競争は避けられない当然の出来事と割り切りつつ、放課後児童クラブ(学童保育所)の運営主体変更を乗り切ろう。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
放課後児童クラブを運営する組織、団体の変更については運営支援ブログも繰り返し取り上げています。こどもへの育成支援、保護者支援、そして従事する労働者に重大な影響を及ぼすことがごく普通にあるからです。この「放課後児童クラブの運営主体の変更」ですが、運営支援は現実的に考えています。運営主体の変更につながる公募や競争が無くなることはこの先、そう簡単にはなかろうという考えに基づいて、「であれば、公募や競争を乗り切る対応こそ重要である」という考えです。
(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
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<「7原則」を再掲>
2025年7月7日に投稿したブログで、わたくし萩原は放課後児童クラブの運営主体(=児童クラブを運営する組織。役所だったり営利法人だったり非営利法人だったり保護者会だったりと様々)について、7つの原則を示しました。以下、要約しつつ再掲します。
放課後児童クラブ運営指針で示されているように、運営主体は、こどもの権利、育成支援、地域社会における立場をしっかりと理解している必要があって、さらに継続的、安定的に児童クラブの運営を行う能力が求められます。そしてこのことは、「児童クラブの運営主体は、常に最善の運営主体であること」が求められ、その意味することは次の3つのことを導くものであると運営支援は考えます。
1 児童クラブの運営内容が十分であっても、さらに運営内容を向上することができることが確実な別の運営主体に変更することは合理性がある。
2 児童クラブの運営内容が不十分である運営主体を、現状より運営内容を向上することができることが確実な別の運営主体変更しないことに合理性はない。
3 児童クラブの運営内容が十分であれば、さらに運営内容を向上させることが確実な別の運営主体が存在しなければ、運営主体を変更しないことに合理性がある。
つまり、児童クラブの運営主体の変更をする選択、もしくはマイナスの変更つまり変更しないという選択、いずれを選択するにしても、「常に現状において最良の運営内容を実現できる運営主体を選ぶこと」が、運営主体の変更の核心ととなります。そして、この観点で考えれば、児童クラブの運営主体の変更について、「もっとよりよい運営内容が期待できる事業者をどうやって見つけ出すのか。どうすれば運営主体の運営能力を的確に評価判定することができるのか」という点が極めて重要であることが分かります。
運営主体の変更は、限りある資源(予算や職員の人数、能力)をもっていかに効果的に、無駄なく、児童クラブの運営ができる事業者を常に選び続けることから、必要であるとわたくし萩原は考えます。このことは、「何があっても、児童クラブの運営主体は変えてはならない」とする意見を否定することになります。「他によりよい運営ができる事業者があるなら、児童クラブの事業者が変更することは問題視しない」というのが、わたくしの立場です。なお運営指針では、「放課後児童クラブの運営主体に変更が生じる場合には、こどもの心情に十分配慮した上で、こどもへの丁寧な説明や意見聴取、意見反映が求められる。また、育成支援の継続性が保障され、こどもへの影響が最小限に抑えられるように努めるとともに、保護者の理解が得られるように努める必要がある。」としています。それはその通りですが、運営支援としては、今まで児童クラブで業務に従事していた者への対応についてこそ運営主体の変更の成否を握るものだと考えるので、児童クラブで働く者の立場をどうするかを、十分に配慮しなければならないと強く訴えます。
運営主体を変更することができる立場は「設置主体」です。運営指針では、「放課後児童健全育成事業は、市町村が行うこととし」とありますから、ほとんどの場合、設置主体は市区町村です。実質的には首長と、行政執行部です。設置主体は、児童クラブの運営主体の変更に関して、「こども、保護者、職員」の3者としっかり意思疎通を図らねばなりません。こどもにしてみれば、引き続き安心して楽しい児童クラブであり続けてくれるのかどうか、保護者にしてみればこどもの生命身体をゆだねるのに、そしてこどもの健全な育ちを支えてくれる運営の質が維持できるのか、そして働く立場にとってみれば職業、職場の存続の問題です。運営主体を変えたいと考える側は、児童クラブに関わる側に丁寧に説明し、理解を得ることが絶対的に必要です。理解を得るということは、できれば賛成を得ることが当然望ましいですが、賛成できなくても反対する理由は見つからない、という状況にまで持っていくことは最低限、必要でしょう。
その上で、放課後児童クラブの運営主体変更に当たって当事者が常に確認するべきことを「運営主体変更の7原則」として、運営支援ブログは提言するものです。
1 運営主体を変更すること、又は変更しないことに合理的な理由があること。
2 運営主体の変更または変更しないことの合理的な理由の根拠が保護者と議会に説明され、公開されていること。
3 設置主体は、これまで実施したことがない形態で運営主体の変更を行うことを考えた場合において、運営主体の変更プランを策定する前に、こどもと保護者からの意見聴取を行い、こどもと保護者の意見を運営主体の変更プラン策定時に反映させて変更プランを決定すること。
4 設置主体は、今までに実施したことがない形態で運営主体の変更を考えた場合において、その時点での運営主体に速やかに意向を伝えるとともに運営主体に対して変更の合理的な理由を説明し、理解を得ることに努めること。
5 運営主体は、設置主体から運営主体選考の方法に変更がある旨を伝えられた際は、速やかに雇用する職員、スタッフにその内容を丁寧に説明すること。
6 運営主体の変更に関する経緯、過程に関する情報は常に公開されていること。
7 新たな運営主体を決定する際、設置主体側は、運営の質の向上を運営方針において最優先とする運営主体を選ぶことができる審査、選考方法を採用すること。
以上の7つの原則が守られていれば、運営主体変更に関してトラブルが起こるのを防ぐことができるでしょう。設置主体側は当然ながら理解が必要ですし、児童クラブ側もこの原則を理解して市区町村に常時、くぎを刺しておくことが必要でしょう。
<よく言う「質を考えているのか」について、運営主体を選ぶ側と、選ばれる側にズレがある>
2025年度も全国各地で児童クラブの運営主体変更がありました。渦中にいる方から運営支援にメールで相談だったり状況報告だったりと連絡も多くいただきました。すべてが「運営主体の変更を余儀なくされる側」の立場の方々からでした。中国地方、四国地方、関西地方、中部地方、関東地方と、職員だったり保護者だったりという立場の方から連絡が届きました。当事者になられたみなさんは本当につらく、厳しい渦中にいることがよく分かります。
運営主体の変更に戸惑う、あるいは反対する立場の方々の心情はよく分かります。その気持ちとは別に、わたくしは考えます。運営主体の変更に反対する立場から発せられる意見のうち「児童クラブの質が企業運営では低下してしまうのでは」という意見が声高に主張されるのですが、「その主張は、ほとんど無意味だよ」とわたくしは考えるのです。それは、運営主体の変更を求めない立場の側、とりわけ保護者と職員は「児童クラブの質が落ちる」というのですが、その「質」というのは「職員とこどもとの関わりで生まれる育成支援の質」や「職員と保護者が関わって形作る、こどもへの育成支援の質」、そして「職員が保護者と関わることで可能となる、保護者の子育て支援」を指すものでしょう。わたくしはそう考えています。
つまり「職員」と「こども」「保護者」との、人と人との関わり合いそのものと、関わり合いによってなしえる育成支援、子育て支援です。
一方で、運営主体を替えることができる側、つまり設置主体(実質的には市区町村)は、何を考えて運営主体の変更に取り組むのかもまた、同時に考えねばなりません。公営クラブであれば設置主体と運営主体は同一ですね。公設民営クラブであれば委託や指定管理者、民設民営クラブであれば委託や事業補助によって、放課後児童健全育成事業を民間事業者にやってもらうのですが、放課後児童健全育成事業は任意事業であれども法定事業ですから、「継続して、安定的に、実施できること」を最優先とするか、他の項目と並んで最優先のランクで重視します。それは当然です。どれだけ、こどもや保護者から高い評価を受けている児童クラブであっても、事業者の組織としての経営がおぼつかず、いつ倒産、破産、廃業するかも分からないのでは、行政はそのような事業者に、公の事業を任せる、委ねることはしないでしょう。住民、市民、納税者に万が一でも悪影響をもたらす可能性がある事業者には、公の事業や公共サービスを任せることは、当たり前ですが避けるものです。大きな自治体の役所には「食堂」が設置されて住民が利用できるようになっているでしょうが、その食堂を運営する事業者を選ぶのに、「とても味が良いけれど数か月に一度、食中毒を引き起こす」という事業者と「味はまあまあだけれど衛生管理は万全で過去十数年間、一度も食中毒事案を起こしたことが無い」という事業者を比べたら、どちらが選ばれるのかは言うまでもありません。
公の事業は安定性が重要です。継続して安定的に事業を営めることこそ、公共のサービスでは重視されます。児童クラブだって同じです。
運営支援が常に残念に思うのは、児童クラブの運営主体変更に関して現状維持を望む側、得てしてそれは保護者や職員ですが、常に真っ先に口に出すのは「企業が運営すると、質が落ちる」ということです。その質というのは、人と人との関わり合いでもたらされる援助、支援のことなのですが、それがオンリーワンなのです。ところが設置主体として責任がある立場の自治体からすると、「安定して継続的に児童クラブという公共サービスを提供できるかどうか」こそ重視せねばならない。双方のズレは、埋まりません。どちらも「これこそが大事」と信じているからです。
わたくしは、現状維持を望む側、つまり運営主体を替えられる側が、いつも運営主体を変更できる側、つまり設置主体の立場や方向性を計算にして、反対運動や抵抗運動を行わないことが本当に不思議です。運営主体を替えられてしまいかねない側は当然、「替えることができる側」の考えや計画、方向性、思惑などを考慮するべきなのに、その点について検討したり配慮したりすることは、まず見かけません。つまり戦略が無いから戦術も組み立てられないということです。
このわたくしの思考からは当然、「児童クラブを安定して継続的に運営ができる能力を身につければよい」という結論が導かれます。ですのでわたくしは、常々、「本当に地域に根差した児童クラブを大事にしたいのなら、そのような児童クラブに運営を続けてもらいたいなら、全国で1000か所以上もの児童クラブを運営して盤石の体制の児童クラブ運営広域展開事業者と、公募や競争で、事業者の組織の安定性や財務基盤など必ず審査事項に加わってくる項目で、勝てなくても引き分け(=同じ得点)に持ち込めるだけの規模を備えた事業者になるべきだ」と言っているのです。公募で競争する相手が1000クラブを運営していたらこちらも1000クラブ、ということまでは必要ありません。競争となるのは同じ市区町村内の児童クラブの運営権をめぐってのことですから、その区域内で盤石に事業運営を続けられるだけの事業者としての規模や財務基盤があればいい。せいぜい200程度の支援の単位を運営できるまでになれば、勝てずとも引き分けにはできるでしょう。もちろん、1クラブ1法人だったり、十数の支援の単位ぐらいだったりの運営基盤であれば、広域展開事業者には「安定して継続的に事業が実施できるかどうか」の観点においては、勝てません。そしてその「安定して継続的に事業が実施できるかどうか」こそ、公の事業を任せる側が大事にしている点なのです。
<もちろん、競争や公募での判断基準の修正、是正は必要不可欠。この点を訴えよう>
わたくしは実務家ですから現実的に物事を考えたい。「現在、あちこちの自治体で行われている公募や競争で使われている審査基準、審査項目において、極力、不利にならないような状況に持ち込むこと」が、今の時点で最も優先するべきです。その最たるものが、「事業者としての規模の拡大」であり、だからこそ、地域に根差した児童クラブを大事にしたいのであれば同じ志の事業者、クラブ同士が合併して大きくなることを勧めているのです。またある程度の規模を有して他の市区町村での公募に参加できるだけの基盤やノウハウがあるなら、北本市のNPO法人のように版図を広げることも素晴らしい戦略です。ようは「でかくなれ」です。今、自分たちが大好きな児童クラブが将来も生き残れるには、「でっかくなれ」しかありません。
とはいえですよ、現在あちこちで行われている児童クラブの公募や競争では、単純に「他地域での事業実績」が評価項目に入っていることが多いのですが、それはもう不公平の極致です。地域に根差した児童クラブを大事に運営してきた団体は、他の市区町村で児童クラブを運営していないのですから得点できっこない。そんな公正ではない審査基準、評価項目は運営支援は認めません。もしそのような審査基準や評価項目を設けたいなら、別に「現在、運営している児童クラブの保護者とこどもから高い評価を受けているかどうか」の項目を設けるべきでしょう。そうすれば、その地域で運営をしていない事業者はそもそも評価を得ていないのですから、得点することは不可能です。ですから偏った審査基準、評価項目は盛り込むべきではないのです。
公募や競争はどうしたって当然にあるのです。巧妙に地域の一部勢力と癒着している児童クラブ事業者があったとしたら、それを堂々と排除できる機会が公募や競争です。職員の雇用を重視していない超ブラック事業者を排除できるのも公募や競争があればこそです。それは上記の7原則に沿って行われれば良いと運営支援は考えます。まあ、「うまくいっている児童クラブの運営者をわざわざ替えることは無駄ですよ」ということでもありますが。
公募や競争は絶対悪ではないと運営支援は考えていますが、いまの審査基準、評価項目には問題が多いということは強く主張したい。どういう審査基準、評価項目がいいのか、児童クラブ関係者や法律家、行政の専門家を交えて、標準となるモデル審査基準を作成していただきたい。
同時に、審査や評価をするメンバーの人選もまた、基準となる構成者の顔ぶれの方向性を作っていただきたいですね。中には「全員が行政執行部」で占めている委員会がありますが、論外です。そんなの、最上位の立場の者の意向に反対できるわけありません。副市長が委員長で部長、課長が委員である委員会を見かけましたが、課長が副市長に「それは反対です」と言えますか。そういうたぐいの言動をした公務員が次の人事で「飛ばされた」例をわたくしは目の当たりにしていますから。また、6~7人のメンバーで、1人や2人が児童クラブの保護者や児童クラブの団体(連絡協議会など)から選ばれていることが普通にあります。それは良いのですが、問題は他の委員です。6人のメンバーで2人が保護者や児童クラブに理解のある立場の者、残り4人は「企業の経営効率」「大企業こそ安全」という考えの持ち主であれば、多数決の結果はおのずと明らかです。こういう委員会、選定委員のメンバーに税理士や公認会計士が加わることはごく普通にありますが、わたくしの意見としては、そういう税理士や公認会計士には、「放課後児童クラブの最低限の知識」があることを事前に確認する過程が必要です。わたくしの「知られざる学童保育の世界」を読んでいただきたいですし、もっと言うなら児童クラブのリアルを知るために「がくどう、 序」を手に取っていただきたいですね。宣伝失礼。ともかく、児童クラブは労働集約型であり、コミュニケーション労働であり、対人ケア労働であるという特性から得られる効率や生産性向上の考え方があって、その考え方は一般的な税理士や公認会計士が知っている効率や生産性向上とは色合いが違う、ということです。
児童クラブのことを審査するだから、児童クラブについて知っている人を、選定の委員として選ぶべきです。当然ですよ。「何も知らない方が先入観が無い」という反論があるなら、馬鹿げています。事の優劣を選ぶのに何も知らない人に任せるのですか。児童クラブの立場の人はこの点をもっと強く言うべきでしょう。「宙船」にありますよね。「おまえが消えて喜ぶ者にお前のオールを任せるな」です。
それとですね、これは公募や競争においてはやむを得ない、当然なのですが、「どの材料をもって選ぶか」は、提出された資料とプレゼンテーションでのやりとりで、得点を付けていきます。わたくしも児童館の指定管理者選定委員会のメンバーを務めた経験があります。公募や競争に参加した事業者が提出または説明した資料それ以外の要素で判断しませんし、得点は付けません。それが公平な選定だからといえばそれまでです。このことは「公募慣れ」した事業者に極めて有利です。毎月、日本のどこかで児童クラブ運営に関する公募型プロポーザルに参加している、あるいは指定管理者の選定委員会に応募している広域展開事業者は、もう楽勝といえるでしょう。ノウハウの蓄積はハンパないのです。よその地域で問題を起こしていても、それをわざわざ資料に載せるバカな事業者はありませんからね。いつも職員が足りなくて求人広告ばかり出している広域展開事業者でも、公募や競争の席では「人材獲得にノウハウがあります。緊急の欠員対応には他地域から職員を派遣させられるので大丈夫です」と胸を張りながら、いざ運営を始めると職員が足らず、運営が切り替わってから半年以上もずっと求人を出しっぱなし、なんてごく普通にあります。
要は、出された資料だけでしか判断されない。この当たり前の部分を当たり前にさせないことを考えねばなりません。広域展開事業者であろうが地域に根差した児童クラブであろうが、そこで働いている人や利用する保護者は、「こんなひどいことがあった」としっかりと声に出して訴えるべきなのです。実名で、ですよ。その地域の市区町村に、あるいは議員に、あるいはメディアに伝えるべきです。実名で声を上げるのは勇気がいりますが、勇気を持たねば社会の仕組みは動きません。変えられません。人も、動きません。
そうして報道されても、あるいは自治体から処分や指導を受けてもそれが直ちに別の場所の公募や競争に影響があるわけではありませんが、不祥事やネガティブな情報が、公募や競争において得点を付ける人の意識、知識として入り込んでいるかどうかは重要です。それが心理的な影響というものです。
<運営主体を替えられる側にいる人に、強く言いたい>
これはもうずっと昔から繰り返されているのですが、児童クラブの運営主体が替わる、公募の実施が決まった、公募の結果で今の運営主体がもう来年からクラブ運営ができなくなることが決まった! と保護者や職員そして支援者が慌てるのが遅すぎです。公募や競争は決して不意打ちではありません。一般的に、公の事業とりわけ民営化が可能な分野においては、いつ競争や公募が行政執行部によって提示されるか、常にありうるべきだというのがわたくしの考えです。当然です。
それは非公募でずっと指定管理者として選ばれてきたからとか、非公募で随意契約で毎年、単年度の業務委託契約を交わしてきたから、ということは全く関係ありません。これもまた児童クラブの業界団体内部で「随意契約の業務委託が最低ライン。なぜなら翌年度も選ばれることが通常だから」と言う人がいますが、間違っています。行政執行部の意識は単年度ごとの認識です。ヘマをやったら来年度は無いのは、当たり前です。
なお「公募や競争はダメ。だから公営だ」というのが今も児童クラブの伝統的な勢力の意見のようですが、わたくしにいわせればそれは「太陽を西から上らせろ」というスローガンに等しい。つまり「ダメと知っていて叫んでいる」ということです。何らかの目的があって叫んでいるのでしょうね。それはそう叫ぶことで何らかのトクがあるからです。児童クラブより、よっぽど法的に位置づけが強い児童福祉施設である保育所ですら、公立施設が相次いで民営化されている中で、法定の任意事業に過ぎない児童クラブが、民営を取りやめて公営になるという流れが生まれるとでも考えているとしたら、脳内がお花畑過ぎます。何らかの事情や戦略があって民営クラブを公営化する例はあるでしょう。岡山県内にそのような町があったはずです。それは特殊な例です(もっとも、その特殊を普遍的なものにしていくことは、意味があるでしょう)。ひたすら公営がいい、公営に戻せ、という意見を話す1分1秒があるなら、「いかにして、広域展開事業者に負けない事業者を育てるか」に使ったほうがよろしい。とりわけ、いわゆる日本版DBS制度があります。単純に事業者の規模が大きな組織が有利に事を進められる制度です。児童クラブでいえば、広域展開事業者は日本版DBS制度にいち早く対応して安心さをアピールでき、ますます市場の拡大を推し進める強力なエンジンになるのが、日本版DBS制度です。それはそっくりそのまま、日本版DBS制度になかなか対応ができないであろう、「地域に根差した児童クラブ運営事業者」にとっては逆噴射となって襲い掛かって来ることでしょう。
保護者も職員も、「いつ、公募や競争になるか」を踏まえて、先々の対応、戦術を考えねばならないのです。もっとも、利用者である保護者が運営主体の変更にまで意識を向けることはなかなか難しい。それこそ、運営主体のお仕事です。別に「運営主体の変更は認めない!」という戦闘モードを常に醸成しろ、とまではわたくしは言いません。「いまの児童クラブ、良いですか、困っていることはありますか?」をこどもと保護者に常に問うておくことがスタートです。その上で「今のクラブがいいよね」という意識がこどもと利用者たる保護者に醸成されていれば良い。そして「運営主体の変更に関して、行政の動きがありそうです」と、情報を常に保護者と共有できていればいいのです。利用者たる保護者が本当に今のクラブ運営事業者が大好きで支持しているなら、運営主体変更の気配を察知した段階で、何らかの行動を興せるでしょう。
その意味では「情報」は大事です。公募、競争は争いです。戦です。争いに勝つには「情報」を先に、多く、知ることつかむことです。ですから、社会福祉協議会や事業団といった行政の外郭団体に近い運営主体による児童クラブは、そもそも運営主体が行政執行部に遠慮しがちなところがありますし、何なら出向で役所から来ている人もいるので、運営主体変更の気配を実は先に知っているのに保護者や職員に伝えないという傾向が、どうもあるようにわたくしにはうかがえます。そういうクラブのこどもや保護者、職員は、不利なところが否めないなぁとわたくしは考えます。そうではない非営利法人や保護者会で非公募や随意契約で運営を任されている場合は、しっかり行政執行部と関係を密にして、いつなんどき、公募や競争が実施されそうかの情報をキャッチすることが、命運を左右するでしょう。
まして3年や5年間隔で公募や競争が行われているのであれば言わずもがな。次の競争、選定で負けないような事業運営をして、かつ、こどもと保護者の支持を取り付けて置くことが求められます。
不意打ちではないのですよ、いつ公募や競争が来ても当然です。それが好き嫌いはあれど自由主義社会の原則です。ただその公募や競争は、児童クラブならではの事情や事業が当然に帯びる特質を踏まえた合理的な審査基準、判断基準であって、児童クラブの本質を踏まえた審査や判断の過程を経るべきだと、運営支援は訴えます。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)


