<特別版>放課後児童クラブ(学童保育所)は、こども性暴力防止法の「犯罪事実確認」に関する動画を見て!

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。(ぜひグーグルのAIで「萩原和也 放課後児童クラブ」と検索してみてください!)
 特別版の続編です。2026年12月25日施行の「こども性暴力防止法」に関して必要な戸籍の問題を、この法律に詳しい鈴木愛子弁護士が動画で解説しています。前回のブログ(2026年9月16日投稿)でこの動画を紹介しました。今回は放課後児童クラブ(学童保育所)の関係者に向けて、改めてこの動画と、動画が紹介している戸籍に関する留意点を取り上げます。何度も取り上げるのは、とても重要だからです。どうして重要なのか。それは、この戸籍に関する手続きが難解で、児童クラブ運営に重大な影響を及ぼすおそれがあるという懸念を、鈴木弁護士同様、わたくし萩原も心配しているからです。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<ここを見て!>※前回の再掲載ですが一部追記があります。
https://t.co/O32pL5TsUX
出生までの戸籍・識別符号収集の注意点と自治体に求める支援
(上記どちらも同じ動画のはず、です)
 こちらは、ユーチューブの「こどもを守る弁護士チャンネル」の特別版「出生までの戸籍・識別符号収集の注意点と自治体に求める支援」の動画URLです。児童クラブに関わる人、とりわけ働いている人、これから児童クラブで働こうかなと思っている人と、児童クラブの運営に関わっている人は自治体に勤める方も含めて必見です。なおこの動画を作成した鈴木愛子弁護士は、自ら放課後児童クラブの運営に関わっていて、こども性暴力防止法について詳しい法律家です。
 タイトルを見ただけでも難しい内容のはず、と想像する人が多いかもしれませんが、心配御無用。実はわたくし萩原も戸籍についてはチンプンカンプンだったのですが、この動画を見て、戸籍についての「分からない」が解消しました。とても分かりやすい、丁寧な解説です。
 時間が1時間ほどあります。一気に見られるといいのですが、忙しい児童クラブ関係者にはなかなか時間が取れないかも。その場合は例えば1日10分、でいいのです。1日10分なら1週間以内ですべて見られます。もう、とにかく、児童クラブに関わるすべての方に、見てほしい動画です。
 とても重要で内容が大変に濃い動画です。鈴木弁護士には僭越ながらわたくし萩原から申し上げますと2点、ぜひとも世間に理解していただきたいと訴えている内容をかいつまんで紹介しますと、「犯罪事実確認のためにこの法律の対象となっている施設で働く人が自分で行う戸籍情報の取得の手続きが非常に難しいので困ってしまう人が続出する」ということと、「自治体の窓口で戸籍を扱う担当の方は、いったい何が起こっているのか知らないまま、こども性暴力防止法の施行を迎えることになるかもしれない。戸籍担当の方に向けての手厚いフォローが緊急に必要」ということです。動画のURLのページには鈴木弁護士による概要説明が掲載されています。著作権の問題はありますが、多くの人に読んでいただきたいので公益性を鑑みてここに全文を転載いたします。この説明を読んで動画を見ていただくと、よりいっそう、問題点の理解と「深刻な事態になっている」という危機感を、理解しやすくなるでしょう。(以下、転載)
「こども性暴力防止法の犯罪事実確認のためには、労働者の方が、出生まで遡って戸籍を取得した上で、「こまもろうシステム」に戸籍情報を登録する必要があります。この戸籍の取得・システム登録について、「日本国籍の人はマイナンバーカードがあれば、原則、オンラインで完結する」と思われている方が多くいます。
 しかし、実際には、「平成原戸籍」の問題もあり、自治体窓口で戸籍を取得しなければならない方が多数派の上、戸籍の記載内容の読解や、システム上への登録は戸籍事務にもオンラインでの行政手続にも慣れていない方には、かなり難しく手間もかかる作業です。この難しい手続が、新規採用の方については、法施行後からすぐにはじまりますが、この戸籍の遡り取得とシステム登録の難しさに気づかれていない事業者も多い状況です。また、戸籍窓口にも、こども性暴力防止法により、これまでにない、識別符号とセットでの戸籍の遡り取得ニーズが生じることが浸透していないといった情報も聞こえてくる状況です。
 戸籍の遡り取得&システム登録がスムーズに進まないと、こども性暴力防止法施行後の、新規採用者の円滑な配置が困難になります。円滑な職員配置ができないことは、こども達にとっても不利益です。
 また、①スマホ、マイナンバーカード、出生まで遡っての戸籍情報が必要、②難しく手間もかかる手続、③現場で働くために必要で手続に応じないことが懲戒事由にもなり得る、といった条件下で、労働者が戸籍を遡り取得することや、システム登録について安心して相談できる体制が整わないと、悪質な代行業者や機微情報を狙ったフィッシング詐欺を招きかねないといった点も懸念されます。事業者を経由した戸籍の提出は望まないが、戸籍の遡り取得やオンラインでの行政手続に慣れていないだけの、教育保育現場で働く善良な労働者の方々が、プライバシー上の不安を抱かずにスムーズに犯罪事実確認の手続を行えるための支援は、こども達にとって必要な人材の業界離れを防ぐことにもつながると考えています(弁護士 鈴木 愛子)。」(転載ここまで)

<児童クラブで働く人と、運営に関わっている人に知っていただきたいこと>
 児童クラブは、こども性暴力防止法に関してその制度を受け入れるかどうか任意となっています。児童クラブを運営する事業者が「認定事業者」になることで、この法制度を受け入れることになります。そして認定事業者になった、あるいは認定事業者になることを目指している児童クラブ運営事業者の運営するクラブで働く人には、これから取り上げる「戸籍の取り扱い」を必ず行うことになります。これがとても一筋縄ではいかないので、鈴木弁護士が警鐘を鳴らしているのです。
 こども家庭庁が公表した「こまもろうシステム 従事者向けマニュアル(素案)」には「性犯罪前科の有無の確認の結果、性犯罪前科があると確認された場合や、期限までに確認ができない場合は、教育・保育などのこどもに接する業務に従事することができなくなります。また、異なる事業者に転職する場合や複数事業者に従事する場合等は、それぞれの事業者において性犯罪前科の確認をする必要があるほか、同一事業者に従事し続ける場合でも、5年ごとに再確認が必要となります。」(掲載は5ページ目)とあります。この、「期限までに確認ができない場合」がとても重要で、戸籍情報を集めるのに時間がかかったりするとか、戸籍情報を集めたけれど、こまもろうシステムにその情報を投入するやり方が分からなかったりということが、残念ながら大いにありえそうなほど、とても難しいのがこの戸籍情報の取り扱いなのです。
 しかも同じ5ページに「戸籍情報は、従事者本人がこども家庭庁に提出」と、サラッと書いてあります。そのたった1行がとてつもなく高いハードルであることは、このマニュアル素案からはとても感じられません。「もう、なんていけずなの!」と身もだえしてしまいそうです。
(なお時折SNSで、戸籍情報の扱いを業界団体や業者に任せれば楽なのに、という意見が散見されます。人間の究極の個人情報を安易に他人に任せることにつながります。いまこれだけトクリュウや特殊詐欺が横行している時代に究極のプライバシー情報を第三者に渡すことの恐ろしさを忘れてはなりません。仮に従事者の負担を軽減するという目的なら、国家資格を得ており職務上において戸籍の請求が可能で、戸籍に関して相当の知識を持っている専門家である弁護士、司法書士、行政書士の団体に国が新たなルールを策定した上で委託するのであれば安心でしょう。それ以外の全くの民間団体に任せるというのは、たとえ契約で個人情報厳守を課していたとしてもわたくし萩原は反対です。)

 以下、認定事業者になった児童クラブや、いずれ認定事業者になることを目指して準備をしている児童クラブで働こうと考えている人や、すでに働いている人、そしてそのような児童クラブの運営に携わっている人に対してお伝えします。以下の文章に出てくる「児童クラブ」というのは、認定事業者となった、あるいは認定事業者になることを目指している運営事業者が運営するクラブのことです。

 留意点その1:「自分(児童クラブで働こうと考えている人や、すでに働いている人)自身で、戸籍情報を集めて国に提出する。誰かが手伝ってくれることはありません」
 →なぜ戸籍情報を国に出すのか。それは「過去に、特定の性犯罪で有罪になったかどうか」を国が確認するためです。提出するには、国が開発した「こまもろうシステム」という仕組みを使います。
 留意点その2:「戸籍情報は、最初の1回については、自分が生まれてから現在までの、すべての戸籍の情報です。初回の手続きから5年後に第2回目の戸籍情報提出をしますが、それについては初回以降からの情報で済みます。初回に必要な、すべての戸籍情報を集めるのが、とても大変なのです」
 →とても大切なので後でしっかり触れます。
 留意点その3:「自分で入手しなければならない戸籍情報は、戸籍謄本または戸籍全部事項証明書だけではありません。結婚や転籍などをした場合は、除籍謄本または除籍全部事項証明書も必要です。そして戸籍が電算化つまり電子データとなっている(電算化されていると、横書きで証明書が出てくる)場合は『戸籍(除籍)電子証明書提供用識別符号』という16ケタの数字が必要です。この戸籍(除籍)電子証明書提供用識別符号を自治体の窓口で請求し忘れると、また窓口にて、この符号だけを請求することになってしまい、またお金がかかります。単に戸籍謄本だけ手にいれればOK、というものでは全然違うのです。」
 留意点その4:「戸籍に関する作業にはマイナンバーカードを使います。マイナンバーカードの取り扱いに慣れていないと、戸惑うことは必至です。とりわけ注意なのは、マイナンバーカードを発行したときに設定している『署名用パスワード(英数字 6~16 文字)』の確認が必要なこと。署名用パスワードの情報を手元に用意しなければなりません。忘れてしまったら地元の自治体で再確認が必要です」
 留意点その5:「こまもろうシステムで戸籍情報を国に提出するのに必要な作業は、パソコンを使った作業に普段から慣れていないと戸惑うことは必至です。紙で入手した戸籍情報は、PDFにしたり画像にしたりして、そのファイルをこまもろうシステムに登録(アップロード)しますが、そのことだけでも慣れていない人(わたくしもそうです!)には、頭を抱えてしまうかもしれません。でも『自分』でやらねばならないのです。」
 留意点その6:「戸籍情報を取得するには費用がかかります。その費用は個人負担です。入手しなければならない戸籍情報が多ければ多いほど費用もかかることになります。国が負担する制度にはなっていません。」
 留意点その7:「児童クラブを運営する方で、認定事業者になることを現時点で目指しているならば、この戸籍に関する作業量のあまりの多さを認識して、『これでは、新たに児童クラブで働いてくれる人が集まりにくくなる』『いま働いてくれている人も、あんなに面倒くさい作業は嫌だと退職して他の仕事に移ってしまうかもしれない』という、人手不足による事業運営継続に関する重大なリスクがある、ということを踏まえた喫緊の対応が必要です。」

<必要な戸籍情報が膨大になる可能性があります!>
 上記の留意点その2、に関してです。戸籍情報はつまり自分自身の本籍の情報になります。本籍が1つの自治体だけにある、という人もいるでしょう(生まれた地、育った地、いま時点で暮らしている地がまったく同じ自治体、という人)。そのような人は「自分は他の自治体に引っ越したことがないし、本籍もどこかに移していない。だから入手が必要な戸籍情報は1つで済むね」と思うかもしれません。
 実はそれが落とし穴。鈴木弁護士の動画を見るとよく分かります。

 詳細な説明は動画を見ていただくとして、運営支援が簡単に申せば、「戸籍に関する法律が改正されたため、戸籍の情報が紙の情報から電子データに変更されたので、電子データ返還前とその後つまりビフォーアフターでそれぞれ戸籍情報の取得が必要になる」ということです。縦書きの「戸籍謄本」から横書きの「戸籍全部事項証明書」への変換があったのです。
(しかも電子データになった後の戸籍情報つまり「戸籍全部事項証明書」には「戸籍電子証明書提供用識別符号」がありますから、この2つをセットで入手しなければなりません)
 引っ越しも離婚もしていない人でも、入手しなければならない戸籍情報は1つだけで済むとは限らないのです。

 まして引っ越したときに本籍地を変えた人、婚姻した人、あるいは婚姻によって改姓したことがある人は、もうそれで複数の戸籍情報の入手が必要です。そして自治体の合併があります。さいたま市は浦和市、大宮市そして与野市が合併して誕生しましたが、生まれた時に与野市だった人は、与野市時代の戸籍情報があります。つまり「より長く生きている人」ほど、必要な戸籍情報が増えるということです。
 児童クラブは人生のベテランが多く勤める職場ですね。後期高齢者となる75歳以上の方も当たり前に活躍されています。現場にシニア層、人生のベテランは必要なのです。それらの人については、昭和の時代の戸籍の改正があるので、その昭和時代の原戸籍もまた入手が必要な情報となります。
 先に述べた電子データ化による戸籍の変化については、専門家の間では「平成原戸籍(へいせい・はらこせき、と呼ぶ人が多いです)」、昭和の改正では「昭和原戸籍(しょうわ・はらこせき)と呼ぶ人が多いです)」が必要となるということなのですね。それは、先のこまもろうシステムのマニュアル素案には全くと言っていいほど触れられていません。

 ですから、「マイナンバーカードを使ってサクッと戸籍情報を手に入れて、サクサクッとこまもろうシステムを使って国に戸籍情報を提出すればいいだけの話」では、まったく違います。全然違います。例えば、生まれてから現住所にいたるまで本籍を変えている人、結婚や離婚が複数ある人は、戸籍情報をそろえる時間がかなりかかると考えましょう。これはつまり、75歳の人が「よし、夏休みは学童でアルバイトするか。アルバイト先の学童は、こまもろうシステムというものを使って戸籍情報を事前に国に提出してくださいと求人情報に書いてある。じゃあ、とりかかるか」という人がいる場合、それがたとえば7月になってからだと、7月半ばの夏休みスタートまでに必要な手続きを全部終えるのは、ほぼ不可能です。そもそも、こまもろうシステムを使って犯罪事実確認を済ませるのだけで約2週間かかりますから。
 まして、こまもろうシステムでアップロードが必要な戸籍情報が多ければ多いほど、普通に考えれば処理期間が長くかかるでしょうから、とても夏休み前に犯罪事実確認ー特定の性犯罪が無いことの確認ーが終わるとはわたくしには考えられません。その場合、こまもろうシステム従事者向けマニュアル素案の55ページにこう書いてあります。
「犯罪事実確認とは、教育・保育などのこどもに接する現場で働く方について、事業者が性犯罪前科の有無を確認する取組です。この確認は、こども家庭庁が事業者に交付する「犯罪事実確認書」により行われますが、犯罪事実確認書の交付の申請に当たっては、従事者の皆さんが行う手続があります。
 ※ 犯罪事実確認は法で義務として定められており、法で定められた期限(※)内に確認ができない場合、こどもに接する職業に就くことができなくなります。必ず期限内に犯罪事実確認に必要な手続を実施してください。(期限=認定日以降、異動や新規採用により対象業務に従事することとなった方→対象業務に従事するまで)」
 なお、すでに児童クラブで働いている人で、働いている児童クラブの運営事業者が認定事業者となった場合は、認定を受けた日から1年以内に、戸籍情報を集めて犯罪事実確認を済ませる必要があります。

 うんと短くまとめます。
「児童クラブで働こうと思う人、またすでに働いている人は、認定事業者の児童クラブで働く場合には戸籍情報を自分自身で集めなければなりません。それはものすごく大変な作業になる可能性が十分にあります」
「国や自治体から補助金を交付されて児童クラブを運営する側の人は、いずれ自治体から認定事業者であることを求められるであろうことを踏まえて認定事業者になる準備をすることになりますが、その場合、必要な労働力つまり職員数を確保するうえで悲劇的な局面に追い込まれる可能性を踏まえて事前に対応しておきましょう。欠員や新規クラブを開所してもすぐに人員の新規採用はできないこと、いま働いてくれている人も戸籍情報の提出で戸惑って児童クラブでの仕事そのものを辞めてしまう可能性もあるということを想定して対策を考えましょう」

<そもそも作業が難しい>
 自分で集めた戸籍情報は、こまもろうシステムを使って国に提出します。これはすべてオンラインで行います。もしパソコンを使った作業ができない人なら、そもそもこの手続きができないことになります。パソコンはない、でもスマホならあるという人なら理屈上、戸籍情報をこまもろうシステムで提出することができますが、1つのスマホの画面でいくつもの戸籍情報をアップロードするのは至難の業でしょう。
 そもそも、「アップロードって何?」という世代を対象とするかもしれないのが、このこまもろうシステムです。紙の戸籍をPDFにして、とマニュアルにあっても「PDFって何?」という世代を対象とするかもしれないのです。写真に撮ってアップロードといっても、鮮明な写真が撮影できるかどうか。その撮影した写真データをスマホの中で取り扱うことができるかどうか。

 国はこのこども性暴力防止法の制度自体は、かっちりと構成したと思っているのかもしれませんが、大事なことを忘れていたようです。それは「実際にこの法制度の対象となって必要な手続きを行うことになる人の能力、キャパシティーを過大評価した」ということです。ただでさえ人手不足の児童福祉の業界ですが、保育所も児童クラブも放デイも、ご年配の職員は当たり前にいます。それらの人がサクサクとこまもろうシステムを利用できると思っていたとしたら、無責任の極みです。166ページある従事者向けマニュアル、素案の段階ですけれどね、これを見れば大丈夫というのは、166ページを読ませて理解させることを前提のこととしていますが、それがすなわち無謀ですよ。わたくし萩原はそれなりに読むのが得意な人で学生時代に代ゼミの国語の模試で全国7位になった(どうだ!)さび付いて朽ちた過去がある人物ですが、そんなわたくしだって「こりゃあかんわ」と思いましたよ。

 作業が難しいと、その作業をどうやってすり抜けるかという考えに至るのは自然でしょう。結局のところわたくしは、戸籍情報アップロードを児童クラブの事業者の内部でこっそりと代行することが横行すると予想しています。登録には個人のメールアドレスが必要ですが、そのあたりはうまいことやって事務局や運営本部のパソコンを使って戸籍情報アップロードを事業者内部でやってしまうことになりそうです。あるいは、ひそかに有料でこの面倒くさい業務を引き受ける悪徳業者が現れるかもしれない。狙いはもちろん個人情報中抜きです。
 国には、そうならないように、早いうちに安心できる団体に事務を委託する制度を整えるべきです。先に記しましたが弁護士、司法書士、行政書士の3士業が適切でしょう。士業には必ず資格者の団体がありますから、その団体例えば〇〇県〇〇会に戸籍情報の収集からアップロードまで代行できる資格を与えればいいのです。それら国家資格者は当然に情報守秘義務がありますし、いかがわしいことをしたら業務停止などの処分もありますから。突拍子もないアイデアですが本気で考えていただきたい。そうじゃないと、こどもを守ろうとして導入した制度のせいで「現場に働く人が集まらず、人手不足倒産」という事態になります。それは結果的に、守られるべきこどもの居場所が失われ、保護者の就労や子育てへの支援が断たれる最悪の事態になります。
 とりわけ人手不足が著しいのが児童クラブの世界。児童クラブの世界に興味関心を持ってくださっている議員、政治家の人は議場で、委員会の場で、本気になって「どうやって円滑にこども性暴力防止法が実施されるのか」を考えて政府や行政に提案してください。
 このままだと、鈴木弁護士が懸念しているように児童福祉の現場は大混乱となりますよ。

<お金のこと>
 こども性暴力防止法による犯罪事実確認は、あくまで個人の利益につながることですから、個人で費用を負担することは理解できます。特定の性犯罪で有罪になったことが無い、という証明があれば、義務事業者や認定事業者で採用されて働くことができて、それは自分の収入につながるのですからね。
 しかし、児童福祉の施設は児童クラブもそうですし放デイもそうですし、社会において保護者が社会経済活動を続けるうえで必須の存在です。そもそもこどもが安全安心な環境で育つ場を用意提供するのは社会の当然の役割です。その児童クラブや放デイ、かたや認定事業者かたや義務事業者と分かれていますが、どちらも人手不足で大変な現場です。児童クラブはいずれ事実上、義務事業者のようになるでしょう。認定を受けなければ国の補助金が出ませんよ、となれば認定事業者にならざるを得ないですから。そしてそのような傾向はもう現れています。

 ところが犯罪事実確認に必要な戸籍情報入手には、費用がかかります。1回700円だか750円だか、自腹で払うのです。これが嫌で児童クラブや放デイで働くことをあきらめる人は、間違いなく現れるでしょう。「働いて収入を得たいのに、その前に何千円も必要となるなんて、おかしな話だ」と考える人は、きっといるでしょう。

 この問題を国は軽視しないでください。いまも年金関係で戸籍情報が必要な場合は無料で取得できます。同じように、こども性暴力防止法に関連する戸籍情報取得の場合の手数料は無料とするよう、国は制度を整えてください。国の制度が整うまでは自治体が特例で負担するようにしていただきたい。
 事業者が当面、負担するなり補助することも必要でしょう。人生経験が長い人が多く勤める児童クラブです。若い人なら自治体合併や婚姻があっても3~5件ぐらいで済むものが人生の大ベテランなら7~8件にまで達することが普通にあるでしょう。児童クラブの運営事業者が、従事者の犯罪事実確認のために要する費用負担を肩代わりして従事者の負担を軽減するような取り組みも必要です。そういうことが可能となる財政的な余裕が必要ですから、わたくし萩原はずっと以前から児童クラブ運営事業者は合体合併合流連衡して1つとなって規模を大きくしてスケールメリットを発揮できるようにするべきだと訴えているのです。

<最後に、分かりやすい案内を>
 これは自治体の戸籍担当者さんを支えることも含みますが、マニュアルそのものが分かりにくいです。マニュアルのトリセツが必要です。つまり「分かりにくい」のがとりわけこの犯罪事実確認に関する内容です。もっといえば、安全確保措置や情報保全措置など事業運営に関わらう部分も難解です。そういうところをフォローする民間ビジネスに任せようという狙いだとしたら残念です。

 なぜ、戸籍情報を集めねばならないのか。
 どういう戸籍情報が必要なのか。通常なら「除籍」に関することなど一般の人は想像しません。戸籍の担当者さんが「こども性暴力防止法に関することですか? なら除籍に関するものも必要ですね」と、窓口に来た人にフォローできるような体制があってほしいです。

 国はあちこちで事業者向けの説明会を開いたり、丁寧な情報提供を多くの頻度で行ったりしてします。そのことは評価していますが、とてもじゃないですが児童クラブの現場の理解に追いついていません。有力な業界団体ですらもつい最近まで必要な手続きは自治体が肩代わりしてくれるんじゃないかな、なんて期待をしていたようですから。

 もっと分かりやすい説明と、説明の機会が必要です。その説明の機会を担う、各業界に精通した専門家が必要でしょう。児童クラブや放デイなど、とりわけ中小零細規模が多い業界には、それぞれの事業の特徴や特性を理解し、かつ、こども性暴力防止法に関する理解を得た専門家による、きめ細やかな説明機会が必要です。このままでは準備不足で本番を迎えることになります。わたくしには、明らかに勝てる資源も工業力もないのに、実は客観的にそれを証明できるデータもあったのに、ただただ精神論だけを掲げて戦線を拡大して破滅に至った大日本帝国の失敗を繰り返すような気がしてなりません。

 せめて、もっと分かりやすい案内資料を作成して全児童クラブ事業者に届けるようにしていただきたい。

 ともあれ、児童クラブの関係者さん、できれば保護者さんもぜひ、鈴木弁護士の動画をご覧ください。こどもを守るために必要な手続きが、かえってこどもを守る仕組みを追い詰めているという矛盾が起きていることを、知っていただきたいのです。
 そして児童クラブの世界は早急に対策対応を考えねばなりませんよ。事業の存続に関わる重大な出来事が、「いま、そこにある危機」として存在していることを知ってください。 

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 わたくし萩原が社会保険労務士となり、「あい和社会保険労務士事務所」を開業してから1年が過ぎました。ここまで続いてこれたのはひとえにみなさまのおかげです。どうもありがとうございました。「あい和社会保険労務士事務所」は、放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしてこども性暴力防止法(いわゆる日本版DBS制度を含む)に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネル「こどもを守る弁護士チャンネル」。「第6回子ども性暴力防止法緊急LIVE」は2026年8月12日21時半から、「災害時のこども支援とこども性暴力防止法」です。話し手は 鈴木愛子弁護士、聴き手は野田隼人弁護士です。
 第4回が2026年6月30日に配信されました。放課後児童クラブの運営に関わってきた鈴木愛子弁護士が「こども性暴力防止法がもたらすこどもの被害申告に適切に対応できるか」をテーマに関して丁寧に説明しています。 まずは動画をぜひご覧ください。わたくしの著書「知られざる<学童保育>の世界」も紹介されています。
https://youtube.com/live/9q8xzkgs7wo?si=dr06eChxK1Jgov5T
 第5回は7月19日(日曜日)15時から、すでに施行されている「児童生徒性暴力防止法」における調査の解説です。話し手:飛田桂弁護士、聴き手:嶋崎量弁護士、鈴木愛子弁護士、野田隼人弁護士、三輪記子弁護士。
 第3回(2026年6月11日)は、鈴木愛子弁護士がメインスピーカーとして「こども性暴力防止法がもたらす「人手不足の加速」とその構造的リスク」とのタイトルで、人材確保に関する懸念を取り上げています。内容は放課後児童クラブ限定ではなくて法制度全般にわたるものですが、とりわけ放課後児童クラブで働く人、運営する人そして管理する行政パーソンには必見必聴の内容です。https://www.youtube.com/watch?v=ZVafKTKe204 を、ぜひクリックしましょう。
 第2回(2026年5月30日)が、こども性暴力防止法の「Q&A」を読み解くとして、【弁護士が読む❗️こども性暴力防止法Q &A】のタイトルで配信されています。メインスピーカーは三輪記子弁護士、聞き手は嶋﨑量弁護士です。
https://www.youtube.com/watch?v=XtTCNTDBLLo
 第1回(2026年5月16日)は「こども性暴力防止法を考える」です。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s

 わたくし萩原が寄稿した記事が「ウェッジオンライン」で2026年7月29日に公開されました。「子どもの「体験格差」が気になる夏休み…その“差”を埋めるのは難しいのか?子どもにとって貴重な体験に目を向けろ」という記事です。ヤフーニュースにも配信されています。URLは以下の通りです。(子どもの「体験格差」が気になる夏休み…その“差”を埋めるのは難しいのか?子どもにとって貴重な体験に目を向けろ  Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)

 こども性暴力防止法がもたらす、構造上の課題問題について、法律家がとても分かりやすく解説する記事が「アエラキッズプラス(AERAKidsPlus)に掲載されました! 解説はもちろん、鈴木愛子弁護士です。こどもを性暴力から守るための重要な法制度だからこそ、実は逆説的にこどもや運営事業者が追い込まれてしまう可能性を分かりやすく説明されています。ぜひぜひ、記事を読んでください! 実に分かりやすいですよ!
 「本当に性犯罪を防げる?」学校や学童保育、放課後子供教室も対象になる「日本版DBS」に、現場から懸念の声…【弁護士が解説】 | AERA with Kids+

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、講演会、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)
※ミニブログは、ページ全体の文字数が多くても7,000文字程度の投稿を指しています。また、文字数が多い場合でも「肩の力を入れずに気楽に読んでほしい」という内容の場合もあります。

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萩原和也