滋賀県栗東市市内の放課後児童クラブで起きた子どもへの虐待疑惑問題。子どもの心の叫びを社会は無視してはならない
放課後児童クラブ(学童保育)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。運営支援ブログでは、滋賀県栗東市内の放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所の中核的存在)で、施設代表者によって1年半前に行われた不適切な対応によって子どもが心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しめられているとされる問題について注目しています。3度目となる記事が地元メディアから出ました。当ブログでも紹介します。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の実施状況(その年の5月1日時点の状況)の4回目は、後日改めて投稿します。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<子どもの悲痛な叫び>
滋賀報知新聞は2024年12月26日に、滋賀県栗東市内の放課後児童クラブに在籍していた児童が施設側の不適切な対応によって今なお治療を余儀なくされている事案について記事を掲載しました。12月12日に続いてこれで3度目の報道です。記事は同新聞のHPで全文読めますので、ぜひ目を通してください。
当該記事:滋賀報知新聞
今回の記事は、とても胸が痛みます。児童クラブの代表者から受けたとされる不適切な行為について、子どもが切々とそのつらさを訴えている文章がそのまま写真で掲載されています。そこには、「わたしは考えるだけでもふく痛 こきゅう困なん、などが私の症じょうです。わたし自しんも学校は好きだけれども頭の中に〇〇が住みついてえんぴつをさわることすらできない、体が動かなくてねたきりでした」と書かれています。
実は当運営支援ブログにも、関係者から、被害に遭われたお子さんが描いたこの文章をそのままプリントアウトされたものが届いています。そこには、保護者さんからの注釈で「お医者さんに説明がうまくできないので本人が書きました」と説明されています。作成されたのは令和5年9月です。
先の報道では一部が紹介されていました。当運営支援ブログでは、被害児童が書いた中で、児童クラブ関係者として決して看過できない部分について紹介します。なお、個人名等が特定される文言は伏せ字に変えます。
(以下、被害児童の手記引用)
「入ってくるとき「失礼します。」と言っているのに「おはようございます。」と言いなさいと言われました。私がパワーハラスメントにあったのは今年の六月ぐらいです。ときには土下ざをされたりすることもありました。」
「六月からひたすら勉強をさせられました。いやだったことは①アンケートもとってないのに〇〇が選んだべんきょうをさせられること②〇〇が選んだ勉強は教えてもOKだけど自分でもってきたべんきょうは教えません」と言われたことがいやです。③べんきょうをするというのはいいけど「学童」なので多学年とかの交流もありませんよということがいやです。④自分にぴったりの勉強をさせられないということです。⑤わたしはふだんから、朝も起きて、家に帰えってからもしゅくだいじゃない勉強をしているのに、これ以上どうやったらいいかわからないときです」
(引用ここまで)
児童クラブの関係者なら、この子が、しっかりと意思表明をしていることがおわかりでしょう。そして児童クラブ側が、子どもの意思表明を無視していること、とりあっていないこともお分かりのはずです。ここで「学童は勉強させるところじゃないからね」などと脊髄反射しかできない児童クラブ関係者もいるでしょうし、「子どもの希望をそのまま何でも受け止めることはできないよね」と言う児童クラブ関係者もいるでしょう。いずれも表面的な理解しかしていません。
特に「③」に注目してください。被害児童は当時、小学2年生です。小学2年生の子どもが、児童クラブのことについて、多学年=異年齢による集団生活の良さを実感しているのですよ。児童クラブは異年齢集団の中で子ども達が支援員の適切な支援、援助のもとに自主的に成長を遂げていく場です。その児童クラブの本質を分かっている子どもが、児童クラブ代表者の一方的な対応のために傷つき、とてもつらかったと訴えているのです。この事案、単に子どものわがままではないことが実感できるはずです。
なおこのことを補足説明しますと、昨年5月に児童クラブの代表者が、それまで遊びや異年齢交流を比較的重視していたクラブ運営方針を急激に勉強中心に変更したことが背景にあります。保護者は、勉強を重視することには異論はなかったようですし、従来の過ごし方と勉強を中心にした過ごし方を事前に選択できるようにしていたということで、一定の配慮はなされていたようです。
問題はその勉強中心の「進め方」にあったようです。昼食や、おやつ時間以外はひたすら勉強、それも代表者が準備した資料や講師役の指導以外の勉強は認めないという極めて硬直的な進め方があったという情報があります。そのことを指して、この被害児童はとても嫌だった、ということを訴えているのです。
<対応の遅れがすべての元凶>
今回の記事では、「土下座を強要させられたか否か」が1つの争点となっていることが示されています。児童クラブ側は否定し、子どもは、土下座が嫌だったと訴えています。子どもがPTSDを発症したその要因の1つが、謝罪の強要、つまり土下座の強要ですから、ここが争点になるのは当然です。
先日の北九州の中学生殺傷事案もそうでしたが、「映像」は物事を判定するには重要な材料となります。私が児童クラブにも様子を記録するカメラを取り付ける必要性を訴えていることも同じです。ややもすると密室になる児童クラブで、「やられた」「やっていない」の水掛け論を防ぐには映像による記録は判定において重要な判断材料となります。
ところが、関係者によると、この栗東市内の児童クラブにもカメラは設置されていたということです。ではなぜ、それが活用されないのか。それはつまり、対応の遅れにほかなりません。
被害に遭ったと主張する保護者側からの連絡や要請について行政側が対応をずるずると遅らせた結果、1年半後に調査が始まりました。それではとてもカメラの映像は残っていません。すべてが対応の遅れに起因しているのです。もっと早く行政が取り合ってくれれば、この子はこれほどまでに悲痛な心の叫びをあげずに済んだかも知れないのです。
<ガバナンスの不全がある>
今回の事案は児童クラブの代表者と、在籍児童側のトラブルです。本来、何か問題があった時は行政は当然のこと、児童クラブの運営事業者自身も、事案の客観的解明に努めねばなりません。しかし、運営事業者の責任者やそれに相当する地位におる者が当事者である場合、運営事業者は客観的に事案の調査解明ができるでしょうか。第三者委員会を設置して調査を委ねるという判断ができるでしょうか。
比較的大きな事業者であれば、それも可能でしょう。ところが児童クラブの世界に多い、事業者の代表者以外にはさして構成者が存在しない規模の小さな事業者であれば、事業者、つまり組織や法人として代表者や責任者の行った行為について客観的に調査解明を進める姿勢になりにくいことは、残念ながらありえることです。
NPO法人や社会福祉法人、保護者会もそうですが、児童クラブの運営事業者で起きたトラブルについて、第三者が調査解明を進めることができる仕組みが必要でしょう。行政に期待したいのですが、今回の栗東市の事案のように、消極的姿勢が顕著な場合は行政にも期待できません。残念ながら、児童クラブの世界は事業者、事業の責任者のコンプライアンスの意識が低い場合が結構多く、栗東市のような問題は常に起こりうる可能性を含んでいます。この後進性は、小規模の児童クラブ運営事業者に早急に改善が求められる問題です。国はこの問題に対する何らかの方針を明示するべきです。
この問題、児童クラブにおける子どもの人権問題に関わる重要な事案です。マスメディアがしっかりと調査報道して、何があったのか、再発防止に何が必要なのかを報じるに値する事案だと私は確信しています。ぜひマスメディアにはこの事案を取材して報道していただきたいと運営支援は要望します。こちらにお問い合わせいただければ関係者につなぐことだけはできます。ぜひ、取材して報道してください。
<おわりに:PR>
弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。
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弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
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放課後児童クラブを舞台にした小説を完成させました。いまのところ、「おとなの、がくどうものがたり。序」と仮のタイトルを付けています。これは、埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。出版にご興味、ご関心ある方はぜひ弊会までご連絡ください。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ぜひご連絡、お待ちしております。
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「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)