<社労士ブログミニ・18>放課後児童クラブ(学童保育所)の「法教育」が大事であると、信念を強くしました。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする社労士「あい和社会保険労務士事務所」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
 今回のブログはミニ。それも社労士としての立場で発信しますので「社労士ブログ」となります。放課後児童クラブにこそ、「法教育」が必要であるとしみじみ実感しましたので、その気持ちをお伝えする内容です。
 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)

<法教育部会に参加しました!>
 法教育って何でしょう。法務省のホームページに説明がありますので引用します。「法教育とは、法律専門家ではない一般の人々が、法や司法制度、これらの基礎になっている価値を理解し、法的なものの考え方を身に付けるための教育です。
 平成28年6月の選挙権年齢の引下げや令和4年4月の成年年齢及び裁判員対象年齢の引下げ等に伴い、法教育の必要性は近年ますます高まっています。
 法務省では、法教育に関する様々な取組を推進しています。」(引用ここまで)

 難しそうですが、わたくし(萩原)の解釈では、「この世の中は、人間が決めたルールで動いていますよ。だからルールをつくること、まもることが大事だという理解を伝えることですよ」となります。

 法務省や、日本弁護士連合会のホームページには、法教育についていろいろな資料があります。とても参考になりますよ。

 さてこの法教育、当たり前ですが法律の専門家である方々、司法試験という文字通り最難関の試験に合格した弁護士や大学で法律を研究、教えている人たちがその担い手の中心になっています。ところが、社会保険労務士も、「はたらくこと、しごと、年金」という分野を中心に、法教育の部分で果たせる役割があることを、私は知りました。社会保険労務士は都道府県ごとの社労士会に登録することで社労士となれるのですが、わたくしも埼玉県の社会保険労務士会に登録したところ、「自主研究部会」という社労士の会員で構成される部会に法教育を専門としている部会があるのを知り、さっそく入会を申し込んだ次第です。

 10月の定例会が14日に開かれたので、もちろん参加しました。そこでの内容をここで記すことは控えますが、近く予定されている県立高校で行う、いわゆる「出前授業」について熱心な意見交換が行われていました。初めて参加した新参者の萩原でしたが、先輩社労士から意見を求められたこともあって、持ち前の出しゃばり精神で最後にはあれこれと意見を述べてしまうという、クソデカ態度の新人社労士になっておりました。それだけ、とても充実した時間だったということです。どれくらい充実していたかといえば、30分座り続けると涙が出る坐骨神経痛に襲われていますが2時間半の部会でも大丈夫だったということです。つまり、人は夢中になれることがあると、痛みや不安は忘れられるということですね。

 社労士は社会保険や労働問題の「制度や手続きの」専門家というイメージで語られることが多いようにわたくしには見受けられますし、実際その通りです。しかしながら、年金や労働災害保険にしろ、雇用保険にしろ、あるいは労働に関する事項にしろ、それらすべては法律に基づいて成り立つ制度です。法律を理解していなければとても対応ができない業務です。
 社労士が取り扱う分野は、弁護士がすべての分野に広がる法律の世界を対象としていることに比べると極めて限られた世界であること、また特に社労士の試験では「法的なものの考え方」ではない事項や暗記中心の成果が問われる色が濃い(それもこの数年で急激に「法的なものの考え方」が身についているかどうかを問う試験問題が増えているようにわたくしには感じられますが)ので、確かに「法律の専門家」と堂々と名乗れることはちょっと難しい。でも、これから社会に出ようとするこどもや学生、また社会に出てまもない方々を対象に、「働くこと」や「社会保険制度」を基盤として、制度を知り、ルールを知ることは、社労士ならではの法教育の出番だろうと、初参加した部会で改めてその認識を強くした次第です。

 これから部会活動にきっちり取り組んで、学校やそのほかの分野でも「社労士による法教育」の必要性と重要性を伝えていけるようになろうと、考えを新たにしました。インターネット検索で「社労士」「法教育」と打ち込んでも、ほとんど検索結果が出ないんですよね。東京都の社労士会が「学校教育事業への取り組み」というページで紹介している程度です。もっと堂々と、「はたらくこと、ひとをささえること」を知ってもらうための「社労士による法教育」を世間に認知されたらよいなあと願います。

<児童クラブこそ法教育が必要な場所>
 さてさて児童クラブで法教育? 何をバカなことをと思われる方が多いでしょう。でもわたくしは児童クラブを利用する保護者として、それから児童クラブを運営する立場として、クラブで過ごすこどもたちが、法教育だと意識することなく、自分たちで(特に遊びに関して)ルールを決めて遊びを楽しんだり、あそびを自分たちなりに変えたりする様子を見ていく中で、「それこそ法的なものの考え方の自然発生的な環境があるのではないか」と感じてきました。それを大事にする児童クラブ職員もまた同じように自然に法的なものの考え方を取り入れていると感じてきました。もっといえば、法的なものの考え方をあまり大事にしていない職員によるこどもたちへのかかわりは「雑」とも思ってきました。

 長らく自分なりの意識に留まっていたのですが、運営支援の仕事を始めてから、ご自身が児童クラブの保護者であり運営する立場にもいた名古屋の鈴木愛子弁護士が、児童クラブの法教育の重要さについてその考えを示しているのを知って、「ああ、わたしは間違っていなかった」と安心しました。なにせ鈴木弁護士は間違いなくこの国で児童クラブにもっとも詳しい法律家でしょうから(少なくとも私はそう思っていますし、おそらくそれは間違っていないでしょう)、法律家がそう考えているのを知って、よりわたくしも児童クラブでの法教育の重要性をもっと広めていきたいと思った次第です。

 児童クラブでこどもが遊ぶ、また集団で生活するときには、こどもたちなりに決まりごとを作ることが多いですね。鬼ごっこでもドッジボールでも、その児童クラブのこどもたちの構成を考えた、そのクラブ独特のルールや決まりごとを作るのです。小さい子には強いボールを投げないとか、まあそういう「ローカルルール」というものです。それを、こどもたちが話し合って決めることが、まさに「法的なものの考え方の実践」です。
 大事なのは、職員が「押し付ける」ことは最小限であること。もちろん、強制的にルールを覚えてもらうこともたくさんあるでしょう。殴らないとか物を盗まないということが典型的です。そういうものとは別に、「その場にいる人たちが話し合って、納得して、作り上げたルールや決まりごとを、みんなで大事にして守っていく。また、状況の変化に応じてみんなの合意を得ながらルールを変えていく」ことが、児童クラブで当たり前に行われていることを、もっと大人の社会は積極的に認知して評価をしていくべきだというのが、私の考えです。
 もちろんその考えには、「いつもあらゆることに関して職員が決めたルールでこどもたちが動いている(動かされている)」という状況のクラブではダメですよ、という意味が含まれています。職員だけの価値観に基づく一方的なルールの押し付けこそ児童クラブにおける育成支援の質の向上を妨害させる要因になるとわたくしは考えるからです。

 ここから当然、「児童クラブの職員にこそ、法的なものの考え方を身につけてほしいし、法的なものの考え方を大事に思う価値観を持ってほしい」という狙いに行きつきます。

 児童クラブでは「こどもたちが、法的なものの考え方を身につけていくことを大事にしたい」ということと、「児童クラブの職員が、法的なものの考え方を身につけてほしい」ということ、この2点を両輪として、児童クラブでの法教育を根付かせていくことができればと、わたくしは考えます。とりわけ職員への法教育は、こどもへの育成支援とは別に、自身の労働者(または経営の立場にある人も含めて)としての法的な思考、法的な知識を身につけることが、なかなか向上しない労働環境の改善にも役立つということでも、とても重要です。それこそ弁護士とともに社労士も大いに役に立てる分野でもあるでしょう。

 また、こどもの保護者である親を巻き込むことも大切でしょう。こどもが児童クラブでどうやって、どのように過ごしているかを保護者である親は知っておかねばなりませんし、親として、児童クラブでのこどもの育ちに関わって意見や希望を持ち、それを児童クラブ職員と共有したり調整したりして、親と職員とが共に児童クラブでのこどもの育ちに関わっていくこと、その全ての過程において、法的なものの考え方が基盤となるはずですから。

 児童クラブは小学生の半数が一時でも利用する重要な社会インフラです。児童クラブでこどもたちが過ごす時間は決して短くありません。その期間において、こどもたちが法的なものの考え方を着々と身につけていくことができれば、こどもたちが将来、社会にはばたくときに困ることも、何かあやしいことに容易に巻き込まれることも減っていくでしょう。学校での法教育が重視されつつあるのと歩調を合わせて、児童クラブでの法教育の実践もまた、ぜひこども家庭庁や法務省、日弁連など国や専門家が強力に推進していってほしいと、強く願うものです。わたくしもまた社労士になった者として自らの知見で児童クラブにおける法教育の重要性をアピールし、実践の機会があれば積極的に取り入れていきたいと考えるものです。

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

投稿者プロフィール

萩原和也