子どもの放課後の居場所が入所先を選べない学童保育所の地域では、事業者は常に進化したサービス提供を行うべき

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 学童保育という仕組みは子育て世帯のライフワークバランスを支える重要な存在で、社会的インフラといえます。しかし、その制度設計はぜい弱で、学童保育の中核的な存在である「放課後児童健全育成事業」なるものは、市区町村が必ず行わねばならない仕組みではありません。児童福祉法上、「することができる」という「任意」の「事業」という位置付けに過ぎません。(保育所は、保育を必要とするものがいる場合は、必ず「施設」を設置されて行われることが市区町村の義務とされています。対照的ですね)

 よって、学童保育所(この場合、放課後児童クラブ。以下同じ)が存在しない市町村があるほどです。学童保育所があっても、「小学校の学区内に1つのクラブしかなく、学童保育を利用する場合は、そのクラブに必ず入所する」ことが市区町村もしくは市区町村との契約等によってクラブを運営している事業者の定めによって、入所利用できるクラブが限定されていることが圧倒的に多いでしょう。中には、小学校の学区に限定されず、保護者の選択によって入所ができる民設民営のクラブがある地域があります。そのようなクラブが市区町村から委託または指定を受けているか、もしくはまったく補助金を受けていない、といった形態は様々でしょう。
 以前、わたくしが訪れた福島県浅川町の「あさまる児童クラブ」は補助金を受けていないクラブですし、宮城県石巻市の「放課後こどもクラブBremen」は市から補助金を受けていても委託等はうけていないので、どの学区の子どもでも利用ができる居場所となっています。

 理想を言えば、学区内に学童保育所がある(必然的に、それほど自宅や学校から遠くない場所の立地である)ことに加え、学区に縛られずに利用ができる民営の学童保育所があり、または子どもの居場所があり、児童館もあり、ファミリーサポートも充実していて家で過ごすこともできる、という状態であることが素晴らしい。子ども自身が、自分がもっとも過ごしたい場所、自分が守られる場所、自分が自分らしく過ごせる場所を選択できる状況にあるということです。こどもまんなか社会を国は目指すというのですから、全国各地で、このような理想的な状況が訪れるように、子育て支援にもっと予算を割いてほしいですね。

 現実をみれば、放課後や夏休みにおいて子どもが過ごせる学童保育所は、指定された1つのクラブでしかないことが圧倒的に多いでしょう。大規模や施設の老朽化、そして職員不足という難問だらけですが、そのような厳しい状況であっても、子どもが安全安心に利用できる、通える場所であるように事業者は最善を尽くしてその実現を維持し続ける必要があります。子どもが行き渋りの状況に陥って保護者が苦境に追い込まれないように、まして、子ども同士のいじめ行為があって子どもが学童に行きたくないとなったり、育成支援の理念を理解しない程度の低い支援員によって子どもが傷つけられ、学童保育所に行くのを嫌がるという状況になってしまうことは、事業者は絶対にさけねばなりません。

 子どもの居場所として、子どもの安全安心を守れる場所として育成支援が的確に実施できる状況を維持し続けていく必要があるのです。さらに、保護者の子育て生活を支えるため、できる限り、保護者の利便性を向上していくことも合わせて追求していく必要があります。この点において、特に保護者由来の地域に根差した学童保育の事業者は、「こどもまんなか」の理念にこだわりすぎるあまり、保護者については、その負担を必要なものと肯定して負担感の軽減に努めることに消極的だったり保護者の利便性向上=サービス向上に「保育はサービスではない」という意味不明の理由を掲げて利便性向上に否定的だったりと、なかなか、保護者の利便性向上に冷淡であることが珍しくありません。

 それでは、いけません。学童保育は社会に必要なインフラ的な存在です。学童保育所が社会に存在「し続ける」ことができるためには、子ども「だけ」ではなくて、地域で過ごす子育て世帯や、地域社会をまとめる単位である市区町村にとっても、「必要不可欠」と認識されることが欠かせません。まして、子どもや子育て世帯が、放課後の過ごす場所を選択できない現状多くの地域においてみられる状況では、学童保育の事業者が、常時、情報収集に努めて(その手段は定期的な保護者との意見交換や利用者アンケート等がありますね)、常に、合理的な範囲において、子どもの居場所、育成支援の場所だけではなくて保護者の子育て生活を支えるために必要なサービスを検討し、実施していくことが欠かせないのです。

 いまだに様々な意見が出ることが多い昼食提供や夏休み等期間限定の受け入れであっても、「子どもにとって親がお弁当を用意することが親子の関りとして大事」、「短期間では子ども同士の関係性ができない、単なる預かり場となって学童保育ではない」ということで、学童保育の現場の世界では今なお否定的な意見が多いのではないかと、私は推測します。いつまでも、「子どものために」という、「こども」を錦の御旗にして、自分たち(職員や、保護者由来の事業運営者)の負担が増えると思われることをはねつけるという悪弊は、払しょくするべきです。1つしか選べない地域で学童保育所を運営しているからこそ、事業の運営者は、常にサービス拡大、サービス向上を重要な経営課題として取り組むべきなのです。そうやって、保護者、地域の市区町村の理解と支持を獲得し続けることが必要なのです。

 そういうことに「どうやったらできるか」と考えて取り組まないからこそ、そういったサービスをごく当たり前に提供する営利の広域展開事業者が、どんどん学童保育所の運営を任されているという当たり前の事実を、「保護者が関わることが大事」という考えの方は、真剣に考えるべきでしょう。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。

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