学童保育所で働く人を悩ます低賃金構造。どうしたら解消できるのでしょう。その5「今週のまとめ」
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。
6月12日から15日まで、学童保育所(放課後児童クラブ)をめぐる低賃金構造を打開する提言を重ねてきました。それらをまとめます。
まずは、「収入が少ない上に、構造が固定化されている」問題を取り上げました。具体的には、国は学童保育所の運営費用についての補助に対して、補助金と保護者の負担を5割ずつとする方針を示しています。公共の児童福祉サービスとしての性質上、保護者負担の額を高めに設定できないため、この5割ずつの方針によって、収入の総額がどうしても頭打ちになってしまい、結果として低賃金にしないと事業の運営ができない状況になっているからです。
次いで、賃金設定に関する要素で重要な「外部(社会)からの評価」を考えると、学童保育所で働く人の仕事の専門性について社会が抱く印象には「誰でも働けるし、放課後児童支援員という資格はたやすく取得できるし、何より、子どもと遊んでいるか宿題をやらせるだけ。難しいスキルは無いはず」という大きな誤解があることで、社会全体として、学童保育所で働く人の賃金は安くてもしょうがない、そんなに高くする必要はない、という暗黙の了解が成り立っているため、国も行政も補助金の額をそれほど高く設定することがない、ということを説明しました。しかも、残念ながら、社会のそのような「誤解」を裏打ちするような、ひどい運営をしていたり低レベルの育成支援を行っている職員がまだまだ存在することも、この問題の解消の障害になっているのです。
そして、行政側の姿勢の問題として、学童保育所での勤務時間は午後からで十分であるという誤解による「就労時間が短くて済むような事業形態を容認していること」による収入減と、民営化する際によくみられる官製ワーキングプアが相次いでいる現象は「低賃金を防ぐ仕組みが取り入れられていないこと」から生じている、としました。その解消に、自治体は賃金条項を盛り込んだ公契約条例を早急に設定する必要があると訴えました。
また、運営側にも課題があることをお伝えしました。「そもそも十分な額の人件費を確保できていない」という実態があるのを承知の上で、現時点で可能な限りの運営上の工夫をすることが求められるということです。業務において優れた職員の給料を上げることで組織全体のモチベーション向上につなげること、すなわち「評価制度の導入」を提言しました。学童保育所において評価制度を導入することは、実はここの職員の仕事ぶり、すなわち育成支援(だけではなく、事務仕事も含まれますが)の質を評価判定することになり、それは同時に業務の質を向上に導くことになります。そのほかにも、変形労働時間制等や所定労働時間の各種設定によって、ワークライフバランスに対応できる雇用体系を整えることも重要です。
今週、ご紹介してきた上記の点以外にも、低賃金構造を解消するヒントは、たくさんあるでしょう。私は一番大事なことは、学童保育所の機能と役割、学童保育所で働く人の職務内容に対する正確な理解を社会に持っていただくことが何より大事だと考えています。そのためには、運営者も支援従事者も双方に、誠実に、偽りなく、ルールに則って、適切に業務を行うこと=実践によって社会からの高評価を積み重ねていくことが何より欠かせませんし、そのような実践を可能にするような高い質の人材を学童保育業界に確保するための「質の高い資格制度」が何より重要だと考えています。
少なくとも数年のうちに、国は放課後児童支援員の資格を国家資格とする道筋を示し、取得に際しても試験制度を取り入れたり指定養成機関の設置を急ぐなど、質の向上に急いで取り組むことが急務です。すぐの国家資格化は難しくとも試験導入は可能でしょうし、試験も難しいというのであれば、当面の間、資格の有効期間を5年間程度とし、再受講を義務付けることと、受講終了時にレポート提出を義務付け、内容によって再提出や再受講を課す、といったハードルを上げる仕組みが必要です。
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育所をめぐる低賃金や長時間労働などの構造的な問題について、その発信と問題解決に対する種々の提言を行っています。また、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。
子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。
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