国も自治体も「小4の壁」を軽視していてはダメ! 小学4年生前後で児童クラブを事実上、追い出される状態を直ちに解消して!

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人支援員が七転び八起きしながら、周りの人と一緒に過ごしていく人間ドラマであり成長ストーリー小説「がくどう、 序」がアマゾンで発売中です。児童クラブを利用する保護者の立場も描いています。ぜひ手に取ってみてください!
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 新年度も第2週目に入って、いよいよ小学校も1学期が始まってくるでしょう。春本番になりますが、この春、放課後児童クラブに入れなかったご家庭は春を楽しむどころではないでしょう。児童クラブに入りたくても入れることを拒む種々の状況、つまり「壁」がいろいろあるのが、児童クラブです。その中でも、なかなか注目されないけれど深刻な壁は「小4の壁」です。こども家庭庁は事実上、小4の壁対策を後回しにしています。それではいけないのです。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<小4の壁はもっとも高くて険しい壁>
 児童クラブ、学童保育所に入りたくても入れない「壁」といえば、新1年生のこどもが児童クラブに入れない「小1の壁」がすぐに思いつきます。(もっとも、いまの「小1の壁」とは、児童クラブに入所できず待機児童になる現象も含んで小1のこどもを持つ子育て世帯が直面するすべての困難な出来事を指す意味に拡大していますが)
 メディアが児童クラブの待機児童を報じるときも、報じる側も聞く側も頭の中で思い描くことは「真新しいランドセルを背負った新1年生と、その保護者が途方に暮れるイメージ」ではないでしょうか。

 ところが児童クラブに入りたくても入れない壁は、小1がもっとも高くて険しい壁ではないのです。「小4の壁」こそ、最も手ごわい壁です。こども家庭庁がとりまとめた、令和6年の放課後児童クラブ実施状況からデータを転載します。
利用できなかった児童数(待機児童数)
全 体 : 17,686人【前年比 1,410人増】(令和5年:16,276人)
(学年別内訳)
小学1年生: 2,209人【前年比 202人減】
小学2年生: 2,116人【前年比 4人増】
小学3年生: 3,879人【前年比 371人増】
小学4年生: 5,707人【前年比 663人増】
小学5年生: 2,756人【前年比 424人増】
小学6年生: 1,019人【前年比 150人増】

 小4の壁は小1の壁より2倍以上も高くて険しい壁です。2.5倍も手ごわい壁です。「小3の壁」も「小5の壁」も、実は小1の壁より高いのです。これはどういうことでしょう。つまり、多くの子育て世帯にとって、こどもが小学3年生や4年生、5年生になっても、本来であれば「こどもにとって安全安心な居場所、こどもが放課後児童支援員等の職員たちのもとで健やかに育っていく場所で、過ごしてほしい」という保護者の願いがあるのに、その子育て世帯の保護者の願いがかなえられていないという状況にあるのです。

 小3や小4、小5の待機児童数が多いのは単純な理由です。「児童クラブを必要とするこどもを全員、入所させられないから。施設の整備が進んでいない、つまり量の問題」です。新1年生で児童クラブに入りたいというこどもが多いので、上の学年を追い出さないと、物理的に児童クラブにこどもを入所させられないからです。ロッカーも下駄箱も、そもそも、こどものパーソナルスペースすら確保できないから、高学年を追い出すのです。
 しかも国の定義する待機児童は、正式に入所を申請していてほかに入れるクラブがまったくないという厳しい条件にすべて適合した場合です。「自分たちが残っていると新1年生が待機児童になってしまうから」と、本当なら児童クラブに残っていたいけれど、新1年生に居場所を譲るとして自主的に退所を(苦渋の選択で)決めた高学年は待機児童にカウントされません。また、「いま、あなたのいるクラブからほかのクラブに移ってもらいます。場所は遠くなりますがご承知ください。職員は全員がシニア世代で見守りしかしませんがご理解ください」と自治体や俱楽部事業者から提示されて、「それでは児童クラブとはとても言えないから、入りません」として特定の学年以上が通うことになっている児童クラブに行かなかった(つまり、今までいた児童クラブを利用し続けたかった)世帯もまた、待機児童にカウントされないのです。
 国の示している数字の倍以上の人数が、高学年の待機児童として実際は存在しているだろうと私は想像しています。数字以上に深刻なのが、小4の壁、小3、小5の壁です。

<国は小1の壁を優先>
 児童クラブの待機児童は、新型コロナウイルス流行で減ったものの経済活動が再開するにつれてどんどん増えています。児童クラブの待機児童対策について国は十数年以上も前から解消に取り組むと掲げていますが、一向に待機児童が解消する見込みはまったく見えてきません。もはや、保育所より児童クラブの方が待機児童が多いのです。「保育園落ちた日本死ね」は、「学童落ちた日本ダメダメ」なのです。

 こども家庭庁は小1の壁に重点的に取り組む姿勢を掲げています。優先順位を付けて解消に取り組む、ということです。こども家庭庁と文部科学省の2省庁が2024年12月に公表した「放課後児童対策パッケージ2025」には、3ページ目の冒頭にこう記されています。
「特に就学にあたっての保護者の不安が大きいと想定される小学校新1年生の待機の解消をまずは重点的に推進する。」

 小1の壁を重視して対策をする、ということですが、私に言わせれば、小1も小4の、その壁によって保護者が受ける影響はさして変わりありません。児童クラブの壁は、保護者にとってみれば、安心して就業やその他必要な事情を遂行することを妨げるということですから、保護者のこどもが小1であろうが小4であろうが、保護者の事情については量も質も変化がありません。こどもについてみれば、「小1のこどもは、小4のこどもより、1人で過ごさざるを得ない環境においては、より脆弱であろう」ということは確かにそうでしょう。その点で、国は小1の壁の対策を重視して小1の待機の解消を重点的に推進するということなのでしょうが、「いままでさんざん待機児童解消を掲げてきて、現実的にまったく効果を上げていないのに、さらに小1の壁に集中するというが、果たして意味があるのか」というのが私の印象です。

<小1優先より、すべての学年の待機児童解消を!>
 小1のこどもも、小4のこどもも、留守番や下校時の状況の不安を考えるとき、何がこどもの安全を脅かすのかを考えると、第三者による危害や、故意ではない偶発的な行動に巻き込まれること、そして自然災害です。具体的には、性加害を加えようとする輩や金品を奪おうとする犯罪者、交通事故、地震があるでしょう。それは小1も小4も、学年の差によって対抗できる能力に決定的な差は生じません。こどもを狙う不審な人物に対して、小1では防げないが小4なら防げる、ということは全くありません。また、生活規範を考えて、家でダラダラと遊ばせるより児童クラブに入れておきたいという保護者にしてみれば、学年が上に上がるほど児童クラブに入れておきたいという動機が強まります。「家でずっと動画を見て変な大人と知り合いになる危険を防ぐには、児童クラブで過ごさせたい」という保護者だっているのです。

 ですので、小1の壁の対策に躍起になっているとしても、「そもそも今までの実績でまったく待機児童を減らす施策を打ち出していないではないか。今までにも待機児童解消に政策の優先順位を最上位に置いていたはずなのに、その結果を出さないまま待機の解消を重点的に推進すると言われても具体的な策がないと信じられない」という疑問の上に、「小1も小4も待機児童による不都合、子育て世帯の不利益には決定的な差がない。優先順位は待機児童全体の解消に置かれるべきで、小1の壁に特に重点を置く意味は薄い」というのが、私の考えです。

 ここで児童クラブの「質の高さ」を簡単に見分けられる学童クラブちょっといい知識(今どきの言い方をすれば、学童ハック、でしょうかね。)です。「高学年のこどもが通い続けたがる児童クラブは、こどもにとって居心地が良いクラブ」です。特に、低学年からまんべんなくいろいろな学年が在籍しているクラブは、もう間違いありません。小1から小6まですべての学年のこどもにとって、居心地が良い児童クラブになっているといえるでしょう。すなわち、質の高い児童クラブということです。そのクラブに従事する児童クラブ職員も、毎日、安心して仕事ができる環境にあるでしょう。
 高学年児童ともなれば、自身の興味関心がぐんと広がり、いろいろなことをやってみたい、学びたいという動機も生まれてきます。その中でも、児童クラブに通うことを選択するということは、よほど児童クラブの環境が優れているということです。
 なお、保護者の方には「勉強やスポーツや芸術にもっと関心を持ってもらいたいのに」と不安に思う人もいるかもしれません。心配ご無用、です。高学年になって児童クラブで過ごすことを選択するということは、異年齢集団における、こどもなりに複雑な人間関係の中で上手に過ごせているといえるのです。それは、そのこどもが将来、中学や高校や大学や専門学校、また就職する等で社会に出たときに、最も苦労する対人関係において「児童クラブで身に着けた人間関係における身の処し方」が大いに役に立つ、ということです。つまり、「うまく上手に社会で生きていける」ということです。
 これは「非認知能力」が児童クラブで十分に身に着いた、ということなんですね。勉強やスポーツのテクニックは重要ですが、もっと重要なのは「その場でうまくやっていけること」。まさにこの部分の能力を児童クラブで伸ばせます。しかも高学年が児童クラブで過ごすことはまさにこの部分の能力を存分に身に着けているということです。

 高学年が児童クラブで過ごすことは、基本的に良いことばかりです。高学年が児童クラブを追い出されることが無いよう、国は自治体に児童クラブの量的な整備を強い態度で指示してください。お願いします。
 
※この投稿で、運営支援ブログは999の投稿記事を数えます。あす、1,000記事の投稿となります。

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 弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。

 放課後児童クラブを舞台にした、萩原の第1作目となる小説「がくどう、序」が発売となりました。アマゾンにてお買い求めできます。定価は2,080円(税込み2,288円)です。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員・笠井志援が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。リアルを越えたフィクションと自負しています。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、群像劇であり、低収入でハードな長時間労働など、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。素人作品ではありますが、児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描けた「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作に向いている素材だと確信しています。商業出版についてもご提案、お待ちしております。

 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)