民間委託した放課後児童クラブ(学童保育所)の悲惨な現実。市区町村の管理責任はどうなっている? 民間委託は丸投げとは違う! 上
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「運営支援」を行っている「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く、成長ストーリーであり人間ドラマ小説「がくどう、 序」を書きました。アマゾンで発売中です。ぜひ手に取ってみてください! (https://amzn.asia/d/3r2KIzc) お読みいただけたらSNSに投稿してください! 口コミ、拡散だけが頼みです!
弊会には、全国各地の児童クラブ関係者、いろいろな立場で児童クラブに関わっている人からメールが届きます。一日何通も、というほどではありませんが、先日届いた児童クラブ職員からのメールは、あまりにもひどい状態を伝えるものでした。そのメールに記載されていることが「客観的な事実」であるかどうか、もちろん私には検証することはできません。ただ、伝えられた内容があまりにも具体的で、お名前も勤務先の地域も明記されており、わざわざ偽って私に伝えないだろうとは思うのです。市区町村で児童クラブを担当する人にぜひ届いてほしい。あなたたちが選んだ事業者が、実はどのように児童クラブを運営しているか、しっかり調べてください。こどもの権利がないがしろにされ育成支援を真剣に考えている職員はどんどん追い込まれていく。税金は現場の事業に使われずただ企業が丸儲けするだけ。それで、いいんですか?
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<届いた報告>
弊会には全国各地の児童クラブの関係者から相談や報告のメールが届きます。その中で、6月になって弊会に届いたメールの内容に私はがくぜんとしました。メールの送信者は、最近になって民間委託を行って民間企業が運営するようになった児童クラブで勤めている人です。メールを転載したいぐらいですがそれはできませんので、そのメールに記されていた内容で私が問題だと感じた部分を紹介します。なお、先に記したように、メールの内容が客観的に事実かどうか、その検証は私にはできません。あくまで「児童クラブ職員が、こんなことを訴えている」という内容です。よって、(もともとこのブログの多くの投稿記事がそうではありますが)「これが事実だとしたら、どうなのだ」ということはご承知おきください。
(私がこれは問題だと感じた点)
・常勤クラスの職員が他の職員、補助員にパワーハラスメントを行っている。
・その常勤クラスの職員を含む複数の児童クラブ職員による、こどもへの不適切な行為がある。
・パワハラ行為やこどもへの不適切な行為を事業者に通報しても無視されたこと。
・後期高齢者世代(75歳以上)の常勤クラスの支援員の育成支援業務があまりにも程度が低く、児童クラブ全体が荒れていること。育成支援の質が極めて低レベルであること
・あまりにも資質に欠ける常勤クラス職員の行動、言動がある。例えば「いすに座ったまま動かない常勤職員がいる」。避難訓練の際は「こどもより自分(職員)が先に逃げるようにしてくれ」と周囲に指示してはばからないこと。
・こどもが起こしたトラブルに対して状況を説明されなかった保護者が児童クラブの「職員」に対して厳しく対応した際にも常勤クラスの支援員や事業者が保護者に対して全く説明などの対応を行わなかったこと。結果的に保護者に誠実に対応しようとした職員が一方的に非を責められた。
・保護者との対応トラブルにおいて対処の指示を求めて何度もメール等で事業者に報告するも、全て無視されたこと。
・運営事業者が児童クラブに来る際、こどもや育成支援業務に対して何ら関心を持っていないこと。
・提示された労働契約に記載されている賃金を下回る額でしか給与が支払われていない状態にあること。
・こどもに対する育成支援における、非合理的な業務上の指示。例えば、こどもが職員のプライベートゾーンを触ってきても、何ら注意や指導をしてはならないとする、常識を欠いた事業者の指示が行われていること。
・業務上において職員が負った、治療を要する負傷に対して労災保険制度の適用を事業者が認めないこと。
・業務上における諸問題に対して、職員が他の機関等に相談することを禁じていること。なお事業者は職員からの相談は無視する。
・児童クラブの備品のトイレットペーパーなどを無断で持ち帰る職員がいること。その改善を求めても事業者は無視すること。
・無記名の保護者アンケートに対して、事業者は筆跡を調べて提出者を特定していること。
・十分な運営費用が契約によって支給されているはずにもかかわらず、育成支援に必要な教材が不足していること。児童クラブに必須の折り紙や、白い紙など購入されず、心ある一部の職員が自腹で購入して使っていること。しかもその行為に事業者から「勝手なことをするな」と厳しく責められていること。
<法令違反もはなはだしい>
上記の問題点ですが、「それぐらい、うちのクラブでもある」と思った児童クラブ関係者が多いでしょうか。もしかすると、そうかもしれません。それが本当に問題なのですが。しかし、絶対にあってはならないことばかりです。
「こどもへの不適切な行為が蔓延している」=こどもの権利が侵害されている可能性が極めて高い状態です。さらに、放課後児童健全育成事業を行うことを自治体と約して補助金が交付されているなずですが、とても健全育成事業が実施されていると思えない状況。債務の不完全履行です。
「パワーハラスメント行為」=いうまでもなく、法令違反です。
「労働契約で提示された賃金を下回る額が支給されている」=これは私の想像ですが、この事業者は他の地域でも同様のことを行っているので、このことが、この通報者の地域でも行われている可能性が高いのですね。働く側は、「事前に事業者から提示された賃金額」を「実際に労働した時間」にあてはめて考えて時給単位の賃金を計算します。すると、実際の支給額とズレてしまう。このからくりは2つあって、1つは「提示された賃金額が基本時給ではなく、最低賃金に合法的に含まれる諸手当を含めた額を基本時給と錯覚させるような契約になっている」。もう1つは「時間外勤務に対する賃金支払い。勤務シフト4時間のところ急な対応で5時間働いたとしても給与は4時間分しか支払われない」。もちろん、これは重大な法令違反です。
「労災保険の適用を認めない」=言語道断です。
「児童クラブの備品を勝手に職員が持ち帰る」=窃盗です。犯罪です。
「育成支援に必要な教材がそろっていない」=これは補助金交付団体として大問題です。職員への報酬もそうですが、教材費においても必要十分な額をもって、自治体は事業者と委託料の契約をしたり指定管理料を支払ったりしているはずです。それが実際、現場で使われていない。ということはどういうことでしょう? 考えられるのは、事業者が「利益として」吸い上げていることしか、ありません。
育成支援に関しても、全てにおいて問題です。こどもの行動に対して、その行動が社会規律上、また育成支援の業務上において問題があることがあったとき、それを正しくするように指導する、注意するのも必要な育成支援です。しかし事業者は「一切、こどもの行動に口を出すな」という趣旨の指示を職員に出しています。それで、健全な育成支援ができるはずがない。しかも、児童クラブ内で起きたことは一切、口外することを禁じています。これは業務上の守秘義務という錦の御旗を悪用した、「ひどい育成支援の実態を外部に漏れ伝わることを防ぐための措置」に他なりません。
<では自治体は?>
運営支援に連絡をくださった方のクラブがある自治体は、つい最近、この事業者に民間委託を任せたばかりです。幸い、この自治体は民間委託に際して、これでもか!とばかりの利点をアピールする資料をまだホームページで公開しています。それがいかに現実と乖離している可能性が濃厚であるか、ということです。その資料の一部をここに列記して転載します。それに私のツッコミを入れておきます。なお、趣旨を変えない限りにおいてこちらの責任で文言を一部変えています。自治体名を特定されないようにするためです。
「(自治体が)事業実施の責任者※民営化ではなく、民間委託(公設民営)」→では、ずさんな運営の責任をしっかりとっていただきたい。民間委託を民営化でない、とするのはどうなのか。行政が自ら記している「公設民営」の「民営」の文字は、お飾りか?
「民間事業者のネットワークを活かした採用力による運営の安定化」→常勤クラスの支援員は、とても資質に欠ける職員ばかりですが、それでも「採用力」があると言えますか? こどもが暴れて職員のプライベートゾーンを触っている児童クラブが、安定した運営がなされているとお思いか?
「児童クラブ職員への研修体制の確立・充実による児童クラブ職員の資質向上」→論外。どこに資質向上の効果がある? 「こどもより先に自分を逃がせ」と避難訓練で指示する職員に、資質向上の効果はどこにある?
「民間事業者が有する知識や経験、人材の活用による均質かつ良質なサービスの提供」→悪質な冗談に過ぎない。どこが良質なサービス? どこに人材の活用がある? 事業者がクラブに来てもこどものことを全く気にしない事業者に、どこに育成支援の知識や経験がある?
この自治体は、公募プロポーザルで児童クラブの運営事業者を選定しました。公募プロポーザルにした理由について、資料には「価格のみではなく、事業者の業務実績、専門性、企画力、人材育成能力、運営能力等を勘案し、総合的に優れている事業者を選定」とあります。これもまた、全く正反対の内容の事業者を、わざわざ手間暇をかけて選んだとしか、いいようがないですね。
<もうこれは、看過できないですよ>
この事業者に関しては他の地域でも児童クラブを運営しています。この事業者の運営するクラブの「すべて」が問題だとはさすがに私(萩原)も思いませんが、「多くの地域で」児童クラブの運営に問題がある、それを隠していると思わざるを得ません。
この事業者に限らず、保護者運営の児童クラブにしても、ずさんな運営をしているところは、残念ながら多すぎます。いま具体的に私が助言やアドバイスを継続的に送っている児童クラブも、保護者運営で、今回のブログで取り上げたようなひどい内容がそのまま当てはまるぐらいです。児童クラブの運営は、営利企業系と、保護者系、公営、保育所や幼稚園などを手掛ける非営利法人による4タイプに大きく区分できるでしょうが、それぞれにおいて問題を抱えています。営利企業系は、そこに「補助金ビジネス」という面が加わり、税金の適切な使われ方という点でも大いに問題があります。
次の「下」でたっぷり書きますが、この状態はもう見過ごしてはなりません。行政に管理監督を強化させる仕組みが必要ですし、その根拠を与える法令の整備が必要です。そしてメディア(報道機関)がじっくり取材して現実を一般社会に暴露、公開することも必要です。
今回の最後に、改めて自治体が民間委託のメリットを誇らしげに掲げている資料から抜粋します。
「(自治体が)事業実施の責任者 ※民営化ではなく、民間委託(公設民営)」
ということは、今回取り上げた児童クラブで行われていることが事実であれば、自治体は責任をもって是正に取り組むことから免れないことを自覚しているということですね。民間委託とは「丸投げ」ではない。しかし現実、丸投げではありませんか? 現実に、「事業実施の責任者」という文言は、単なる飾りになっています。飾りじゃないのよ責任者は、です。
<PR>※お時間のある時に、目を通していただければ幸いです。
弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。
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放課後児童クラブを舞台にした、萩原の第1作目となる小説「がくどう、序」が発売となりました。アマゾンにてお買い求めできます。定価は2,080円(税込み2,288円)です。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員・笠井志援が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。リアルを越えたフィクションと自負しています。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、群像劇であり、低収入でハードな長時間労働など、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。素人作品ではありますが、児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描けた「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作に向いている素材だと確信しています。商業出版についてもご提案、お待ちしております。
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弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
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「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)