学童保育所で働く人を悩ます低賃金構造。どうしたら解消できるのでしょう。その4「運営側の工夫」

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 前日(6月14日)の弊会ブログでは、学童保育所で働く人の就労時間が短いために賃金も育成支援の質も上がらない構造があるので、それを改善することと、官製ワーキングプアを防ぐために公契約条例の制定が必要であると訴えました。
 今回は、運営側の工夫で少しでも低賃金構造を緩和することができることを訴えます。

 運営側の工夫について記す前に、前提として、「そもそも十分な額の人件費を確保できていない」という実態があります。ですので、運営側がいくら工夫をこらそうとも、学童保育における低賃金構造そのものは解消しません。このことをすべて解消するには、得られる収入そのものが増えることが必要です。よって本日は、あくまでも、工夫による「分配の仕組みを変える」ことに限定した内容となります。

 分配の仕組みを変えるというのは、端的に言えば、「優秀な職員には給料を増やし、そうでない者には、それなりの給料となる」ということ、つまり、職員の評価に応じて給料を変えるということです。こうすることで、育成支援業務に秀でた職員には手厚い処遇ができます。

 いわゆる「評価制度」の導入ですが、おいそれとできるものではありません。もともと学童保育業界には「育成支援(保育)は評価になじまない」という考え方があります。定性的な業務内容を評価するとなれば、評価者の恣意的な判断が入り込む余地があり、正しく評価されないのでは、というところが懸念の主たるところでしょう。

 この点に関しては、運営側(企業、法人の運営者)が、評価の仕組むを含む組織運営について、職員から「公平であり、公正である」という信頼を勝ち得ることが重要です。評価の仕組みで重要なのは評価基準ですが、こと育成支援という専門性のある業務内容の評価基準を策定する際は、実際に従事する職員の意見や考え方を取り入れ、いわゆる労使双方でじっくりと話し合って策定することが大切でしょう。

 そのように丁寧に順序良く進めてもなお「信用できない」というのであれば、それはあえて突き放した言い方になりますが、「あなたを雇用している組織がそれほど信用できないなら、他の組織に移ることは自由ですよ」と言わざるを得ないことにもなります。

 尚、組織は仕事が「できる」人だけで成り立っているのではありませんし、職員全てがあらゆることに秀でていることもありません。ですから、評価基準を策定する際には、「できる人を基準にしての減点」ではなく、「ベースラインを定めてそこからプラス評価を積み上げていく加点」の仕組みを取り入れることが重要だと私は考えています。よほどのことがない限り、「あの人は仕事ができない」という人であっても、長所があるものです。ただ、多くの方面で仕事ができる人よりかは賃金は下がることになりますが、それは生活水準を脅かすほど低すぎるものであってはなりません。

 そして最大のポイントは「自己評価」を大幅に取り入れることです。育成支援において重要なサイクルは「子どものことをよく知る、把握する→見立てをする(育成支援プランを組み立てる)→実践する→実践を振り返り、改善点を抽出する」の繰り返しです。ここには、育成支援者自身による自己評価の仕組みが内在しています。自らの実践を振り返った上で改善点を次の実践に活かす、というところです。

 このことはつまり、本質的に育成支援の仕事は評価と親和性がある、ということなのです。ですから「学童保育の仕事は評価になじまない」という学童業界の方は、自己の育成支援における振り返りの重要性を理解していない、とも言えるでしょう。

 もちろん、自己評価だけでは当然、評価制度としては不十分です。自己を客観視できない者の自己評価は他者からの評価と乖離します。よって、管理職、上長による評価が加わりますが、評価を行う際は評価される者と面談しながら行うことが望ましいでしょう。

 このような仕組みの評価制度であれば、人件費の効率的な分配に道を開きます。

 人件費の効率的な分配には、その他にも「変形労働時間制」の導入も効果的でしょう。1ヵ月単位の変形労働時間制や、清算期間(実施期間)を1カ月以内とするフレックスタイム制は、働く側にとって、仕事を集中して取り組みたい時期(月間ルーティーン作業が多くなる時期)に労働時間を伸ばすことができ、雇用する側にも法律の範囲で認められた割増賃金を支払うことで人件費のある程度の縮減が可能です。

 また、ライフワークバランスに合わせた所定労働時間のバリエーションも効果的です。週40時間を筆頭に38時間や35時間、32時間、30時間といった所定労働時間を認めることで、その人のライフワークバランスに適した働き方を提供できることは、総合的に人件費の効率的な分配に寄与します。

 このように、効果はあくまで個々の人に限られはしますが、効率的な人件費の効率的な分配によって「ある人にとっての低賃金問題」は解消できるのです。潤沢な人件費が使えるようになる時代が来るまでは、ぜひ積極的に上記の策でなんとか職員のモチベーション向上に取り組んでいただきたいと願います。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育所をめぐる低賃金や長時間労働などの構造的な問題について、その発信と問題解決に対する種々の提言を行っています。また、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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