法律家によるこども性暴力防止法の解説プロジェクトがスタート。放課後児童クラブ(学童保育所)関係者は必見です。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
こども性暴力防止法が2026年(つまり今年)12月25日に施行されます。様々な施設において、こどもを性暴力から防ぐという重要な目的を達成するための仕組みを整えるために制定された法律ですが、「とても難しい」法律です。これまでも当運営支援ブログで取り上げてきましたが、一筋縄ではいかない法律であり、制度であることは間違いないところです。この法律について弁護士が解説する試みが始まり、このほど最初の動画がYouTubeにアップロードされました。放課後児童クラブの世界に関わる人たちには、ぜひとも動画の視聴を勧めます。勧めますどころか必見と断言します。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<お勧めです>
動画は「こどもを守る弁護士チャンネル」から発信されています。第1回目は2026年5月16日にライブ配信された「こども性暴力防止法を考える」というタイトルの動画です。このたびの動画において、こども性暴力防止法の概要や懸念点などを解説されているのは5人の弁護士先生です。内容はぜひとも動画(https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s)をご確認していただくとして、労働法制からの観点や刑事政策からの観点といった、知りたくてもなかなか学べない分野について法律家からの見解を学べることができる、すぐれて貴重な内容になっています。
とりわけ放課後児童クラブについては鈴木愛子弁護士が登場して児童クラブとこの法律との関わりについて説明されています。これ、児童クラブ世界には、実にありがたいことです。この法律は学校や保育所など法律が求める制度の構築を義務として実施しなければならない分野と、この法律が求める制度を実施するかどうかは任意である分野に分かれていて、児童クラブは任意の分野であることは、当ブログでも何度もお伝えしてきました。「認定事業者」になることで、この法律が求める種々の制度を実施することが求められるようになるということです。
種々の制度とは、こどもへの性暴力を抑止するための様々な措置で、例えば「安全確保措置」として「早期把握、相談、調査、保護・支援、研修」といったものがあります。カギカッコにくくると「ほうほう、そういうことね」と簡単に受け止めてしまいがちですが、それら1つ1つが膨大な準備と実施体制が求められるものです。さらに、安全確保措置として「犯罪事実確認」というものがあります。これはとりわけ難解です。動画の中でも触れられているのでぜひ視聴してください。つまり、この法律を受け入れるとした場合、事業者が「何が起こったのか」を調べなければならないということです。人が人の行為において「いったい何がどうしたのか」を調べて確かめることがどれだけ難しいことなのかということです。まして、人権やプライバシーに高度にかかわる性暴力の分野です。そして情報管理措置も綿密に制度設計しないとなりません。
動画に登場されている弁護士の先生方も口々に難しいと話す法律であり制度です。わたくし萩原は法律家ではありませんが、法律のド素人であっても「難しいよほんとにこれは」と顔がひきつるほどです。なんといっても、これまでこの国とこの社会が構築してきた法体系や社会の運用の制度とは全く別にポッと湧いて出た世界観を、学校や塾や児童クラブという、多くのこどもたちが身を置く施設や業界にあてはめていくということです。1つの宇宙にまた新たな宇宙が誕生したというイメージです。
なおこの動画を視聴する前に、できれば、こども家庭庁が公表している各種資料(https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou)を入手して一読されることをお勧めします。また、こども性暴力防止法について詳細に情報発信をしている行政書士で「一般社団法人こども性暴力防止ネットワーク」(トップページ - 一般社団法人 こども性暴力防止ネットワーク)代表の戸田大介氏の発信も必見です。動画と合わせてどんどん内容を吸収していきましょう。
<児童クラブはまだ頼れる先がある>
先にも記したようにこの法律は義務として受け入れることになる学校や保育所、放課後等デイサービスという分野と、任意で受け入れるかどうかを選べる児童クラブや学習塾、スポーツクラブなど、2つの分野に分かれています。その中で児童クラブはわたくし萩原が思うに不思議というか異質な立ち位置であって、児童福祉法に規定されている放課後児童健全育成事業という公の事業でありながらも有資格者の職員配置が国レベルでは義務となっていないことが影響したのでしょうか、法律を受け入れるかどうかは任意となっています。「児童健全育成事業」を行う児童館は義務となっているのと対照的ですね。児童館は有資格者の配置が国レベルにおいて義務ですが、児童クラブの場合は国レベルでは義務ではなくて市区町村レベルで定める条例や要綱においてその地域内において義務になっている場合がある、ということが影響したのでしょうか。そのあたり、今後の研究で解明していただきたいですね。
児童福祉や教育の世界ではなかなか日の当たらない世界である児童クラブ業界ですが、こと、このこども性暴力防止法については鈴木愛子弁護士自身が「放課後児童支援員」資格を有していて、児童クラブの運営にかかわった経験をお持ちでいらっしゃる。つまり弁護士という法律家でありながら、児童クラブの制度や運営の実態において精通している専門家であることが、児童クラブの世界においてはある意味でアドバンテージになっているとわたくしはありがたく感じています。今回の動画でも、特定の業種において詳細な解説をされているのは鈴木弁護士による児童クラブだけです。学校や保育所、児童館、学習塾などの各分野についてこの法律に関わる局面において特化した説明ができる法律家がどれだけいるかを考えると、実にありがたいことです。児童クラブの世界は大いにこの奇跡を活用して、こどもや職員にとって不利益や不便な点が出ないように、じっくりと鈴木弁護士から学ぶことを積極的に選択するべきです。
わたくしは児童クラブにおいてこの法律が円滑に運用できるとは考えていないのですが、それでも児童クラブに精通した法律家がいる、ということの強みを感じます。それを思うと、義務としてこの法律を受け入れる放課後等デイサービスの世界は、児童クラブ同様に職員確保の困難に苦しんでいること、事業規模が小さな事業者が多いこと、児童クラブよりもはるかに職員とこども(18歳に達しない利用者)が閉鎖的な空間で過ごす機会があることを思うと、児童クラブ以上にこの法律による影響を大いに受けるとわたくしは心配していますが、放課後等デイサービスの運営の実態にも知悉している法律家の先生がどれだけおられるかを思うと、とても心配になっています。
<まずは登場する弁護士先生ごとに視聴していこう>
今回配信された動画は約1時間15分です。先に申し上げますが、多少はこの法律について興味関心を持っているわたくしでも、一度視聴しただけではとても法律家の示す論点や観点をすくいあげきれません。これから何度も繰り返し視聴するでしょう。
そうです。何度も何度も視聴していくんだ、と思えば、「一度見て全部理解しなければ!」という強迫観念的なものから解放されませんか。気楽に何度も視聴しましょう。
ありがたいことに、今回の動画では5名の弁護士先生がそれぞれの問題意識や専門分野を背景にしてこの法律について説明されたり紹介されたりしています。ですから、特に気になる分野を取り上げている弁護士先生の登場シーンから選んで視聴することでまったく問題ないでしょう。
もちろん「最終的に全編を視聴するべきです」というのは大前提として、児童クラブを運営したり児童クラブに就業したりしている人は、制度の概要を説明している冒頭の飛田桂弁護士のパートと、鈴木弁護士のパートを真っ先に視聴して、ほかのパートは折を見て視聴していくことではどうでしょう。こどもを児童クラブに通わせている人も、ぜひ見ていただきたいとわたくしはお願いします。
児童クラブの運営に関わっている人は、労働問題が専門の嶋崎量弁護士のパートは必見です。この法律は、これまで整えられてきた労働法制との整合性で頭を抱える場面が出てきそうな可能性がを秘めています。わたくし萩原も社会保険労務士として非常に興味関心が強い分野ですが、なかなか法律家の見解や意見をお伺いできる機会は得難いので、とても勉強になります。
この法律の最も難解な部分である、児童対象性暴力等を把握するための措置や児童対象性暴力等が疑われる場合等に講ずべき措置について、事実をどう把握するのかの難しさについては、三輪記子弁護士が解説されています。
<法律的なものの考え方を知るために>
動画に登場される先生方の意向とは異なるでしょうが、この法律含めてこれまでの生活局面において法律や刑罰について考えた、あるいは触れた経験がない人ー実際、そのような方が圧倒的多数でしょうーには、野田隼人弁護士のパートから先に視聴するのが良いのではないかと、わたくしは考えます。
児童クラブの世界に長く関わってきてわたくしに実感として感じられることは、憲法や法律で定められている、人間の守られるべき権利が、児童クラブの世界の現場においてはともすれば「こどもに関することが絶対的に優越する」という無意識の感覚が覆いかぶさった結果、人間としての権利が揺るがされてしまっているということがあります。本来であればあらゆる人の人権は絶対的に尊重され守られねばならないのですが、「こどもを守ることこそ最優先」というこどもを守り支えたいという純粋な意識の副作用として、「こどもを守れない、守らなかった人には人権など存在しない」的な考え方に傾きがちな面が見え隠れしているということです。
具体的には、「事実として確認してはいないけれど、こどもに対してとても問題ある行為をしたと思われる職員」に対する忌避意識が強く、結果として排除の論理が働いて、事実かどうか確認されていないのに「疑いがある」だけで職場から追い出す、解雇するということが、児童クラブの世界ではあっても不思議ではないということです。もちろん事実として確かに問題行為があったとしても、それが犯罪を構成するのかどうかーそんなことは裁判所しか判断しえないことなのにーわからないのに法律家でもない人たちが「そんな人はいらない」と、何ら法的な手続きを経ないで「今すぐクビです」と言い渡すことは本来はできないはずですが、そういうことが通用しがちな世界である、ということです。
この法律で最も注目されている、いわゆる日本版DBS制度の部分にしても、野田先生は、過去に特定の性犯罪の前科があるとされている人でも種々の事情で罰金刑ならいいやと「飲み込んで」しまった方が事実上の就業制限を受けるーこれは重大な基本的人権の制約でもあるーことの可能性に留意するべきではないかという趣旨のことを話されています。
人、とりわけ犯罪に関係することになった場合の人の権利や社会の向き合い方についてとても多くの情報を示されているパートですから、ともすれば「白と黒」しか考え方として持ちえない児童福祉の現場において、慎重な考え方が必要だということを知るためにも、野田先生のパートを先に視聴してからほかの先生方のパートを視聴することが、この難解な法律の入り口に立つために少し効果的かもしれないと、わたくしは感じた次第です。
わたくし萩原の勝手な根拠なき展望ですが、児童クラブすなわち放課後児童健全育成事業は、公の事業であり国や自治体から公金が補助金として交付されることが多いこと、小学1年生の2人に1人が利用する重要な社会インフラであること、国レベルでは義務ではないとしても自治体レベルで配置基準が定められていることなどをもって、建て付け上、こども性暴力防止法そのものでは認定事業者として任意による制度の受入であっても、実務上は「認定事業者でなければ放課後児童健全育成事業の受託者や指定管理者にはなれない」という自治体レベルの制限がいずれ課せられるのでは、とみています。個々の自治体でもちろん異なるでしょうが、国が推し進めている制度を自治体がいつまでも無視ということはなかなかいかないでしょう。考えてみてください、児童クラブの有資格者配置にしても国の交付金は配置の基準に応じて交付額の単価に著しい差をつけていますね。もちろん有資格者を配置している場合に高い補助金が交付される仕組みでまさに政策的誘導といえるでしょう。
こども性暴力防止法にしても、認定事業者であるかどうかで、交付金の金額において国が差をつける可能性もあるとわたくしは考えています。運営を安定させるための交付金を多く得るためには、結局のところ、児童クラブ運営事業者はいずれ認定事業者になる道を選択するほかないというのが、わたくしの予想です。
そのときになって慌てないよう、いまのうちから着実に認定事業者を目指す準備をしておくべきです。今回紹介した動画はそのスタートのスタートにあるものと心得て、児童クラブ関係者は視聴しておくべきであるというのが、運営支援の提言です。
なお「こどもを守る弁護士チャンネル」ですが5月30日に第2回目の配信を予定しているとのことです。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
☆New!
こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネルが開設されました。このほど、第1回の動画が公開されました。放課後児童クラブの関係者さん、とりわけ運営や就業で関わっている方には必見です。児童クラブに運営者としても関わってこられた鈴木愛子先生ももちろん参加されています。チャンネル名は「こどもを守る弁護士チャンネル」です。2026年5月16日に「こども性暴力防止法を考える」が配信されています。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s
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放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf
(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf
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「Wedge ONLINE(ウェッジオンライン)」にて2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事が公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。わたくし萩原が編集部の依頼に応じて寄稿しました。ぜひご高覧ください。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)
