運営支援が独断と偏見で解説する放課後児童クラブ(学童保育所)関係で報じられた最近のニュース、報道。言いたい放題言ってやるぞ。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!

 最近、相次いで放課後児童クラブに関しての報道を目にします。今回の運営支援ブログは最近、わたくし萩原が目にした報道を独断と偏見に満ちた視点で取り上げます。なお、報道というものはミスや失態や残念な事態を伝えることが多いので当ブログの内容もなかなかシビアな内容になりますが、「圧倒的多くの児童クラブでは、現場も運営も、一生懸命に仕事に取り組んでいる。そのようなクラブではこどもと保護者の笑顔があふれている」ことは言うまでもありません。問題はそのような微笑ましい光景の児童クラブで、職員だけが無理を強いられていることがあるので困るということですね。今回ご紹介する記事についてはみなさま、どうぞ検索して元の報道記事をご覧ください。

(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。) 

<送迎車に30分間置き去り>
 ヤフーニュースに2026年5月8日19時2分に配信されたチューリップテレビの「児童1人が送迎車に30分間置き去り、自力脱出で体調異変なし 高岡市内の放課後児童クラブ 市が事故防止を呼びかけ 富山・高岡市」の見出しの記事を一部引用して紹介します。
「4月下旬、富山県高岡市の放課後児童クラブで、送迎用のワゴン車に児童1人が約30分間、置き去りにされていたことが分かりました。児童は自力で脱出し、体調不良などはなかったということです。」
「児童クラブは「降車時に目視で確認したが、当日は施設とは別の建物でスポーツ教室があり、点呼が徹底できなかった」と説明しています。児童クラブはその日の夜に高岡市に報告しました。報告を受けた市は、事故防止の徹底を呼びかけました。」(引用ここまで)

 大失態ですが、再発防止の取組は迅速に行われています。記事をぜひご確認ください。その点は評価できますね。しかも事案発生当日にしっかり行政に報告しています。その点、運営事業者の危機対応に関する意識は決して低くないとわたくしには想像できます。

 こどもが利用する施設において送迎は一般的に行われていますし、それだけに事故やミスも多い。未就学児ではそれこそ落命、死亡事故につながった深刻な事件が何度も繰り返されています。絶対に起こしてはならないのが、送迎時の車内閉じ込め事案です。児童クラブでこの種の事案が起きたのはとても残念です。「降車時に目視で確認した」と記事で書かれていますが、「目視したなら、こどもの存在に気が付くだろう!」とわたくしは大声で指摘したい。ここの部分、正確には「目視で確認する動作はしたけれど、実際には他の物を見たり他のことを考えていたりしたので、目の前の様子を目で見て把握していませんでした」となるはずです。
 送迎ーこどもの乗降者確認ー毎度の作業ールーティン化ー形骸化ー形だけなぞっていても実際は求められた業務を遂行していない、というのが今回の事案の実態ではないかと、わたくしは疑います。

 これから暑さが本格化します。送迎を行っているすべての児童クラブ運営事業者は、この報道事案を例にして「どうしたら送迎時の事故を防止できるか」について、話し合う機会を設けてみてはいかがですか。

<にかほ市中三地の学童保育クラブ敷地内にクマ>
 ヤフーニュースに2026年5月8日17時7分に配信されたABS秋田放送の「にかほ市中三地の学童保育クラブ敷地内にクマ 施設の女性が目撃 警察が注意を呼びかけ 8日 秋田」の見出しの記事を一部引用して紹介します。
「由利本荘警察署の調べによりますと8日午後2時25分ごろ、にかほ市中三地字橋本の小出学童保育クラブけやきっ子の敷地内にクマ1頭がいるのを、施設内にいた60代の女性が目撃しました。クマの体長は約60センチです。」
(引用ここまで)

 わたくしが訴えたいのはたった1つ。「行政には、児童クラブでクマによる被害が起きないように徹底した対応を講じてほしい」ということです。児童クラブは、こどもの最善の利益が守られる場所です。職員がそのために職務を遂行しています。しかし児童クラブはクマの襲撃からこどもを守れる設備や用意はありません。こども、職員の生命身体を守るために、どうぞ関係各位が予算と知恵を出して、児童クラブ(のみならずこどもや人間が多く集まる場所、施設)がクマの被害に遭わないような厳重な対応を講じられるように、すぐに取り組んでください。

 誰かが被害に遭ってからでは、遅いのです。「安全」に投下するコストを惜しんではなりません!

<三田市の学童保育利用料、7件で徴収ミス>
 神戸新聞が2025年5月9日5時10分に配信した「三田市の学童保育利用料、7件で徴収ミス 減免処理など誤る 後日返金へ」の見出しの記事があります。こちらは会員限定記事です。
 ミスの具体的な内容は紹介できませんが、利用料(保護者負担金、保育料などと呼ばれるもの)の金額を間違った額で請求したり口座引き落とししたりすることは、あってはなりませんが起こってしまいがちなミスです。わたくしも恥ずかしながらこの種の事案の実に深刻なミスをしでかしたことがあって、管理運営の最高責任者として自身に50%の減給を科したことがあります。
 ただ、この記事で伝えられている同姓同名の人の利用料を間違って徴収したというのは、さすがに恥ずかしい水準でしょう。
 この種の事案についてはすぐに外部から「人間が関わるから起こるミス。自動化すればいい」と口をそろえて言われます。そんなこと分かり切っています。問題は、「自動化をするにしてもその自動化できたシステムを動かすのは人間。その人間が関わる時点でミスを起こしてしまう」ということです。ですので、徹底したミス撲滅の仕組みである「覚醒した意識を働かせている人間によるダブルチェック」が必要です。児童クラブは育成支援の現場も運営の現場も、どうしたって「すぐれた人材」が必要ですが、全体的にそれがなかなか満たされていない世界。その結果、ミスが起こってしまう可能性が高くなりがちな傾向は否定できないところです。児童クラブの仕組みがそれでもまがりなりにも機能しているのは、全国で圧倒的多数のまじめなひたむきな職員や協力者たちが懸命に頑張っているからです。ありがとう!

<秋田生まれ育ちの農家の娘・秋田そな、グラビアデビューのきっかけ明かす>
 ヤフーニュースに2026年4月29日18時14分に配信されたDeviewの「秋田生まれ育ちの農家の娘・秋田そな、グラビアデビューのきっかけ明かす「私の大きな胸が学校を動かしちゃったんです」」の見出しの記事を一部引用して紹介します。
「高校を卒業してすぐに、調理の専門学校に進んで上京しました。1年の時はカリキュラムがびっしりで全く活動ができなかったのですが、ちょっと落ち着いてきた頃には学童保育の先生として働きながら、やっぱり諦めきれないなと思って行動しました。無所属の時に『ミスマガジン』にも挑戦したんですが、二次審査のカメラテストで落選してしまって。それが悔しくてなおさらスイッチが入ってしまって、事務所を探して応募しました」
「秋田そなプロフィール 2004年12月25日生まれ、秋田県出身。身長162cm B89・W60・H91
血液型:B型
趣味:ひとり旅、温泉巡り
特技:お菓子作り
2025年11月『ヤンマガWeb』でデビュー。4月10日発売の2nd DVD『初恋ソナタ』(ラインコミュニケーションズ)のリリースイベントが5月5日にソフマップAKIBA アミューズメント館8Fで開催。」
(引用ここまで)
 児童クラブ出身のアイドル誕生です! 頑張ってほしいです。

<子どもに土下座を強要 東京・台東区「放課後子ども教室」で見回り中の職員にぶつかる>
 こども家庭庁所管の放課後児童健全育成事業ではない、文部科学省による「放課後子供教室」での出来事ですが、看過できません。FNNプライムオンラインがヤフーニュースに2026年5月8日16時22分に配信した「子どもに土下座を強要 東京・台東区「放課後子ども教室」で見回り中の職員にぶつかる 区へ通報で発覚し保護者に謝罪」の記事を一部引用して紹介します。
「台東区によりますと、4月24日、「放課後子ども教室」で児童1人が見回り中の職員とぶつかり、故意にぶつかったと捉えた職員が児童に土下座を強要したということです。区への通報で発覚し、5月6日区が保護者に対して謝罪しました。」
(引用ここまで)
 なお他の報道によると、職員は「謝るときはこうするんだ」と先に土下座の見本を見せていた、とのことです。わたくし、あきれてあごの骨が外れそうです。土下座の強要は、それを為した人が過去に強要罪で逮捕、起訴されたこともあります。この問題、職員の常識の無さを責めるだけではダメです。まず運営事業者がコンプライアンス研修をどれだけしっかりとしていたか。わたくし萩原が受任するコンプライアンス研修はもちろんこどもに謝罪を強要させることは意味が無いことを伝えていますよ。非違行為ですし育成支援においても完全に無意味です。

<「学童落ちた」が止まらない でも職員は手取り13万円、ボーナスなし…過酷な現場を取材した>
 AERA DIGITALが2026年5月8日11時に配信した記事です。AERAは日本有数の良質な報道媒体ですし、姉妹媒体のアエラキッズプラスがわたくしの寄稿や取材記事をかなりの回数、掲載していただいています。そのAERAが児童クラブを取り上げたことは素朴にありがたい。ですが、AERAについてはさらに高みを目指してほしいので、あえて期待を込めて苦言を呈します。

 まずこの記事、待機児童という読者層に最も関心を引きそうな語句をいわば「チョウチンアンコウの提灯」にして興味を引きつけ、記事そのものは児童クラブ職員が置かれている厳しい雇用労働環境の実態と改善を訴えるという仕組みであると、わたくしには受け取れました。記事の内容は、常々わたくしがこのブログで引用したり紹介したり使用したりしているデータや文言(社会インフラ等)も見かけるもので、児童クラブの現場の声を紹介しつつ、児童クラブ職員の置かれている劣悪な雇用労働条件を訴えています。最初から「学童の職員は低賃金で大変だ!」としては、読者の最初の興味を書き立てる可能性は、待機児童と比べるとあまり高くないのでしょう。その点、「学童に入れるかどうかの記事なの?」と読者をひきつけて実はそこで働いている人はとても大変なんだよ、ということを伝える仕組みは上手です。記事そのものも丁寧な取材内容で、時間もそれなりにかかったことでしょう。良質な記事ですからぜひ、多くの人に読んでいただきたい。推薦します。

 児童クラブの職員の雇用労働環境が劣悪であることは、実のところ、多くのメディアで何度か報じられています。「結婚を機に児童クラブを退職した男性職員」など話題になったものです。児童クラブではないですが児童健全育成事業の児童館をめぐっては児童館館長の「月収12万円」の記事はNHKでも報じられました。後日、その館長にわたくしも話を聞きました。
 児童クラブの職員が低賃金なのはさほど知られていないことだろうとわたくしは感じます。ヤフーニュースのコメント欄には、利用者、保護者とおぼしき方々からの「学童職員の低賃金はひどい」という趣旨の書き込みを多く見かけます。

 児童クラブの仕事は低賃金である。そのことは実は知られている。知られているということは、それが消極的であっても否定的であっても「受け入れられている」「受け止められている」ということです。「拒絶」されてはいない。「それは絶対におかしい」としてこの社会において組織的な抵抗、反対運動が起こっているわけでもない。時々メディアが「こんなひどい状況なんです。おかしいですよね」と伝え、児童クラブにおそらく感謝をしている、あるいは感謝をしてきた方々が「もうちょっと学童の先生をなんとかしてあげてよ」と共感を寄せる。その繰り返しです。

 いつまでお涙頂戴記事を繰り返すのですか。「どうして、児童クラブの仕事は低賃金なのか。どうして職員にそれなりの給与が行き届かないのか。児童クラブ業界における予算配分の仕組みはどうなっているのか。そもそも児童クラブ運営側に届く予算額が少ないのか、あるいは予算は必要最低限にあってもその配分の過程で問題があって職員に届く給与は低くなっているのか。児童クラブの世界で起きている劣悪な就業構造の原因はどういう構造の上にもたらされているのか」こそ、AERAなど良質かつ影響力のあるメディアが取り組むべき社会問題です。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、共同通信、NHK、週刊文春にはぜひとも、児童クラブの職員が低賃金におかれる構造について取材で切り込んでいただきたい。 わたくしなりの見立てを紹介します。なぜ児童クラブの職員は低賃金なのか。
・そもそも児童クラブに割り当てられる予算が満足な事業運営を実現するに足りていない。これは公設公営クラブに起こりがちではないかと考えています。自治体内の予算配分の優先順位があまり高くないだろうということです。会計年度任用職員の年間の報酬額を見ると「200万円台で常勤扱い。それはないやろ」と苦々しく思う募集条件ばかりです。
・委託や指定管理による、公の事業である放課後児童健全育成事業を民営で任せる際に起こりがちなのが、運営事業者そのものの利益計上として予算の一部が使われてしまうこと。簡単な話で、児童クラブ運営を収益事業として展開している運営事業者ー各地域で児童クラブを運営している事業者を広域展開事業者と当ブログでは称していますーは、営利法人、非営利法人に関わらず運営法人組織そのものの利益を児童クラブ運営に関して得た収入から計上します。2億円の年間予算があったら、うち2000万円を運営法人の利益計上ー名目は本部運営の人件費や販管費ーとして、残りの1億8000万円で児童クラブを運営します。2億円が使えるはずなのに1億8000万円しか使えないとなったら、およそ支出の8割近くを占める人件費を削って対応することになるのは自明の理です。そりゃ、職員は低賃金になりますね。なお広域展開事業者による「運営本体の取り分」を27パーセントとしていた非営利法人が過去にあったことが明らかになっています。1億円で運営してね、と自治体から任せられているのに実際に児童クラブ運営に使えるお金は7300万円しかなかった、という計算になります。そりゃね、働く人は時間外割増賃金だってもらえませんよ。
・運営事業体の利益計上を必要としない児童クラブ運営事業者でも、児童クラブ職員の低賃金構造はごく普通に起こり得ます。上記を読んだ人には「運営事業者が利益計上しないのに、どうして職員が低賃金になるの?」と不思議に思う人が多いでしょう。上記の例で言えば2億円の予算があったらその2億円が「真水分」として事業運営に使うことができるのですから。これは実に難しく分かりにくいのですが、わたくしのように児童クラブの内部のディープな世界に身を置いていた者なら簡単に分かります。それは、「児童クラブは人が人を支える仕事。だから人にどんどん投資するから」ということです。児童クラブの仕事は、「児童数何人に対して何人の職員である」と決められているものではありません。だいたいのところ児童数40人前後のクラブなら常勤や正規職員1~2人と非常勤職員3~4人の配置が多いでしょうが、「より丁寧にこどもたちの児童クラブでの生活と育ちを支えたい」と、児童クラブ事業をある意味熱心に推し進めている事業者においては、職員をさらに数人、多く雇用します。となると、人件費はいくらあっても足りないことになりますね。ここです。良くも悪くも児童クラブの世界は「職員が多ければ安心、丁寧な育成支援ができる」という思いがあり、雇えるならばどんどん人を雇うのです。
正規常勤職員 2人分人件費 1200万円
非常勤職員(週5パート)1人分人件費 250万円
非常勤職員(週4パート)1人分人件費 200万円
非常勤職員(週3パート)3人分人件費 450万円
長期休業期間中の非常勤職員(アルバイト)人件費 200万円
これの合計で給与分だけの人件費は2300万円ですね。運営事業者にはさらに事業主負担分など法定福利費がのしかかります。
 ところで、保護者運営系の任意団体や非営利法人の運営クラブでは、手厚い育成支援を目指してさらに職員を数人増やすことがあります。仮に同じ2300万円の予算しかないとなると、職員の取り分は減っていくのが当然。
正規常勤職員 2人分人件費 800万円
準正規常勤職員 1人分人件費 300万円
非常勤職員(週5パート)2人分人件費 400万円
非常勤職員(週4パート)1人分人件費 180万円
非常勤職員(週3パート)4人分人件費 440万円
長期休業期間中の非常勤職員(アルバイト)人件費 180万円
 児童クラブ職員の給与がなかなか上がらないのは、単に運営する企業や法人が予算の一部をかっさらっているのではなくて、運営事業者自らの方針ー運営に関わる保護者や職員が企図してー職員数を増やすことで1人あたりの給与額が減る、ということもあるのです。
・不合理な配分がまかり通る。児童クラブの仕事は低賃金で長時間労働、しかもストレスが過大な、実に過酷な職場です。今も昔も、理不尽なことを言う利用者(=つまり保護者)はいますし、こどもは全員が大人にとって理想的な振る舞いをする存在ではありません。「あの子が退所すればクラブは平和になる」という思いを抱いたことが無い職員は少ないのではないですか。だいたい、児童クラブってのは、高度なコミュニケーションが業務において求められるコミュニケーション労働である、対人ケア労働です。きつい仕事なんです。
 つまり、そんなきつい仕事でも長い年月、続けられている人はレジェンドつまり生ける伝説。児童クラブ運営側は職員に長いこと勤めてほしいので、年齢給を基本とした給与体系を設定します。勤続30年、40年ともなれば基本給30数万円ということもあります。ただしそこにたどり着くのはごくわずか。ごくわずかですが、そういう伝説級職員がいる事業者は人件費のやりくりがとても厳しいのです。つまり「実のところ、職員には長く勤めてほしいけれど実際に長く勤務されると払う給料が確保できない」という本音と建て前があり、児童クラブの人件費の予算は実のところ「多くの職員が数年で退職する」ことを暗黙の了解で考えている事業者が当たり前にあります。埼玉県内にもそのような事業者が過去にありました。そして無くなりました。
 このことの更なる問題は、長年勤務を続けているレジェンド職員は、育成支援に優れた資質のある大黒柱的な存在(拙著「がくどう、 序」をぜひお読みください。そんなレジェンドが実に頼りになることが描かれていますよ)ばかりではないことに実は気づかれていません。「他の職種、他の職場ではとても仕事が続かない程度の水準の人が、ここだけは絶対にやめないとばかりに耐えに耐えて20年、30年、40年と勤務を続けている」職員がいます。わたくしは「サバイバー職員」とこっそり呼んでいますが。年齢給は、そのような「ただ長年仕事を続けているだけで、こどもを怒鳴る、他の職員にダメ出しはするけれど自分は座ってばかりで動かない、保護者にも平気で「おたくのこどもってバカね」などと言ってのける」サバイバー職員にも高い給与を与えるのです。
 つまり児童クラブで無期雇用をしている事業者の給与体系に問題がある、ということです。
 「では、仕事の能力に応じて給与を決めることにしたら? 一生懸命に育成支援を学び、実践において真摯に取り組んでいる若手と、ただ単にキャリアが長いだけでこどもを怒鳴るしか能が無い職員を比べて、怒鳴る職員の給与が高いのが納得いかない」
 そう思うでしょう。ところが児童クラブ、それも保護者運経営を由来とする伝統的な児童クラブの世界やその世界を支える団体においては「保育は評価ができない。優劣はつけられない。よって評価給は絶対に認められない」という考え方が主流です。仕事に一生懸命な若手が報われず、育成支援の最新の理論をアップデートすることなく単に「感情的に褒めて叱ってなだめすかす」、とても育成支援とは呼べないこどもとの関わり方を貫くベテラン職員が給与面で優遇される。ここの構造に気づかないで、児童クラブ職員の給与が低い! 国はなんとかしろ! 自治体はもっと補助金を増やせ! と叫んでも、ムダに使われるお金を増やすだけです。
 児童クラブには、合理的な給与体系がなかなか根付かない。そんな土壌があるのです。生産性向上という当たり前の概念すら業界のまとまりは受け入れていない世界ですよ。
・保護者の適正な費用負担の問題。理想を言えば児童福祉サービスであり重要な社会インフラですからね、保護者の適正な費用負担はそれこそ0円に近ければ近いほど良いでしょう。ただし現実的にはそうはいきません。国や自治体の予算に限りがあることは認めざるを得ない。よって、児童クラブを利用する世帯の所得をしっかりと正確に把握して、無理なく負担できる適正な費用負担額を定める必要があるでしょう。ここがおざなりですと、児童クラブにつぎ込める自治体の予算も、運営事業者の収入も増やせない。最終的に職員の給与が上がらない要因となります。
・社会全体の、児童クラブの仕事に対する理解。「こどもを預かっているだけ」「こどもに、あれこれと指図するだけ」の所作が業務と思われたら、そりゃ「そんな仕事とも言えない仕事に基本給20万円、30万円は、ないね」と思われておしまいデス! 児童クラブの仕事の正確な理解を世間に広める必要があります。同時に、こどもを怒鳴るだ、土下座させるだ、そんなバカげたことをする職員を淘汰する必要もあります。ただ、「この賃金だから」淘汰したい人が多く応募してくるという現実もまたあります。

<こどもは大人の言うことをしっかり聞いて>
 最後に紹介したい、「こどもは大人の言うことをしっかり聞いて」という言葉。これ、大型連休中にNHKが放送したスポーツ中継で、登場するチームの人気キャラクターが紹介した言葉です。NHKアナウンサーが、こどもの日にちなんでこどもに伝えたいことをキャラクターに言ってもらうべく尋ねた返答の言葉でした。

 まず先に申し上げますが、世間一般、ほとんどの人がそう思っているでしょう。その現実をわたくしも認めます。スポーツ中継の余興として行われたコーナーですから、そのキャラクターを批判する意図はまったくございません。

 問題としたいのはその言葉をNHKという放送局がどう受け止めたか。そして「こどもは大人の言うことを聞くものだ」という趣旨の言葉を今の時代そのままに社会が当たり前として受け止めていいのかということです。

 「こどもまんなか社会」を考えるとき、その基本となる原理は、こどもの意見表明権であるとわたくしは考えます。こどもは1人の人間として、自分自身の意思を明らかにすることを決して妨げられない。おとなや社会はこどもが自分の考えや気持ちを容易に伝えられる環境を整える責務を負っていると、わたくしは考えます。その考え方をするとき、「こどもは大人の言うことを聞けばいいんだ」というこれまで圧倒的に支配的だった観念は、今後、どうあるべきなのか。修正が求められるものなのかどうか、この国の社会はまだ、議論を、検討を、始めていないとわたくしには感じられます。

 危険や法令、道理、ルールを逸脱したとき、あるいはそうなりそうなとき、こどもに対して大人や他者が指示したり命令したり言い聞かせたり諭したり叱ったりすることはあります。そういう例外的な場面は別として、こどもは「常に」大人の言うことを聞いて育つ存在であると定義し続けることで、本当に良いのか、そういう概念が当たり前に今も存在することをどう思うかを、世間一般に本気で投げかける必要がある。

 そう感じた、NHKのスポーツ中継のひとコマでした。

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf

(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf

 「Wedge ONLINE(ウェッジオンライン)」にて2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事が公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。わたくし萩原が編集部の依頼に応じて寄稿しました。ぜひご高覧ください。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

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