東京都豊島区が「小1の壁」解消に挑む。放課後児童クラブ側は誤解しないように。必要な施策は着実に行うべし。
放課後児童クラブ(学童保育)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。東京都豊島区が、小学校登校前の児童の受け入れを試験的に実施することを発表しました。帰り道の安全確保策も実施するとのこと。多少、誤解を招きそうですが、子どもが安全に過ごせる場所を増やすことは良いことです。そして短い時間であっても、しっかりと子どもの安全を確保できるための能力を備えた人を配置していただきたいと期待します。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<報道から>
このところ放課後児童クラブの報道が相次いでいる日本経済新聞が、2024年12月9日の19時21分に配信した、「豊島区、朝の学童で1年生預かり 2小学校で試験導入」という見出しの記事を一部紹介します。
「東京都豊島区は2025年1月から、区内の小学校2校で朝の子どもの預かりを始める。平日の7時45分から登校時間まで、学校の用務員が校内の学童クラブや校舎内で見守る。子どもが小学校に上がると子どもの預け先に困る「小1の壁」の解決を目指す。」(引用ここまで)
また、豊島区のホームページには詳細に紹介されています。見出しは、「「小1の壁」対策を試行実施します」となっています。そして、「昨今、小学校進学を機に子どもの預け先がなくなり、仕事と子育てが両立できなくなる、いわゆる「小1の壁」が全国的な課題となっています。豊島区では、子どもの朝の居場所づくり等にチャレンジします!まずは、令和7年1月8日~3月31日の間、駒込小学校と清和小学校で試行実施します。」と、その文面からは、区側の意気込みが伝わってきます。
豊島区のHPには、「平日(祝日を除く月曜日から金曜日)の7時45分から登校時間まで、学校用務員が子どもスキップ等で児童を見守る。」とあります。文中の「子どもスキップ」というのが、豊島区における、いわゆる放課後全児童対策事業の名称で、つまり子どもスキップは、学童クラブと、一般利用の2つの事業を同時に行っている、子どもの居場所事業ということになるのでしょう。
この朝の居場所を利用できるのは、HPによると「駒込小学校・清和小学校に通う小学1年生で、学童クラブ登録者かつ土曜日・長期休暇中の早朝利用者」となっています。つまり児童クラブの入所児童が対象で、このサービスの利用を希望する人は事前登録が必要です。子どもスキップ一般利用の世帯は対象外ということでしょう。また兄弟姉妹が児童クラブに入所していれば、今は入所していない兄弟姉妹もこのサービスを利用できるようです。
利用条件は、「必ず保護者が預かり場所(子どもスキップの教室または指定の教室)まで付き添うこと。」とあり、子どもだけで受け入れ場所に向かわせることはできないようです。保護者の引率が必要ということですね。その点からも、子どもの安全に配慮した事業であることが分かります。
費用は児童クラブの利用料だけであり、追加料金はないとのことです。
もう1つ、豊島区は下校時にも新たな試みを実施すると発表しています。区のHPには「夕方の見送り(申込不要)」として紹介されています。
これは、平日(祝日を除く月曜日から金曜日)の午後4時から午後6時までの間に下校する子どもを対象に、見守り員(シルバー人材センター会員)が暗い道や交通量の多い道を安全が確保できる地点までピストンで見送る、となっています。豊島区のHPを確認すると、児童クラブの登録児童であっても、午後6時までに降所する子どもには、保護者の迎えは義務づけられていないようですから、もともと子どもだけでの降所、帰宅ができるようです。さらにその安全を確保するための見守りを行う、ということです。
下校時の子どもの見守りは極めて重要です。子どもが下校時に事故や事件に巻き込まれることは無くなりません。このサービスだけでも十分、子どもをしっかり守るという行政の姿勢が伝わります。この下校時の見守りだけでも、試験的な先行実施ではなくて準備が整い次第、区内全部の子どもスキップを対象に実施してほしいものです。
<児童クラブ側は誤解しないように>
この手のニュース、つまり「子どもを預ける、受け入れる時間が長くなる新たなサービスや施策の導入」には、児童クラブ側の一部から必ずと言っていいほど懸念の意見、否定の意見がでてきます。その内容は「子どもが長い時間、親元を離れることがかわいそう。子どもの育ちに良くない」というものです。
運営支援は、そのような「子どもがかわいそう」という意見は短絡的過ぎると考えます。しいて申せば、現実的に対応が必要な事には対応し、将来的に子育て環境の整備を整えるための活動や運動はそれはそれで着実に行うことと、区別して考えるべきだという立場です。
子どもが朝早くから親元を離れてしまう、ということがかわいそうという意見ですが、そもそも、そのような家庭は保護者が出勤等の理由で家庭を留守にしているために小学校の校門が開くまで校門付近で待機しているもので、そのような子どもに安全な居場所を確保するという事が目的です。より、子どものためになる新たなサービスです。かわいそうどころか、「よかったね!」の世界です。子どもの安全を確保することは子どもの利益そのものです。
現状において、保護者のワークライフバランスと子どもの学校生活がうまく組み合わさっていない状況が存在しているのですから、そこに手当をして、子どもの安全な居場所を確保することは、まったくもって正しい施策だと運営支援は考えます。
それはそれとして、「本当は育児時短制度でもっと短い勤務時間を選択したいのだけれど、勤め先にはそのような制度がない」とか「育児時短制度でもっと短い勤務時間を選択したいけれど、勤務時間を短くすると収入が減るので、それができない」という制度上の問題は別途、改善される必要があります。それは児童クラブ側の問題ではなく社会の問題です。児童クラブ側は、「いま、困っている子ども、保護者を助けること」に徹すればいいのです。
さらにいえば、「今だって育児時短制度を使えるし、もっと短い就労時間でも十分暮らせるだけの収入はある。しかし、親である自分自身が仕事をしたい、今の時期は仕事中心に生きていきたい」という子育て世帯も必ずあります。そのような世帯に、安心して子どもが過ごせる居場所を準備することは、子育て支援の施策として必要です。
国には、企業側が、子育てにもっと時間を使いたいという労働者にとって十分な配慮ができる制度を強力にかつ早期に実施できるように後押しをすることを望みます。育児時短制度やフレックスタイム制を導入して子育て中の保護者が安心して子育てできるように取り組む企業にメリットがあるような制度を強力に推し進めていただきたいですね。
同時に、子育て支援をする側は、多種多様な働き方を望む子育て世帯を不安にさせないようなサポートが必要という認識をもって、子育て世帯に寄り添う意識を醸成していくことが必要でしょう。
<重要な点、誤解を招きやすい点>
豊島区が試みる朝の居場所の創設ですが、午前7時45分から登校時間まで、となっています。これが午前7時30分からでも午前7時からでも良いのでしょう。千代田区の一部の児童クラブは午前7時に開所しています。大事なことは、学校の登校時間まで、長くても1時間未満という時間ですが、「短い時間だから誰でも子どもの見守りができる」とは思わないことです。児童クラブに属する人たち側の懸念は、おそらくここにあるのでしょう。子どもの育ちをしっかり見ているプロフェッショナルだからこそ、「短時間であっても、子どもの安全安心を確保するには、しっかりとした職員が従事することが必要だ」という意識は確実にあるはずです。
朝に、保護者に連れられてやって来た子どもの様子を見て、その子の状況を理解すること、短い時間であっても子どもが無事に過ごせるように配慮できることが必要です。もっといえば、連れてきた保護者の様子を見て、何か異変があるのではないかと察知する能力も必要です。「単に、決められた時間だけ、子どもがけがをしなければいい」という意識だけで従事する者であっては困るのです。
豊島区には、できれば、この朝の見守りに従事する者には、せめて「子育て支援員」研修を修了した者を充てるようにしていただきたいですね。もしくは、しっかりと区の責任において、子どもが安全安心に施設で過ごすために必要な技能、技量について事前研修並びに中途の研修をしっかりと施していただきたいと切に願います。子育て支援員については国の資料に詳しいです。(地域や家庭の多様な子育て支援)
最後に今回の報道についてあえて申し上げます。今回の日経新聞の見出しに「学童」という文言が使われています。確かに、朝の受け入れ場所としては学童として使っている場所を使用するのですが、朝の子どもの受け入れは、放課後児童健全育成事業ではありません。つまり、場所として学童クラブの場を使うだけであって、「学童保育」と一般的に称される仕組みを利用するのではありません。
この点、一般的には、「そうか、学童(保育)というのは、朝の学校が始まる前の短い時間でも、子どもを預かることができるんだ」と誤解される恐れが非常に強い。児童クラブ側の懸念はこの点にもあるでしょう。「それは、学童保育ちゃうで! 学童はそんなもんじゃないよ!」と叫びたい気持ちがあることは私も十分に理解できます。
あくまで、利用する場所として児童クラブの施設の場を用いるだけであり、この朝の登校時館前の子どもの受け入れは学童保育でも児童クラブでもありません。「子どもの居場所」作りです。その点、メディアも誤解されぬように期待します。
子どもが、ひとりで、放置される、あるいは取り残される状況を社会がつくらないために、ありとあらゆることを実施していきましょう。そのための予算なんて、ほんのわずかです。
<おわりに:PR>
弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。
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弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
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放課後児童クラブを舞台にした小説を完成させました。とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子を描いた作品ではありません。例えるならば「大人も放課後児童クラブで育っていく」であり、そのようなテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。出版にご興味、ご関心ある方はぜひ弊会までご連絡ください。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ぜひご連絡、お待ちしております。
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「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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