「育成支援重視」の放課後児童クラブ(学童保育所)が将来、生き残るために必要な戦法を紹介します。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!

 育成支援を重視して運営している放課後児童クラブとその運営事業者は、いま、圧倒的な規模の大きさで児童クラブを各地で運営する児童クラブ運営事業者の増加の勢いの前に、風前の灯火といえます。「え? ウチはまだ大丈夫だけど?」と思っている人たちは残念ながら先が見えていない状況です。育成支援を重視する児童クラブとその運営事業者は確実に「弱者」。強者は、児童クラブ運営を収益源として運営する児童クラブをどんどん増やそうとしている広域展開事業者です。このままでは弱者は強者によって息の根を止められます。わたくし萩原は、育成支援を重視する児童クラブを援助支援する立場から、弱者の児童クラブがこれからとるべき戦法について提案します。
 (放課後児童クラブの生き残りについての結論は後日、投稿いたします。ご容赦ください。)
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

※こども性暴力防止法がもたらす、構造上の課題問題について、法律家がとても分かりやすく解説する記事が「アエラキッズプラス(AERAKidsPlus)に掲載されました! 解説はもちろん、鈴木愛子弁護士です。こどもを性暴力から守るための重要な法制度だからこそ、実は逆説的にこどもや運営事業者が追い込まれてしまう可能性を分かりやすく説明されています。ぜひぜひ、記事を読んでください! 実に分かりやすいですよ!
 「本当に性犯罪を防げる?」学校や学童保育、放課後子供教室も対象になる「日本版DBS」に、現場から懸念の声…【弁護士が解説】 | AERA with Kids+

<おさらい>
 これまで数度、育成支援を重視する児童クラブとその運営事業者の生き残りについてブログに投稿してきました。おさらいをします。
〇2026年6月16日(火曜日)投稿内容の核心
 児童クラブ運営を収益の柱とする事業者は、事業運営の継続を安定を目指します。ビジネスですから当然です。収益を得るには人件費を徹底的にコントロールします。一方で、地域に根差した児童クラブ事業者で、育成支援の質を向上させたいと考えて運営する場合は「常に最高水準を目指す。そのための運営をする。事業者の安定など二の次、とにかくこどもが喜ぶ児童クラブにすることが第一」と考えます。予算ギリギリまで職員数を増やしたり賃金単価を上げることに励み、事業者の組織的な運営に投じる予算は減ります。この違いが、児童クラブの生き残りにおいて、重要な影響を持っているとわたくし萩原は考えます。
・自治体側=安定した継続的な事業運営。最低水準を上回ることは当然。
・収益最優先の児童クラブ事業者=安定して継続的に事業運営を任されることで利益確保の機会を得る。収益最優先なので最低水準を上回ればよいとする自治体の意向にもそぐわない。
・育成支援を重視したい事業者や保護者側=質の高い育成支援実現のために充実した雇用労働条件によって資質ある職員を1人でも多く雇用し、研修にも費用をつぎ込む。
この差は決定的です。方向性として正反対であるとも言いたい。そして自治体の意向は絶対である、ということ。どんなに合理的で素晴らしいと第三者が思える事業運営方針を掲げている児童クラブであっても、自治体が選ばなければ、それで試合終了です。

〇2026年6月19日(金曜日)投稿内容の核心
 弱者の児童クラブ運営主体とは、「こどものため、職員のために予算を使いたい」児童クラブです。事業運営のゴールは育成支援の質を高めて、こどもにとって、保護者にとって「あってよかった」児童クラブとなることですが、そのために予算を現場に惜しみなく投入するという、一見、素晴らしい児童クラブじゃないか! と思われることが、弱者を弱者のままとする弱点を構造化していると、わたくしは考えます。なお、広域展開事業者のような「児童クラブ運営を事業収益の柱とする」経営方針の事業者は、予算から1円でも多く収益に回すため、予算の多くを現場に投じることはせず人件費やこどもの活動費を許容できるギリギリの水準まで落とすことが当然なので、自然に「こどものため、職員のために予算を最優先に使う」経営方針とは正反対の方向性となります。「事業者が定めた利益水準に達した残りの予算で児童クラブを運営する」というスタイルになります。「だったら、弱者と同じように組織運営に投じる予算が少ないのだから継続して安定した運営は難しいのでは?」と思う人がいるかもしれませんが、「事業者の規模が大きく、スケールメリットを発揮できる。財務能力も人的資源も豊富なので事業の継続安定運営には問題ない」ということです。

<弱者の生き残り>
 わたくしの考えるところ、今の時代の児童クラブは2つの勢力に分けられます。
強者=豊富な予算と人的資源を抱えるスケールメリットを背景に「児童クラブ運営というビジネスを継続して安定的に実施できることで自治体からの信頼を容易に勝ち得ることができる事業者」のこと。広域展開事業者が該当する。なお営利企業、非営利法人は問わない。
弱者=地域に根差した児童クラブで、育成支援にほぼ限定された事業運営を行っている児童クラブとその運営事業者。保護者運営を由来または保護者運営系の法人団体で、事業展開地域は限定的。育成支援に予算を重点的に投じることで育成支援の質の高さを目指す理念が、実は、組織運営に投じる予算の少なさから組織運営の脆弱さ、統治能力の脆弱さをもたらすことで、公の事業である児童クラブ運営において自治体が重視する「事業の継続と安定」に関して弱点を抱えている。このため、児童クラブ運営権をめぐる公募や競争で、強者である広域展開事業者に歯が立たない現状となっている。公募や競争で広域展開事業者に勝てる場合は別途の特段の理由がある場合に限られる。自治体が地域との協働を掲げているとか、地元資本を育てたいという政策的な理由がある場合である。

 弱者は勝てないから弱者ですから、弱者が強者に勝てれば弱者ではありません。ですので、弱者はどうしたって弱者です。となると、このままでは、地域に根差した児童クラブ=保護者運営系の児童クラブはますます数を減らすだけ、ということです。
 それを何とかならないか? 弱者が生き残るために必要なことは何かを、わたくしはずっと考えてきましたし、これからも考えていくことになります。そして現時点で、「こうしたら(もしかすると)弱者の立場の児童クラブが勝てるかも?」ということを紹介することもまた、わたくしの行っている運営支援の役割です。

<ランチェスター法則>
 ここで参考とするのが「ランチェスター法則」です。経営の書籍にはよく登場する単語です。もともと軍事理論です。なお「軍事」という単語ですでに「軍事なんて! 人殺しが好きなのか!」と短絡的な反応を起こす人がまだまだ多いのですが、わたくしに言わせれば「そういう短絡的な反応しかできないから思考が永遠にお花畑なんだよ!」ということです。軍事の本質は徹底的な合理主義です。生きるか死ぬかの極限の選択において常に生き残る、勝つ、という道を選ぶには本質的に合理性が徹底的に追求されねばなりません。ですので軍事に関わる理論や武器は本質的に合理的です。軍事に関わる考え方が、「勝つか負けるか」の競争が繰り広げられる経済、経営にも用いられるのは当然でしょう。「孫氏の兵法」など典型ですね。わたくしが現場職員に説く「OODAループ」もまた戦闘機パイロットが編み出した現場における瞬時の状況判断を支える理論です。
 なお「合理的ならなんでこどもや非戦闘員を虐殺するんだ!」とお怒りの方もいるでしょうが、それは単純なことで「軍事に関わる人」の「思考」が合理的であるかどうかとは関係がないからです。軍事の理論や武器は合理的でも、それを扱う人がどうしようもなければ戦場は悲惨な展開となります。そして残念ながら人類の歴史が「人間は決して合理的にふるまうばかりではない」ことを証明しています。

 前置きが長くなりましたが、ランチェスター法則もまた軍事理論であって経営戦略に当てはめられている有名な考え方です。ランチェスター法則とは、勝敗を左右する要素を考える理論で、2つに分かれています。
 ランチェスター第1法則とは「同等の戦闘力を持つ兵力であれば、兵力が多いほうが勝つ」というもの。ジャイアンが5人のAグループと、ジャイアンが10人のBグループが空き地で対決したら、Bグループが勝つというものです。「当たり前じゃないか!」と思う人ばかりでしょうが、そうです。当たり前です。当たり前だからこそ思考から抜け落ちやすいのです。
 ランチェスター第2法則とは「戦闘能力に差がある集団であれば、高い戦闘能力を持つ集団が勝つ」というもの。強者は弱者を圧倒するということで「強者の理論」とも呼ばれます。第1法則は「弱者の理論」と呼ばれます。第2法則を例えれば、S&W(スミス&ウエッソン)を手にしたハリー刑事には悪党たちはかなわない、ということです(これは映画「ダーティーハリー4」の、あの超絶名セリフ「Go ahead, make my day.」が放たれる前、銃撃戦が始まる直前のハリーのセリフですね)

<児童クラブ業界に当てはめてみる>
 いま、全国あちこちで一般的に行われている、公募や競争による児童クラブ運営権の獲得を巡る機会では、特別な理由がなければ、確実に広域展開事業者に有利です。「事業破綻が起こりそうもない(正確には競争相手との比較で)有利な財務能力と人的資源」から、何より児童クラブ運営が継続的に安定して行われることを期待する自治体からの評価が高いからです。「こどもには丁寧に接していても、人手不足で、予算も常にぎりぎりで資金ショートのおそれがつきまとう」事業者に、3年や5年も、公の事業を任せる度胸は自治体にはありません。
 これは、まさにランチェスター第2法則です。
 強者=広域展開事業者=資金力に優れ、人的資源も近隣地域の運営クラブと融通を利かせられる。他の地域で手掛けてきた運営ノウハウを活用できる。ICT化の経験も豊富。人件費をコントロールするので最低賃金並みの待遇、経験者に固執しない採用姿勢で育成支援の個々の技量は劣っても「誰でもマニュアル通りに行えば実施できる」プログラムを準備しており「いろいろなことをこどもに体験できますよ!」との巧妙なアピール戦略によって保護者と行政からの評判は良い。
 弱者=地域に根差した児童クラブ=事業の運営、組織の経営のノウハウに乏しい保護者(しかも非常勤!)や保護者出身の運営責任者が事業運営に携わる。こどもへの育成支援を重視し、「こどもと関わる人数の多さ」を重視する傾向で人件費を多く費やす。育成支援に優れた職員へ重点的に賃金を配分するよりも「保育には差がない」「保育に評価はなじまない」という従来からの考え方に固執するあまり、単に長く勤めているだけのベテラン支援員が高給取りで、やる気のある働き者の若手中堅は相対的に賃金が低い。その結果、育成支援を大事にする、そのために職員を大事にするといいながら、「大事にされているのは長く生き残ってきた、単に機嫌のままにこどもを扱うベテラン職員だけ」であって、職員の定着は決して良好とは言えず、結果的に「事業の安定した継続的な運営」がおぼつかない。「こどもへのかかわりが良くたって、3年5年続けられる理由が見いだせない」ということで公募や競争では負ける。

 弱者の児童クラブと運営事業者が、「こどもの育ちを大切に! そのために職員を大切に!」とするのは、一見すると、こどもの豊かな放課後の時間をもたらす上で最も重要な方針と思われがちですが、「事業運営が安定して継続できるかどうか」では問題があるのです。なぜなら人件費の配分、使い方が適切ではないからです。単に長年勤めているだけの職員の賃金が高い年齢給が、地域に根差した児童クラブ事業者の基本です。ベテランにありがちな、休日や休暇を「こどものためでしょ!」の錦の御旗で大事にしない、法治より人治の組織統治が、若手や中堅のやる気をそいでしまうのです。

 児童クラブの運営を自治体が任せるのは、「安定して継続的な運営ができるかどうか」です。重視されるのは「すぐに破綻しない財務基盤があるかどうか」「人手不足なのはどうしたって避けられないから、配置基準を守れるだけの職員を他の地域からでも融通できるかどうか」です。それが広域展開事業者の強みです。先のたとえでいえば財政基盤と人的資源こそが広域展開事業者の「スミス&ウエッソン」です。

 弱者である児童クラブとその運営事業者は、広域展開事業者に負けない武器=利点を手に入れねばなりません。「そっちがスミス&ウエッソンなら、こっちはコルトパイソンだ!」なのか「こちらはね、カールグスタフ(無反動砲)なのさ」はお好きなように。
 しかし弱者である児童クラブがすぐに強固な財政基盤や人的資源を確保できるのは難しい。弱者が持つべきコルトパイソンは何なのか?

<弱者の児童クラブは質を武器にするしかないが、それだけではだめ>
 ランチェスター第1法則は、「戦闘力が同じなら兵力の多寡が勝敗を決める」というものです。弱者の児童クラブとその運営事業者は、実は全く不利な面だけではないのです。第1法則は局地戦の法則ともいえます。運営権を争う地域はいわば「局地限定」です。A市ならA市、B町ならB町だけの範囲内での競争であり争いです。いわばもう局地戦なのです。弱者が「地域に根差した」組織であるなら「地の利」はあるはずです。ないと感じるなら活かせていないだけ。地の利があるなら「人の利」も「時の利」も使えばいいのです。
 地の利=その地域の保護者や保護者出身の運営経営者による児童クラブ運営。地元自治体の首長や行政担当者、議員とも近しい距離になれる。
 人の利=まさに顔を合わせられる距離に、児童クラブ運営の要素を左右する人たちがいる。
 時の利=地域に根差した活動の継続で、児童クラブとその事業者への評価評判を高められる。信頼度が高水準に維持されていれば、公募競争の結果であっても「退場」させようとすると自治体は地域からの反発や反対活動に直面することになる。
 これら、三つの利を当然に活用しつつ、「質」を高めることで局地戦に勝ち抜くことです。とりわけ、三つの利のうち、地元自治体との良好な関係を、地域に根差した児童クラブ運営事業者は積極的に構築する必要があります。それには運営事業者の役員に、地元自治体からの出向者や退職者を積極的に受け入れることが効果的です。
 そしてここでの質は単に育成支援の水準が高いことではありません。むしろそれは「前提」です。非認知能力をはぐくむ、こどもたちが主体的に日々を過ごしていく育成支援を実施することは放課後児童健全育成事業の本質ですから必ず実施されねばなりません。大前提です。わたくし萩原が言うところの質は「事業運営の質」です。
 それには「法令順守」を最優先に、「雇用と労働の実態」が労働法規に違反しないことです。労働集約型の産業ですから、人=職員こそ、徹底的に大事にするべきです。それは単にすべての職員を「いい子いい子」することではなく、「育成支援の仕事の質に応じた適切な評価」と「その評価に連動した賃金制度」であることです。「一生懸命頑張っている職員に、少しでもその頑張りに報いられる給与を払う」ことです。つまり、その頑張りを適切に判断する適切な評価制度が必要となります。

 強者である広域展開事業者は、育成支援の質においては常に弱者側の児童クラブを優越するわけではありません。プログラム型の育成支援はそれがすべてダメとはわたくしは考えませんが、「すぐれた指導者やリーダーによるプログラム」は最強ですが「職員の低い技量を紛らわせるプログラム」は、「単にマニュアル通りのプログラムをやるだけ」の内容であれば非認知能力を育てる育成支援に勝ち目はありません。ここに、弱者である児童クラブとその運営事業者の勝機があります。
 適切な評価を取り入れた、職務になるべく応じた賃金制度を取り入れた児童クラブとその運営事業者であれば、職員の定着は上がります。職員の入れ替わりが減ればそれだけ組織経営は安定します。研修や教育に投じる予算も精査できます。児童クラブ運営を安定的に継続できる可能性が高まるのです。

 弱者である児童クラブ側が局地戦で優越になるためには、さらに工夫は必要です。広域展開事業者に有利となっている審査基準や選定基準の見直しは絶対に必要です。粘り強く訴え続けねばならないでしょう。審査や選定に加わる委員の人選においても、単に経営上の数字だけを評価する専門家よりも、児童クラブの運営と労務の実態に詳しい専門家(まあ、わたくしのような人ですね、と自画自賛しておきます)を必ず1人は加えることです。そういう「お膳立て」があって、ようやくなんとか弱者である児童クラブ側は局地戦で強敵である広域展開事業者の児童クラブ運営事業者になんとか立ち向かえるようになります。
 まずは、ここを目指すべきです。弱者が強者に勝つには、局地戦で質の高さを身にまとうしか勝ち目はありません。質とは、児童クラブ運営者を選ぶ側が評価する性質の分野のものでなければなりません。育成支援の重要性は本来はもっと広く知られねばなりませんが、それは引き続き努力するとして、まずは「事業が継続かつ安定していること」が自治体の評価する質であるならその質を担保する組織経営、事業運営に注力するべきなのです。そこからはじめて、戦に向き合えるのです。

 でも、まだ弱い。もう一押し、必要です。

<強者の広域展開事業者の強みを消せ>
 広域展開事業者の強みとは規模です。でかいこと。たくさん運営していること。事業者の財務能力が強いこと。予算数億円の、地域に根差した児童クラブより、年間売上高数百億円の広域展開事業者の方が圧倒的に安定している(と外部からは見られます)。各地で運営しているがゆえに雇っている職員が多いので、いざというときに、人手不足の地域に職員を送り込める。最近も埼玉県富士見市でそういうことがありましたね。各地でいろいろな運営スタイルを経験しているのでノウハウが豊富。ICT化もばっちり。こどもの登所管理アプリすら内製化できます。
 これらが広域展開事業者の「スミス&ウエッソン」となっています。

 さすがにこの状況において、A市ならA市だけで事業展開をしている、せいぜいが数十の支援の単位の児童クラブ運営事業者であっても対抗するには無理があります。第2法則は、圧倒的なシェアを武器に相手を押しつぶす戦略です。いままさに、児童クラブの世界はこの第2法則が強力に展開しています。ごくごく一部の例外として、第1法則が発動した例としては、わたくしが非常勤理事で運営に関わっている愛知県津島市における児童クラブ運営主体の変更劇があります。これについては鈴木愛子弁護士の著書「子どもが行きたい学童保育」をぜひご一読ください。

 児童クラブ業界における強者がその武器としているのは、圧倒的なスケールメリット、つまり「事業者の規模が大きい」ことがもたらす要素です。財務基盤、人的資源、各地での児童クラブ運営ノウハウ。それには、公募型プロポーザルや指定管理者選定委員会に提出したりプレゼンテーションをしたりする際に発揮できる経験の積み重ねも含まれます。つまり公募や選定において「評価されやすい書類の作成、アピールの方法」が含まれるのです。これは経験を積まねば会得できません。地域に根差した児童クラブでは単発的に得られる経験が、広域展開事業者では全国各地の様々な自治体の様々な公募や選定の仕方、やり方をデータとして得られ蓄積できるのです。

 児童クラブの弱者が強者と渡り合うには、ずばり「強者になる」ことです。それは「地域に根差した」という枠を超えること。他地域で複数の自治体にて設置される児童クラブの運営権を手に入れることです。必然的に、事業者の規模そのものが大きくなります。A市内だけの児童クラブ運営から、離れた地域にあるC市の児童クラブの運営にも積極的に取り組むこと、つまり他地域で行われる公募や指定管理者の選定に挑戦することです。その点、埼玉県北本市を拠点とする非営利法人である地域に根差した児童クラブ運営事業者が他地域での公募に挑み、実際に他地域での運営に乗り出したことは、特筆すべきことです。
 理想は1つの事業者が他地域での運営を行うことで事業者としての規模を拡大することですが、同じ方向性で運営する地域に根差した児童クラブ運営事業者同士が連携して、いわば共同企業体のような形で他地域での運営に挑むことも、まあ良いでしょう。大事なことは「地域だけに根を生やしているだけでは、いつか、広域展開事業者という大木が大きな枝を張って大きな葉っぱをどんどんつけて、地域に根差した児童クラブ運営事業者は育たず栄養分も取られていずれ枯れてしまう」可能性が大いにある、ということです。

 地域に根差した児童クラブ運営事業者が他地域での広域的な展開をすることで、その事業規模を拡大したならば、それまで広域展開事業者だけが有していた強者としての強みが、新たに広域展開することで育ってきた、地域に根差した児童クラブ運営事業者にも備わることになります。財政基盤、人的資源そして運営や公募挑戦のノウハウが、備わることになります。

 お分かりですね。ここに至ると、第2法則から第1法則に移るのです。少ない兵力が負けるのが第1法則ですから、第1法則の原理に従うならば、「どんどん運営するクラブ数を増やせ!」というのが、最大の事業目標となるはずです。そしてそれは事業者としての全体的な戦略方針として掲げられるべき内容です。
 個々の地域における局地戦つまり公募や選定の場では、兵力の差(=具体的には、事業者の規模の差)より「児童クラブ運営にかかる質の差」が重点となります。ここでは第2法則が局地的に展開されます。つまり弱者の児童クラブ運営事業者は第1法則による事業規模の差による不利な点をつぶしたので、次は各地の公募、競争の場において「質の高さ」を武器に第2法則を使って相手を圧倒する展開に持ち込むのです。
 「各地域の住民と行政にそれぞれ根差した、広域展開する児童クラブ運営事業者」が、児童クラブ運営によって収益を得ることを最優先とする広域展開事業者と競うことになる公募や選定の場とすることで、今までの1勝99敗のような圧倒的に負け続ける児童クラブ運営をめぐる公募や選定でもなんとか5分5分程度に持ち込める可能性が生じてくると、わたくしは考えるのです。審査基準や選定基準が、より育成支援の質の継続を重視する内容に変わることや、審査選定に関わる委員会や会議の人物の属性をより児童クラブに詳しい人物に替えることで、勝てる確率はもっと上がっていくことでしょう。
 事業運営における継続性と安定性を備えれば、元来が地域に根差した児童クラブ運営事業者であれば、もとより育成支援の質や職員の雇用と労務管理には費用を投じているだけに、備えは盤石になるのです。「育成支援そのものの質」と「育成支援を継続して安定的に供給できる」、この両面を備えることで、広域展開に踏み切った地域に根差した児童クラブ運営事業者は、収入を児童クラブ運営事業そのものにほぼすべて投資することが事業運営の強みをさらに増します。それは、収入の1割や2割を収益源として確保せねばならない広域展開事業者に対しての絶対的な強みとなるのです。

 だからこそ、弱者に位置する児童クラブ運営事業者も、広域展開に踏み切ったりあるいは踏み出すことを考えたりしている、地域に根差した児童クラブ運営事業者は、「質の高い事業運営を実現するために、何をするべきか、どういうことが必要か」を真剣に考えて実践する必要があるのです。(そしてその援助支援をするのが、この運営支援の事業そのものです)

 単に長くいるだけの職員を優遇するとか、自治体や保護者の希望を「それはこどものためにはならないですね」と、こどもを「錦の御旗」として利用するだけ利用して実は「運営する自分たちだけが楽をする、利を得る」ことを隠しているような、地域に根差した児童クラブ運営事業者は、淘汰されてしかるべきです。そういう事業者であれば、広域展開事業者に蹴散らされて当然ですし、わたくしはまったく同情もしません。「それみたことか」でおしまいです。

<まとめ>
 放課後児童健全育成事業は、公の事業であり、こどもの健全な育ちを育成支援というジャンルで提供する児童福祉サービスです。公の福祉サービスですから、継続して安定的に提供されることが絶対優先です。現状、それが可能なのは、各地で100以上の支援の単位を有する広域展開事業者にほかなりません。2026年12月から始まる、こども性暴力防止法時代においては、より確たる事業運営内容が求められます。この法律による認定を受けるには、情報保全や安全確保が確実に実施できる組織運営体制が求められるからです。それは、もはや保護者の手弁当、ボランタリーの気持ちだけで手に負えるものではありません。いつまでも「保護者と職員が手を取り合ってこどもを真ん中に」のお題目だけで児童クラブを運営できるものではありません。それはもう、はるか遠い昔の話だったのです。法制化される以前の話で終わっていたはずです。それを延々と今なお信じていたからこそ、広域展開事業者による市場の拡大が粛々と進んでいたというのが、わたくしの考えです。地域に根差した児童クラブ運営事業者は、いままでずっと戦略を誤ってきました。そしていよいよ、こども性暴力防止法時代、事業者の規模の大きさが如実にその法制度の受入と運用を左右する時代になって、致命的な結論を突き付ける時代になるのです。
 地域に根差した児童クラブ運営事業者は、事業運営の質を見直さねばなりません。効率的な事業運営で、質の高い人材の維持と確保に多くの予算を投資すること。それによってもたらされる組織運営の安定を事業拡大の推進力とするべきです。児童クラブの事業運営にも生産性の向上、労働の効率アップが必要な時代となりました。それを分かっている事業者でなければ、こども性暴力防止法時代の児童クラブは生き残れません。
 弱者である児童クラブが生き残る戦法は、「事業が継続して安定的に実施できる事業者に生まれ変わること。そして他地域で運営するクラブを増やし、事業規模を拡大して弱者が有してきた育成支援へのこだわりを残しつつ在籍版と人的資源を増やすこと」。それが、運営支援の最終的な結論です。
 
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
New!☆
こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネル「こどもを守る弁護士チャンネル」は、第3回が2026年6月11日に配信されました。放課後児童クラブの運営に関わってきた鈴木愛子弁護士が「こども性暴力防止法がもたらす「人手不足の加速」とその構造的リスク」とのタイトルで、人材確保に関する懸念を取り上げています。内容は放課後児童クラブ限定ではなくて法制度全般にわたるものですが、とりわけ放課後児童クラブで働く人、運営する人そして管理する行政パーソンには必見必聴の内容です。https://www.youtube.com/watch?v=ZVafKTKe204 を、ぜひクリックしましょう。
 第2回(2026年5月30日)が、こども性暴力防止法の「Q&A」を読み解くとして、【弁護士が読む❗️こども性暴力防止法Q &A】のタイトルで配信されています。メインスピーカーは三輪記子弁護士、聞き手は嶋﨑量弁護士です。
https://www.youtube.com/watch?v=XtTCNTDBLLo
 第1回(2026年5月16日)は「こども性暴力防止法を考える」です。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s

 放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf
(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf

わたくし萩原が寄稿した記事が 「Wedge ONLINE(ウェッジオンライン)」で2026年5月29日に公開されました。「“産業化”の大波に飲み込まれる学童保育…企業はどう収益を上げているのか?事業構造から見える放課後育成の実情」という記事です。ヤフーニュースにも配信されています。URLは以下の通りです。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40665
 2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事も公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。こちらもぜひ読んでいただけるとうれしいです。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

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萩原和也