特別支援学校のこどもが亡くなる悲しい事案。放課後児童クラブ(学童保育所)に国は強い援助をすべきた。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
石川県内の特別支援学校で、5年生児童が授業中にトイレに行ったまま行方不明となり、学校から約1.5キロ離れた川の滝つぼで見つかり、死亡が確認されたという悲しい事案がありました。亡くなられたお子さん、そして遺されたご家族に心よりお悔やみ申し上げます。報道では、学校のトイレにある非常口のドアの1つが施錠されていなかったことなどが伝えられています。今後、事案の原因が究明されるでしょう。この事案、放課後児童クラブにも重くのしかかってくるでしょう。現場の職員の不安、心配を国や行政は速やかに解消するべく、しっかりと取り組んでいただきたい。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<児童クラブの世界にも衝撃>
石川県内の事案の報道を聞いて深く考え込んだ児童クラブ関係者もいることでしょう。放課後児童クラブでもごく当たり前に特別支援児(注:運営支援ブログでは、法令や要綱の条文で「障害児」と表記される場合を除き、それ以外の記述では「特別支援児」との表記を使っております)を受け入れています。そして表立って多くは語られないですが、現場も運営も、特別支援児の受け入れに関しては適切な援助、支援に関して多くの課題や関門に向き合っています。
国は児童クラブで特別支援児の入所を勧めています。放課後児童クラブ運営指針ではこう書かれています。抜粋します。
「2.障害のある子どもへの対応
(1)障害のある子どもの受入れの考え方
○ 障害のある子どもについては、地域社会で生活する平等の権利の享受と、包容・参加(インクルージョン)の考え方に立ち、子ども同士が生活を通して共に成長できるよう、障害のある子どもも放課後児童クラブを利用する機会が確保されるための適切な配慮及び環境整備を行い、可能な限り受入れに努める。」(第3章 放課後児童クラブにおける育成支援の内容)
つまり、可能な限り特別支援児を入所させましょうというのが国の方針です。
運営指針では、特別支援児の育成支援に当たっての留意点としていくつかの事項を挙げています。「障害のある子どもの育成支援についての事例検討を行い、研修等を通じて、障害について理解する」ともあり、多くの現場職員が特別支援児や、こどもの特性に関して研修を通じて学びを続けている状況です。
さらに「障害のある子どもの育成支援が適切に図られるように、個々の子どもの状況に応じて環境に配慮するとともに、職員配置、施設や設備の改善等についても工夫する。」とあります。ここの部分ですが、運営指針の解説書にはこう説明されています。長い文章ですがこれは非常に重要と運営支援は考えているのでそのまま抜粋します。
「障害のあるこどもの受入れに当たっては、個々のこどもの状況に応じて環境を工夫し、職員配置、施設や設備の改善等を行うことが望まれます。育成支援を行うに当たっては、障害を理由として不当な差別的対応をすることなど、障害のあるこどもの権利利益を侵害することがないようにする必要があります。
放課後児童クラブでの活動の場面がわかりやすくなるように空間を工夫する、生活時間の区分や始まりと終わりをわかりやすく工夫する、全体での活動を見守りながらも必要に応じて個別の対応ができるよう職員を配置するなど、障害の種別や程度、特性に応じた育成支援の場面での対応の工夫が求められます。」
<工夫って?>
上記、運営指針の解説書に「工夫が求められます」とありました。工夫と聞いてわたくし萩原が思い出すのは「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」というスローガンです。ウィキペディアには「戦時下において、国民に耐乏生活を強いるために生み出された」とあります。カネも資源も人手も不足した第二次大戦中の日本で、大政翼賛会と新聞社が行ったスローガン募集で採用されたと説明があります。先の悲惨な戦争を象徴するあの有名な標語「欲しがりません勝つまでは」も、同時に採用されたと説明があります。
率直にわたくし萩原の気持ちをつづると、「現場も運営も、とっくに特別に支援が必要なこどもを受け入れるのに知恵と工夫をこらしていますよ。もう出尽くしていますよ。ですが、特性のあるこどもが安心して過ごせる環境が、いまの多くの児童クラブに備わっていますか? 特別な支援を必要とするこどもに専門的な援助支援を行うことができる職員の人数をそろえるだけの予算を確実に運営事業者に渡していますか? ギュウギュウ詰めの児童クラブ施設内で、健常のこどもも、特別な支援が必要なこどもも、お互いに困惑しながら過ごしているのが今の児童クラブの多くの現状ですよ。それをさらに工夫ですか? やっぱり日本は80年以上過ぎても何も変わらないのですか?」と。
工夫をするには予算が必要です。児童クラブで、運営指針が求めるような特別支援児を可能な限り受け入れるためには次のようなことが必要です。
・十分な施設の広さ。こどもが密な状態では、特性あるこどもの急な動きによって周りのこどもが驚いたり落ち着いて過ごせなかったりする。児童クラブの基準であるこども1人につきおおむね1.65平方メートルではとても足りません。国が本気で<障害のある子どもも放課後児童クラブを利用する機会が確保されるための適切な配慮及び環境整備を行い、可能な限り受入れに努める>とするなら、こども1人につき1坪(約3.3平方メートル)は必要です。
・こどもの集団の人数の見直し。いまのおおむね40人でも多すぎます。特別支援児を受け入れる児童クラブでは、おおむね30人が限度ではないかとわたくしは考えます。施設の広さにもよりますが、適正規模とされる40人が登所し、1.65平方メートルの基準が守られている状態でも、目で見ると「こどもで結構ぎっしり」の印象を持つことでしょう。これが、「おおむね30人、こども1人につき3.3平方メートル」になれば、こどもは十分な自分だけの広さを確保できます。それが安心して過ごせる環境をもたらすのです。
・特別支援児を主に援助支援する加配職員への人件費補助(障害児受入加算・強化加算)は、自治体の裁量とするのではなくて特別支援児が入所した支援の単位には必ず交付されることとする。
・人件費補助は特別支援児2人につき加配職員1人の割合とする。
・加配職員への人件費補助の額を現状より大幅に引き上げ、特別支援について専門的な知識を継続的に学び、実践に活かせることができる優秀な人材を獲得できるようにする。
・引き上げられた加配職員への人件費補助の対象となる加配職員には、何らかの資格要件を設ける。資格が無ければ現状の人件費補助額の水準でも良い。それぐらい、加配職員の資質向上に国が旗振りをする。
・加配職員には年に数度の研修参加を義務付ける。
上記のような環境が整って初めて、運営指針にある工夫がいろいろ凝らせるようになるのです。現状は「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」、まさにあの悲惨な戦争中とまったく同じです。それぐらい、現場も運営も、特別支援児の受け入れに真摯に向き合いつつ、できないことだらけで頭を抱えているのです。
<施設には特に国は気を使ってほしい>
児童クラブは様々な施設が使われています。学校の余裕教室、児童クラブ専門の建物、民家やマンション、テナントを借りての運営など、さまざまです。大きな道路に面している児童クラブもあります。小学校の1階にクラブがあるとは限りません。近くに川があったり森、がけがあったりする環境も珍しくないでしょう。
それら環境をすべてにおいて理想の環境ー特性のあるこどもが急に飛びだしても、事故にあう可能性が極めて低い環境ーとすることは現実的に無理でしょうが、できる限り、特性のあるこどもが急に1人で児童クラブの外に出てしまっても、環境要因で事故に遭う可能性が低下するように、施設の場所や構造に関して、国は一定の目安を示すべきでしょう。
いいですか、この特別支援児をめぐる問題は、すべからくこの社会が特別支援児を守るという方針を当然のことと確立していることが本来の大前提なのです。「こどもの突発的な行動が不安だから」と、こどもに問題の要因を担わせることをしてはいけません。どんなこどもでも安全に安心に過ごせる環境を用意するかどうか、過ごせるだけの人的資源を用意するかしないか、社会の側、大人の側が行動し解決に取り組むべき問題であるということです。飛び出したり、急にパニックになったり、突然に周りのこどもにつっかかっていくこどもに問題があるという理解では、いつまでたっても児童クラブで現実に特別支援児を受け入れている側が苦労するだけです。「受入の工夫をしてね」と社会、制度の側から現実の施設に対処、解決を丸投げされているからです。そうではなくて、社会、制度が「安全安心に、すべてのこどもを受け入れるために必要なことを責任をもって整える」という考えを持たねば、いつまでたっても、今のように、現場が頭を抱えるだけだよ、とわたくしは強く訴えたい。
わたくしがかつて運営を担っていた組織でも、こどもの急な飛び出しが何度もありました。大失態ですが、こどもが児童クラブ近くのニューシャトルに乗って大宮駅まで行ってしまってそこで駅員に確保されたということすらありました。石川のこどもは悲しいことに川に落ちて滝に流されてしまった。わたくしの場合はシャトルに乗って遠く離れた駅で見つかった。それは単に環境が違っただけの話。こどもが線路に落ちる、道路で車にひかれる、ということがあったって不思議ではなかった状況でした。
それだって、常日頃、こどもの様子を正規常勤加配関わらず丁寧に関わっていた中で起きたことでした。もっと手厚い人員配置、余裕のあるこどもの入所人数にしなければ、児童クラブにおいても、石川のような悲惨な事案が起きないとは限らないのです。
国が本気でこどもまんなか社会を構築したいなら、児童クラブで特別支援児の入所を可能な限り行う方針を続けるなら、工夫を可能にするだけの予算を投下してください。こどもが安全安心して過ごせる基準に改善しなければなりません。そうではないと、現状において実はもう無理があちこちで起こっています。石川と同じような悲しい事案が児童クラブを舞台に起こっても不思議ではありません。そして起きてからでは、もう取り返しがつかないのです。
児童クラブが足りないからと民間活力を導入したこどもの居場所事業に乗り出していますが、果たしてその事業形態では特別な支援が必要なこどもの受け入れは難しいでしょう。また、児童クラブのニーズが高い都市部を中心に、民設民営児童クラブの事業展開が進むでしょう。民設民営クラブは事業者の方針から特別支援児を率先して受け入れる事業方針を持つとは考えにくい。このままでは、特別支援児を受け入れる従来の児童クラブの負担がさらに増すだけです。放課後等デイサービスの連携が運営指針で示されていますが、飛び出しやパニック衝動があるこどもの受け入れを断る放デイも珍しくないと聞きます。放デイがダメ、児童クラブでは適切な援助支援ができない施設環境、人的資源にある、となったら、特別に支援が必要なこどもの安全安心な日常は、適切な発達への援助支援は、どこにもないという許し難い状況になってしまいます。
いつまでも、弱い者に厳しい社会であってはなりません。国そして自治体の即効的な対策の立案実施を切に希望します。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
New!☆
こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネル「こどもを守る弁護士チャンネル」。第4回が2026年6月30日に配信されました。放課後児童クラブの運営に関わってきた鈴木愛子弁護士が「こども性暴力防止法がもたらすこどもの被害申告に適切に対応できるか」をテーマに関して丁寧に説明しています。 まずは動画をぜひご覧ください。わたくしの著書「知られざる<学童保育>の世界」も紹介されています。
https://youtube.com/live/9q8xzkgs7wo?si=dr06eChxK1Jgov5T
第5回は7月19日(日曜日)15時から、すでに施行されている「児童生徒性暴力防止法」における調査の解説です。話し手:飛田桂弁護士、聴き手:嶋崎量弁護士、鈴木愛子弁護士、野田隼人弁護士、三輪記子弁護士。
第3回(2026年6月11日)は、鈴木愛子弁護士がメインスピーカーとして「こども性暴力防止法がもたらす「人手不足の加速」とその構造的リスク」とのタイトルで、人材確保に関する懸念を取り上げています。内容は放課後児童クラブ限定ではなくて法制度全般にわたるものですが、とりわけ放課後児童クラブで働く人、運営する人そして管理する行政パーソンには必見必聴の内容です。https://www.youtube.com/watch?v=ZVafKTKe204 を、ぜひクリックしましょう。
第2回(2026年5月30日)が、こども性暴力防止法の「Q&A」を読み解くとして、【弁護士が読む❗️こども性暴力防止法Q &A】のタイトルで配信されています。メインスピーカーは三輪記子弁護士、聞き手は嶋﨑量弁護士です。
https://www.youtube.com/watch?v=XtTCNTDBLLo
第1回(2026年5月16日)は「こども性暴力防止法を考える」です。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s
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※こども性暴力防止法がもたらす、構造上の課題問題について、法律家がとても分かりやすく解説する記事が「アエラキッズプラス(AERAKidsPlus)に掲載されました! 解説はもちろん、鈴木愛子弁護士です。こどもを性暴力から守るための重要な法制度だからこそ、実は逆説的にこどもや運営事業者が追い込まれてしまう可能性を分かりやすく説明されています。ぜひぜひ、記事を読んでください! 実に分かりやすいですよ!
「本当に性犯罪を防げる?」学校や学童保育、放課後子供教室も対象になる「日本版DBS」に、現場から懸念の声…【弁護士が解説】 | AERA with Kids+
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放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf
(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf
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わたくし萩原が寄稿した記事が 「Wedge ONLINE(ウェッジオンライン)」で2026年5月29日に公開されました。「“産業化”の大波に飲み込まれる学童保育…企業はどう収益を上げているのか?事業構造から見える放課後育成の実情」という記事です。ヤフーニュースにも配信されています。URLは以下の通りです。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40665
2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事も公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。こちらもぜひ読んでいただけるとうれしいです。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)
