放課後児童クラブの職員が子どもに暴力行為。事業者を注意で済ます市町村はまるで他人事。当事者意識を持て。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)に関して残念な報道がありました。何が残念かといえば、行政の対応です。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<報道から>
 放課後児童クラブの職員が1年生男児の顔を叩いたという報道がありました。KSBニュースの2024年8月23日19時51分配信の記事を引用します。
「香川県東かがわ市の小学校の放課後児童クラブで23日、女性職員が児童の顔をたたきました。児童にけがはなく、市が児童と保護者に謝罪しました。東かがわ市教育委員会によりますと、23日正午ごろ、市立白鳥小学校の放課後児童クラブで、60代の女性補助員が1年生の男子児童(6)の顔を右手で1回たたきました。児童にけがはありませんでしたが、驚いて泣き出したということです。男子児童は昼食後、他の児童と戦いごっこをして遊んでいて、女性補助員は注意していたということです。東かがわ市では女性補助員を保育業務から外し、男子児童と保護者に謝罪しました。また放課後児童クラブの運営を委託している会社を厳重注意しました。」(引用ここまで)

 この記事だけでは、どうして職員が男児の顔を叩く暴力行為に及んだのか、そこに至るまでに恐らく何かあったであろう現場の混乱ぶりは分かりません。あくまでこの記事にある情報だけでの論評になりますが、次の事は確実に言えるでしょう。
・児童クラブ職員が子どもの顔を叩いた。
・子どもは他の子どもと戦いごっこをして遊んでいて、職員は注意をしていた。
・市は児童と保護者に謝罪し、児童クラブの運営事業者を厳重注意した。

<看過できないこと>
 まず当然ですが、児童の顔を叩いたクラブ職員の振る舞いは絶対にあってはならないことであり、言語道断です。児童にけがはなく、事案としては軽微とはいえ、他者に暴力を振るうのは暴行罪です。人が他者に暴力を振るうことはどんな理由があっても許されないことですが、こと子どもの人権を守る場所である児童クラブにおいて職員が児童に暴力行為を振るっていたとは、あまりにも残念です。それが衝動的な行為なのか、子どもの顔を叩いたら大ごとになることを承知の上で振る舞いに至ったのかは分かりませんが、何があっても暴力行為は断じて許されません。

 運営支援の観点で重視しなければならないのは、職員への教育研修の実施状況です。児童クラブを運営している事業者名は報道で伝えられていません。それは大変不思議なことで、公金を受け取って公の事業を行っている社会的に責任のある企業名を報道機関がどうして報じないのか私にはまったく理解できないのですが、インターネットで検索すれば児童クラブの運営を行うアウトソーシング事業では最大手の事業者であることは一目瞭然です。

 児童クラブにおいては子ども達が職員の指示や注意、要望に対して無視をしたり反発したりすることはごく普通にあります。まして遊びに夢中になっているときにはなおさらです。そのようなときに、職員はどのように対応するべきかが、まさに放課後児童支援員の技術であり腕の見せ所です。ごく当たり前のことですから当たり前にその対応法や子どもへの指導、注意の仕方について技術を学び会得するのは当然のことです。そしてそのような機会を設けるのは事業者です。

 教育、研修の機会は設けていた。職員も参加していた。だが、教育研修の内容をしっかりと理解できぬまま勤務をしていてこのような残念な振る舞いに至ったのでしょうか。何とも言えませんが、子どもに対する虐待防止研修であれば、職員が子どもに暴力行為に及ぶことを絶対に起こさないということが教育研修の目的であり、その目的を達成できなかったのですから、事業者の行った教育研修が不十分だった、ということになるでしょう。

 これは私の想像ですが、もしもこの報道された児童クラブにおいては子どもの戦いごっこのような「お行儀がよくない」遊びを全面的に禁止していたとしたら、そうでしたら大変残念です。どうしてそのような想像に至るかと申し上げれば、私の聞くところこの最大手の事業者においては「職員が指示したこと以外は子どもの行動を許さない」という超管理的な手法で子どもの集団を制御しているという話を大変よく聞くからです。「子どもは自由にさせたらだめ。すぐにつけあがる」と言い放つ職員がいるとか、指示に従わなかった子どもを長時間正座させるとか、残念な話をいろいろと聞くことが多いのです。
 子どもの行動を徹底的に管理し、子ども達の集団を制御する手法は児童クラブ職員にとって実は大変、楽になります。一方的な指示を出すだけでいいのですから。育成支援と言う専門性をまるで理解できない、理解しようとしない業務上の資質が低い職員であっても児童クラブでの勤務を可能とさせる手法です。もしも万が一、そのような土壌がこの報道にあったクラブにもあったとしたら、言う事を聞かない子どもの顔を叩くぐらいのことは及んだであろうな、という残念な想像が成り立ってしまうのです。
 もちろん、真相は分かりませんが。なぜ、この職員は子どもを注意していたのかその事情がまったく分からないのですから。

<行政の対応があまりにも残念>
 この事案について東かがわ市のホームページにはまったく言及がありません。市のHPには、「東かがわ市放課後児童クラブ運営業務委託に係る公募型プロポーザルの審査結果について」と題した記事があり、令和7年度から児童クラブを運営する受託候補者について公表されています。ということは現在の事業者から変わるということなのでしょう。

 さて行政の対応が残念だと私が考えるのは「児童クラブの設置者として、子どもへの暴力行為が行ったことへ、当事者に謝罪をしたから責任を果たしたものではない」ということです。確かに、被害者側に謝罪をしたことで、児童クラブの設置者と事業者の管理監督者の責任を果たした、ということでしょう。それは当然です。しかし謝罪の点では「社会全体に対する謝罪」が抜け落ちています。児童クラブに市が支出する補助金は、国と県と市の予算から拠出されるものです。それら予算を生み出す納税者=国民、つまりこの社会への謝罪が抜けています。その謝罪とは、「子どもに暴力を振るうような職員とそのような職員を働かせている企業を選んでしまったことの過失と、その企業の事業運営をしっかりと管理監督していなかった過失」について、社会に謝罪が必要だということです。

 さらに残念なのは、報道では、事業者を厳重注意した、とあります。確かに市は事業者を管理監督する立場ですから厳重注意は当然行うでしょう。それはその通りですが、肝心な事は「暴力行為が起こった原因、企業体質、土壌を行政がしっかりと調べて社会に公開すること」です。管理監督責任があることを理解しているからこそ事業者を厳重注意したのですから、その管理監督責任からして当然、市は、どのようにクラブが普段から運営されていたのか、職員は子ども達にどのように接していたのか、事業者はクラブの職員に関する教育研修をどのように実施し、どのような内容を職員たちに伝え学ばせていたのか。それらをしっかりと調べ、社会に公表するべきです。不幸中の幸いとして、あってはならない事案ですが結果としては軽微となっているのですから、数か月で調査は終わり社会に公表できるでしょう。

 まさか、来年度はこの事業者ではないからと調査を行わないことにしたのではないでしょうね。けががなかった軽い事案だった、謝罪もしたし、という感覚であれば、私は市の姿勢がまったく理解できません。いいですか、全国各地でこのような事案があったとき、行政というものは横並びに執着しがちですから、「東かがわ市では事業者に厳重注意をしておしまいだな」と別の事案が起こった自治体の参考例にされてしまうのです。ここでしっかりと、事業者の事業運営体制についてしっかりと調査確認し、それを社会に公表してこそ、児童クラブを設置した自治体としての管理監督責任を全うすることです。それが「公」というものではないでしょうか。

 いますぐにでもしっかりと調査を行い、その結果を報告するべきです。

 <おわりに:PR>
 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。お近くに書店がない方は、ネット書店が便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。
(関東の方は萩原から直接お渡しでも大丈夫です。なにせ手元に300冊届くので!書店購入より1冊100円、お得に購入できます!私の運営支援の活動資金にもなります!大口注文、大歓迎です。どうかぜひ、ご検討ください!また、事業運営資金に困っている非営利の児童クラブ運営事業者さんはぜひご相談ください。運営支援として、この書籍を活用したご提案ができます。)

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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