学童保育業界の進化発展に必要なことは「学童保育の常識は世間の非常識」を徹底的に追放すること。その4

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 学童保育の世界は、その重大な使命と任務に対する社会の評価と理解がまったく追い付いていません。そのため、学童保育で働く人たちの給料が安く、いつまでたっても人員不足であり人材不足であり、それがさらに質の向上を妨げる悪循環に陥っています。
 そんな学童保育業界でよく言われる戯言(ざれごと)が、「学童保育の常識は、世間の非常識」。なんとも自虐的ですが、実は全くその通り。だからこそ、「学童保育の常識」を徹底的に打破しなければなりません。今週の弊会ブログは、そんな「学童保育の常識」を徹底的に批判し、学童保育の進化発展を願うものとします。

 4日目の今回は、学童保育の運営について取り上げます。

 学童保育の世界では、「保護者が運営に関わること」がとりわけ重要視されています。「子どもを真ん中に、指導員と親が手を取り合って」というフレーズがあります。それは、学童保育所に保護者が関わることの重要性を示しています。実際、学童保育はもともと、子どもの安全安心な居場所を求める保護者の運動からスタートしました。保護者が学童保育をスタートした、というルーツが、現在においても「保護者(会)が運営している学童保育所」という形で色濃く残っています。

 学童保育所の運営に保護者が関わること。この学童保育の常識は、その大部分において、今の時代はもう、不適切であると私は考えます。

 私は、学童保育所で、「子どもがどのように過ごしているのか、放課後児童支援員等の職員は子どもにどうかかわっているのか」という、個々のクラブにおける育成支援の内容について、保護者が職員と連携し、情報を共有し、保護者と職員が一緒にクラブにおける育成支援の方向性について話し合うことは、今も、そしてこれからも重要だと考えています。保護者は子育ての当事者ですから、学童保育所で、子どもがどう過ごして育っていくのかについても、知ること、関わることは当然だという考えです。

 ですが、「学童保育所という児童福祉事業を運営すること」については、運営者でなければならないという考えは、もう捨てたほうがよいと考えています。保護者個人が、自分の意志で運営に加わりたいというのは、それは歓迎するべきことだと考えますし、そういう保護者が増えれば素晴らしいとは思いますが、単に「学童が好きだから」「子どもが好きだから」ではなく、事業を行う以上、そこで生じるすべての事に「責任を負えること」は絶対的に外せません。責任を負えないのであれば、運営に関わるべきではない、ということです。

 学童保育は、単に子どもを預かる場ではありません。育成支援という専門性の高い児童福祉事業です。子どもの権利を守りつつ多くの職員の雇用を守り、安定かつ継続的に実施されるべき「事業」すなわちビジネスです。企業経営と同じです。毎年度、しっかりとした事業目標を立て、事業を遂行し、事業年度の終わりには事業報告をしっかりとまとめ、将来にわたって事業が安定して継続できるように、組織を維持発展させる責任が、学童保育の運営者に課せられています。

 よって、学童保育の運営者は、企業経営者と同じく、学童保育を運営することを業とする者が中心となって携わるべきです。副業感覚で気軽に参加できるものではありません。先に述べたように、保護者が運営に参画すること自体を否定しませんが、善管注意義務を確実に守り、担務についてその責任を果たし、事業運営の責任を担うという覚悟が必要です。

 保護者(会)に運営を任せているのは、要は運営に係るコストを保護者のボランティア労働によって圧縮することにほかなりません。行政が、学童保育事業運営に必要なコストをしっかりと補助金という形で担保することが必要ですが、そのことに消極的なことが、保護者(会)運営や、あるいは地域運営委員会形式といった任意団体による学童保育運営が存在する大きな理由となっていると私は考えています。

 高度に専門化した育成支援を安定して継続的に実施するには、職員の採用から研修、教育を体系的に行う必要があります。それは、常に事業運営に取り組む運営者が適切に行うことが必要です。また、特に労働法関係で法令上課せられた義務をしっかりと遂行するためにも、非常勤のボランティア運営者では無理があります。

 もちろん、学童保育所の事業運営を組織運営、会社経営のプロにまかせっきりではだめなことは当然です。保護者が、学童保育所における子どもの育ちや、学童保育事業そのものについて、意見を表明し、運営に意見を反映できるような仕組みを同時に整備することが必要なのは、言うまでもありません。

 そしてもう1点。職員の雇用労働面を改善させるためには、運営事業者の規模拡大が必要です。事業規模が増えれば予算が増え、職員に配分できる予算も増えます。事業体としての安定化が望めるのです。スケールメリットを活かせるようになるのです。
 よって、今だに多い「1クラブで1法人」というスタイルは、もうやめましょう。学童保育所の運営者は、市町村などの垣根を越えて、大いに合併して大規模事業者となることが必要です。

 運営事業者が規模を拡大させれば、それだけ、行政に対する発言力や影響力も増します。また、前日に記載したような、例えば地域における調理配膳センターを設置して各クラブに昼食や、おやつを提供することも可能となるでしょう。放課後児童クラブ運営指針があるわけですから、どのクラブにおいてもその指針をベースにした育成支援を行えばよいので、1クラブ1法人に固執する理由はありません。事業規模を拡大し、予算規模を拡大し、職員の雇用と教育を安定化させて、質の高い育成支援を子どもたちに実施することが、最終的に子どもの最善の利益と職員の雇用の安定につながるのです。

 学童保育所を運営している組織、とりわけ非営利法人は、積極的に大規模化を進めるべきだと、私は考えます。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育所をめぐる構造的な問題について、その発信と問題解決に対する種々の提言を行っています。また、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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