「学童に勤めた、子どもあきらめた」を見過ごしてはいけません!

(代表萩原のブログ・オピニオン)学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」萩原和也です。先週末に、どうしても看過できないことがありました。フェイスブックには書き込みましたが、「学童で働いていて、低収入なので子どもをあきらめた」という厳しい現実をつづったツィートを目にして、悲しみと悔しさと怒りが同時に湧き上がってきたのです。

 学童保育の世界を知っている方は、この業界のブラックぶり(低賃金の長時間重労働)はよくご存じでしょう。もちろん、そうではなく、職員さんたち(放課後児童支援員や補助員さんのこと)にとって、とても働きやすく、収入も休日も退職金もしっかりと保障されている組織は、もちろん存在しています。特に人口が多くて学童保育の利用者も多い地域において、また自治体の理解がしっかりとある(これ重要!)地域で学童保育事業を営んでいる組織や団体もかなり多く存在しているのも承知しています。本当に喜ばしいことです。

 しかし一方では、ツィートで告白されたような実態があります。大都市部以外の地域においてはおそらく、そのような厳しい雇用労働環境にある組織団体で学童保育の仕事に就いている人たちのほうが多いのではないでしょうか。「学童で働いていると結婚できないから、好きな仕事だったけど辞めた」ということも、これまで何度となく耳にしてきたことです。それは組織団体の問題ではなくて、その組織団体に届く行政からの財政支援が圧倒的に足りないからです。

 地域によって、同じ業種であっても雇用労働環境に幅があるのは、これは当たり前です。そもそも最低賃金からして地域ごとに差があるわけですから。しかし、片や冬の賞与が数十万円支給された!という喜ばしい声がある一方、低収入なので子どもをあきらめた、結婚をあきらめた、という悲惨な現実もあることを、わたしたちははっきりと認識し、学童保育に従事する人たちの悲惨な現実の是正を社会に強く訴え続けていく必要があるのではないですか。今のような状態を放置していいわけがありません。一生懸命働いても、子どもをもうけるのをあきらめざるを得ない状態が存在しているのは、はっきり言えば、社会正義に反しています。

 少子化対策や地域活性化、ことに自治体の人口維持や人口増に必要不可欠な施策として学童保育がますます重要視され、10年前と比較してはるかに補助金の額や種類も増えました。大変喜ばしいことです。しかしわたくしが思うに、これは、治山治水で例えると、川の下流にせっせと堤防を作って川の流路をまっすぐに直しているようなもの。それはもちろん大事なことです。洪水、氾濫で社会にダメージを与えてはなりませんから。
 しかし、治山治水というのは、川の下流だけを整備すればいいというものではないのです。川の上流部にある山林や土壌をしっかりと手入れして保水力、涵養の能力を高めつつ、持続的に安定した川の流れを作り、栄養分ある水が川に流れ込んで、その川も、川が注ぐ海も、豊かになっていくようにすることです。自治体に交付される補助金が整備されるのは大変ありがたいことで、その方向性は今後も国が維持していくことを強く望みます。
 同時に、治山治水で例えるなら保水力を高めること、それは学童で働いている人たちにしっかりと届く処遇改善や、社会そのものが学童保育に対する正確な理解と支持をしっかりと認識していただく必要があります。学童保育は「子どもを安心して育てることができる社会を維持するために重要な社会資源」であること、そして学童保育所で働くということは「その業務には極めて高い専門性が必要であり、それに応じた処遇が必要である」ということを理解して、この社会が、学童保育で働く人に対してこれまで以上に高い収入をもたらすことを歓迎するようになること、これに尽きるとわたくしは考えます。

 少子化対策の切り札として期待されている学童保育所で働いている人が、どうして子どもをもうけるのをあきらめざるを得ないのか。繰り返しますが、このような状態は明らかに社会正義に反しています。

 ぜひとも立法、政治の世界では、超党派でこの問題に大至急、取り組んでいただきたいとわたくしは希望します。マスメディアにもこの問題をしっかりと取材して社会に発信していただきたい。どうも昨今のメディアが学童保育を伝えるときは、「学習をしっかり教え夕食提供送迎も完璧、保護者にとってうれしいサービスを提供する学童ができた、成長が期待される」という、子どもの最善の利益よりかは事業者のメリット優先のスタイルが目立つような気がしてなりません。それはそれで社会のニーズがあるのですから、必要なサービスだとわたくしは理解していますが、「学童に勤めた、子どもあきらめた」という悲痛な声がもう二度と挙がらないように、学童業界もこれまで以上に強く社会に対して声を出していく必要があると、わたくしは感じます。

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