日本版DBS制度、放課後児童クラブ(学童保育所)は対応準備を進めていますか? 「こども性暴力防止法に関するQ&A」は必読!
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
こども性暴力防止法による、いわゆる「日本版DBS制度」について、国は相次いで資料を公開しています。とても難しい制度です。今後、不定期に「こども性暴力防止法に関するQ&A」の内容を紹介していきますが、このQ&Aは最低限、直ちに、クラブ運営事業者は必ず目を通してください。こども家庭庁のホームページからダウンロードできます。
(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/f490c24f/20260422_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_49.pdf)
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<先に、児童クラブの世界へ警告します>
日本版DBS制度は、とても難しい制度です。わたくし萩原は断言しますが、放課後児童クラブの運営事業者「だけ」で対応することは到底無理な制度です。この制度の特徴は、こどもや職員の人権、権利関係に大いに踏み込んでいる制度です。とりわけ、こどもと接する現場で働いている者に関する労働者の権利について、これまでわが国の司法制度が積み重ねてきた「判断基準」に衝突する可能性を含んでいるところは、非常に難解で厄介な部分があります。よって、児童クラブに関して申しますが、この制度に取り組むにあたっては、法律的な思考、法令条文の「読み方」を知悉しており、かつ、放課後児童クラブの実態に詳しい弁護士、社会保険労務士、行政書士に相談、依頼して解説や対応を代行してください。それには費用がかかるでしょうが、当然です。外部専門家が無料(昔はロハ、といいましたね。「只」を分解するとロハですから。)で話を聞いて助言、対応対応できる制度ではありません。
しかしだからといって、児童クラブ運営事業者が外部専門家に丸投げでいいはずもありません。「こども性暴力防止法に関するQ&A」こそ、クラブ運営事業者は必ず目を通してください。繰り返しますが、このQ&Aは最低限、目を通してください。児童クラブ業界、とりわけ保護者運営由来の伝統的な児童クラブ業界は何でも「自前で」処理するか、その正反対の「丸投げ」があまりにも目立つ世界ですが、法律的な素養が無い、あえて言えば「素人」の保護者や児童クラブ職員経験者が対応できる制度では、とてもありません。
さらに繰り返しますが、「無料」で対応してもらおうという甘っちょろい制度ではありません。児童クラブの世界は、外部の方に依頼するのに「わたしたち学童の世界はこどものために頑張ってやっている、崇高な目的のために頑張っている。だから外部の人たちはそんなわたしたちにお金を要求するなんてありえない。そもそも払える予算なんて準備していませんから」という意識がこびりついています。そんな姿勢はダメです。しっかり外部専門家にお金を払って、一緒に対応に取り組んでください。もし何らかの機会で無料でこの制度について学べる機会、講演や研究会、勉強会があるなら、積極的に参加してください。そんな機会を逃したら大損こきますよ。
<きょうは、これ>
Q&Aにしても、とても膨大です。言い訳しますが萩原もまだまだしっかり読み込めていません。いちおう専門家を自認しているわたくしでもこの体たらくです。
Q&Aは101ページ、さらに索引があります。その索引で、児童クラブに関わるものや関連がありそうなものがどれだけあるか先にお示しします。
放課後子供教室 ………………………………. 8, 25, 66
放課後児童クラブ.3, 9, 10, 15, 23, 25, 30, 66, 71,76, 94
放課後児童健全育成事業3, 10, 11, 25, 29, 30, 31,66, 76, 78
児童館……………………………….2, 9, 15, 23, 71, 94
共同認定……..3, 10, 11, 30, 31, 66, 75, 76, 77, 94
いとま特例… 5, 12, 13, 42, 43, 44, 45, 85, 86, 90,94
おそれ……………………………..5, 15, 48, 50, 72, 95
指定管理…………………………. 7, 30, 31, 60, 62, 77
就業規則 ……………………………………….14, 49, 91
スポットワーク………………………………13, 69, 87
内定取消し …………………………………5, 48, 49, 96
不適切な行為 . 2, 8, 19, 20, 21, 39, 48, 60, 63, 68,82
今回は、運営支援が最も懸念している点をピックアップします。
<児童クラブ運営事業者は、認定を受ける必要はある?>
Q&Aの78ページ、「【応用編】 4.認定等」に、次のような質問が掲載されています。
4-14 地方公共団体から民間事業者に放課後児童健全育成事業を委託している場合、認定事業者等のみを委託先として認めるといった要件を課す必要がありますか。
問いに対する答えは以下の通り。
(答) こども性暴力防止法上は、そのようなことを求めているものではありませんが、地方公共団体等が、委託・補助金支給等の要件に、認定事業者等であることを求めることを妨げるものではありません。
個別の契約要件ですので、実施主体でご判断いただくこととなります。
さあ、この文章をどう考えればいいのでしょうか。おさらいですが、放課後児童健全育成事業は任意で、つまり日本版DBS制度を受け入れるかどうかは事業者が考えて決めれば良いのです。「そんなめんどくさい手続きがある制度は、とてもじゃないけど対応できない。そもそも、専従で事務処理をする職員だって1人も雇っていない。行政書士や弁護士に手続きを頼むお金もない。うちの学童の先生たちはこどもからも保護者からもとても信頼されているから、きっと性暴力なんて起きないから大丈夫」として、認定事業者にならないで済ます選択も、当然可能です。
しかも、このこども性暴力防止法は、市区町村に対して、児童クラブの運営を委ねる際に認定事業者になることを必ず求めている仕組みにはなっていません。だから「認定事業者にならないでおこう。もしかしたら将来的には対応するかもしれないけれど、今のところは様子見でいいや」という判断も、可能です。
<事業運営の鉄則を踏まえよ>
児童クラブ運営は、まごうことなき事業運営です。こどもたちに育成支援を提供する児童福祉サービス事業ですし、それをもって保護者の社会経済活動を可能とする社会インフラ機能を備えた社会福祉事業です。その事業運営は、児童クラブ職員を雇用し、給与を支払って職員が生活することを可能とさせています。児童クラブを運営することは、こどもと保護者、そして職員の日々の生活を支えている事業運営そのものです。
事業を営む以上、「事業を破綻させないこと」が当然すぎる原理原則であって、その原則を可能とする鉄則は「事業が継続できなくなるようなリスクを極限まで回避、低下させること」です。わずかでも事業破綻のリスクが上昇する可能性がある事象については、事業運営者は手を打っておく、備えておくことが必要なのは、きっと理解していただけるでしょう。まして児童クラブの場合、「児童クラブが運営できなくなる」ことがもたらす重大な事態については、児童クラブの運営に関わる人、児童クラブで働く人にとっては、もちろん理解が及ぶでしょう。
であるならば、ですよ。先のQ&Aに書いてある内容を、どう判断しますか。ここがリスク判断の分かれ道です。「地方公共団体等が、委託・補助金支給等の要件に、認定事業者等であることを求めることを妨げるものではありません。」という書きぶりは何を意味するのか。行政と「仕事で」お付き合いを長年していると、このような書きぶりが示す内容について、多くの人は同じような結論に達するだろうと、わたくし萩原は申し上げます。それは「法律上、そうしなさいとは書いていないのは書けないからそういうだけであって、認定事業者等であることを求めることを妨げるものではないということは、認定事業者等になることをそれとなく求めるのが基本路線だよ」という解釈が、たどり着く結論であろうというものです。
もとより、認定事業者になれれば、このQ&Aに示していることはクリアできます。問題は、「うちはきっと大丈夫だから。そもそも認定事業者になるための時間的、予算的なコストが用意できないからね」という児童クラブ事業者です。認定事業者になることを先送りする、あるいは選択しないとした場合、「仮に」自治体が、「放課後児童健全育成事業の運営を任せるのは、やっぱり日本版DBS制度を受け入れている事業者であるべきですね。だってこどもを性暴力から守るために国が推し進めている制度ですから」となった場合、認定事業者になっていない、あるいはなろうという準備すらしていない事業者は、そこでゲームオーバーです。
この制度、「あ、そうなの、では取り掛かろうか」としてすぐに対応できるものではありません。よしんば、表面上だけ、形式上だけ整えて申請したとしても、研修の実施状況や安全確保の措置の内容などを審査されたらすぐに見破られます。数か月で申請OK! となるような、甘っちょろい制度ではありません。
児童クラブは多くの場合、国からの交付金を受け取って事業運営をしています。交付金つまり補助金を交付する、交付しないを決めるのは市区町村等の地方公共団体です。自治体ですね。交付されねばただちに事業運営に行き詰まることが明白な児童クラブ事業運営ですから、少しでも「補助金の交付に影響が出そうなことは、対処しておく」という意識を明確に持ち、実際に対応しておくことが、児童クラブ事業運営に関わる立場の者が当然になすべき判断であると、わたくしは申し上げます。それにね、あえて嫌味な言い方をしますが、「お上」というのはね、つい1時間前まで言っていたことをさらっと手のひらを返したように「あ、それはダメですね」と言い渡してくる組織ですよ。「認定事業者にならないでもウチの役所的には大丈夫ですよ」と言っていたのに「ああ、やっぱり認定事業者にならないと、委託業者になれませんね。指定管理者の選定にもエントリーできませんね」と、児童クラブの運営事業者が役所側に言われてしまう未来図が、わたくしの脳裏に浮かんでいます。
<危機感をもってほしい>
長々と書きましたが、それだけ危機感を覚えているということです。「転ばぬ先の杖」です。そもそも、(この制度にいろいろ不備があることは訴え続けたいのですが)こどもを卑劣な性暴力から守るためにこの国が決めたのが、こども性暴力防止法であって、日本版DBS制度です。慎重に、重大に、捉えて対応することが必須です。児童クラブの世界にありがちな「だってわたしたち、こどものために一生懸命やっているんですよ。だから周りが助けてくれたっていいじゃないですか」という甘えの構造は一切通用しません。国が本気でガッチリと決めた法制度は、そんな児童クラブ界隈にありがちな「甘え」「うぬぼれ」などは、塵やほこりほどにも存在意義を認めません。
児童クラブ業界はすぐに行動を起こしましょう。この先もしっかりと補助金を受け取って運営をしたいのであれば、認定事業者になれそうなのが令和9年度の途中にずれこんでもいいので、いまから取り組みを始めましょう。
なお、外部の専門家についてわたくしの独断と偏見で申し上げますが、単に弁護士であるとか社労士である、行政書士であるということだけで安易に依頼先を決めるのはおすすめしません。こども性暴力防止法を熱心に研究している外部専門家であることは最低限必要な選択の要素ですが、それだけで大丈夫、とはならないのが、こと児童クラブの世界です。児童クラブの事業運営はやはり他の業種業態とは違います。そもそも経営者、経営責任が明確となっていないことがある保護者運営系児童クラブの事業形態は、同じような事業規模である放課後等デイサービス事業とも異なります。運営委員会委員長は会議の時だけ出てきて威張っているとか、保護者会運営であるのに会議は月に1回、それも夜の1時間で終わって運営は職員に丸投げであるとか、保護者運営由来の非営利法人で法人格があっても理事や理事長が非常勤の保護者で事業運営責任など日々まったく意識しないで過ごしているとか、広域展開事業者で運営事業者そのものはしっかりした会社構造、組織構造を持っていながら運営は現地丸投げとか、実に「一般的にお役所が想像している事業運営」とはかけ離れている形態が普通に存在しているのが、この児童クラブの世界です。その実態をよく知らないで、「法律ではこうなっていますから」と、事業運営の実態とズレた研修や安全確保措置を規定されても、現実の児童クラブ運営とそぐわないことになります。「不適切な行為のおそれがある人は配置転換または自宅待機させる規定です」と言われても、児童クラブには配置転換先はないですし、使用者の命による自宅待機において支払う最低6割分の賃金についても資金的な余裕が無い事業者が多いですし、ただでさえ人手不足なので自宅待機とさせた人員の代替労働力の確保などとてもできない、という実態を知らない外部専門家では、かえってこの制度が事業運営の足かせとなる恐れがあります。児童クラブ側は、この制度を一緒に考えてくれる、児童クラブに対して真剣に向き合ってくれる外部専門家をぜひ選んでください。単に「予防法務に詳しい弁護士」「手続きを研究している行政書士」「就業規則が得意な社労士」には依頼、相談しないようにしましょう。せめて「では、児童クラブについて理解を深めていきますので、その点は私に教えてくださいね」と率直に言える外部専門家を選んでくださいね。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
☆
放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf
(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf
☆
「Wedge ONLINE(ウェッジオンライン)」にて2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事が公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。わたくし萩原が編集部の依頼に応じて寄稿しました。ぜひご高覧ください。
☆
「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
☆
(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)
