学童保育事業の質の向上には、より実践的な研修の継続的な実施が欠かせません
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。
学童保育の世界、とりわけ「育成支援」を行う学童保育所(=放課後児童クラブ)は、ご存じの通り、慢性的な人手不足であり、人材不足です。人手不足というのは、必要な職員数が不足していることであり、人材不足というのは、事業を過不足なく行うことができるだけの能力を備えた人物が不足している、という意味です。もう何十年もこの状態が続いていて構造的な課題となっています。
もちろん、この構造的な課題の解決には、学童保育所で働きたいという人がもっと増えなければならないのですが、そのためには低すぎる報酬の問題解決が必要です。これは1つの事業所で対応できる範囲を超越してしまうので抜本的な解決は難しいのですが、だからといって人手不足、人材不足の問題を放置することはできません。
現状、できる範囲において、少しでも学童保育の職場における、職員の職場環境の改善と離職の防止に役立つことをしなければなりません。
そのために私が必要と考えているのが、実践的な研修の実施により、職員のスキルアップを図ることです。それはすなわち、現在の職員人数態勢においてもより質の高い事業の実施が可能となること、だからです。
学童保育の業界に限らず、福祉の現場やその他の中小企業においても、新たに採用した職員や社員の研修には課題が多いでしょう。学童業界では、大手企業のように現場に配属されるまでに時間的な余裕をかけてじっくりと研修を施し、さらに配属されてからも頻繁に手厚く研修ができるわけではありません。どうしても、採用されてすぐに現場に配属され、戦力として1カウントされてしまう。配属されて以後は先任の職員から業務について指導を受ける(OJT)という形にはなりますが、現実には指導をところどころで受けながらも1人の職員として「業務を回す」役割を担わざるを得ないのです。数か月に1度、都道府県単位の研修や業界団体実施の「勉強会」(研修とは呼べません)に参加するとしても、見よう見まねで日々を重ねて気が付いたら1年を過ぎ、新たな職員が入職していくる、ということの繰り返しです。
学童保育の世界でも特に育成支援に係る業務は、子どもの主体的な成長を支える専門的な知識と技量が必要となる難しい仕事です。十分な研修が施せないがゆえに、新たに入職した職員が仕事に自信を持てずに悩み、結果として離職を選択してしまうということが、全国各地で毎年、繰り返されています。これでは、いつまでたっても、職員が定着せず、人手不足であり人材不足が解消しません。報酬の低さという絶対的に不利な条件がある中で、仕事に対する自信すら感じられないとなれば、離職を考える気持ちがさらに強くなるだけです。
では、どうしたらいいのでしょう。とても難しいのですが、なんとか、やれる範囲の事をやるしかありません。その上で、学童保育の世界に関わる人が連携して対応する動きを作るしかありません。
まず、個々の事業所については、以下の事に積極的に取り組むべきです。
「新人の配属場所を工夫する」。複数のクラブを運営している事業者であれば、業務に対する十分な知識と新人指導に関する経験を積んだ職員が配属されているクラブに、定期的に新人を配属する。少なくとも3年はそのクラブで優秀な先任職員と仕事を共にすることで、「独り立ち」できるまで育ててから他クラブに異動させる。なお、同時進行で「メンター制度」や「ブラザーシスター制度」を採り入れ、メンタル面のフォローを手厚くすることが必要なのは、言うまでもありません。
「新人のクラブに行う巡回指導を特に手厚くする」。1クラブや1施設の単独運営である、あるいは人事異動制度を採用していない場合は、業務に対する十分な知識と新人指導に関する経験を積んだ職員を指導役(マネジャーや、スーパーバイザー等)として、他の業務と並行させつつ、週に数日は子どもの来所時から閉所時まで、それこそつきっきりでOJTを行うのです。採用後数か月はOJTを極めて手厚く、それから徐々にOJTを減らしていく。この場合のOJTは文字通りのOJTで、学童保育業界によくある「新人が、同じクラブの先任職員の仕事ぶりを見て真似る」だけの似非OJTでは、ありません。
「他業種、特に接客を行う小売業者と連携し、短期間であっても研修として仕事をさせる」。これは広い意味ではOFF-JTに入るのでしょうが、対人支援職でありコミュニケーション労働である学童保育所での仕事に関して、幅広い知識と経験を得るために、ぜひとも行ってほしいものです。コンビニエンスストアの店員、ビジネスホテルのフロント業務など、いろいろな人に接する機会のある職業が好ましいでしょう。市役所や役場の窓口も良いかもしれませんね。
学童保育所での仕事は、対子ども、対保護者とのコミュニケーションが必要なのは当然として、実はそれ以上に「対同僚」とのコミュニケーション能力が問われます。育成支援は個人の技量や思考が発揮できる局面が多いため、いきおい個人での業務遂行になるものですが、それが突き進むと、本来はチームで行うクラブにおける育成支援が、個人の主観を優先させた育成支援に変化しがちだからです。対同僚とのコミュニケーションにおいて経験を積むためにも、外部の事業を体験することは有益だと、私は考えます。
また、学童保育の世界ではどうにも意識が薄い「リスクマネジメントとクライシスコントロール」について、その考え方がしっかりと根付いた業界で短期間、業務を経験することも重要でしょう。
こうした事業者単位での取り組みを行いつつ、地域の他業者と連携して「交換実習」「相互派遣」などで新人職員の知見を広げる取り組むも、ぜひ実施していただきたい。そのために是が非でも必要なのが、地域の垣根を超えた連携組織です。現在も、連絡協議会形式で業界団体が組織されている地域が多く、その協議会が研修を開催していることも多いですが、そこで行われるのは、全体講義とテーマごとの学習会であり、実践的な研修という目的では疑問が残ります。
公設公営や民設民営など、事業者のジャンルに関係なく、多くの職員が加入して構成する「職能団体」が、できれば都道府県単位、もしくはさらに広域な単位であっても組織されて、その団体が実践的な研修を企画して実施、提供するシステムが、これからの学童保育の世界に必要だと、私は考えます。その団体は行政と密接に連携し、研修の企画や提供においても協調する。もちろん、放課後児童支援員の認定研修を担うことも当然でしょう。
まずは大きくまとまって、その大きさをもって行政と交渉し相談していけばいいのです。職員の研修=学童保育事業の質の向上のためと団体の目的を限定化することで、余計な疑念を第三者に抱かせるおそれは減るでしょう。ぜひとも、直ちに、この取り組みを進めるべきだと、私は考えます。
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育所における質の向上、とりわけ職員の技量向上について種々の提案を行っています。また、学童保育所の運営について生じる大小さまざまな問題について、取り組み方に関する種々の具体的対応法の助言が可能です。個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。
子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。
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