「社会全体での子育て」と「家庭中心の子育て」のすれ違いを考えます。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 本日(4月7日)、朝のNHKニュースで、小1の壁について特集していました。その中でも、新たな観点での取り上げ方がありました。「朝」の小1の壁、です。保護者の出勤時刻と、子どもの小学校への登校時刻にずれがあり、子どもの登校時刻に合わせていては出勤時刻に間に合わない、そのギャップを埋めるため早朝に児童の受け入れをしている施設がある、という紹介でした。

 学童保育所、特に育成支援を行う学童保育所は正式名称が「放課後児童健全育成事業」ということから分かるように、基本的には放課後(または小学校長期休業中)の留守家庭における児童を受け入れる施設です。ですので当然、朝の時間帯の留守家庭における児童の受け入れは法律の想定外であり、当然、それに対する補助金はありません。

 学童保育所は近年でこそ午後7時やその時刻近くまで開所している施設が増えました。ですが十数年前までは、午後6時台の閉所が当然のようにあり、まして土曜日ともなると、午後4時や午後5時での閉所が当たり前でした。
 しかも長期休業中は午前8時が圧倒的に多く、先ほどの「朝の小1の壁」のように、「午前8時では出勤に間に合わない!」という保護者の声は大変多いものがありましたし、今もあります。
 (ちなみに上尾市では数年前から長期休業中は午前7時半の開所に切り替わっています。簡単にできるものではなく、労働者側に慣れていただく試行期間を経て慎重に切り替えを行い、結果的にスムーズに実施することができました。なお、夏の盆期間中の開所も同様に丁寧に準備を重ねて実施に至りました。数年前まで、下記盆期間に学童保育所は閉所していました。市民に対する福祉行政サービスからすると不可解でしたが、以前はそうだったのです)

 さて、ここで考えたいのは、保育所や学童保育所のように児童を受け入れ支援をする側の意識と、社会のニーズとのギャップです。往々にして、「開所時間の延長」や「早朝受け入れの開始」などを実施しようとする、あるいは今回の次元の異なる少子化対策として保育所入所に係る保護者の就業要件を緩和するという報道がでると、SNSでは保育士さんや放課後児童支援員とみられる側から、次のような意見が上がるのです。

 「子どもは少しでも保護者と一緒に過ごすのが良いのに、親子で過ごす時間をどんどん減らすことしか考えていない」
 「保育所に子どもを預けっぱなし。そんな生活でいいのか。親子が長く過ごせることが子どもにとって幸せなのに」

 このような考え方、意見は、子どもを受け入れる側で働く人にとって、ごく普通にみられる考え方なのだと思われます。

 このような意見を見ると、私は、「保育士や放課後児童支援員の多く、すなわち子どもを受け入れる側は、子どもはもっと親と一緒に過ごすべきであるという考えであって、子育ては家庭を中心に行われるべきものと考える傾向がある。それは、子育ての責任は第一義的に家庭にあるという今の法体系に即している」と思います。

 一方で、本日朝の報道にあった早朝受け入れが典型的ですが、児童の受け入れ時間を拡大することは、現実に保護者(つまり社会)のニーズがあり、それに即した対応をしているということです。幸か不幸かはともかく、現実に、保護者の就労状況は多様化しており、収入を気にせず親子の子育ての時間を確保できる世帯が圧倒的に少ない中、就労しないと生活が維持できず、その就労のため早朝の出勤や夜の退勤の時刻が、児童受け入れの施設とうまく適合しないという現状が生じているわけです。

 おそらく、そのような社会において、子どもの受け入れをしっかりと行える施設整備を進めることが、国や社会が現実的に求めている「社会全体の子育て」の1つの形となるのでしょう。

 (なお、私の考えている、本来の社会全体の子育てとしての理想形は、「子育て世帯において、親子一緒の子育てを選択することも、働きながら子育てをすることも、どちらも普通に選べる社会構造であって、そのどちらについても偏見がなく、生活がしっかりと保障できること、という意味です)

 子どもを受け入れる側は、社会のニーズがあってその職業が成立するという側面がありながら、「なるべく親子一緒にいたほうが良い、まして仕事の都合で子どもが受け入れ施設にいる時間が長くなるのは、子どもがかわいそうだ」という意見。
 子どもを託したい側は、子どもの安全安心な居場所が確保できないと落ち着いて就労できず、「子育てをするにも生活が成り立たないと無理で、生活するには働くしかなく、働くために子どもを受け入れてくれる場所が必要」という意見。

 この両者の隔たりはかなり大きく、まして、人間の成長をどのように支えていくべきかという根本的な意見の相違だけに、双方がうまく寄り添っていくことは、かなり難しいのではと思います。

 なお、子どもを受け入れる側の事情について、職員数の少なさによる業務における余裕の無さ&就労時間とその業務量、業務責任に対する賃金の低さ、という深刻な問題があり、それがあって心理的な余裕がなく、「子どもはなるべく家にいてほしい」という、ともすれば自らの職業倫理を否定するような極端な考え方になってしまうという、情状酌量すべき事情があることは、忘れてはならないと思います。現場施設に配置される保育士や放課後児童支援員の人数が現状より倍増以上となれば、受け入れる側も、もしかしたら「保護者さん、ゆっくり働いてきてくださいね。こちらは余裕をもってお子さんの受け入れができますから」と、なるのかもしれません。

 「子どもを育てる場所はどこか」という問題は、国家社会の根本にかかわる問題であると、私は思います。「子育てを(従来のように)第一義的に家庭に負わせるのか」なのか、「社会全体で子育て施設を整備していくべきだ」(裏返せば、国民にはどんどん働いてもらって経済活動をもっと活発化させる必要がある、という国の方針)なのかは、国民的な議論が必要ではないかと、私は考えます。

 いずれにせよ、学童保育所が現在よりも、もっと必要不可欠な社会資源になるのは間違いがない事です。今はまだ、最低限の社会ニーズにも応じられていない状態。国にはもっと補助金を増やしてもらい、市町村にはもっと住民が利用しやすい学童保育所の施設整備を進めてもらい、事業者には子どもの最善の利益を守りつつも保護者が安心して利用できる事業展開を行う必要があります。

 最後に、「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育組織運営に豊富な経験を持つ代表が、育成支援における理解の獲得と実践の実施手法について、具体的かつ適切な助言、アドバイスを行うことができます。

 学童保育の運営者の方、そして行政の学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る学童保育所の発展のために、一緒に考えていきましょう。職員育成はもちろん、どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく学童保育です。学童保育の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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