日本版DBS時代を前に、放課後児童クラブで働いていて「ある事情」を持っている人に、伝えねばならないこと。

 放課後児童クラブ(学童保育)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもが関わる職業の場において特定の性犯罪の前科を持っている人が働くことがないような仕組み、いわゆる「日本版DBS」について、どうしても伝えておかねばならないことがあります。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<過去に、性犯罪をしてしまった事実がある、放課後児童クラブで働いている方へ>
 今回の当ブログの内容ですが、まずは、この日本版DBSに関しては鈴木愛子弁護士(愛知県弁護士会所属。社会福祉士、放課後児童支援員)のブログが、制度の仕組みや懸念、不安点などを相次いで発信しています。鈴木氏のブログ「弁護士aikoの法律自習室」(弁護士aikoの法律自習室)をぜひ、というか必ず、お読みいただけるとありがたいです。鈴木氏のブログでは日本版DBSについて法律の専門家ならではの指摘がそろっており、とても勉強になりますし、何が問題なのか、不安点なのかも分かりやすく紹介、説明されています。

 当ブログで今回お伝えしたい内容も鈴木氏のブログで触れられています(性犯罪の前科があって、子どもと関わる職に就いている方へ | 弁護士aikoの法律自習室)。鈴木氏のブログは、日本版DBSの対象となる仕組みやその要件について、法律家の観点から、とても分かりやすく紹介しています。「弁護士のブログって難しそう」と思わないでください。これは100%保証しますが、私のこの運営支援ブログより1万倍は読みやすいです。この運営支援ブログを読み通せる方でしたら、まったく戸惑うことなく終わりまですべて読み通せるブログです。

 放課後児童クラブにおける日本版DBSについては、まずは鈴木氏の当該ブログページをご覧ください。過去に性犯罪をしてしまった心当たりがある、児童クラブの職員さんは、自分が日本版DBSの対象となるのかどうか、どういう基準で対象となるのかについて、説明されていますので。鈴木氏のブログにもありますが、自身が該当するのかどうか、なかなか判断するのが難しいのです。自分一人だけで「大丈夫だろう」「該当してしまう」と判断することなく、できる限り、弁護士に相談してください。過去の事件で弁護を引き受けてくれた弁護士でも、あるいはお近くの弁護士でもいいでしょう。法律のプロに任せましょう。

 そのうえで、当ブログでの結論をズバリ申せば、「過去に性犯罪の前科がある人、あった人で、現在、放課後児童クラブで働いている人は、今がどんなに幸せに暮らし、もう二度と過ちを起こさないと誓って自信をもって仕事をして、生活をしているとしても、日本版DBSが実施されるまでの間に、転職を考えたほうが良い。いや、転職した方が、ご自身が辛い目、ひどい目に遭わないで済む」ということです。こんなこと、なかなか、面と向かって言いにくいことです。しかし、運営支援ブログはあえて言い切ります。その方が、ご自身も、周囲の人も、児童クラブ事業者も、泥沼の混乱を避けられる可能性が高まるからです。
 人間には基本的な人権の一つとして職業選択の自由がありますが、2026年12月までに実施されるこども性暴力防止法(通称)においてはその権利が制限されます。この法律は、国会の衆参両院で全会一致で、つまり議員の誰ひとり反対することなく、いわば国民の総意で決まりました。この法律に基づく制度が始まる前に、児童クラブの事業者と児童クラブで働いている人で、影響が事前の予想される人であれば、法に対応できることは対応しておかねばなりません。その、最も厳しい対応が、今日のブログのテーマなのです。

<どうして、その必要があるのか>
 日本版DBSは、新しく採用する人だけが対象ではありません。子どもに関わる仕事の中で、日本版DBS制度の対象になっている職業、仕事については、「すでに働いている人」も対象となり、過去の特定の性犯罪の前科について調べることになります。
 放課後児童クラブについては、直ちに自動的にこの日本版DBSの対象とはなりません。簡単に言えば、事業者が申請して国に認められれば、対象となります。この点、自動的に対象となる、つまり日本版DBSが義務となる保育所や児童館、放課後等デイサービスとは異なります。児童クラブは、日本版DBSの「認定」を受けることで、この制度の対象となるのです。
 (では、認証を受けなければいいではないか、という声も出るかもしれませんが、それは事実上困難であると運営支援は考えます。最後に理由を述べます)

 認定を受けた放課後児童クラブは、1年以内に、すでに働いている者の、特定の性犯罪の前科を国に照会してその結果を受け取ることになります。またその後も5年を過ぎるごとに(※修正しました)1度は同様に、働いている人の前科を調べることになります。
 この点において過去、どのくらいの期間までさかのぼるかというのが大事な点で、鈴木氏のブログに丁寧に解説されています。見逃せないのは、「罪」が消える期間、刑の消滅期間といいますが、この消滅期間と、日本版DBSで判断される異なっているということです。日本版DBSではおよそ「2倍」の期間、長く対象となるのです。
 例えば過去に特定の性犯罪で起訴されて裁判の結果、罰金刑が宣告されて確定したとします。罰金を支払って5年すぎれば、刑は消滅します。その後は、例えば履歴書の賞罰歴に「罰金刑」と記載する必要はありません。しかし日本版DBSではこの期間が10年になります。8年前に罰金刑を受けて直ちに罰金を支払って、その後、6年過ぎてから放課後児童クラブに就職して今までずっとまじめに働いてきたとしても、その放課後児童クラブを運営する事業者が、日本版DBSの認定事業者となった場合、8年前に受けた罰金刑のことが、事業者に「知られる」ということになります。

 日本版DBSの認定を受けた放課後児童クラブの事業者は、過去に特定の性犯罪の前科がある職員については、子どもと関わらない職場に配置転換させるなど、必要な措置を講じなけらばなりません。結局のところ、職場の規模としては極めて小さい、狭い範囲にある児童クラブでは、残念ながら、「日本版DBSの対象となった人」の、新たな職場はなかなか見つかりません。新しくそういう職場を設けるにしても、今まで問題なくクラブの現場で働いていた人が突然、子どもと関わらない職場に配置転換された場合、間違いなく、「あの人、過去に、きっと、やらかした、のよ」という憶測、推測が職場に広まります。それは残酷な差別的な意識を含んだまま、配置転換された人に向けられてしまうのです。
 こと、放課後児童クラブというものは、子どもに対してその権利を徹底的に守りたいという信念を強く抱いた人が集まっている職場です。過去に、いかなる理由であれ、性犯罪の前科がある人が近づくことを徹底的に拒否する考え方を持つ人ばかりの職場です。そういう意識の人が多く集まる職場ですから、いかなる理由であれ過去に性犯罪の前科がある人は、職員の集団、職場の風土に受け入れられないことは容易に想像できます。そして、日本版DBSの対象となった人を雇用し続けている事業者についても、「どうしてすぐにクビにしないの?気持ち悪くてしょうがない!」という他の職員たちからの批判が一斉に向けられることになるでしょう。

 残念ながら、そうした事態を未然に防ぐには、過去に特定の性犯罪を起こした人は、日本版DBSが始まる前に、身の処し方を考えた方が、結局とのころ、自分自身が一番、傷つかないで済むのです。「それは逃げるということですか?」と問われれば、「そうです。トラブルを起こす可能性から逃げてください」という答えを私は返します。子どもにも、大人にも、過去に罪を犯した人であっても人権はあります。人権は守られねばなりませんが、現実論の前には、どうしても「なんともならない」こともまたあります。今回、私が訴えている「過去に性犯罪の前科がある人は、どれほど更生に自信があったとしても今のうちに、仕事を変えたほうがいい、ぜひ変えてください」というのは、やっぱり現実的な解決策なのです。

<特にこの点に注意>
 大事なことは、過去に犯した罪が、「日本版DBSでの対象となっているのか」ということと、「日本版DBSでの期間に含まれているかどうか」です。これについては現時点では弁護士に相談するしかありません。ぜひ相談してください。いずれ、この制度の施行が近づくと、おそらく国などが確認や対処方法について何らかの方策を示すことでしょう。しかしそれでは転職に間に合わない可能性がありますし、施行が近づいて急に転職、退職すると、自身へ向けられる噂レベルの話であっても、とても人権上は容認できないひどい差別的な意味を含んだ内容の噂が広まる可能性があります。しかも尾ひれがついて。よって、できるならば「いまのうちに」新たな職場を探した方が良いと、運営支援は考えます。

 可能性の一つとして考慮しなければならないのは、えん罪の可能性です。前提としてお断りしておきますが、もちろん私は性犯罪は許しがたい犯罪と認識していますし、特に痴漢犯罪は本当にばかばかしい、恥ずべき犯罪だと断罪します。しかしその痴漢において、仮に「えん罪」があったとした場合、難しい判断になります。えん罪であってもその後の司法上の手続で罪が確定し罰金を支払った、執行猶予が付いた、ということがあれば、それは前科です。たとえ本人が「あれはえん罪だった。でもいくら否認しても警察も検察も裁判所も認めず、どうしよもなく罰金を支払った」と思っていても、それは前科ですから日本版DBSでの対象となります。ただ、本人は「本当に自分は罪を犯していない」と思っていても、それは本人が思っているだけのことですから、日本版DBSでの対象から逃れることはできません。
 自分自身はえん罪だった、という人であっても、日本版DBSの制度では、配置転換や解雇されることが可能性として大きいのです。それは何度も言いますが、「あの人、過去に、やらかしたんだよ」という話を広めることにもなるのです。

 また、勘違いされがちですが、前科の対象は特定の性犯罪ですが、被害者が子どもである、ということは全く関係ありません。むろん性別もです。「自分は大人の女性に対してひどいことをしたが、子どもには手を出していない。日本版DBSは子どもの職場に関する法律でしょ?だから自分は大丈夫」と勝手に誤解されては困ります。

 さて、先に触れた「児童クラブが認定を受けなれば、そういうややこしい問題は回避できるのでは」という点ですが、実際のところ、認定を受けない児童クラブの事業者は、ビジネスを継続できなくなる可能性が高いと私は考えています。認定を受けるということは、「うちの児童クラブには、過去に、特定の性犯罪の前科がある人は子どもに関わる仕事をしていませんよ」「こどもが被害者になる性犯罪を抑止するために徹底して教育研修の措置を行っていますよ」ということを証明することですから、保護者にとって一定の安心材料を与えることになります。
 当然、わが子を託す保護者は、児童クラブが認定事業者であることと、ないことのどちらを選ぶか選択するとしたら認定を受けていることを選択するでしょうし、認定を受けることを希望するでしょう。そしてそれは行政も同様であるのは自明の理です。制度に従って子どもへの性暴力を防ぐ措置を講じている事業者を選ぶのは当然です。
 これは、認定を受けない児童クラブ事業者は、児童クラブを運営できる可能性の幅を狭めることを意味します。例えば5年や3年で事業者を選び直す仕組みを導入している市区町村において、認定事業者と、認定を受けていない事業者が競い合った場合、どちらに高い点が付くのかは言うまでもありません。そもそも、認定を受けていない事業者は公募や指定管理の選定に申し込みができない、前提条件で認定事業者のみと限定される可能性が極めて高いでしょう。
 認定を受けない児童クラブはいずれ、そう遠くない将来、補助金を得られずに利用者から集める利用料だけで細々とした運営を余儀なくされるでしょう。しかも利用者が集まるかどうか保障できません。なお、学習塾の世界も全く同じことです。

 私は性犯罪に限らずどんな罪でも、裁判で刑が確定してその刑に服し、その後の更生については肯定的に受け入れる立場です。罪を憎んで人を憎まずという覚悟は持っていたいのですね。しかし、こども性暴力防止法という法ができた以上、その法に対応した対応をせざるを得ません。法を守る(それが問題のある法であれば改正を求めつつ)こともまた大事です。特に放課後児童クラブは、日本版DBSにおいて大激変を免れないと私は恐れています。運営主体の顔触れの急変もそうですし、事業者内部の混乱は必至です。それを未然に防ぐための種々の方策を提案して実施に協力したいと考えています。
 こども性暴力防止法に関することや、自分が該当するしないかどうかの確認は弁護士さんへご相談ください。また、日本版DBSについてどのような会社内・組織内の規定が必要となるのか、人事管理や労務管理、就業規則類の改正はどのようにすればいいのかは、ぜひ社会保険労務士にお尋ねください。まだ具体的に放課後児童クラブが認定を受けるには、どのような手続きをすることになるのか示されていませんが、およそ相当複雑な手続きが予想されますし、それを事業クラブの事業者が(まして保護者系で運営する事業者は)対応するのは極めて難しいでしょうから、今のうちに行政への申請手続きを業としている地域の行政書士と懇意になっておくこともお勧めします。
 士業の方々も、放課後児童クラブからの相談にぜひ対応してください。児童クラブは得てして財務上の余裕がなく相談料もなかなか用意できないのですが、そこはなんとか折り合ってぜひ、児童クラブ側の話を聞いてください。お願いします。なお、運営支援では一般的なことについては相談を受けております。ただ、具体的な規則の整備や作成を代行する依頼はまだ出来かねますのでご容赦ください。今年9月以降であれば安心してお引き受けできるかと考えております。

<おわりに:PR>
 弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。

 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

 放課後児童クラブを舞台にした小説を完成させました。いまのところ、「がくどう、序」とタイトルを付けています。これは、埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ご期待ください。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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