盆休み特別版・「保護者運営系の放課後児童クラブ(学童保育)は合併・合体しなければいずれ存続が困難になる」と考える理由(4)
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「運営支援」を行っている「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く、成長ストーリーであり人間ドラマ小説「がくどう、 序」を書きました。アマゾンのみで発売中です。ぜひ手に取ってみてください! (https://amzn.asia/d/3r2KIzc) お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
運営支援ブログは盆期間特別企画として、全国にまだまだ残っている保護者運営系の児童クラブに向けてメッセージを送ります。「他の運営事業者と合併、合体して規模を大きくしなければ、生き残れないよ」ということを伝えたい。第4回目は、運営する児童クラブ数を激増させている、いわゆる「広域展開事業者」と児童クラブの運営権を巡って競争するには、小さな事業者では負けっぱなしになるよ、という点です。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<前置き=前日掲載分と同じです>
「保護者運営系の放課後児童クラブ」とは次のクラブを指します。
・運営主体(=児童クラブ事業者を経営し、かつ、児童クラブ事業を運営している法人又は任意団体又は個人)が保護者又は保護者であった者であること。具体的には以下のクラブ。
・運営主体が保護者会・父母会の児童クラブ。メンバーは現役の保護者やOB保護者、職員。実務を担うのが職員である場合も含む。
・運営主体が地域運営委員会、運営委員会の児童クラブ。実質的に運営を担うのは保護者や職員児童クラブ保護者、職員の場合が多い。
・運営主体が法人であって、その法人の役員の大半が現役保護者又は保護者OBであり、組織の運営を保護者側の勢力が差配できる状況にある児童クラブ。
日本版DBSについて。通称「こども性暴力防止法」によって導入される制度です。こどもに関わる分野の業種に性暴力抑止の体制構築を求め、従事しようとする者やすでに従事する者に対しては特定の性犯罪の前歴を確認する制度。こどもに関わる職に就くものは自分自身が、すでにこどもに関わる職に就いている者は事業者と従事者が特定の性犯罪の前歴を確認することになります。この制度はとても複雑で難解ですので、専門家が発信している解説や情報をご参照ください。
法律的な観点で日本版DBS制度について問題点等を指摘、解説している弁護士の鈴木愛子氏のブログ「弁護士aikoの法律自習室」。お勧めです。
(https://ameblo.jp/aikosuzuki-law/)
鈴木弁護士は、弁護士の三輪記子氏のYouTubeチャンネルで、日本版DBS制度についてゲスト解説されています。シリーズで掲載されますのでこちらもお勧めです。(https://www.youtube.com/@MiwaFusako_B)
複雑で難解な日本版DBS制度には膨大な手続きが必要です。日本版DBS制度の解説と、必要となると想定される種々の対応については、行政書士で「一般社団法人こども性暴力防止ネットワーク」代表理事の戸田大介氏のnoteが大変参考となります。必見、お勧めです。
(https://note.com/firm_parrot4575)
放課後児童クラブで運営に関わる立場の方や職員の方はぜひ、鈴木氏のブログと、戸田氏のnoteをご確認ください。必見です。
<本日(14日)の提言:合併・合体が必要な理由=クラブを運営する事業者を公募、つまり競争で選ぶ場合に、小規模事業者では勝てないから>
放課後児童クラブを運営する事業者を「運営主体」と呼びます。ちなみに児童クラブを設置する組織を「設置主体」と呼びます。本日のブログでは、児童クラブを設置する設置主体が、運営する権利を、競争で勝ち抜いた事業者に与える状況を考えています。つまり設置主体が運営主体を選ぶという状況です。 これには大きく分けて2つの形態があります。
1つは、競争をするまでもなく特定の事業者に運営を任せた方が多くの点で有利なので設置主体の内部で運営主体を決定するものです。表ざたになる競争は無いですが、設置主体の内部で競争(というか選定作業)が行われている場合です。業務委託契約の場合は随意契約と呼ばれます。本年の夏前の備蓄米騒動でよく登場しましたね。指定管理者制度の場合は非公募による選定と呼ばれることが多いですね。
もう1つは、文字通りの競争であって、業務委託契約の場合は公募型プロポーザルがほとんどです。指定管理者の候補者選定においても公募による候補者募集と選定が行われます。自由経済主義社会では、基本的に競争によって、より優れた事業内容の提案をしている事業者が選ばれることが全体の利益につながるので、原則として競争によって勝者を選び、その勝者に権利を与えることが行われています。談合や、カルテルを結んで不当に必要以上の経費、事業費を要求することは許されない行為ですから、競争があたりまえであって、随意契約や非公募は例外である、という理解です。(言わずもがな、児童クラブや児童館、博物館や図書館等の公共施設の「運営」の権利をめぐって競争によって経費を抑える事業者を選ぶことが絶対に良いかと問われれば、「職員の人件費を必要以上に抑制するおそれがあるので、よろしくない」と私は自信を持って言いますがね)
児童福祉法に定められている公の事業である放課後健全育成事業を実施する児童クラブの運営を巡っては、多くが公募によって競争が行われます。良心的な、というか地方自治と国民主権を分かっている市区町村であれば、児童クラブの運営を巡って事業者を選ぶ過程に関する資料をホームページで公開しており、どういう判断の結果で勝者となった事業者を選んだのかが分かるようにしています。(一定期間が過ぎると資料を非公開にする自治体がかなり多いですが、運営支援は反対です。ずっと公開するべきです。公の事業を運営する事業者を選んだ証拠は常に公開されて国民=納税者の閲覧が可能な状態としておくべきです)
この公募による競争において、事業規模の小さな保護者運営系の児童クラブ事業者は、事業規模が大きな広域展開事業者と比べると、圧倒的に不利です。どういう点で不利なのか。それは、公募に参加した事業者に付けられる「採点」において、得点を稼げないからです。総得点が多い方が競争に勝つのですから、得点を稼げなければ負けます。この得点競争において、広域展開事業者が有利な配点がごく普通に行われています。事業規模の小さな保護者運営系の児童クラブでは獲得できない配点が設けられていることが、当たり前に多いのです。
例を挙げます。まずは、運営委員会の運営から広域展開事業者による運営に切り替わった静岡県沼津市です。話がそれますが私も2年間ほど沼津市民だったので愛着のある地域です。沼津市の「沼津市放課後児童クラブ運営事業業務委託契約候補者選定に係るプロポーザル参加要領」に掲載されている「評価項目」を見てください。ここに「事業実績」として「・ 同種業務の実績は十分なものか ・ 本市と同規模以上の施設数(1自治体当たり)の運営実績はあるか」として10点が配点されています。
地域に根差した保護者運営系の児童クラブは、ほとんどが、その地域内でしか児童クラブを運営していません。となると、仮に、地域に根差した保護者運営系の児童クラブ事業者が、こういう配点の評価項目がある公募に参加したら、ここでの10点は得られません。ちなみに沼津市は全体で100点です。この、事業実績以外の評価項目はどの児童クラブ事業者でも差が付きにくいので、この10点が獲得できるかどうかは勝敗を分かつ重要なポイントです。
もう1つ。兵庫県加古川市です。公営クラブを順次、民間委託するとしています。加古川市も評価項目を公開しています。そこには「提案額並びに企画提案及びプレゼンテーションにおける各項目の合計得点(満点1,500点)により契約候補者及び次点者を決定する。」とあります。
「業務実績」では、「放課後児童健全育成事業で一定の実績を上げているか。」として、以下の点が示されています。
10点:45支援以上の実績がある。
8点:30支援以上45支援未満の実績がある。
6点:15支援以上30支援未満の実績がある。
4点:5支援以上15支援未満の実績がある。
5点加点:1契約で20支援以上受託した実績がある。
「事業の実施体制と職員の確保・育成について」では、「事業者に不測の事態が生じた場合のリスク管理体制(担当事業所の設置、安定的な業務遂行のためのバックアップ体制、緊急時の連絡体制等)が構築され、具体的に提案されているか。」として、以下の点が示されています。
10点:事業所を加古川市内に設置し、連絡体制等(7時45分-21時対応可)が整っている旨を示している。
8点:事業所を加古川市内に設置することが示されている。
6点:事業所を近接地(神戸市、姫路市、明石市、三木市、高砂市、小野市、加西市、加古郡稲美町及び同郡播磨町)に設置することが示されている。
4点:事業所を兵庫県内の近接地以外の加古川市外の地域に設置することが示されている。
2点:事業所を兵庫県外に設置することが示されている。
0点:記載なし
この加古川市の配点では、近隣市町村に運営するクラブを設置して事業所を設けている事業者しか、得点できません。地域に根差した保護者運営系の児童クラブでは、得られない点です。
つまり、「児童クラブを運営する事業者を選ぶのは、通常は競争で決まる」ところ、「競争に参加した事業者は高い得点を獲得して勝ち抜く必要があるところ、地域に根差した保護者運営系の児童クラブでは逆立ちしても獲得できない配点がある」ので、「各地で児童クラブを運営する広域展開事業者が圧倒的、絶対的に有利」となるのです。
このことが、運営支援が繰り返し訴えている「保護者運営系の児童クラブは合併、合体して規模を大きくしないと、いつかは児童クラブ運営の権利を奪われるよ」ということなのです。
前日までの日本版DBS制度でも触れましたが、この競争における審査基準、評価項目に「認定事業者であること」が盛り込まれたら、それもまた致命的です。そもそも、公募の参加条件に「認定事業者であること」が盛り込まれたら、認定事業者になっていない保護者運営系の児童クラブは門前払い、勝負に参加することすらできなくなります。そしてその可能性は極めて高いと運営支援は考えています。国がわざわざ法律を作って制度を整えたのに、その制度を利用しないとしない事業者に児童クラブの運営を任せるわけがありません。
公設民営の児童クラブは、よほど特別な条件がある地域以外は、競争によって運営する権利を事業者が得ることになります。その競争に勝ち抜くためには、1つの法人で1つのクラブを運営するとか、保護者会や地域運営委員会といった任意団体や、運営しているクラブ数や支援の単位数は多くても1つの自治体区域内にて児童クラブを運営している事業者では、あちこちでクラブを運営している規模の大きな広域展開事業者との競争に勝てないのです。
いくら、保護者運営系の児童クラブを支える団体が「保護者運営こそ、こどもの育ちに親が関わることができる素敵な仕組みです」と訴えたところで、運営する権利を与えられなければ意味がありません。競争に勝たねばならないのに、その競争に勝つために具体的な方策を提示しないのでは、私に言わせれば「利敵行為」そのものです。座して滅亡を待つだけの路線をさも安泰の道として示している、許しがたい行為です。
地域に根差した、事業規模の小さな保護者運営系の児童クラブ(=1つの市区町村だけに運営するクラブがある事業者)は、ただちに市区町村の枠を超えて合併、合体して1つの大きな事業規模の児童クラブ事業者にならねばなりません。さもなければ、競争によって、いずれは運営するクラブを取り上げられる事態に追い込まれると考えてください。競争の場に乗せられずに残るのは、運営の条件が厳しい地域の児童クラブばかりになるでしょう。
「いやいや、うちはもう、信頼があるので非公募、随意契約でずっと運営ができているから」というのは、根拠のない安心感です。市区町村においては、責任ある立場の者の考え方1つで施策がガラッと変化することは当たり前にあることです。首長が替わる、議会の多数派が替わる、児童クラブの担当部局の責任者が替わることで、「いままでは非公募だった。随意契約だった。しかし原則は競争によって、より良い事業内容を提示している事業者を選ぶことが、民主主義社会の基本だ」という考え方の者が、放課後児童の育成に係る福祉行政の担当者となったら、今までの無競争状態は終わりを告げます。「うちは評価されているから随意契約だ、非公募だ」というのが条例で決められていない限り、非公募や随意契約というのは、いつまで続くのか、誰も確実なことは言えないのです。埼玉県所沢市はまさに競争原理の大波をかぶった地域です。どうして、児童クラブの業界はいつも「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ことが得意なのでしょう。わたし(萩原)には解せません。
<なぜ、保護者運営系の児童クラブが生き残らねばならないか>
保護者が児童クラブの運営に関して、運営責任を負うことなく(むしろ負わせてはなりません)、しかし運営について意見を出していく、運営に関与できる手段を残しておくことは重要です。それは利益至上主義で職員の雇用労働条件を向上させない児童クラブ運営事業主の方針に修正を迫ることができるからです。育成支援の向上に寄与できるからです。それもまた、保護者が運営に関わることができる運営の仕組みを持った運営事業者が競争に勝ち抜かなければ意味がありません。「こどもをまんなかに、保護者運営のクラブこそ最善ですよ」とただただ繰り返してそのことだけを集会や研修会で互いに述べ合って満足しているだけの団体は、私に言わせれば、「保護者運営のクラブの滅亡を後ろから後押ししている」のです。
ここで、この運営支援ブログが何度も引用して紹介している「令和4年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 放課後児童クラブの運営状況及び職員の処遇に関する調査 報告書」の内容を一部紹介します。
11ページに、経営主体別の職員配置人数の調査結果が示されています。ここの公立民営を見てください。
NPO法人と保護者会運営は、常勤の職員配置数は1.7人となっています。ところが、株式会社を含む「その他法人」は1.4人です。クラブ運営の軸となる常勤職員は、NPOや保護者会運営の方が、その他法人より配置が手厚いことを示しています。NPO法人はごく一部、広域展開事業者もありますがほとんどは地域に根差した保護者運営系の児童クラブと考えていいでしょう。株式会社運営になると、常勤職員の人数が減ることをこの調査は示しています。逆に非常勤になると、その他法人が最も多くなります。人件費を節約していると言えるでしょう。
14ページは職員の給与に関する調査結果です。常勤職員である放課後児童支援員の収入を見てください。
NPO法人は年間支給額が3,090,158円、約309万円です。これ、賞与込みですからね。ワーキングプアに近いです。
その他法人は年間支給額が2,981,345円、約298万円です。収入がNPOより減っていますね。
保護者会は年間支給額が2,859,721円、約286万円です。保護者会は収入が少ないので職員に支払う給与も減ってしまいます。
この表では勤続年数も注目です。常勤の放課後児童支援員の勤続年数はNPOが6.3年、保護者会が9.6年、その他法人が5.3年です。保護者会はベテランの職員が多いことが分かります。その他法人が一番短いというのは、職員の入れ替わりが激しいということです。児童クラブでは職員の入れ替わりが激しいと、こどもの集団の落ち着き具合に悪影響が出ることは、現場を知る人なら理解できるでしょう。つまり、そういうことです。落ち着かない現場で職員数が少ないならば、事故やトラブル防止のためにどうするか、それは徹底した管理型児童クラブの運営を採用することになるでしょう。
このページでは常勤と非常勤それぞれの月給の者、日給の者、時給の者の人数が示されています。まず常勤者のうち、時給者の割合を見てみましょう。時給者はおおむね有期雇用の形態ですから、常勤であっても時給である者の割合が高いほど、働く側にとっては安定した雇用が約束されているとは言い難い面があります。
NPO法人 月給者全体1393人 日給者全体4人 時給者全体211人 うち時給の放課後児童支援員171人→10.63%
保護者会 月給者全体 368人 日給者全体0人 時給者全体141人 うち時給の放課後児童支援員117人→22.9%
その他法人 月給者全体1958人 日給者全体8人 時給者全体554人 うち時給の放課後児童支援員436人→17.3%
このことは、NPO法人は常勤である放課後児童支援員はなるべく月給で処遇して雇用の安定に努めている傾向がある、と言えるでしょう。保護者会は予算不足もあいまって月給で処遇できる財力がないものと私は考えます。その他法人は財力はありますが、時給制の常勤を増やして人件費を節約しているといえるでしょう。
非常勤の人数はどうなっているのでしょう。全体の人数における非常勤の職員数(放課後児童支援員や補助員などすべて)の割合を見てみましょう。
NPO法人 月給で常勤1393人/月給で非常勤225人/日給常勤4人/日給非常勤12人/時給常勤211人/時給非常勤1904人
→時給非常勤は1904÷3749×100=50.7%
保護者会 月給で常勤 368人/月給で非常勤 64人/日勤常勤0人/日勤非常勤 0人/時給常勤141人/時給非常勤 559人
→時給非常勤は559÷1132×100=49.3%
その他法人 月給で常勤1958人/月給で非常勤127人/日勤常勤8人/日勤非常勤10人/時給常勤554人/時給非常勤4567人
→4567÷7224×100=63.2%
このことは、株式会社がそのほとんであると考えられるその他法人では時給で働く非常勤職員が職員数の6割を超えているということを示します。その分、人件費が抑えられているといえます。時給者は有期雇用契約が多いことを思うと、無期雇用も含まれる月給者よりも人件費が抑えられるのです。なぜ抑える必要があるのかは、言うまでもありません。利益を確保するためと考えられます。児童クラブの安定した雇用と引き換えに、事業主が利益を確保するのです。
46ページに、経営主体別の支出の科目の割合が示されています。どの分野に支出しているかの割合です。分かりやすいので紹介します。
人件費にどれだけ支出を充てているか、です。公立民営のデータです。その他法人が一番低い割合です。それだけ人件費を出していないこととなります。
NPO法人 42.4%
保護者会 51.9%
その他法人 41.3%
同じデータから、「事業費、事務費」の割合を示します。こどもの支援、援助に使われるお金の割合と考えていいでしょう。
NPO法人 54.6%
保護者会 43.8%
その他法人 43.1%
その他法人がNPOより一段と低い支出の割合となっています。わたしのもとには、株式会社である広域展開事業者で働く職員から「こどもが使う折り紙を買う経費が無い」「本も買う予算が本部からもらえていない」という報告がいくつか届いていますが、まさにそのような状況を裏付ける数値といえるでしょう。人件費をけちり、まして育成支援に使うカネをもケチっている方向性が濃厚に伺えます。
そして「その他」の割合も示しておきましょう。人件費や事業費や減価償却費以外ですが、ここに利益として先に控除されている額が含まれている可能性があります。
NPO法人 1.3%
保護者会 2.9%
その他法人 6.4%
公設民営の児童クラブの事業には補助金(つまり、税金)が投入されています。使い道が明らかではないようなカネの使われ方があってはならないのですが、この「その他」に、その他法人が他の運営主体より多く予算が使われているのは、好ましくないと運営支援は考えます。
最後に、運営主体別の利益を示すデータを示して終わりとします。57ページにあります。このことは以前も何度も紹介しているデータです。損益差額、つまり1年間の収入から支出を差し引いた残りの額です。これも公立民営です。
NPO法人 940千円つまり94万円
保護者会 1003千円つまり100万3千円
その他法人 2850千円つまり285万円
広域展開事業者は営利法人、非営利法人どちらにもあります。私が思うに、非営利法人が全国展開するその動機がとても気になります。優れた育成支援の理念に基づく育成支援の実践を全国各地で行いたいのであれば大歓迎ですが、2023年に明らかになったように、非営利法人である広域展開事業者が補助金の不正請求をしていた事案も実際にありました。非営利法人の看板を掲げて営利追求に余念がないのであれば、自治体や社会の信頼を裏切る行為に近いと私は考えます。児童クラブを運営する事業者はすべて、支援の単位ごとの収支を科目ごとに明らかにするべきでしょうし、国はそれを義務付けるべきでしょう。そうすれば、どれだけの額が人件費に使われ、どれだけの額が事業者の利益として計上されているかが分かります。必要以上に広告宣伝費に付けているとか本部の役員の人件費に付けているというのは実質的な利益計上と考えられますが、そういう姑息な手段も収支公開を義務付ければ、見抜けます。
なぜ運営支援が、地域に根差した保護者運営系の児童クラブの合併合体を勧めるのか。それは、営利非営利とわず広域展開事業者は残念ながら、どうも利益計上に夢中になっていて、職員の雇用労働条件や育成支援の質の向上にさほど熱心ではないとうかがえるデータが見られるからです。今後も相次いで行われるであろう公募、競争の世界で、ますます広域展開事業者が勝ち抜いて運営する児童クラブ数を増やすのであれば、そういった、過酷な児童クラブ職員の雇用労働条件が更に固定化される恐れが強まるのです。充実した育成支援の実践が妨げられる恐れがあるからと考えているからです。スキマバイトの多用も同じです。低い時給単価で働く者が児童クラブで増えることはその賃金水準が主流であるとする傾向を強めるからです。
このまま広域展開事業者が勝ち続けてしまい、低水準である児童クラブの労働条件を向上させる要素が無いまま低い水準で固定化させることを、私は懸念しているのです。(これも何度も訴えていますが、わたしは児童クラブ事業で一切儲けてはならない、とは考えていません。儲けていいんです。ただしそれは、事業の質の向上に努め、職員の雇用労働条件を他の業種よりも上回る水準を確保した上で、どうぞ事業者本体が利益を計上してください、というものです。職員の雇用や育成支援の質を犠牲にして事業主が儲かることに反対しているだけです。ウィンウィンでいってください。現場も本社もウハウハ、そしてこどもは「明日も学童に行きたい!」、これがいいんです)
競争で勝ち抜くためには、各地でたくさんの児童クラブを運営することです。地域に根差した保護者運営系の児童クラブが一致団結して、大きな事業者になることが今こそ必要です。そして競争の場で広域展開事業者を打ち負かせばいいんです。育成支援の質では広域展開事業者に負けるはずがないでしょう。負ける要素は事業規模や財政基盤です。その負ける要素を解消するのが、合併や合体です。だからこその、レッツ合体! です。
(お知らせ)
<新着情報!>
2025年6月から放課後児童クラブ(学童保育所)の新規設立と日本版DBS制度への対応に際してご相談者様、ご依頼者様からのニーズに万全対応を期すべく「イオリツ行政書士事務所」(佐久間彩子代表)と、業務上において連携することと致しました。
弊会に寄せられた児童クラブ新規設立のご相談、ご要望に際しては、児童クラブ全般の説明や業務設定の支援を弊会にて行い、クラブ設立に関する具体的な相談や手続きにつきましては、イオリツ行政書士事務所にて対応となります。また、日本版DBS制度につきましては、弊会は事業者の労務関係面の対応助言や必要規程の整備を担当し、イオリツ行政書士事務所が制度の説明や、認定事業者を得るための具体的な手続きの説明や代行面を担当いたします。
佐久間氏は、「日本一、学童保育に詳しい行政書士を目指す」として2025年度から事業を開始された気鋭の行政書士です。児童クラブに関しても豊富な知識を有しており、また実際に保護者運営系の児童クラブの利用者であり運営にも関わっておられるので、児童クラブに関する業務についてはまさに最適任です。
児童クラブの新規設立や運営主体の変更の手続き、また日本版DBS制度の全般的な相談には、ぜひとも「イオリツ行政書士事務所」まで、お問い合わせいただけますと幸いです。
「イオリツ行政書士事務所」(https://office-iolite.com/)
代表者:佐久間 彩子(さくま あやこ)
所在地:〒231-0048 神奈川県横浜市中区蓬莱町2-6-3 KOYO関内ビル406
もちろん、イオリツ行政書士事務所は日本版DBS制度についてきめ細やかな事業者様のサポートが可能です。
・認定取得に向けた申請書類の整備/相談
・導入/管理体制の構築、運用のサポート
・職員/保護者向けの説明サポート
・制度や法令に関する最新情報の提供
・就業規則等の整備、労務関係面の対応助言(弊会も連携して対応いたします)
日本版DBS制度についてのご相談は、弊会並びにイオリツ行政書士事務所まで、ぜひご相談ください。(https://dbs.office-iolite.com/)
☆
弊会代表萩原ですが、必要な手続きを経て2025年9月1日付で、社会保険労務士として登録となります。埼玉県社会保険労務士会大宮支部となります。同日付で「あい和社会保険労務士事務所」を自宅にて開業いたします。詳細は後日、ブログに投稿いたします。同日以降は、社会保険労務士としての業務は「あい和社会保険労務士事務所」で、放課後児童クラブ(学童保育所)の個別具体的な運営支援については「あい和学童クラブ運営法人」で分離してお引き受けいたします。「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽に児童クラブについての講演、セミナー、アドバイス、メディア対応についてご依頼ください。
※新着情報はここまで。「お得情報」が下にあります!
〇弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない、あらゆる児童クラブを応援しています。
☆
放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。
さらに運営支援からの書籍第2弾として、放課後児童クラブを舞台にした小説「がくどう、序」を発売しました。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。もちろんフィクションですが、リアリティを越えたフィクションと、自信を持って送り出す作品です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いたハートフルな作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説です。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。
この2冊で、放課後児童クラブの世界をかなり知ることができると運営支援は自負しています。いわゆる日本版DBS制度において、放課後児童クラブと関わりができるであろう弁護士や社会保険労務士、行政書士といった各士業の方々には、放課後児童クラブの世界を知るにはうってつけの書籍となっています。他の業種、業態とかなり異なる、ある意味で異質の業界である児童クラブについて知ることができる、運営支援からの2冊を士業の方々には、ぜひご活用ください。
☆
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
☆(お得情報!)
(放課後児童クラブのエアコン機器の点検と清掃を考えている方に朗報です。弊会をバックアップしてくれている、埼玉県上尾市の「SVシステム株式会社」(埼玉県上尾市の電気・空調設備施工管理会社|点検・修理・メンテナンス|SVシステム株式会社)が、「児童クラブ限定」で、格安にエアコン機器の点検と清掃を承ります。埼玉県や上尾市に比較的近い地域であれば県外でもお伺いできます。見積はもちろん無料です。技術者のスキルは超一流。私が以前、児童クラブ運営事業者だったときからの長いお付き合いです。弊会お問い合わせメールで連絡先をお送りいただければSVシステム社に転送いたします。直接のご連絡も、もちろん大丈夫です。夏前にぜひ、エアコンの点検を!)
☆
(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)