学童保育を構成する要素を点検する。その6:法令、制度、社会の意識、どれもが弱すぎる。解決が必要だ

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 学童保育を構成する各要素を、わたくしなりの視点で思うところを指摘していきます。過去5回で以下の点を取り上げました。
(1回目:11月20日)
・学童保育は事業活動。ビジネス上のしきたり、流儀を身につけることが必要
・事業、それも人のためになる事業である限り、利用者側のニーズに最大限寄り添うことが事業者側の務め
・利用に際しては、事業者側も、利用者側も、ルールを守る、守らせる
(2回目:11月21日)
・指定管理者制度における株式会社が行う事業内容に問題があっても評価側の判断で、いかようにもされる
・指定管理者制度における株式会社が行う事業内容に問題があっても、その発信が少ないので世間に伝わらない
(3回目:11月22日)
・学童保育所を利用する保護者の多くが学童保育に対して望むこと、期待することは「預かり」である
・学童保育所に期待することはその利用料と関係する
・学童保育所の重要な使命である育成支援については、その価値が十分に理解されているとはいえない
・学童保育所に対する社会全体の認識が、育成支援を評価し重要とならない限り、育成支援の学童保育所は消える
(4回目:11月23日)
・市区町村はおおむね、学童保育(放課後児童クラブ)の重要度、優先順位は低い。保育所とは正反対
・コストカットは財政事情が厳しいから。よって国の支援が必要。補助金の支給割合見直しを
・学童保育所に対して積極的な市区町村を評価しよう。学童保育アワードをはじめよう
(5回目:11月24日)
・職員の資質に差があるのは現実。資質が高い職員を増やすには構造的な改革を大前提として効果的な研修が必要
・すべての職員が保護者との協働で育成支援を行いたいと思わない方がいい。理念の押し付けはしてはならない
・職場が無くならないのであれば、安定した給与があれば雇用主はどこでも構わないという職員の方が多いだろう

 最終6回目となる今回は、学童保育所を取り巻く種々の事象を取り上げます。すでに当ブログでたびたび指摘していることでもあります。たくさんありますから箇条書きとします。

<法令・制度>
・児童福祉法において「児童福祉施設」と指定されることが必要(現在は、地域子ども・子育て支援事業)
・児童福祉施設となれば、現在の法定任意事業ではなく、市区町村に実施義務が生じる
・事業の目的を拡大する。放課後児童健全育成だけでなく、要配慮家庭への特別な支援も行う
・資格面の強化。新たに国家資格として「育成支援士」を創設。放課後児童支援員は都道府県資格として残す。育成支援士は各単位に最低1人を配置。放課後児童支援員は2人以上配置を義務とする。つまり有資格者で3人以上。育成支援士は試験による選抜とするが指定校での養成も可。放課後児童支援員は現状同様、受講で付与するが指定校での養成も可。ただし受講はケアマネジャーのように数年間隔で再度の受講を義務付け。
・指定管理者制度が実施される下での職員の雇用労働条件安定化の方策の検討と実施。公契約条例の理解と推進

※法的な位置付けを強化することで、例えば小学校や教育委員会、教育センター等の関係機関との連携もより容易になるでしょう。財政面でも市区町村の裁量で採用する補助金メニューが異なるような違いが無くなります。何より、設置が義務付けられれば、いつまでも市区町村は待機児童問題を放置することができなくなります。

<社会意識>
・「育成支援」に対する理解の向上。育成支援の重要性を社会に継続的かつ大量に発信
・学童保育所における育成支援が、実際に学童保育所で過ごした子どもたちにどのような影響を及ぼしているのか、専門家による調査が必要
・育成支援の学術的な面での研究とその社会への発信
・「子どもの育ちをどう考えるか」の点で保護者の興味関心を湧き立てる各種方策の実施

※学童保育の仕事の理解が向上し、専門職にふさわしい報酬が当然という理解が社会に広く行きわたれば、現在のような低い賃金水準を許さないという社会の監視の目が届くことになります。3~5年間隔で事業者が入れ替わるような不安定な事業運営形態が育成支援には適さないという社会の意識が育てば、現在の指定管理者制度による弊害の緩和にも有効です。
 学童保育の世界は、放課後児童クラブや民間学童保育所など、その目的も運営実態もまったく異なる業態を含んでいて、外部から見て分かりにくい状態がずっと続いています。思い切って、言葉の整理を行うことも必要ではないかと考えます。

 問題が山積している学童保育所。このままでは、このような悪い状況がますます広まっていくだけです。早いうちに対応を矢継ぎ早に行わないと、子どもにとって望ましくない形態の「絶対管理型」学童保育所だけが増えていきますよ。それはもう学童保育所と呼べない、単なる「児童監視場所」です。児童監視社会にならないように、今こそ行動を始めるべきでしょう。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所の運営の継続について、「あい和学童クラブ運営法人」がお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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