こどもまんなか社会のお題目を唱える前に、国は悲惨な学童保育の現場を見なさい!国会議員は見に行きなさい!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 先週、1月26日、旧ツイッター(X)に、次のような趣旨の投稿がありました。あまりに悲惨な内容で、私はものすごく胸が痛みました。神奈川県内の公設公営の学童保育所(=放課後児童クラブ)勤務の職員さんからです。私も若干、旧ツイッター上でやりとりをしました。
・定員160人のところ、来年度の新1年生が80人以上で、来年度は230人を超える
・小学校敷地内に二階建てプレハブの児童クラブ。2フロアーだが分割はしてもらえない。
・支援員は6人、補助支援員12人。(児童数)40人で1単位という考えを行政はしておらず、40人に2人の正規が配属されていれば良いとの考え方。
・仕事につかえるパソコンがなく、電話回線は1つ。出席は出席簿に丸つけだし、連絡帳も手書き。出欠確認に1時間、連絡帳の確認にも1時間
・保護者の多くも質より量に賛成(注:おそらく、保護者の多くが育成支援の質より、子どもを受け入れてくれることで満足、待機児童が出ないことで満足という趣旨でしょう)
・そのような状況なのに行政は職員の異動を考えている
・もう心が折れた

 投稿内容をそのまま受け取る限り、これはあまりにも劣悪な環境であり、到底、その状態を放置してはならない状況です。1施設の定員が多くても、単位を分割し、それぞれの単位で育成支援を行える環境が整っておりかつ職員配置も基準条例を上回っていればいいのですが、投稿の例でははっきりしないものの、単位の分割はなく、職員配置こそ40人という適正規模の目安である人数に常勤職員2人を守って居れば問題ないだろう、と行政が理解していることがうかがえます。

 大変に残念です。残念を通り越して怒りすら覚えています。投稿者の勤めるクラブを設置する自治体は、直ちに施設を増やし、分割して単位を増やすべきです。

 投稿のような極端な内容が許されるのは法制度の不備があります。2015年前後の市区町村の基準条例施行前にすでに存在している施設であれば、条例の基準は適用が猶予されるという記載があるでしょう。そうであれば条例違反にはならないのです。よって行政側にしたら法令違反ではないので何ら「問題はない」という態度を取れることです。現実には、その施設で過ごす子ども、その施設で働く職員がどれほど疲弊していても、「条例上、問題はないから」ということで何ら対応をしなくても良いということが、法制度において許されてしまうことが、あまりにも残念です。

 法令上、ルール上、問題がない限りは、行政がそれに対して何か行動を起こさないことで不法、違法の批判を受けることはありません。行政が責任を追及されることもありません。しかし、明らかに、その学童保育の現場は異常です。そこで働いている学童職員が悲痛の叫びを挙げているのです。それは子どものつらい気持ちの代弁でもあります。

 それを無視していい訳はありません。法令違反ではないからといってその状況の改善を放置、あるいは改善の必要が無いと理解することは、この国が目指している「こどもまんなか社会」と、どう両立するのですか。

 私は、これまでも、そして今もこれからも、まずは待機児童をゼロにすることこそ大事だと訴えています。待機児童に追い込まれることこそ子育て保護者の生活を激変させ、子どもの環境をも激変させるからです。待機児童を発生させることは絶対悪だと理解しています。よって、待機児童をゼロにするため、定員を上回って入所希望児童を受け入れることはやむを得ないという立場です。ただしそれはあくまで一時的であって、市区町村は可及的速やかに、定員超過状態を解消するための努力をしなければなりません。例えば、4月時点で定員を大幅に超過したとしても、数か月のうち、つまり夏休み前に小学校等に児童が過ごせるスペースを確保し、さらに冬には調理施設や静養室など必要な設備を整えた新しい単位を用意して単位を増やし、つまり大規模状態を分割することで、おおむね40人の適正状態を確保するということです。待機児童を解消しさえすればよい、そのままで構わないという考えには、断固反対です。もちろん、一時的にせよ入所児童数が増えた状態である時には、職員数も当然、増やすだけの予算措置を行政が講じることは、いうまでもありません。

 先の旧ツイッターの投稿主が勤めているクラブを設置している自治体は、いったい、地域の子どもの育ちをどう考えているのでしょうか。ギュウギュウ詰めに子どもを押し込んで、それが「安全な子どもの居場所」であると理解しているのでしょうか。こどもまんなか社会づくりを推し進めている我が国の政府が策定した「こどもの居場所づくりに関する指針」には、このように記載されています。

「こどもの居場所づくりが目指す理念とは、こども基本法(令和4年法律第77 号)及び「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」に則り、全てのこどもが、心身の状況や置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができるようにすることである。その際、こども・若者の視点や子育て当事者の視点に立つこと、全てのこども・若者の健やかな成長や幸せな状態(ウェルビーイング)の向上に資すること、誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援であることが必要である。」(「はじめに」の「3. こどもの居場所づくりを通じて目指したい未来」より抜粋)

 投稿者が勤めるクラブは、こどもや、子育て当事者の視点に立ったクラブと言えるでしょうか。こども家庭庁は、このようなクラブにこそ視察に行くべきです。それも抜き打ちで、自治体に通告せずに。設備が整った大企業が経営するクラブを視察して、満足そうなコメントを出して仕事をしています、というアピールなど、逆効果でしかありません。全国の学童保育の現場で日々、頭を抱えて働いている人たちからすれば、「ああ、やっぱりこども家庭庁になっても、本当の実態を知るつもりがないんだな」と思われて終わりです。
 国会議員も同様です。与党も野党も、票になりそうな業界団体や地域ばかりに足を運ぶだけでなく、学童保育や児童館といった、国や市区町村からの支援が弱い児童福祉の最前線の実態を見るべきです。学童保育を視察したからといって基礎票がごっそり増えることはないでしょう。ただし、未来の日本社会を支える子どもたちが、学童保育で日々、過ごしているのですよ。その場所を、子どもが過ごすに値する施設に整えること、整える行政の仕組みを作ることは、政治の役割です。政治がしっかりしないから、法制度においても学童保育や児童福祉は貧弱なのです。その結果が、あの投稿につながるのです。

 心が折れたとして離職する有能な職員は毎年大勢います。もうそのようなことは起こしてはなりません。国も市区町村も、未来を支える子どもたちのことをもっと真剣に考えねばなりません。直ちに、現場を見てください。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その策定のお手伝いをすることが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば、当ブログの引用はご自由になさってください)