国が発表した経済対策の、保育士等の処遇改善。当然、放課後児童クラブ職員も含まれるべきです。適用外はダメ!

 放課後児童クラブ(学童保育)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。11月22日、国は「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策の重点事項」を閣議決定しました。保育士等の処遇改善が盛り込まれていることを評価しますが、「放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所もおおむね該当します)の職員は対象に含まれるのでしょうか。運営支援は当然、放課後児童クラブの従事者も処遇改善の対象に含まれることを強く求めます。児童クラブ関係者はこぞって要求しましょう。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<報道から>
 FNNプライムオンラインが11月22日16時33分に配信した、「三原じゅん子こども政策相 経済対策で子ども・若者、子育て支援強化 保育士の人件費 過去最大10.7%引き上げ」の記事を一部引用します。
「三原大臣は、子育て支援施設を視察した際に、保護者から保育士などの処遇改善が必要との声が寄せられたことを挙げ、令和6年度の人件費の引き上げ率を過去最大の10.7%にするとした。」
 日テレニュースが11月22日23時39分に配信した、「保育士らの処遇改善へ 給与を前年度比10.7%増に」の記事も一部引用します。
「三原こども政策担当大臣は、22日閣議決定された総合経済対策に、保育士と幼稚園教諭の給与を10.7パーセント引き上げる処遇改善策を盛り込んだと発表しました。昨年度の引き上げ率(5.2パーセント)のおよそ2倍で、比較が可能な2015年以降、最大の引き上げ率です。具体的には、国や自治体がそれぞれの保育所、幼稚園などに支給する金額を増やします。この支給額は、園児の数に対して必要な保育者の数の基準などをもとに決められる予定で、国が定めた基準よりも多くの保育士などが働いている園の場合、1人あたりの処遇改善率が10.7パーセントを下回る可能性もあるということです。」

 運営支援はこの決定を歓迎します。と同時に、報道で「保育士と幼稚園教諭」となっている点に留意します。

<公式発表をみる>
 政府が発表した資料には「保育士・幼稚園教諭の給与の引き上げ」とあります。「民間給与動向を踏まえ、保育士・幼稚園教諭の更なる処遇改善を行う」と説明があり、2023年の賃金構造基本統計調査による、全産業平均の月額36.9万円の数値と、保育士32.1万円、幼稚園教諭31.9万円の数値も紹介されています。同調査には放課後児童支援員がないので、掲載されていないだけだと信じたいですね。

 こども家庭庁のHPには、同庁扱い分の対策が掲載されています。それには、「保育士等の処遇の抜本的な改善」と掲げた上で、大きく目立つように「現状からの「大脱却」を図る」と、赤い字に黄色い色アミまでかけて、大々的にアピールしています。こ家庁の資料には保育士等となっており、ここに放課後児童支援員が含まれるかどうかは定かではありません。

 なお、引き上げ分の10.7%は令和6年度、つまり今年度です。今年4月からの賃金に適用されることになります。今後、この補正予算の成立を待って各市町村が3月議会で補正予算を組み、年度内に、賃金アップ分の補助金が事業者に交付されるものと考えられます。多くの事業者では来年3月に過去の差額分が支給されるでしょうから、12カ月分の差額分、仮に2万円アップする事業者ならば24万円の、うれしい臨時収入になるでしょう。(もちろん、月額の報酬が増えるわけですから、その後に社会保険料の等級アップがあるかもしれませんが)

<確認が必要だ>
 公式発表には、放課後児童支援員が対象となるとは記載されていません。資料には文字数の限りもあるでしょう。そもそも、当然に対象となるべきであろう認定こども園も含まれていないことから、文字数の事情で放課後児童クラブも掲載されていないだけだと信じたいですが、大事なことは「確認」です。事実がどうであるかを調べることです。
 ここは、業界団体が政府に必ず確認することが必要です。直接でもいいですし、国会議員さんにお願いして確認してもらうのもいいでしょう。「こんどの経済対策の、保育士等の処遇の抜本的な改善には、放課後児童クラブで従事する職員が対象になっているのかどうか」の確認を必ずしましょう。
 「これまで、保育士等となっているものには放課後児童支援員も含まれているから」という安易な推測ではダメです。こういうときに動くのが業界団体の役割ですし、業界を応援している政治家の使命です。週明けの25日にはこども家庭庁に確認して、実際はどうなのかの報告を聞きたいですね。

<評価はするが、まだまだ足りない>
 子どもの支援、援助に関わる職業は保育所保育園、幼稚園だけではありません。こども園、放課後児童クラブ、児童館、放課後等デイサービス、児童養護施設など、実にたくさんあります。それら、子どもの支援、援助に関わる職業に対して、賃金の引き上げ、処遇の抜本的改善が必要です。
 仮に、今回の改善対象が保育所、こども園、幼稚園に限定されるとしたならば、「それはおかしい!」と、業界のみならず、子育て中の保護者も、かつて子育てをしていた保護者、ひいては全国民から、「子育て支援に関わる職業の人の待遇の抜本的な改善が必要だ!」という声を、めいっぱい、上げてもらうことが必要です。障がいも高齢も、福祉の仕事に携わる人の賃金があまりにも不当に低すぎる現状の改善をもとめていかねばなりません。

 放課後児童クラブでいえば、仮に、人件費相当分の補助金が大幅に増加されるとするならば、その引き上げ分が確実に職員の報酬、給与に反映される仕組みが必要です。私は全額がすべて職員だけに渡ることだけを良しとはしません。事業を営む組織全体の安定的な運営に必要であれば、最小限において必要な限りの運営費への弾力的流用も良しとする立場です。ただしそれはあくまで必要最小限にとどめるべきです。
 まして、効率的な事業運営の結果で生じた利益は事業者の利益として構わないという現状の民間委託について、野放図に利益として吸い上げることができる現状について、何らかの規制や歯止めを、国が大至急示すべきです。民間事業者の予算の使い方を法令で強制することは難しいものがありますが、例えば、市区町村に公契約条例で賃金条項を設けて児童クラブで働く職員の賃金が不当に低額にならないようにしている自治体には、補助金の交付を増やすという政策的な誘導が必要です。また、処遇改善として補助金を増やしたにも関わらず職員の賃金に反映が見られない事業者は、次の公募や指定管理者の選定の応募から除外するということは、市区町村の判断において可能です。

 SNSでは「弾力的運用がある限りダメ」、「放課後児童クラブにはどうせ適用にならない」という、最初からあきらめのような、悲観と言えば悲観ですが投げやりとも思える意見が散見されます。人がどう思おうがそれは人の思想の自由ですし、私は「そう思うのも自由です」としか思いませんが、いまこのタイミングで必要なのは、攻めの姿勢だと考えています。「えっ?当然、児童クラブも適用だよね?」「もちろん、しっかり職員に行き届くように国は指導するよね。いつも喜んであれこれ口出ししてますよね、同じように口出ししてつかあさい」と、こども家庭庁には激励を込めて応援を送ります。

 今回の国の取り組みは評価します。ありがとうございます。しかし、これが最初の一歩です。次は配置基準の改善が必要です。保育所も児童クラブも、とても配置人数が足りません。それが職員の過重労働、負担の重さを招いています。賃金を上げるだけでは、安心して仕事が続けられません。無理のない業務量で、しっかりと休憩、休日が確保できることが極めて重要です。
 放課後児童クラブでいえば、いつまでも任意事業ではなくて、児童福祉施設への格上げが必要です。資格制度の抜本的な改善が必要です。取得がより難しい、高度で専門的な国家資格化が必要です。わたしは拙著でも訴えていますが、試験で取得できる国家資格たる新たな「児童育成支援士」を創設し、現行の放課後児童支援員資格は受講のみ又は大学や専門画工で得られる、補助的ながら正規職員の最低水準を維持する資格に位置付けるという、資格制度の再構築を求めます。

 三原大臣が嬉々としてこの大脱却をアピールするSNSの投稿をたくさん見かけます。よくやってくれました。その先の展開もぜひ期待します。もう、本当に児童福祉の世界は疲弊しきって崩壊寸前です。どうぞよろしくお願いいたします。

<おわりに:PR>
 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。
(萩原から直接お渡しでも大丈夫です。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください!)

 現在、放課後児童クラブを舞台にした小説を執筆中で、ほぼ完成しました。とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子だけを描いた作品ではありません。例えるならば「大人も放課後児童クラブで育っていく」であり、そのようなテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。出版にご興味、ご関心ある方はぜひ弊会までご連絡ください。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ぜひご連絡、お待ちしております。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)