慢性的に人手不足の放課後児童クラブ(学童保育所)。保護者のヘルプ勤務は日本版DBS時代においてどうなる?

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
 放課後児童クラブの世界は、ずっと昔から人手不足状態です。原因はいろいろありますが、どこもかしこも人手不足の業界ばかりの中で、給与や時給の低さを筆頭に「もらえる額の割にきつい仕事」というイメージがつきまとっているのが原因でしょう。実際はとても奥が深い面白い仕事なのですが。ともあれ人手不足なので、とりわけ保護者運営系の児童クラブでは時折、保護者が応援でクラブ職員に交じって働くこと(保護者応援、保護者ヘルプ、などと呼ぶことも)があります。この保護者応援について考えます。はっきり申せば、もうやらない方が良いでしょう。
※当面、ブログ投稿をSNSで告知いたしません。外部URLをX(旧ツイッター)に投稿することを繰り返すとアカウントが凍結されるおそれがあるようです。凍結されたら一大事です。
 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)

<報じられた保護者応援>
 中日新聞がウェブサイトで2026年3月6日05時05分 (3月6日11時02分更新)に配信した「追いつかない学童保育の指導員確保 保護者も臨時で世話担当決定」との見出しの記事です。なお記事は会員限定で全文が読めます。見出しには児童クラブの固有名詞も記載されています。記事のリードを一部引用して紹介します。
「小学生たちが、放課後や夏休みなどの長期休み中に利用する学童保育(放課後児童クラブ、学童)。とりわけ、共働き世帯にとっては心強い存在で、利用者は増加している。(中略)指導員の確保が追い付かない状況に。運営組織と保護者は集会を開き、指導員の不足時には、臨時で保護者も児童の世話に当たると決めた。それでも、特に利用の多い長期休暇期間を維持できるか見通せないという。」(引用ここまで)

<保護者応援とは>
 児童クラブで職員数が足りないときに、こどもをクラブに利用させている保護者が職員に加わって一緒に児童クラブの業務を担うことです。まず、児童クラブにおいて何人の職員が従事しなければならないか、ということに関しては、自治体の条例や要綱、あるいは業務委託の契約や仕様書で定められていることがほとんどです。例えばこども10人について職員1人の配置とする、ということです。なお、児童クラブに関する補助金を受けるには国の補助金交付要綱に定められた水準を守らねばなりません。放課後児童支援員1人と補助員1人、というものです。

 職員数が足りないと、こどもたちの活動の様子に目が行き届かず事故やトラブルの発生リスクが高まります。校庭や公園で遊んでいるこどもたちの様子をしっかり把握することが困難になります。おやつを提供するときには、その準備に時間がかかってしまいます。登所しているこどもの人数が40人前後の場合、職員は少なくても4人、本来なら6人前後が必要です。ところが職員が体調不良で休んだり、退職が相次いでもともと職員数が少ないところに、やむを得ずどうしても仕事を休まねばならない事情の職員がいると、とたんに職員不足になります。

 他のクラブや運営本部から、職員を派遣してもらってしのぐことになりますが、1つの事業者が1つのクラブのみを運営している場合はそうはいきません。また、同じ事業者がいくつもクラブを運営していたとしても応援に回せる職員がいない場合もあります。そういう場合に、保護者運営系の児童クラブが奥の手で繰り出すのが、保護者応援です。
 ヘルプで加わってもらう保護者には、こどもの見守りや、あそびの中に入って一緒に過ごす、あるいはおやつの配膳の手伝い、整理整頓などの業務などを担ってもらうことになります。こども同士のトラブルの仲裁やトラブル原因の調査などは元々従事している職員が当然に引き受けることになります。

 なお、クラブにお迎えに来た保護者が、遊んでいるこどもたちの様子をみて、つい一緒に遊んでしまうということもあります。それは単にこどもたちの行動に付き添って行動を共にしているだけで業務を引き受けている、担っていることではありません。

<わたくし萩原にも経験あり>
 この保護者応援、わたくしも経験してきました。現場に入ることも、また使用者(経営者)として保護者応援の可否を決定することも経験しました。現場に入ったことでは、台風一過で児童クラブを急に開所することになったとき、職員の出勤が間に合わなかったので数時間、職員の代わりにクラブを開所してこどもたちを受け入れました。使用者としては、相次ぐ職員の休みのため出勤できる職員がとても足りないというクラブからの相談で、保護者の緊急応援を受け入れるかどうかについて判断しました。
 ですのでこの保護者応援についてはなじみ深いものです。

<保護者応援の性質>
 ところでこの保護者応援ですが、実施する場合は様々な実施形態があるでしょう。
1 無償で従事する。
2 報酬を受け取っての従事。つまり雇用期間が超短期の非常勤労働者。

 この1の場合が問題です。無償で児童クラブにて従事するということを「ボランティア」とみなす傾向が一般的でしょう。仮にそれがボランティアだとすると、一般的にボランティアは労働災害が適用されないから、問題なのです。何故問題かといえば、児童クラブでは労災が珍しくないからです。2の場合は保護者と言えども児童クラブの労働の対価としての報酬を受け取っている労働者ですから業務中に負傷した場合は労災対象となる可能性が高いでしょう。問題は1なのです。そしておそらくですがわたくしが見聞きしている範囲においては、人手不足で保護者が応援に入る際は無償でボランティアとして、頼むほうも引き受けたほうも納得しているということが多いと感じます。何もけがをしなければいいんですが、問題というのは得てしてややこしい状況を伴って発生しますからね。

 しかし、自発的な意志で参加するとしても、児童クラブの業務執行に加わって運営を一部でも支える業務を担うのはまさに労働者に他なりません。いったん従事すればそのクラブの職員の指揮命令のもとに行動することになります。とはいえ、あくまで「善意」を基本にして保護者が労働力を提供しているので、仮に保護者応援に参加した人が(思っていたより大変だぞこれは。何より体を動かすばかりでしんどい)と思って、急にクラブの職員に「先生、ごめんね、急に大事な用事があったことを思い出しちゃって」とか「ちょっと熱っぽく感じて、こどもに病気が移っては心配だから、午後5時までの予定だったけれど、もう帰るね」と言い出したら、職員も内心(ええーそれは困る!)と思いながらも「今日はとても助かりました。ありがとうございました」と笑顔で感謝するでしょう。そこには完全に保護者応援の人を支配下に置いていない実情もあると考えられます。

<運営支援としては>
 単発的な、また突発的なこととしても、保護者応援を実施する場合は必ず「労働(雇用)契約書」を取り交わすことが必要だと訴えます。記載内容は事前に保護者みなさんに説明をしておけば良いでしょう。ということは、労働者性を明確にする、ということです。労働者ですから、事業者は保護者応援に関する雇用のルールを規程で設けておくことが必要です。時給は最低賃金と同額でもいいのでしっかり払うこととしましょう。

 「労働者として保護者応援を受け入れると、副業禁止などの事業者に勤めている保護者さんが保護者応援に参加できない」という懸念があるなら、ボランティアとしての受け入れになります。その場合は当然ながらいわゆるボランティア保険で、万が一の補償について担保しておくことは絶対条件です。また、ボランティアですから保護者応援に参加した人が急に切り上げて帰りたくなったとか頼んだ業務を断れれて「こどもとこうして遊んでいたいから」と言われても、大目に見るほかありません。もちろんこどもや職員、そして事業に重大な影響が及ぶ可能性がある場合は当然に職員の指示に従わせることが言うまでもありません。

 これは実際、わたくしも経験してきたことです。かつての所属先では保護者応援はそのクラブの職員と保護者が口頭で内容を取り交わしていました。やはり労働者性とりわけ労災の問題を解決せねばならなかったので、わたくしはたとえ夏休みの間の1日だけの保護者応援としても雇用契約を取り交わすことを決めて実施に移しました。ですからわざわざ運営本部事務局に来ていただいて雇用契約書を取り交わすようにしたのです。賃金は勤め先の事情で受け取れない場合はその旨も雇用契約書兼労働条件通知書に記載するようにしましたが、労災に関しては完全に対応するとしました。
 確かに、手間暇が増えたので職員からは反対意見もありましたが、労働者を守るという観点から実施に踏み切ったのです。ごく少数ですが保護者応援に参加してくれた保護者からは「何かあった場合に法人として補償する姿勢が明確なことは安心です」と言われたことがあってそれは嬉しかったものです。(ということは人手不足はなかなか解消していなかったので保護者応援に頼らざるを得なかった実情があったということでもあります。)

<日本版DBS時代では?>
注:放課後児童クラブと日本版DBS制度について。日本版DBS制度は「こども性暴力防止法」によって導入される制度で、こどもに関わる事業に関してこどもへの性暴力を防止、抑止する目的で実施されます。2026年12月25日から始まります。こどもを守るとても重要な仕組みです。児童クラブはこの制度に関しては「認定事業者」として国に認められることで対象となります。つまり任意で、この制度を受け入れるかどうかを事業者が選択します。保育所や学校のように義務ではありません。日本版DBS制度を受け入れる認定事業者となるには国が定めている種々の基準をクリアする必要があります。また制度を受け入れると、仕事に従事する職員は「特定の性犯罪について一定期間のうちに有罪となっていないこと」が求められます。

 注が長くなりましたが、2026年12月以降はいわゆる日本版DBS制度が始まります。児童クラブは注にも記したように任意でこの制度を受け入れるかどうか事業者が選択します。そうなっていますがわたくし萩原は「事実上、数年来のうちに国から補助金を受けている児童クラブについては事実上、義務で実施を求められるに等しいプレッシャーが社会や行政からかかるであろう」と、予想しています。単純な根拠で、そもそもこどもを性暴力から守るという異論をはさめない理念を掲げている制度ですからその精度を受け入れることを社会全体が望むからです。まして多数のこどもが一堂に会して過ごす場所の児童クラブです。職員に特定の性犯罪の前科が一定期間のうちに存在しないことを証明している児童クラブが「安心して利用できる児童クラブ」として認められるでしょうし、そういうクラブにしか国の補助金を交付しないということも自治体は考えて当然でしょう。
 おそらくこの数年、3年や4年はかかるでしょうが、早いところでは例えば令和9年度に児童クラブの運営を行政から任されるについては日本版DBS制度の認定事業者になること、あるいはなることを計画していることが求められるのではないでしょうかね。

 さて長々と日本版DBS制度について書いたのは、本日のブログテーマである保護者応援と極めて親和性が低い、というか相容れないものであるからです。まず認定事業者になっていない児童クラブについては除きます。今の児童クラブと同じです。問題は認定事業者になった児童クラブです。その場合、児童クラブで、こどもと関わる現場で働く者には、日本版DBS制度によって特定の性犯罪の前科が無いことを確認することが求められます。そして特定の性犯罪の犯歴がない者が原則として従事することになります。
 この犯歴の確認というのが、保護者応援で児童クラブ業務のヘルプに入ってくれる保護者には大きく立ちふさがります。国の日本版DBS制度のガイドライン68ページにはこうあります。
「有期労働契約等により従事する期間が短い者(1日、数日等)、ボランティアスタッフ等についても、教員等又は教育保育等従事者に該当する者である限り、従事期間による例外は設けず、「教員等」又は「教育保育等従事者」として取り扱う(いわゆる「スポットワーク」等の単発の従事者も、業務内容に照らして教員等又は教育保育等従事者に該当する者は対象となる。)。」
 ですので、保護者応援で業務に加わる保護者さんも、例外とはならずこの制度の対象となる可能性があるということです。こどもと1対1にならない業務だけを担当する場合は対象とならないでしょうが、そういう業務が児童クラブの現場に果たしてあるのか。他の職員と交っておやつの配膳だけを行うためだけの保護者応援は考えにくいものがあります。
 このガイドラインには具体例として「居場所づくりの事業等で学習支援を行うスタッフとして児童等に一対
一で指導、交流等を行うことが想定される場合」がどうなるかの考え方として、「①指導、交流等により児童等との一定の接触があるため支配性、②スタッフとしての定期的な参加が見込まれるため継続性、③第三者の同席がない場合が想定されることから閉鎖性をそれぞれ満たす。」と示されています。保護者応援が定期的な参加であるかどうかは意見もあるでしょうが、わたくしはこの考え方が保護者応援にもあてはまるのではないかと解釈しています。

 ということは、日本版DBS制度の認定事業者となった児童クラブでは、人手不足の際の奥の手である保護者応援が、おいそれと活用できにくいという状況になってしまうのではないか、という懸念をわたくしは抱いているということです。

 今回の中日新聞の記事では、そこまで踏み込んでいたのでしょうか。取材した記者や原稿をチェックするデスクに「そういえば日本版DBS制度はどうなんだ?」という連想力があれば、専門家に取材して、人手不足対応の苦肉の策の保護者応援だけれども日本版DBS制度時代になるとそれがいったいどうなるか? という別の切り口をも持った記事に発展していったことでしょう。わたくしは新聞記者としては決して有能ではありませんでしたがそれでも「目の前のことを記事でしっかり伝えることと、目の前のことしか理解しないで記事を書くのは別だぞ」と新人時代に上司から徹底的に叩き込まれました。

 日本版DBS制度でいえば、認定事業者は新人職員の採用時に犯歴確認を求人応募者に求めることになります。2週間ほどかかるようです。安い時給の児童クラブでのアルバイトやパートをするために、その手間ひまを惜しまぬ人がどれだけいるのか、わたくしには不安しかありません。いちいちマイナンバーカードで過去の戸籍情報にアクセスしてそれを国に提出するなんて、そんなことが一切不要なファストフードやコンビニ、食品スーパーやカフェのバイトやパートに応募先を切り替えることが当然可能性として高まるのではないでしょうかね。そういうあたりもメディアには現場と、制度を考えている国側の双方に取材して記事化していただきたいですね。期待しましょう。

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 New! 日本版DBS制度について相談したい事業者さんにぜひともお勧めします。さいたま市南区の「エリーネ行政書士事務所」(https://www.eri-ne.com/)さんのご紹介です。行政書士の入澤えりな先生が、日本版DBS制度を中心に児童福祉施設や児童福祉の事業者様からのご相談に対応してくださいます。日本版DBS制度以外にも遺言作成・相続、介護タクシー等をメインにご相談に応じているとのことです。営業時間は平日9:30~17:00で、土日祝は応相談とのこと。ぜひ、困り事がありましたら頼ってくださいね。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

投稿者プロフィール

萩原和也