どもが過ごす安全な場所があるから大人はこぞって働いて国全体が稼げるようになってほしい、それを実現するための手段に過ぎないと私は考えています。いわば「おとなまんなか」(もっといえば「国が稼げる世の中まんなか」)ですが、そうであっても、子どもが安全に過ごせて育成支援を享受できるのであれば、私は歓迎です。そのために有効な使い道に、国民から集めるお金を使ってほしい。それならば、「児童クラブへの支援拡充」です。
多くの人にこの考えを理解してもらって、声を上げてほしいと私は願っています。
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。
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