こどもへの性的虐待が明るみに。放課後児童クラブ(学童保育所)は、こども性暴力防止法に対応できる?

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!

 石川県白山市にある、社会福祉法人が運営する放課後児童クラブでこどもへの虐待が起こっていたことが報道されました。どのような事案だったのかは各々、ニュースを検索してください。わたくし萩原は率直に「あまりにもひどい。どうしてこのようなひどい事案が起きたのか。なぜ早期に食い止められなかったのか」と強い憤りを覚えます。同時にこのような事案に運営主体も設置主体も効果的な対応をしていないように感じます。このことはいずれやってくる、こども性暴力防止法時代における児童クラブの運営姿勢を強く問うものであるとも、わたくしは感じます。悲観的な思いしかでてこないのです。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。) 

<報道では>
 この事案は石川の地元報道機関が2026年5月19日から20日にかけて多く報道しています。ヤフーニュースにも配信されています。ただ1つだけ述べておきたいのは、この事案が最初にインターネット上の報道で伝えられたのは週刊誌「女性自身」の報道です。その後に出た新聞社やテレビ局の報道が、運営主体の記者会見ベースであることと比較して、女性自身の報道は現地の関係者の肉声を多く伝える臨場感あふれるものです。元新聞記者としては女性自身の報道姿勢に拍手を送るとともに新聞社、テレビ局の事案の真実に肉薄した取材を強く期待します。はっきりいって報道機関としてはちょっと情けないぞ。
 報道の一部だけ引用して紹介します。ヤフーニュースに石川テレビが2026年5月20日19時9分に配信した「放課後児童クラブで30代職員が女児2人に性的虐待 保護者から運営団体に不信の声「隠蔽した人は解雇を」」の見出しの記事です。
「複数の保護者から相談を受けた白山市が去年9月から佛子園に対して監査を行ったところ児童に対する虐待行為5件を認定しました。このうち性的虐待は2件。2023年度から24年度にかけて白山市内の放課後児童クラブで現在30代の男性職員が高学年の女子児童2人に対し尻や下半身をさわるなどのわいせつな行為を行ったということです。問題の男性職員は去年8月に依願退職していますが、聞き取り調査に対して「故意ではなかった」と話したということです。」

 なお、他の報道では、40代の男性職員がこどもをトイレに閉じ込める虐待行為を行ったと報じられています。この職員は別の部署に配置転換されたと報じられています。

<あまりにも対応が不十分>
 わたくし萩原は、いまこの時代にこんな緩すぎる対応をしていた運営主体と設置主体に疑問だらけです。
「公金が投じられている公の事業である放課後児童健全育成事業で行われた重大な人権侵害の疑いが濃厚な事案であるのに、報道が出るまで一切公表されなかった」ことは最も理解できません。被害児童のプライバシーを報じろと求めているのではありません。市は監査をしたと報道されています。市が黙っていた理由が不可解です。

「依願退職で済む話なのか」は人によって見解の違いはあるでしょうが、わたくしであれば依願退職はさせないでしょう。報道では保護者側からとても悲惨な発信が相次いでいることがわかります。<「盗撮、おしりだけでなくて、下半身全部触られたとか」「服の中からという話」>(石川テレビ報道より)などと報じられています。これはこども性暴力防止法にも大いに関わる話ですが、事実認定を運営主体や設置主体が行ったが疑念を持たれた職員はずっと否定して依願退職になっています。保護者は、こどもから話を聞いてその内容を訴えたのでしょう。「下半身全部触られた」というこどもの訴えが本当にあったとしたなら、それは警察による捜査が必要です。運営主体はどうして捜査を求めなかったのか。最も女性自身の報道ではこれから刑事事件に発展する可能性がゼロではありません。確実に言えるのは、こども性暴力防止法によるいわゆる日本版DBS制度というのは、依願退職をした職員はまったく制度の外にある、ということです。あくまで特定の性犯罪に関して以前に刑事裁判で有罪判決を受けた者だけが対象であるということです。

「行政の対応は適切だったのか」もわたくしは考えてしまいます。確かに監査は行ったとあり、虐待を認定したと報道されています。「で、そこから先は?」です。運営主体をどう指導したのか、あるいは今後するのか。そもそも設置主体として行政は市民ましてこどもが深刻な人権侵害を受けたことに、再発防止への強い姿勢を打ち出すべきだとわたくしは考えるのですが、そういう姿勢は感じられません。市のホームページにも2026年5月21午前9時時点で、何ら言及はありません。市が監査して少なくとも2件の性的虐待を認定したと報じられています。それっきりなのでしょうか。

<こども性暴力防止法は児童クラブの世界において果たして機能するか>
 2026年12月25日に施行されるこども性暴力防止法において、放課後児童健全育成事業は任意の対応となります。同法が求める種々の要件を整えてそれが法の求める趣旨にかなっていると認定されてから、この法律が求めるこどもへの性暴力防止への種々の方策を実施することになります。
 その方策の中で最も難解とわたくしが考えているのが、「児童対象性暴力等を把握するための措置」であり、「児童対象性暴力等が疑われる場合等に講ずべき措置」であり、とりわけ法律家の世界からは「犯罪事実確認の結果等を踏まえて講ずべき措置」がとても難しいと指摘されているものです。

今回の石川の事案ですが、同僚職員から異変を訴える意見が相次いでいたと報道されています。報道記事の中には公然と問題があると思われる行為を、今回退職した職員がしていたとの記載すらあります。「こども性暴力防止法ガイドライン」では、「児童対象性暴力等については、そのおそれがある段階から重く受け止めて対応することが重要であり、様子見などをすることなく、組織内外のサポートを得て、あらかじめ設けた担当チームで対応することが有効と考えられること」(133ページ)とあります。
 また初動対応として次のようにガイドラインは示しています。
「① 発覚時の初期対応
② 一時的な接触回避策としての防止措置
③ 保護者への連絡・説明
④ 関係機関等との連携
といった措置を講じる必要がある。」(142ページ)
「児童対象性暴力等を認識した場合には、それが疑いの段階であっても重く受け止め、原則として即日かつ速やかに組織内に共有・対応する必要がある。」(143ページ)
「対象事業者は、教員性暴力等防止法において警察への通報が法定されていることや、児童福祉法等において所管行政庁等の行政機関への通告等が法定されていることも踏まえて、関係機関と適切に連携することが求められる。また、適切な聴き取り、トラブル防止、証拠の保全等の観点から、弁護士等の専門家に相談して対応することも有効である。」(145ページ)

 今回の石川県の事案は、こども性暴力防止法が求める種々の措置について、当該運営主体はガイドラインが示す水準に及んでいるでしょうか。わたくしにはとてもそうは感じられません。この運営主体は女性自身の記事によると石川県内で幅広く福祉事業を展開すると伝えられています。事業者の規模としては比較的大きな法人組織であるといえそうです。こども性暴力防止法が求める措置をしっかりと実施するには事業者の執行能力つまり職員数の多さやコスト負担に耐えられる予算規模が必要ですが、今回の当該運営主体はその点、問題はなさそうです。
 となると、運営主体(そして設置主体も)が、「こどもへの性暴力や、あらゆるこどもへの虐待は許さない」という強い意識、それは児童福祉に携わるものであれば当然に強く抱いてほしい倫理観に基づいた法令順守、コンプライアンスを、どれほど重要なものであるかの理解の程度によって、結局のところ、人権侵害を成そうとする悪意ある人物の手からこどもを守れないということになってしまいます。

 もとより児童クラブの世界は、零細規模の小さな小さな事業者が児童クラブを運営している場合が多いのですが、一方で、当ブログが広域展開事業者と呼ぶ、各地で数十、数百もの支援の単位を運営する大きな事業者も児童クラブの運営主体として当たり前に存在しています。保護者会や地域運営委員会のような小さな運営主体ではそもそも実務の能力的に、こども性暴力防止法が求める要件をクリアすることが至難です。人もカネもないのです。一方、広域展開事業者も運営数は多くても得られる予算のすべてを目の前の放課後児童健全育成事業に投じるのではなく、利益計上のために人件費を抑えることが通例なので慢性的な人員不足です。そんな状況では、こども性暴力防止法の認定事業者には(本部の人員が機能すれば)なれるとしても、実際の具体的な運用においては、はなはだ不安です。それはまさに今回の石川県の当該運営主体のように規模が大きい事業者でも、はたしてこども性暴力防止法による認定事業者となったとしても法が求める種々の措置を事業者が確実に実行、履行するかが、なんともいえないのです。

 「こどもを守りたいから放課後児童健全育成事業を営んでいる」という土台の意識がどれだけ根付いているか。そして「法令順守は何をさておき最も重要な行動と判断の原理原則である」という意識が根付いているか。この2点が強固に意識として根付いていない児童クラブ運営事業者は、こども性暴力防止法を守れないですし、認定事業者には時間とカネをかけたことでなれたとしても法が求める種々の措置を実際に履行しない、取ろうとしないということすら、わたくしには悪い予感として覚えるのです。

 それは広域展開事業者において、今でも当然に守られねばならない労働法規をまるでなかったかのように、予告期間なしの解雇や割増賃金の不支給、年次有給休暇行使に関する不当な制限、安易な雇止めなどが激しく横行している実態ー当然、表に出てきません。水面下で職員たちの泣き寝入りが続いていますーがあることを知っているわたくしには、こども性暴力防止法とて多くの労働法規と同じように「守っているふり」をしてやりすごされてしまうのではないかという危惧しか、持ちえないのです。
(もちろん、まっとうにあの難解なこども性暴力防止法に向き合おうとしている児童クラブ運営事業者だって多くあります。ありますが、この法律があろうとなかろうと、こどもへの性的虐待に対しては厳しい対応を当然と必要とするにもかかわらず、今回の当該運営主体のように効果的な対応をとれない児童クラブ運営主体が存在するのは、事実と言わざるを得ません。)

<国に望みたい>
 児童クラブがこども性暴力防止法に取り組むのはとても大変です。それは他の業態でもそうですが、とりわけ「保護者が運営に関わっている形態が多い」というのは他の保育所や認定こども園、放課後等デイサービスには見られない特徴です。また運営主体の規模も決して大きくない。それでいて、今や小学1年生の2人に1人が利用する社会インフラです。
 そのような児童クラブが円滑にこども性暴力防止法への対応ができるように、期間限定でいいので特別の運営サポートセンターを設置してほしいということです。もちろんそれは相談への対応だけであって、認定事業者になることの手助けをするということでは全くありません。そのサポートセンターは単に法的あるいは手続き上の問題点や課題点の相談に乗るだけではなくて、児童クラブの運営の実態を把握している者たちによる、具体的かつ実践的なフォローをする機関として設置してほしいと運営支援は望みます。「仏作って魂入れず」ではだめです。こどもを卑劣な性暴力から守るという仏は、そのための措置に確実に取り組んでいくという意識、認識を育てないと、児童クラブにとっては単にこども性暴力防止法への対応は負担にしかなりません。
 「委託や指定管理への影響を懸念して認定事業者になろうとしている、認定事業者になったけれど、とてもややこしいことばかりだからやってられないよ。おそれのある職員? すぐに首だよ、だって配置転換先なんて存在しないし自宅待機させても賃金なんて払えないから、自主的な退職という名のクビですよ」
 そんな児童クラブ運営主体が増える未来はやってきてほしくないのです。法律は作った、あとは皆さんしっかり法律に対応しましょうよ、というのは確かにその通りではあるのですが、実効的にこどもを守る体制を整えるために、ぜひとも国の姿勢を見せていただきたい。国が都道府県にサポートセンターを設けるよう予算措置をすればいいだけの話です。都道府県は市町村や運営主体からの相談を受けるための人員として弁護士や児童クラブに精通した者を委嘱して任に当たらせればいいじゃないですか。

 今回の石川県の事案もそうですが、現に児童クラブ職員から、とてつもないひどい、心身ともにズタズタに傷つけられる行為を受けた被害児童、被害を受けたこどもたちに、大人はたちはどうやって向き合おうというのですか。そういうこどもを生み出さないために、いろいろ問題はありながら始まろうとしている法律です。なんとか機能するように手当してほしいのですよ。
 そして運営主体や設置主体の運営担当者にわたくしは言いたい。あなたたち、被害を受けたこどもたちに、合わす顔を持っているのですか。それがどんなにつらいことなのか、実感しましたか。大人から性暴力を受けたこどもの訴えを聞いたら、依願退職で放逐して済ませるような対応ではとてもできないはずですよ、児童福祉の世界で生きていくのであれば。 

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
☆New!
 こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネルが開設されました。このほど、第1回の動画が公開されました。放課後児童クラブの関係者さん、とりわけ運営や就業で関わっている方には必見です。児童クラブに運営者としても関わってこられた鈴木愛子先生ももちろん参加されています。チャンネル名は「こどもを守る弁護士チャンネル」です。2026年5月16日に「こども性暴力防止法を考える」が配信されています。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s

 放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf

(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf

 「Wedge ONLINE(ウェッジオンライン)」にて2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事が公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。わたくし萩原が編集部の依頼に応じて寄稿しました。ぜひご高覧ください。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

投稿者プロフィール

萩原和也