日本版DBS制度のガイドライン案が公表されました。放課後児童クラブ(学童保育所)は1年後に向け何をすれば良い?

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!

 こども性暴力防止法による、いわゆる「日本版DBS制度」に関して、制度の運用の目安となるガイドラインの案が、こども家庭庁から公表されました。このガイドラインに沿って日本版DBS制度が運用されるのですから極めて重要です。ものすごい分量のガイドラインであり、わたくし萩原もこれから読み込みます。本日の運営支援ブログは、これから1年間、放課後児童クラブは何をするべきか、取り組んでいくべきか、運営支援の観点から紹介します。すでに何度も取り上げてきたことの繰り返しにはなりますが、重要ですので何度でも取り上げます。
 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
 New! いわゆる日本版DBS制度を専門分野の1つとして事業者の取り組みを支えたいと事業活動を始めた新進気鋭の行政書士さんをご紹介します。「行政書士窪田法務事務所」の窪田洋之さんです。なんと、事務所がわたくしと同じ町内でして、わたくしの自宅から徒歩5分程度に事務所を構えられておられるという奇跡的なご縁です。窪田さんは、日本版DBS制度の認定支援とIT・AI活用サポートを中心に、幅広く事業所の活動を支えていくとのことです。「子どもを守り、あなあたの事業も守る。」と名刺に記載されていて、とても心強いです。ぜひ、ご相談されてみてはいかがでしょうか。お問い合わせは「日本版DBS導入支援センター | 行政書士窪田法務事務所」へどうぞ。

<まずは、認定を受けるかどうか>
 放課後児童クラブの世界は、事業規模や事業形態からみると、実に多種多様です。その点を踏まえて考えねばなりません。
 ①児童クラブの運営を収益の柱としている広域展開事業者。市区町村、都道府県の境を越えて各地で児童クラブを運営している事業者。株式会社が多いですが、社会福祉法人やNPO法人といった非営利法人の広域展開事業者も珍しくありません。
 ②地域に根差した児童クラブを運営している事業者。このジャンルはおしなべて事業者の規模は大きくありません。ほぼ1つの市区町村またはごく近隣の自治体内だけで事業を展開しています。法人だったり、任意団体だったりします。法人も、保護者会組織が発展した非営利法人があれば株式会社、合同会社もあります。保育所や認定こども園、幼稚園を運営しつつ児童クラブも運営している社会福祉法人や学校法人がありますし、社会福祉協議会のような準公営組織もあります。数は少ないですが宗教法人や医療関係の法人もあります。任意団体は保護者会や(地域)運営委員会があります。また個人の事業者もあります。
 ③公営クラブ。市区町村の直営です。

 運営支援の観測ですが、①の広域展開事業者は、「公募」で児童クラブの運営を競って勝ち取ることが多く、おそらくですが公募に参加する条件に、こども性暴力防止法の遵守が当たり前に加えられることになることが容易に予想できるので、広域展開事業者が認定事業者になることは当然の選択となるでしょう。事業者の規模が大きいので、法務や労務関係の部署の人員も充実していることが当然でしょうから、認定事業者になるために必要な事業者内の手続きや組織体制作りも、自前の能力で対応できるでしょうし、外部の専門家に加わってもらう予算も確保できるでしょう。
 ③の公営については自前で対応できるでしょうが、わたくしの想像では、事務手続きの煩雑さを避けるために、さらに外部委託が進むのではないでしょうか。しかし、人口が少ない地域では児童クラブ単体での収益を見込めないのでそのような場合は社会福祉協議会などへのアウトソーシングが進むか、直営のままで日本版DBS制度に対応することになるのではないでしょうか。

 運営支援が最も懸念しているのが②の、地域に根差した児童クラブの運営事業者です。法人であっても任意団体であっても、事業者の規模はそれほど差はありません。数十程度の支援の単位を運営している、②の世界の中では大きな事業者であっても、①の広域展開事業者と比べれば大差があります。鉄道に例えると(どうして鉄道なんだという疑問は無視!)、①と②の差は東武鉄道や東急、名鉄、近鉄と比べた銚子鉄道ぐらいの差があるでしょう。
 ②の世界にある児童クラブ運営事業者は、日本版DBS制度に「いつ対応できるか」が焦点となります。ここで「認定事業者とはならない」という選択肢はありえないと運営支援は考えます。「こどもを性暴力から守る」という理念そのものは絶対に正しく、その理念を具体的に実現しようとして制度が作り上げられている日本版DBS制度に背を向けると誤解される行動は取れません。利用者である保護者から「なんでうちのクラブはDBSに対応しないんですか? こどもが危険にさらされるのではないですか?」との懸念や疑問には、「うちもいずれ対応します」という返答がギリギリの最低ラインの回答です。
 そもそも、「日本版DBS制度に対応することが、委託や補助の条件」と市区町村から呈示されたら、対応しない選択肢は消えます。それでも対応しないのであれば補助金なしでの運営を考えることになります。それは事業運営に極めて重大な影響を及ぼします。そして市区町村が日本版DBS制度に対応することを求めるのは、数年後には当然のこととなっているでしょう。
 ですので②の、事業規模が小さいか、さほど大きくない児童クラブの運営事業者は、予算が足りなくても人的資源が足りなくても、結局は日本版DBS制度に対応することを余儀なくされるというのが運営支援の予測です。よって「いつ、対応を完了するか」が焦点となるでしょう。「対応するかしないか」は、もう選択肢ではないのです。「対応するのは当然として、いつごろに対応が完了するか」の観点で、②の世界の児童クラブの運営事業者はこれからの準備をすることです。
 そうしないと、①の、すぐに日本版DBS制度に対応した事業者にどんどん運営をさらわれますよ。

<どの分野にすぐに取り組まねばならないか>
 (1)不適切な行為
 児童クラブは、こどもと職員の「距離感」がとても近い業態です。それは当然で児童クラブはこどもの生活の場ですから、こどもが自宅のようにリラックスしている場面もありえます。他者との距離感も近くなりがちです。このような特徴があるので、①②③とも「不適切な行為」については、厳密にルール内容を定めて置く必要があります。
 ガイドライン案の22、23ページです。「「不適切な行為」は、事業内容等に応じて、その範囲が異なり得るものであることから、対象業務従事者が正しくその範囲を理解し、「不適切な行為」を行わないようにするためには、各対象事業者において、業務上の必要性を踏まえて「不適切な行為」の内容を定めるとともに、適切な防止措置を図る観点から、服務規律等に適切に反映することが必要となる。」
「各対象事業者において「不適切な行為」を定めるに当たっては、必要に応じて専門家に相談するとともに、現場で業務を担う対象業務従事者とコミュニケーションを図り、対象業務従事者が過度に萎縮することがないよう留意しつつ、事業の実態に即して決定することが必要である。」
「「不適切な行為」に該当し得る行為が生じた・見かけた場合に、普段から職場内で議論し、自由に発言できる雰囲気・環境を整えることや、どのような事案が「不適切な行為」に該当するか、日々のミーティング、研修等において議論し、対応を検討する中で、従事者の理解を深めること等も重要である。」
 これを定めるだけで、定例の会議が月1~2回程度の②の運営事業者は大変ですよ。何カ月もかかるでしょう。だから今すぐとりかかることが必要です。

 24ページにある記載も児童クラブの職員にありがちな思考回路を考えると極めて重要です。
「「不適切な行為」を行ったとされた者が直ちに大きな不利益を受けるような運用がされると、対象業務従事者を過度に萎縮させるおそれがある。このため、初回かつ比較的軽微な「不適切な行為」の疑いが生じた場合、当該行為自体については、対象業務従事者に対する適切な指導等を行いつつも、その行為を責めるのではなく、そうした行為に至った理由を聴き取り、未然防止の観点から早期に対処する必要性を丁寧に説明するとともに、「不適切な行為」に該当し得る行為が生じたことを職場内の議論のきっかけとし、各対象事業者内における「不適切な行為」の共通認識の形成につなげることが重要である。」
 こどもに対する権利侵害を絶対に許さない考えは当然のことですが、こと児童クラブのまじめでひたむきな職員には、えてして「こどもが嫌がることをすることは何があっても許されない」という意識が過度に広がって、どんなに軽微なことでも「しでかした」職員は二度と同じ仲間として受け入れない、潔癖的な傾向があることがわたくしには見受けられます。ガイドライン案では「どうしてそういうことになったのか」を考えて再発防止に取り組めと示しているのであって、「排除しろ」と示してはいません。この点、児童クラブの職員、運営側には早期に「法的なものの考え方」を身につける必要があるでしょう。

<犯罪事実確認等の対象となる従事者の事業者ごとの判定>
 ①②③とも、働いている者が犯罪事実の確認の対象となるかどうかを事業者ごとにしっかりと認識しておくことが必要です。犯罪事実確認等の対象になるかどうかは「支配性・継続性・閉鎖性の3要件を満たすものを犯罪事実確認等の対象」(ガイドライン案39ページ等)で判断されます。児童クラブについては58ページの表の中に例示されています。職種全体が対応となるのは「事業所長的立場にある者、放課後児童支援員、看護職員等、補助員」、職種の一部が対象となりえるのは「送迎バス等の運転手」であり、対象外として「育成支援の周辺業務を行う職員」とあります。
 わたくしは、この分類はずいぶん大雑把だなあと残念に感じます。対象外の、育成支援の周辺業務を行う職員ですが、おそらく本部職員、事務局職員といったバックオフィスの職員を想定していると考えられます。しかし②のジャンルで、とくに事業規模が小さい事業者にはこの周辺業務を行う職員を雇っていないことが多いですし、雇っていたとしても職員の欠勤等で従事する者が不足したときには現場で育成支援に従事することもあります。清掃、おやつ・昼食の準備対応として雇用されている者もこの周辺業務に従事するのですが、人手不足が甚だしい②の事業者では、現場業務への従事も期待されていることがほとんどでしょう。①の大きな事業者でも、広いエリアを巡回して職員を指導する立場のエリアマネジャー、スーパーバイザーのような役職者でも急な欠員対応で現場に入ることがあるとわたくしは耳にします。となると、3要件との関係は微妙になります。60ページから62ページの表にある考え方が参考になります。
 このあたりはどうなのか、事業者ごとに様々でしょうから、弁護士など法律家に相談することが必要でしょう。やはり準備時間が(そして予算も)必要です。

<超短期で雇う人も対象>
 ガイドライン案の66ページです。「有期労働契約等により従事する期間が短い者(1日、数日等)、ボランティアスタッフ等についても、教員等又は教育保育等従事者に該当する者である限り、従事期間による例外は設けず、「教員等」又は「教育保育等従事者」として取り扱う(いわゆる「スポットワーク」等の単発の従事者も、業務内容に照らして教員等又は教育保育等従事者に該当する者は対象となる。)。」とあります。
 児童クラブは夏休みや冬休み、春休みの長期休業期間中は朝から夜まで開所しているので、多くの労働力が必要です。そしてそれはその期間のみのアルバイトを雇って対応することが普通です。それら短期の労働者においても犯罪事実確認等の手続きが必要となるということです。
 これについては今すぐ「長期で」勤務し続けてくれる人を確保することを今すぐに取り組むことが必要です。なお、同じページに「一定の期間を定め、同一事業者において対象業務に従事する可能性がある旨の書面を別途取り交わす場合は、事業者が当該期間中、法に基づき犯罪事実確認記録等を保有できるため、一度の従事期間が短期間であっても、再度従事させる際には犯罪事実確認を終えた者を従事させることが可能」とありますから、「夏休み、冬休みそして春休み」に児童クラブでアルバイトするスタッフについてはこの考え方によって何度も犯罪事実確認をする必要はなさそうです。ですが、雇用契約書兼労働条件通知書には、雇用期間を1年として契約することを運営支援はお勧めします。

<保護者会や運営委員会は「組織としてのまとまり」をすぐに確立すること>
 ガイドライン案の68ページに、任意団体を想定した考え方が示されています。
「民間教育事業として、こども食堂における学習支援等、スポーツクラブ等の事業が対象になり得るが、その運営主体は様々であり、ボランティアベースの集団により事業が運営されているようなところもある。認定事業者等は、犯罪事実確認記録等の個人のプライバシーに大きく関わる情報を、犯罪事実確認の手続により入手することが可能となることから、一定の組織を有し、統一的な意思決定がなされる組織であることが求められる。」
「認定等を受けようとする事業者が、法人でない団体については、「代表者又は管理人の定め」があり、かつ、団体としての組織を有し統一された意思の下に活動を行っていれば、団体名として認定等の申請が可能となる。」
「認定等申請に当たっては、定款又はこれに準ずるもの(会則、規約等)の写しの提出(「Ⅳ.認定等」参照)により、団体としての存在・意思決定の在り方等について確認する。」

 つまり、任意団体であってもいいんだけれど、しっかりとした組織的な活動を、根拠に基づいて行っていなければ申請しても日本版DBS制度に対応できませんよ、と言っているのです。保護者会や運営委員会による児童クラブ運営については、大至急、会則や規約、諸々の事業活動に関するルールを確認し、不備があるなら大至急整えてください。そもそもその後の事務手続きが膨大過ぎるので保護者会や運営委員会の形態が日本版DBS制度に対応できるかどうかの重大な問題はありますが、そもそも「組織としてまとまっていると書面で認定できないね」と門前払いを食らっては、話そのものが始まりません。
 運営支援としては、この制度への対応をいずれしなければならないのであれば、この機をもって法人化(それも、大きな法人を他のクラブと一緒に作る)することをお勧めします。

<認定を得るのが、あまりにも難しい。心しなければなりません>
 児童クラブは日本版DBS制度においては「認定事業者」になることで対象となります。つまり認定を得る必要があります。ガイドライン案の70ページ以降、かなりのページが認定部分に充てられています。74、75ページに認定を得る要件が示されていますが、膨大です。これをクリアするのは、地域に根差した小さな児童クラブ運営事業者には至難の業です。このわたくし萩原がSASUKEをクリアするほど至難だと言えます。抜粋しますがそれでも長いので随所を省略して引用します。
「次のアからカまでに掲げる基準に適合すること(法第20条第1項柱書)
ア 対象業務に従事させようとする者の犯罪事実確認を適切に実施するための体制を備えていること
イ 対象業務に従事させようとする者による児童対象性暴力等が行われるおそれがないかどうかを早期に把握するための措置を実施していること
ウ 対象業務に従事させようとする者による児童対象性暴力等に関して児童等が容易に相談を行うことができるようにするために必要な措置を実施していること
エ 次の(ア)から(ウ)までに掲げる措置を定めた規程(以下「児童対象性暴力等対処規程」という。)を作成しており、かつ、その内容が内閣府令で定める基準に適合するものであること
 (ア) 犯罪事実確認の結果、早期把握措置により把握した状況、児童等からの相談の内容その他の事情を踏まえて対象業務従事者による児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認める場合において、児童対象性暴力等を防止するためにとるべき措置
 (イ) 対象業務従事者による児童対象性暴力等が行われた疑いがあると認める場合において、その事実の有無及び内容を確認するための調査の実施
 (ウ) 対象業務従事者による児童対象性暴力等を受けた児童等があると認める場合において、当該児童等を保護し、及び支援するためにとるべき措置
オ 児童対象性暴力等の防止に対する関心を高めるとともに、そのために取り組むべき事項に関する理解を深めるための研修として内閣府令で定めるものを対象業務従事者に受講させていること
カ 犯罪事実確認記録等を適正に管理するために必要な措置を講じていること
(引用ここまで)
 これらア~カについての具体的な内容はガイドライン案76ページ以降に記載されていますので、児童クラブ運営関係者は必ず目を通しましょう。①の広域展開事業者が外部の専門家に業務を代行させる場合でも、ここが重要ですし、これは外部に丸投げして構築できるものではありません。①の広域展開事業者でも、組織内での十分な議論が求められます。

<特に研修ですよ。研修体制が組めますか?>
 運営支援が最も気になることは、認定を得るに必要な研修体制の整備と実施です。上記のオですね。ここ、非常に大事ですのでオの説明の部分を改めて抜粋します。79ページです。
「オ 研修の実施(法第20条第1項第5号、規則第19条第3項)
○ 児童対象性暴力等の防止に対する関心を高めるとともに、そのために取り組むべき事項に関する理解を深めるための研修の内容は、次の(ア)から(ク)までに掲げる項目を含み、かつ、座学と演習を組み合わせて行うものとする(規則第 19 条第3項。具体的な研修の実施方法は「Ⅴ.2. (3)対象業務従事者に対する研修」参照)。
(ア) 従事者による児童対象性暴力等の防止に関する基礎的事項(児童対象性暴力等が生じる要因及びこどもの権利に関する事項を含む。)
(イ) 児童対象性暴力等及び児童対象性暴力等につながり得る不適切な行為の範囲
(ウ) 児童対象性暴力等及び児童対象性暴力等につながり得る不適切な行為の疑いの早期発見
(エ) 相談、報告等を踏まえた対応
(オ) 被害児童等の保護・支援
(カ) 犯罪事実確認において従事者に求められる対応
(キ) 防止措置に係る基礎的事項
(ク) 厳格な情報管理の必要性」
(引用ここまで)
 要は、座学と演習を組み合わせた、上記の(ア)~(ク)の項目を網羅した研修を職員に受講させなければ認定を得られないということです。詳細は119ページ以降に説明されています。標準研修、要点研修、独自研修という区分も紹介されています。児童クラブに多い短期間の波動的な雇用では要点研修が用いられることになります。

 研修の内容についてはあまりにも膨大ですので、いずれ改めて取り上げることとして、ここでは業界団体に強く訴えたいことを記します。ガイドライン案の122ページにある記載です。
「研修の実施に当たっては、第三者性の確保の観点から、専門的な知見を有する外部有識者等による講義や研修教材の監修を受けること等が望ましい。」
 これを読んで「そうか、自分たちの出番だな」と思わないようでは業界団体としては終わりです。おしまいデス。そもそも引用した上記文章の直前に「また、業界団体や対象事業者において、事業の特性や、児童等の発達段階・特性に応じて工夫された独自研修が実施されることも考えられる。標準研修や要点研修と独自研修は択一的な関係にあるものではなく、標準研修又は要点研修を実施した後に、独自研修で追加的・補足的事項を取り扱う等の工夫も可能である。また、「研修」という形式をとらずとも、日々の振り返り等の中で、業務上気になった点等を対象業務従事者間で議論すること等も有効である。」とあります。
 ここは業界団体による独自研修が当然に期待されているほか、個々のクラブ事業者内部での取り組みも強く期待されていると解釈するべきです。
 この研修の詳細を紹介するガイドライン案を読むと、「よし、ここで一気にビジネスを拡大できる」と考えてニンマリとしている事業者がたくさんあるだろうなとわたくしは想像します。放課後児童支援員認定資格研修や、資質向上研修を都道府県から受任している教育関係の事業者にとっては、さらに稼ぎを得るチャンスにほかならないのです。
 主に②の地域に根差した児童クラブを基盤とする児童クラブの業界団体は、認定資格研修では教育業者や予備校業者に押され気味ですが、この日本版DBS制度の認定に係る研修は、これからヨーイドン!ですから、競争に勝てるチャンスがあります。スタートラインに立てるという意味でチャンスなのです。仮にも業界団体が、放課後児童クラブ運営指針に沿った児童クラブ運営をする運営事業者を応援したいというのなら、日本版DBS制度に対応した研修において運営指針の理念を反映させた研修ができるような内容を直ちに作り上げて、ビジネスとして受注、受任の機会を得られるように直ちに取り組むべきです。わたくしはしがない個人法人ですから限界はありますが、やれるものなら一部だけでもやりたいですよ。

 さて、もっと伝えたいことが山ほどあるのですが、次回以降に投稿します。
最後に、メディアがこのガイドライン案についてどう報じたかだけ、ピックアップして本日のブログをお開きにします。

<メディアの伝え方>※ヤフーニュースで公開されたニュース・報道の見出し、記事の一部を紹介します。
テレビ朝日(12月22日23時52分配信)「子どもと関わる従業員の性犯罪歴を確認 「日本版DBS」のガイドライン案」
「こども家庭庁は22日、専門家らの会議を開き、新制度で求められる具体的な対応などを盛り込んだガイドライン案を示しました。これによりますと、子どもに何かを教える事業であれば広く対象となり、ダンスの指導をする芸能事務所なども含まれます。確認する性犯罪歴は不同意わいせつのほか、痴漢や盗撮なども含まれ、事業者がこども家庭庁に確認の申請をします。性犯罪歴がある場合は、まず従業員や採用試験を通過した人ら本人に対して通知され、内定の辞退などをすれば事業者には性犯罪歴を伝えないということです。」

日本テレビ(12月22日22時49分配信)「こども性暴力防止法のガイドライン案おおむね了承 こどもの安全を守るためにできることは?」
「こどもの安全を守るため、来年12月25日には「こども性暴力防止法」が施行される予定です。 施行に向けてこども家庭庁では、運用ルールなどを考える検討会が、今年4月から開催され、今月22日、ガイドライン案がおおむね了承されました。」

FNNプライムオンライン(12月22日20時51分配信)「“日本版DBS制度”運用ガイドライン案了承 子ども性暴力防止法2026年12月施行へ 私的SNSやりとりや不必要な身体接触は「不適切な行為」」
「施行まで約1年となる22日、運用についてのガイドライン案が、こども家庭庁の有識者検討会で概ね了承されました。ガイドライン案は約400ページにのぼり、対象事業者や業務の範囲のほか、「性暴力のおそれ」のある場合などの具体例が記載されています。具体的には、SNSの連絡先を交換し私的なやりとりをすることや、不必要な身体接触などを「不適切な行為」の例として挙げ、指導したにもかかわらず行為を繰り返す場合は、「性暴力のおそれ」に該当し、子どもと接さない業務への配置転換などの措置が必要となるなどとしています。」

時事通信社(12月22日20時33分配信)「認定事業者、広がりがカギ 社会全体で性暴力防止 日本版DBS」
「国の認定を受けた事業者は、学校などと同様に従業員や採用予定者の性犯罪歴を確認できる。子どもが利用する施設に犯歴のある人が流入するのを防ぐには、認定取得の動きが民間で広がるかどうかがカギとなる。 国は一時、民間事業者をDBSの対象に含めない仕組みも検討していたが、教員を辞めた人が学習塾などに流れる恐れが指摘され、任意の認定制度を設けることにした。保護者が積極的に認定事業者を選ぶようになれば、民間の安全性も向上する。」
(運営支援からひとこと:ここに、保護者が認定事業者を選択するであろうことに言及されています。認定事業者にならない児童クラブは選ばれない可能性を示唆しています)

TBSテレビ(12月22日18時12分配信)「相次ぐ「教育現場の性犯罪」どう防ぐ? “盗撮”カメラの抜き打ち点検も… 子どもと接する職業で性犯罪歴確認「日本版DBS」ガイドライン案まとまる」
「きょう、検討会がとりまとめたガイドライン案によりますと、対象となるのは学校や保育所、児童相談所などで働くおよそ280万人。事務職員や送迎バスの運転手などを対象とするかは現場で判断します。また、国の認定を受けた学習塾やスポーツクラブなども対象となります。さらに、ガイドライン案では「犯罪の抑止」にも言及。抑止には「防犯カメラ」が有効だということですが、プライバシーへの配慮などを理由に設置が進んでいないのが実情です。」

朝日新聞社(12月22日17時配信)「子どもの性被害どう防ぐ? 性犯歴を確認する新制度 来年12月から」
「Q 初犯はどう防ぐ?  A こども性暴力防止法が求めるのは犯歴確認だけではない。初犯対策も重要だ。職員への研修、子どもとの面談、被害が疑われる場合の調査、性暴力があった場合には職員の懲戒処分などの対応を求める。」

共同通信社(12月22日16時49分配信)「性犯罪歴の確認、対象職種を明示 送迎運転手や警備員ら」
「こども家庭庁は22日、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を雇用主側が確認する「日本版DBS」の運用指針案をまとめた。有識者会議が大筋で了承した。性犯罪歴の確認対象となる職種や事業者の範囲を明示した。教員や保育士は一律で対象となり、送迎バス運転手や警備員、事務職員などは現場の判断で対象になり得る。子どもを性被害から守る安全確保措置として防犯カメラ設置を推奨した。制度は2026年12月25日に開始予定。」

毎日新聞社(12月22日15時37分配信)「「日本版DBS」ガイドライン案、有識者検討会が大筋了承 対象は?」
「2026年12月の法施行に向けて、犯歴確認に加え、性暴力につながりうる「不適切な行為」の明確化や防犯カメラの設置推奨などを盛り込み、初犯防止対策も整備した。」

なお、ヤフーニュース配信にはない、NHKの報道も紹介します。12月22日午後5時36分配信の「「こども性暴力防止法」運用ルールのガイドライン案まとまる」の見出しの記事です。
「22日は有識者による検討会が開かれ、こども家庭庁が運用ルールを記したガイドライン案を示しました。この中で、措置が義務づけられている学校や認可保育所など以外には、芸能事務所やこども食堂なども要件を満たした場合、制度の対象になり得るとしています。また、全員が制度の対象となる教諭や保育士など以外に、学校や保育園などの事務職員や送迎を行う運転手、それに警備員なども子どもと継続的に関わるなど要件を満たせば対象になるとしています。そのうえで、対象の職種の人に性犯罪歴が確認された場合は、子どもと関わる業務には就かせないことを求めていて、難しい場合は、解雇することも選択肢として示しています。」

 NHKは解雇についても言及しています。ガイドライン案でも、これまでの中間とりまとめ案でも、犯歴があるからといって直ちに普通解雇できるかどうかは、結局は司法の場つまり裁判で決着をつけることにもなる、との趣旨の記載が繰り返しなされています。この日本版DBS制度をもって直ちに犯歴がある人を解雇できない、まして懲戒解雇なんてことが確実にできないのは、拠って立つ根拠が違うからです。裁判所で示されてきた判断(判例)での考え方、もちろん労働関係の法律も判断の基準になるのですが、個別具体的な判断が必要となる雇用労働面での争いは、裁判による決着になるのが通例です。そして裁判の積み重ねでは、一定の考え方が示されていて、おそらくは過去に犯歴があったからといって即座に児童クラブの事業者が該当者をクビにするなんてことは、法的なものの考え方においては、できないのです。
 しかし運営支援は現実をたくさんみてきたので、「おそらく犯歴があった人を児童クラブの事業者はクビにしちゃうだろうね」と予想します。それも「明日から来ないで」という乱雑なやり方で。いまだってそういう法令違反の解雇が横行しています。それが広がるだけです。
 しかし、今までの解雇と違うのは、クビを言い渡された者の人生の先行きです。今まであれば、「チクチョー。でも隣の街の事業者に応募しよう。すぐに雇ってくれる」という、児童クラブの慢性的な人手不足から、次の就職先を簡単に見つけることができたので、まあ安心でした。しかし日本版DBSでのクビは、「こどもと関わる同じような職場、自分のスキルを活かせる、売り込める職場」で採用されないことを意味します。応募すらできないのです。応募したとて採用されないから履歴書のお金だけムダです。
 これは生計が直ちに立ち行かなくなることになります。となれば、当然ながら「その解雇の有効性」を争うことが自分が生き残る道になります。このことから、日本版DBS制度においては、司法の場で解雇や配置転換を争うことが増えるのだろうと運営支援は予想しています。そうしないと、「チクショー。もう何もかもダメだ。人生おしまいならすべてぶち壊してやる」という「無敵の人」を生み出しかねません。

 日本版DBS制度においては、就業先を失った方々への社会的な支援制度を施行と同時に実施する必要があるのですが、そこはまったくもって議論されていないのではないでしょうか。運営支援は不安でたまりません。

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

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