埼玉県が作成する「放課後児童クラブスタートブック」(仮称)を、あい和が手掛けることになりました。説明します。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
 2025年12月25日に、埼玉県庁のホームページにて、「放課後児童クラブスタートブック」(仮称)に関する公募の結果が公表されました。わたくしが代表の「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」はこの公募に参加し、結果として候補者として選定されました。事実上の決定です。本日の運営支援ブログはこの件について紹介します。放課後児童クラブの「育成支援」を重視しているからこその取り組みだということです。なお、予定していた「放課後児童クラブの実施状況」については、あす12月27日以降に、そして日本版DBS制度ガイドライン案関連は2026年1月に投稿いたします。
 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)

<放課後児童クラブスタートブックとは>
 埼玉県庁のホームページをぜひご覧ください。「『放課後児童クラブスタートブック(仮称)』制作業務」の企画提案競技の実施について - 埼玉県
 ここに「埼玉県では、スポーツクラブや塾などこれまで放課後児童クラブの運営に参入したことのない民間事業者に対し放課後児童クラブへの参入を促すため、参入や運営に関する基本的な内容等をまとめた「放課後児童クラブスタートブック(仮称)」を作成します。」と説明があります。
 この作成を手掛けたい事業者を公募型プロポーザルで集めて埼玉県が選定した結果、弊会が委託先候補者に選ばれたということです。

 スタートブックですが、児童クラブの参入を促す趣旨で広域自治体、基礎自治体とも作成している例はおそらく存在しないのではないでしょうか。その点において、弊会はとても重要なプロジェクトを手掛けられる機会をいただいたといえます。
 どんな内容であるかなど詳細は県HPに掲載されている仕様書をぜひご確認ください。仕様書に記載された目的の部分を引用しますと、「埼玉県においては、放課後児童健全育成事業(以下、「放課後児童クラブ」という。)へのニーズが高く、令和6年度における支援単位、登録児童数及び待機児童数は過去最高となってい
る。そのため、本県では放課後児童クラブの整備を進めていくだけではなく、これまで放課後児童クラブの運営をしたことのない民間事業者の新たな参入を図り、放課後児童健全育成事業放課後児童クラブに対するニーズに対応していく必要がある。そこで、本事業では、これまで放課後児童クラブの運営をしたことのない民間事業者に対して新たな参入を促すため、放課後児童クラブの参入・運営等に必要な事項をまとめた冊子を作
成するものである。」とあります。この点、のちに弊会の見解を記します。
 また、この事業ですが、「こども家庭庁が実施する「放課後児童クラブ職員確保・民間事業者参入支援事
業」を活用して実施するものである」と仕様書に記載があります。この事業はこども家庭庁令和6年度補正予算案説明資料によりますと、「放課後児童クラブの待機児童が生じている都道府県(待機児童数300人以上)・市町村(待機児童数100人以上)が、待機児童を解消する目的で、放課後児童クラブに勤務する職員を確保するため、事業の魅力発信を向上させる先駆的な取組や新たに民間事業者による放課後児童健全育成事業への参入を促進する事業等について、国において採択を行い、当該事業の実施等に係る経費を補助する。」とあります。埼玉県は待機児童数が令和7年度で300人以上ですので、この事業の対象となり、補助率は国の10分の10となります。

 なお、冊子はA5サイズの40ページで、冊子のほかのインターネットでも公開されることが求められているので、ネットで簡単にダウンロードできるようになります。おそらくですが、すでに公開されている「こどもの居場所づくりスタートブック」(R5スタートブック単ページ)のようにダウンロードできるようになるはずです。

<待機児童は最優先で防止しなければならない、という考え>
 放課後児童クラブの待機児童について、わたくし萩原は「絶対に起こしてはならない状態。どんなことをしても待機児童は出してはならない」という立場です。「では、待機児童を出さないからと言って、児童クラブがギュウギュウ詰めになってもいいのか?」と問われたとしたら、「ええ。待機児童は絶対に出してはなりません」と答えるほど覚悟を決めた見解を持っています。ただし、「待機児童を出さないために児童クラブにこどもを入所させるが、ギュウギュウ詰めの状態を放置してはならない。速やかに大規模状態を解消することを市区町村の責任のもとに求める」と付け加えます。
 待機児童は出しません。こどもが家庭で留守番をしたり公園等にひとりで移動する状況を避けたりするには児童クラブに入ることが大事で、それによって留守番状態等で遭遇するかもしれない身の危険、生命身体に対する重大な被害に遭う可能性を排除できるからです。まずは生命身体という、侵害されたら取り返しのつかない命の確保を最優先に、待機児童にならないよう児童クラブに入ってもらいます。これはまた、保護者の社会経済活動を保障し、それによって家計が安定することでその家庭における子育てが安定することも目的とします。とりわけ、待機児童になったことに対応するのは圧倒的に母親が多く、それは女性の社会経済活動のキャリアに変更や中断を余儀なくさせることになり、女性の社会活躍を妨げます。専門職や高いスキルを身につけたのに、女性であるから、母親であるからといった理由で、それまで築き上げてきたキャリアを中断させるとか、正規職で勤しんできたところを非常勤や派遣職員に替えなければならないという事態を防ぐには、やはりこどもが児童クラブに入ることが必要なのです。

 児童クラブの待機児童を出さないようにすることは、こどもの生命身体を究極的に守ることであり、保護者の社会経済活動を継続させることによって子育て世帯の生活水準を維持することです。この待機児童を絶対に出さない施策は他の何事よりも優先されるべきである、というのが運営支援の考えです。
 同時に、大規模状態の児童クラブが、こどもの生活環境としてまったく不適切であることは疑いようがなく、職員の勤務環境としても劣悪なのは当然なので、待機児童を出さないことを免罪符にして大規模状態を放置してよいことは決して認められず、市区町村は放課後児童健全育成事業を行う立場として、責任をもってすみやかに大規模状態を解消する取り組みをしなければならない、と運営支援は考えます。

 運営支援の考えるところはこうです。児童クラブの定員40人のところを65人のこどもを入れざるを得なかった。もう言うまでもなく劣悪な大規模状態です。しかし究極的な選択としてやむを得ないとしますが、その大規模状態を速やかに解消することが必要で、「夏休みなど朝から夜までこどもを受け入れる期間は、市区町村の責任で、こどもが別の場所で過ごせるような空間を用意すること」であり、さらに、まずは年度内、遅くても次年度には児童クラブの分離分割による支援の単位の増設を実現することが当然に必要です。なお、大規模状態に即した職員の配置人数の増員も市区町村が費用を負担することで実施することです。正規常勤職員を最低でも3人、さらに加えて非常勤職員を通常より数人増員するだけの人件費を市区町村が単独で補助することが必要です。そうであれば、「なんとか1年間は」現場職員も歯を食いしばって耐えることができるでしょう。こどもたちには申し訳ないと思いながら、「もうすぐ、広くて思う存分のびのびできる新しい場所ができるから」と謝りながら、できる限り、ひどい環境の中でもこどもが困るトラブルを起こさぬよう、大人たちが努力するのです。
「そんな大規模状態、こどもにとって絶対にダメ」という声が児童クラブ界隈から聞こえてきそうですが、「なら、待機児童のこどもが家でひとりぼっちで過ごすことを許容するのか」とわたくしは問いたい。実のところ、拙著「知られざる学童保育の世界」にも記しましたが、児童クラブ側の、こどもの育ちを大事にしたいというとてもまじめな立場の人にこそ、「児童クラブで過ごしているこどもの生活環境を守りたい」という意向から待機児童について賛成しがちな面があります。それは「児童クラブに入っているこどもの権利、環境を大事にしたい」ということで、児童クラブに入れなかったこどものことは考えていません。それは「児童クラブのこどもたちを援助、支援するのが業務」であって児童クラブに入れなかったこどもは業務対象外だからです。児童クラブの職員としては間違っていないと、その界隈から思われています。クラブの室内にいるこどもたちだけが健全育成の対象で、家庭や地域で過ごすこどもは育成支援の対象外だからです。

 ただ、わたくしは「違う」といいます。「児童クラブは多くの公費が投入されている。それはこどもの健全育成だけではなく、子育て世帯の社会経済活動の参加を児童クラブによって実現させることも目的だ。よって児童クラブに入っているこどもだけを守れればよい、という考えには反対する」と訴えます。

 待機児童を出さないために、国も自治体も全力を尽くして取り組まねばならない。なにより「待機児童、ダメゼッタイ」です。ただし「うちはシステム上、待機児童は出さないからね~」といわゆる放課後全児童対策事業の自治体が安穏としているとしたら、「こども10人につき職員1人の配置基準ぐらいは当然、守っているのでしょうね? こども1人あたり1.65平方メートルは確保しているのでしょうね? こども1人1人に適切な援助、支援ができるように職員がこどもの成長の様子を把握できるだけの業務の時間と業務量の余裕を、自治体はクラブ現場に与えているのでしょうね?」と、強く問い詰めたいですね。

 さらに言えばですよ、小学生の児童数は市区町村は容易に予測できるわけで、そのうち児童クラブを利用する可能性がある人数の予測も必ずできます。上下にブレは当然あるとしても、ほぼ最大限の需要量、ニーズ量については予測できるはずですし、まさにそれを可視化しているのが、子ども・子育て支援事業計画であり、こども計画です。人口増の要因が宅地開発や大規模マンションの新設であれば、そのような住居に子育て世帯が入居するとしたら当然に児童クラブを利用する可能性が高いのですから、市区町村が将来のニーズを踏まえて児童クラブを整備するのが、本来であれば当たり前の市区町村の仕事なのです。それをせずに、待機児童を安易に出すとか、待機にさせないためにギュウギュウ詰めの児童クラブを看過しているというのは、小学1年生の2人に1人が利用する社会インフラである児童クラブをいかに軽視しているかの、言い逃れができない証拠です。こどもまんなか社会は、このような自治体がある限り、実現できませんよ。

<スタートブックの目的その1>
 仕様書の一部を再引用しましょう。「本県では放課後児童クラブの整備を進めていくだけではなく、これまで放課後児童クラブの運営をしたことのない民間事業者の新たな参入を図り、放課後児童健全育成事業放課後児童クラブに対するニーズに対応していく必要がある。」とあります。
 埼玉県は放課後児童クラブに関して「学童保育のトップランナー」であると自認してきました。公設公営や公設民営、民設民営であっても「保護者が運営に加わることで、保護者が望む質の高いこどもの育ちを児童クラブで実現できる」という、保護者による「共同保育」の理念を反映させた、あるいはそのまま体現させた児童クラブの運営を多くの施設で実施してきました。公営クラブでは保護者会活動で、民営クラブは保護者運営や、保護者運営を由来とする法人において、実施してきました。そこに、質の高い埼玉県内の放課後児童クラブの土台が築かれたといえるでしょう。

 しかしながら、埼玉県は、都心に通勤しながら子育てするに適した場所であり、子育て世帯の増加が長い期間続いてきたことによる児童クラブの資源の不足が続いています。一方で、少子化の急速な進行は、児童クラブの設備投資に関する市町村の姿勢に影響します。明確にこどもの人口がしばらく増え続けるという予測が確実な地域はともかく、そうでなければ、なかなか公設による新たな児童クラブの整備は進みません。「いま児童クラブを造っても10年後に児童クラブとして活用できるのか? 活用できなくなったらどうすればいいのだ?」と市町村は尻込みするのです。それは分からなくもありません。(もっとも、合理的な理由がある場合の目的外利用を認めるよう緩和すりゃいいじゃないかとは考えますが)

 公設による児童クラブの増設、整備がなかなか進まない現実では、待機児童はなかなか減りません。つい先日に公表された、令和7年度における放課後児童クラブの実施状況(後日、運営支援ブログで取り上げます)では、埼玉県内の待機児童数は減少に転じたようですが、まだまだ非常に多い水準です。待機児童数だけ、子育て生活の困難に直面している世帯があると考えていいのです。まして、待機児童として公に計上されていないだけで実質的に待機児童となっているこどもの人数は、はるかに多いと想定できます。

 公設による児童クラブの整備を待っていたら、毎年毎年、「どうしよう、待機になっちゃった。仕事、辞めなきゃだめかな」という悲劇が襲い掛かる子育て世帯を生むことになってしまいます。それはどうしても避けたい。だからこそ、民間企業の児童クラブ業界への新規参入を促す、このスタートブックが必要とされるのです。スタートブックは、児童クラブの役割や事業運営の説明を当然に盛り込むことになります。参入ノウハウの紹介も当然にありますが、児童クラブとはどういうものか、をまずはしっかりと紹介することです。
 民間事業者がすでに種々の理由(それは、こども関連の事業をすでに行っている事業者であれば少子化に対応した収益源の新たな確保を考えたいということがあるでしょう。こども関連の事業とは縁遠い事業者にとっても、新たな事業の多角化を狙うための一助としたいということでしょう)があって児童クラブ業界に参入したいけれども、実は児童クラブの業界がよく分からない、という場合に参考となる手引きとなるのが、このスタートブックです。また、「なにか、新たな事業を始めたいな」とおぼろげながら考えている民間事業者にとっては、「なるほど、そういう社会貢献を兼ねた事業があるのか」と気づいてもらえるための材料にもなるでしょう。いずれにしても、民間事業者に「児童クラブを運営したいと思わせる」ための、安心材料としてくださいね、というものがスタートブックの役割となるのです。児童クラブの「数」を増やしたい。それが大事な目的の1つです。

<スタートブックの目的その2>
 児童クラブの目的や意義、概要、実際の事業運営について正確に紹介することがこのスタートブックに必要な機能です。それは当然ながら、「放課後児童健全育成事業」に関する理解を民間事業者に伝えることになります。それは「質」を伴った施設を登場させたい、ということです。これで数と質の双方について訴求するのが、スタートブックの意図であると、理解が進んできたことを期待します。

 わたくしは全国市区町村データーベースのとりまとめ作業を独自に行っていますが、全国の多くの地域において、実はとっくに民間事業者が相次いで児童クラブに参入しています。それは学習塾の事業者だったり、英会話教室だったりスポーツクラブやダンススタジオだったり、物流やエンターテインメント企業であったり、実に様々です。その中で非常によく見かけるのが、「事実上、単なる学習塾や英会話スクールなのに放課後児童クラブとして大々的にこどもを募集したり、補助金を受け取っている」事業者がごく普通にあることです。
 児童クラブは、地域の実情に応じて行われるので、実際は学習塾や英会話教室やスポーツクラブであっても、その地域の自治体が「OK」すればそれは放課後児童クラブになります。こどもの多種多彩な居場所づくりとしては好ましいことではありますが、ただそういう、英会話スクールそのものであるこどもの居場所が放課後児童クラブである、と称される実態については、「そういう居場所は当然にあっていいけれど、放課後児童クラブ運営指針に基づいた事業運営はしていないよね、それではやっぱり放課後児童クラブではないよね」と当然に考えてしまいます。「うちは江戸前寿司ですよ」と看板に掲げておきながら、すしの種がすべて海外からの輸入の魚介類だとしたら、それは江戸前じゃないよ、ということです。

 しかし、埼玉県が公費を投じて、民間事業者の児童クラブの新規参入を促す、それも「放課後児童クラブ」としての新規参入を促すということは、全国の多くの地域で見られるような民間事業者の児童クラブ新規参入とは、どうやら一線を画すことが、わたくしには感じられました。だからこそ、勇気を奮って公募に応募したわけです。

 「民間事業者さん、ぜひとも児童クラブをどんどん作って運営してください。そうすれば待機児童は減ります。こどもの居場所が増えることは何より大切です。民間事業者らしい持ち味で、保護者にも、こどもにも、興味がそそられる魅力的な独自のプログラムを打ち出せるでしょう。その事業の土台としては、放課後児童健全育成事業があり、放課後児童クラブ運営指針があることをスタートブックを通じて知って、こどもの健全な育成を第一に考える民間独自の魅力的な児童クラブを、設置するための一助となれば」というのが、まさにこのスタートブックが帯びる重要な意義です。

 ぶっちゃけ、単にこどもを集めて何万円もの利用料を徴収して金儲け、利益最優先の事業者には参入してほしくないですよ。ちゃんとこどもの育成支援を行って保護者の子育て支援も実施して、その上で、こどもも保護者も魅力的に感じる独自のプログラムを織り込んだ児童クラブを設置運営してくださいね、ということなのです。そこには「児童クラブの育成支援を確実に実施して健全育成の質を落とさず、さらに事業活動の範囲を広げてこどもと保護者のニーズを満たす」という野心的な狙いが、あるのです。

 わたくしの勝手な推測ですが、このスタートブックはもう1つ、別の役割を担っているものと考えています。埼玉県内でも全国でもそうですが、公設児童クラブの運営を「児童クラブ運営を収益源とする広域展開事業者」が担うことが極めて急激に進行しています。このような状況を踏まえ、「放課後児童クラブ運営事業は、安定して継続的に児童クラブを運営することが望ましいことを理解してもらいたい」ということです。
 公設クラブの運営を担う広域展開事業者はアウトソーシング事業で収益を得ます。それは補助金ビジネスそのものですが、事業の収益が何らかの事情で見込め無くなればそのような事業者は容易に撤退します。むろん、民設事業であれば当たり前のことであり、民設民営事業者による児童クラブ運営にはその点からの懸念や批判があるのはわたくしも重々承知しています。まして埼玉県内には過去、現実にそのような事態がありました。この点、スタートブックでは念を入れて説明をすることになるでしょう。単に利益重視ではなくて、事業本体との相乗効果や事業者そのものの社会的な評価の向上をプライスレスの利益として考えてほしいということは当然、呼びかけることになるでしょう。
 一方で公設であればこそ安定して持続的に事業運営をしてほしいのですが、ここまで公設クラブのアウトソーシング化が進んでしまったので、運営主体の3年ないし5年ごとの変更もまた当たり前に行われます。公の事業を受託した、あるいは指定管理者となった、だからクラブを運営してみたけれどあまり旨味が無いな、と判断した広域展開事業者は次の公募や指定管理者選定に応募しないことも普通にあるでしょう。運営事業者がコロコロと替わる時代になってしまったのが、公設クラブのアウトソーシング化であって、それはこどもと従事者には不利益そのものでしかありません。
 よって、スタートブックによって児童クラブへの新規参入を呼び掛けるにあたっては、必要最低限の利益を当然に確保しながら民間事業者の本体への貢献も同時に実現するような方向性を大前提に、運営から容易に撤退しないように、腰を据えた事業運営を当然の路線として確立してほしいと呼び掛けることになります。もちろん、機動性こそ民間事業者が持つ、公に対する有利な点です。児童クラブを必要とする地域に民設児童クラブを速やかに設置開設し、地域の子育て環境を大いに支えた。十数年後、少子化等の影響で児童クラブのニーズが大幅に減ったとしたなら、それは撤退を迅速に考えて必要な措置を講じて円満に撤退する、ということも民間事業者なら上手にできるでしょう。機動力の発揮とこまめな対応は、自治体にはなかなかできないことです。
 スタートブックは民間事業者の参入を促すだけではなく、同時に、民営事業者に丸投げの公設クラブを設置している市町村に、「自分たちのやっていることは、これでいいのだろうか」と考えてもらうきっかけになればいいなと、わたくしは期待するのです。

 「児童クラブが必要だよ。新規参入を歓迎しますよ」とばかり、あちこちの自治体で民設クラブの公募が行われています。しかしそこには「どういう理念で、どのように子どもを支え、子育て中の保護者を支えるか」の理念がどうにも置き去りになっている懸念が、ずっとわたくしにはありました。単に事業者を呼び集めて、児童クラブの運営については法令などを参考にしなさいねと文字で示すだけで児童クラブの設置運営は民間事業者に丸投げではないかという懸念です。それを、広域自治体の立場で、「児童クラブをぜひ始めてみませんか。ついては、このような理念で、こういう考え方をもって、ぜひとも参入してくださいね」と呼びかけようとする埼玉県の姿勢は、「学童保育のトップランナー」の意地と矜持を示したものだと評したいというのは、ほめ過ぎでしょうか。何事も最初が肝心です。出だしから「こういうことなんだ」と教わることができれば、のちのちまでそれが生きてくるでしょう。

 埼玉県に素敵な民設民営放課後児童クラブがどんどん増えるような未来を作れるよう、微力ながら尽力して参ります。すでにプロジェクトは動きだしており、かつての職場である記者仲間や、児童クラブに理解の深い行政書士や社会保険労務士の協力を得ながら進行しつつあり、3月の完成を目指しております。どうぞご期待ください。

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

New! いわゆる日本版DBS制度を専門分野の1つとして事業者の取り組みを支えたいと事業活動を始めた新進気鋭の行政書士さんをご紹介します。「行政書士窪田法務事務所」の窪田洋之さんです。なんと、事務所がわたくしと同じ町内でして、わたくしの自宅から徒歩5分程度に事務所を構えられておられるという奇跡的なご縁です。窪田さんは、日本版DBS制度の認定支援とIT・AI活用サポートを中心に、幅広く事業所の活動を支えていくとのことです。「子どもを守り、あなあたの事業も守る。」と名刺に記載されていて、とても心強いです。ぜひ、ご相談されてみてはいかがでしょうか。お問い合わせは「日本版DBS導入支援センター | 行政書士窪田法務事務所」へどうぞ。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

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萩原和也