学童保育所で働く人を悩ます低賃金構造。どうしたら解消できるのでしょう。その3「行政側の問題」

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 前日(6月13日)の弊会ブログでは、学童保育所で行われる業務の専門性が社会でまだ理解されていないことと、その専門性を実践できていない残念な施設や従事者がいることで、学童保育所での賃金が高くても良いという理解に至っていないことを記しました。
 今回は、行政側の問題にも学童保育の低賃金構造があることを訴えます。

 その問題は大きく分けて2つあります。1つは「就労時間が短くて済むような事業形態を容認していること」、そしてもう1つは「低賃金を防ぐ仕組みが取り入れられていないこと」です。尚、本稿で取り上げる学童保育所は、国などの補助金を交付されている放課後児童クラブのことを指しています。

 まず1つ目の「就労時間が短くて済むような事業形態を容認していること」について解説します。それはすなわち、「小学校が開業している期間においては、午後からの学童保育所開所で十分ではないか」という理解が行政側にあることです。その結果、公設公営の学童保育所や、主に株式会社が運営を行っている公設民営の学童保育所において、職員の勤務形態が午後の時間帯(例えば午後1時から午後7時までの6時間勤務)に設定されている例が多いのです。

 当然、労働の時間が短ければ、得られる1日の収入は減ります。8時間や7時間30分の勤務と、6時間勤務では、最終的に月額で数万円の差が生じることになります。
 このことは、「学童保育所の仕事は、子どもが放課後に登所する時間帯で十分、済ませられる」という、育成支援の専門性の本質的な理解が欠けていることも原因でしょう。子どもを支える仕事は、子どもが登所する時間帯で完結するものでは、ありません。クラブに在籍している子どもたちのことを把握し、分析し、育成支援の方針を職員同士で討議して決めるための時間が必要なのですが、午後帯の勤務時間だけでは、育成支援を実際に行うための準備時間が限られてしまいます。
 それは必然的に、育成支援の質の高低に直結します。午後からの勤務時間設定や、1日6時間程度の労働時間設定では、「質の高い育成支援」は、望むべくもありません。公設公営や、運営を民間企業に任せている自治体は、予算をなるべく減らすために午後から勤務を容認していると想定されますが、結果として、その地域の子どもたちへの支援の質を下げてしまう方向に向いてしまっています。カネをケチって、子どもたちの豊かな時間を確保する姿勢を捨てていると言えるでしょう。また、そういう勤務形態を認めている学童保育の運営主体も、子どもの育成支援を重視していないことは明らかです。

 自治体が、質の高い学童保育所をそもそも求めるなら、職員の勤務時間を必要に応じた時間に設定することが当然、必要です。それがすなわち、職員の日々の所得を高めることになるのです。

 2点目は大変難しい問題です。学童保育所を運営する民間企業は自由な経済活動の上で学童保育所の運営を自治体から任されているので、雇用する者への賃金をどう設定しようが、その企業の自由です。しかしその結果、現在、多くの民営学童保育所や児童館では、従事する者がワーキングプア状態に追い込まれています。補助金収入から利益を上げるためには人件費を抑制することが最も効果的であり、それが働く人のワーキングプアを生んでいます。そしてその状況を確実に知りえる立場にいる行政側が放置しているということは、低賃金で学童保育所や児童館で働く人がいることを容認していることになります。

 当たり前ですが、低賃金では、良質な人材は得られません。質の高い人材どころか、そもそも職に就きたいと応募してくる人も減ります。現在の学童保育所における人材不足、人手不足は、まさにこの低賃金構造にあるのですが、行政側にはその構造を打破できる手段があります。それが「公契約条例」です。

 公契約とは、契約の一方の当事者が公の機関である契約です。学童保育所の公設民営はまさにその例になります。そして公契約条例の中でも、賃金に関する条項が盛り込まれているものは、公設民営のように公の施設などで従事する者への賃金について下限を設定し、ワーキングプアを防止するために有効な手立てとなるのです。公設民営の学童保育所で働く者の賃金について「この額以下ではダメですよ」という基準を示す条例なのですから、極めて有効な施策です。

 千葉県野田市をはじめ、徐々に賃金条項を盛り込んだ公契約条例を制定する自治体が増えています。そのような自治体においては、おおむね、学童保育所や子育て支援に関する評判も良いのではないでしょうか。野田市は以前から子育て支援に積極的な自治体として広く知られていました。私の出身の東京都多摩市もそうです。

 ありていに申せば、賃金条項付の公契約条例がある自治体は「官製ワーキングプア」防止に取り組んでいる自治体であり、当然ながら子育て支援にも良い結果として反映されている、といるでしょう。

 学童保育所や児童館で働く者の賃金を一定水準以上に設定することで賃金に関する不安を少しでも払拭する努力は公設民営の学童保育所等を設置している自治体の義務だと、私は考えています。ぜひ、すべての自治体に、賃金条項を盛り込んだ公契約条例を制定していただきたいと、強く希望します。
 (そのためにも、学童保育所で子どもの支援に従事する者や、運営組織を司る者が、求められる期待以上の質の高い業務を遂行することが大前提であり、言うまでもありません)

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育所をめぐる低賃金や長時間労働などの構造的な問題について、その発信と問題解決に対する種々の提言を行っています。また、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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