労働時間の適正な管理をしてくれない=ブラック過ぎる放課後児童クラブの場合、雇われる立場は、どうすればいい?

 放課後児童クラブ(学童保育)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所もおおむね該当します)は他の業態、業種と比べるとなかなか複雑な労働時間の管理が必要ですと前日(11月26日)の当ブログで記しましたが、だからといって労働時間の管理をしっかりとしてくれない事業者は、ダメな事業者です。そのようなクラブに勤めている場合、どうすればいいのでしょうか。答えはこれまた、なかなかありませんが、その中でもより良い方式はなんでしょう。運営支援が考えました。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<労働時間の管理をしないのか、できないのか>
 放課後児童クラブは予想外の「突発的な残業」や、他の職員の急用による休みの穴を埋めるための急な出勤(休みを返上)が大変多い業態です。まして、人手不足で、ただでさえ職員数が少ないので、常に過重労働です。よって労働時間も長くなりがち。長く働いた分、しっかり給料、時間外手当が支給されればまだしも、職員側が計算してみた額と、給与の額が違う!ということもままあります。

 問題は、適正な労働時間の管理を「しない事業者」なのか「できない事業者」なのかですね。「しない事業者」では、それが仮に「故意に」しないとなれば、支払うべき賃金を安く抑えて人件費をごまかそうとしているのですから、完全にブラック企業、ブラッククラブですね。「できない事業者」の場合は、「労働時間の管理がそもそも大事だと思っていない」、「労働時間の管理は大事だと思ってやっているが、その手法がミスだらけ」とか、「労働時間の管理は大事だと思ってやっているが、手法が分からない」という理由があるでしょう。

 まずは、意図的に労働時間の管理をしないのか、労働時間の管理の重大さに気付いていないのか、管理をしようとする意識があっても方法論が間違っているのか、それを見極めましょう。

<労働時間の管理を意図的に行わない事業者のクラブに勤めている場合>
(1)あなた自身が「実名を第三者に出しても、不正と戦う」ことの覚悟までできない場合は、その会社を辞める、他の会社へ逃げることをお勧めします。なかなか、覚悟は持てませんよね。それは無理のないことですからいいんですよ。
 勤め先の会社、企業が悪徳、ブラックである場合、SNSでは「証拠を上げて労働基準監督署へ持ち込め」というアドバイスがなされます。それはそれで後述しますが、現実的には、それで企業や会社が態度を変えるかといえば、なかなかそんなことはありません。むしろ、労基に告発した者が勤め先の上司たちから虐げられることが残念ながら現実です。どうしたって雇い主、会社の方が立場が強い。まして、全国各地で展開している企業が運営するクラブでは、個人の戦いは極めてつらくて大変です。恐ろしいほどのストレスを抱え不安とも戦いながら日々を過ごすことになります。
 ですので、とっとと他の事業者に転職することです。「三十六計逃げるに如かず」という戦法があります。状況が不利な場合は「逃げるが勝ち」なのです。職員が逃げることで相手(つまりクラブ運営事業者)にダメージを与えるのです。
 児童クラブはどこでも人手不足。通勤圏内の他の、まともなクラブに転職は簡単にできます。ここで「逃げる」にあたって大事なことが2点あります。まず1点目は、「自分1人だけではなく、他の人も相次いで辞めること」を実現することです。つまり、クラブ運営に極力、大ダメージを与えることです。2点目は「逃げる前に、市区町村に、ひどいクラブ運営の実態を伝えること。SNSにぶちまけること」です。市区町村のクラブ担当課に、できれば実名で、実名が怖ければ匿名でもいいですが、「労働時間を管理してくれない。残業代も休日出勤手当もちゃんと支払ってくれない」ということを伝えることです。それが重なると、市区町村の、その事業者に対する評価、評判が落ちていきます。どうせ辞めるのだから、怖いものなしですよ。遠慮なく伝えましょう。SNSには匿名で書き込むことになりますが、事業者の名誉毀損や業務妨害にならないように注意して、「チョメチョメ市のチョコチョコクラブで支援員が相次いで辞めているみたいよ」程度の書き込みでいいのです。
 また、これは「逃げた後」でいいのですが、今は転職サイトや就職紹介サイトで、企業の口コミを書き込めることができますから、そこに匿名で書き込むのも良いですよ。ネットで企業、会社の評判を調べて就職先や転職先を考える人が大変多いですから、そこに「サービス残業だらけ」と書き込むだけでいいのです。

 大事なことは、そのような悪徳ブラック児童クラブ運営事業者がやがて、クラブの運営を市区町村から任されなく事態を到来させること、です。他の事業者が選ばれるように、悪評を積み重ねておくことです。時間はかかりますが、悪徳事業者を退場させるには、これが一番です。いまのこども家庭庁の大臣、三原じゅん子大臣が出演した「3年B組金八先生」の、あの名ぜりふを思い出してください。「ボディーにしな、ボディー」です。ボディーブローを繰り出しましょう。

〇子どものこと、保護者のことは、足止めの理由としなくてもよい!
 「でも、子ども達のことを思うと、それはできない。申し訳ない」と心を痛める、良心的な支援員さんたちは、それこそ、悪徳ブラック児童クラブ事業者に、その「やりがい」「子どもへの思い」を利用されているのです。いわゆる「やりがい搾取」のワナにはめられているのです。
 「保護者さんが大変な目にあう」。それも心を痛めますね。ですが、「あなた自身が、心身をぶっ壊れされても、会社も、保護者も、面倒を見てくれません」。自分の身を守るのは、最後は自分自身です。こういうことを読むと保護者側としては「なんて無責任な職員なんだ!どの会社だって完璧はないし、少しは我慢しながら働くものでしょう!うちの子どもがクラブを利用できなくなったらどうするんだ!」と憤りを覚える人がいるかもしれませんが、それ、間違っています。しっかりと職員を雇用できない企業、事業者のクラブで、自分の子どもが安全安心に過ごせると思う方が間違いです。職員がしっかりと法令に守られて安心して働いているクラブに、お子さんを通わせてください。こういう場合に保護者ができるのは、保護者の立場で市区町村に「うちの子どもが通っているクラブの会社はひどい。職員が不当に働かされている」とメールで苦情を入れることです。その苦情の数が多ければ多いほど、あるいは保護者による保護者会が団体として市区町村に改善を求めて申し入れることです。
 実のところ、これも、なかなか実効性はありません。数人の人手不足なら、それこそスキマバイトを活用して職員数の不足だけはカバーしてしまう事業者もきっとあります。現に、今年の夏に、某政令指定都市の放課後全児童対策事業を営む広域展開事業者がスキマバイトを利用していたことがニュースになりましたが、それとて、しれっと来年度の運営を行うことになっているようです。ですので、スキマバイトの活用ぐらいではどうしようもないぐらい人手不足でクラブ運営ができないぐらいに追い込む、ということですね。時々報道される、保育士の一斉退職、それぐらいのインパクトは必要です。

 なお、わたくし(萩原)は、児童クラブの経営側に身を置いていましたし、今も経営側の立場を基本に運営支援を呼び掛けています。そんな私からすると、正しく労働時間の管理をしない、あるいはできない経営者が、職員に逃げられてしまうのは「身から出たさび」であり「自業自得」です。バカな経営者は、とっとと退場するべきですし、世間が退場させねばなりません。
 私は、文句ばかりを言って労働の質の向上に取り組まない労働者を厳しく批判しますし、そういう労働者は辞めてもらって結構とすら考えます。ですが、それ以上に、優良な労働者を正当な処遇で雇用しない経営者こそ直ちに消え失せるべきだと考えています。それゆえ、経営側には、それがたとえボランティアの非常勤の保護者であっても、経営側に就いたのであれば、本業と同等に児童クラブの経営、運営に取り組むべきだと考えていますし、専業の経営者と同等の経営、運営能力を要求します。それができないならば保護者は運営に関わるべきではありません。児童クラブの事業は保護者がボランティアで取り組めるほど軽い事業ではありません。子どもと職員の毎日の生活を背負う、公的な事業ですから。

(2)あなた自身が、実名を出してもいいので、企業や会社の体質を変えようと挑みたい場合は、「徹底して証拠を集める」ことが絶対に必要です。
 証拠とは記録です。比較的長期間、できれば半年以上、つまり、労働時間を適正に管理していない不正が常態的に行われていることを、客観的に証明できる記録を揃えることです。タイムカードやICカードで記録した出退勤の記録、給与明細書、労働時間の管理に関して勤め先の企業、会社が職員向けに出している内部資料(たとえば、「うちは30分以内の残業は残業としません」という内規など)を、自分だけではなく、他に同じように思って企業や会社の体質を変えようと思ってくれる仲間の分、それも人数が多ければ多いほど良いのですが、客観的に証明できる記録を、たくさん揃えてください。
 こういうときは、上司の不合理な指示を録音しておくのもいいですね。

 その上で、労働紛争に真面目に取り組んでくれるしっかりとした相手に相談することです。弁護士が最適ですが、労働組合でもいいでしょう。職員たちだけではどうしても素人集団の弱さで、相手の企業、会社もそれなりに法務の対応はしているものですから、太刀打ちできません。市区町村が開いている無料の法律相談は止めましょう。費用はかかります。かかりますが、企業や会社という「組織を相手に争う」という重大なことを無料、タダで済まそうというのは、そんな虫の良い話はありません。費用の点が不安なら、それもしっかり弁護士や組合に伝えることです。

 なお、当然ながら労働条件の改善を行うのが労働組合ですが、労働組合も一概にいって、すべてが頼りになるとは言えません。すでに勤め先に労働組合があるなら、組合があるのに、明らかに不正がまかりとおっている企業であるならば、その組合は頼りにならないといえるでしょう。そんな組合に組合費を払うことは無駄です。とっとと抜けたほうがよいですよ。

 証拠を集めたからといって労働基準監督署、労働局に行っても、現実にそれで企業が摘発されるかといえば、そんなことはありません。確かに、労働基準監督官から企業に電話の1本もかけることはあるでしょう。そこで企業側が「分かりました。今後はしっかり改めます」といえば、たいていはそれでおしまいです。で、何も変わらない。逆に、集めた証拠が筒抜けとなってしまい逆に「情報の漏えい、流出、秘密保持違反」を理由に懲戒処分を受ける可能性すらあります。

 勝負は、勝てると思った時に仕掛けるものです。勝つために万全の舞台装置を整えるまでは、戦ってはダメです。

(3)下手に動いてクビになるのが怖い。目立ちたくない場合。それはもう、ただ我慢して現状を受け入れるだけです。あなた自身がそれでいいなら、仕方ありません。ここで注意したいのは、「明らかな不正」と、「不正ではないけれど自分が納得できない」ことの区別はしっかりとしておくことです。明らかに労働時間の管理がいいかげんで本来支払われるべき賃金が支払われないことと、「給料が低い、安い、休日が少ない、残業の認定が厳しい」というのは別問題です。
 明らかな不正に対して「それは違う」と勇気をもって声を上げる人には、なんだかんだで応援する人が現れます。しかし、「単に不平、不満」を言っている人には、逆に世間は「バカじゃねーの」と蔑んで終わりです。むしろ「児童クラブの職員は、何が良くて何がダメなのかの区別ができない非常識な人ばかり?」とすら思われるのです。

 よくよく、ここは注意しましょう。

(4)保護者の立場で、できることがある。前述しましたが、児童クラブでサービスを受ける側である保護者は案外と強い立場です。納税者であり、利用料も支払っているので、良質な児童クラブのサービス提供を求める契約上の権利があります。
 もし、職員が、雇用主の不当な扱いや不正に苦しんでいることが分かった場合は、職員が改善を求めて活動するときにはぜひ助力してください。保護者ですから堂々と市区町村に知らせていいのです。よく自治体にある「市長(町長、村長、区長)へのメール、はがき」というシステムが実に効果的です。「実名で」この「~へのメール、はがき」で意見を送った場合、たいていの自治体は該当部署に調査回答を指示し、首長や担当責任者名で回答します。または公表します。匿名では「貴重なご意見ありがとうございます」として担当者で閲覧の後はゴミ箱行きです。
 職員が「働いた時間分の給料が支払われなくて困っている。なんとかならないか」ということで悩んでいたら、保護者たちが立ち上がって行動すること。職員も大いに期待して保護者と連携することです。児童クラブの保護者にはいろいろな職業の人、いろいろな経験を重ねた人がいます。保護者から有用や知恵を授けられる場合もあるでしょう。

<労働時間の管理ができない、していても間違っている事業者のクラブに勤めている場合>
 これはもう、「運営支援」の出番ですね。ぜひ弊会にご用命ください。というのはさておき、意図的に不正を行おうとしてないのであれば、「ものの道理が分かる」「法令遵守をある程度は理解している」可能性がそれなりにありますから、丁寧に、粘り強く、「正しく、効果的な労働管理の手法の採用」を、経営側に働きかけましょう。

 それこそ、いろいろな会議の場で意見を言えるでしょうし、心を許せる上司に話してみるのもよい。広域展開事業者でなければ、現場と経営側の距離は、さほど遠くはないはずです。もし非営利法人で保護者が運営に参画しているならその保護者系理事を通じて改善を訴えかけることも良いでしょう。

 とにかく「行動する」ことです。行動もせずにただ不平不満を言っているだけでは、何も変わりませんし、行動をしない人を社会は気付きません。ただ文句ばかりを言う者だとして逆にバカにされる可能性だってあります。

 変えようと思うなら、変えようと考える先が道理でみても正しいことであることを確認した上で、行動しましょう。運営支援も同じような考えです。児童クラブで悩んでいる人、職員も経営者も、まずはご相談ください。

<おわりに:PR>
 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

 現在、放課後児童クラブを舞台にした小説を執筆中で、ほぼ完成しました。とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子だけを描いた作品ではありません。例えるならば「大人も放課後児童クラブで育っていく」であり、そのようなテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。出版にご興味、ご関心ある方はぜひ弊会までご連絡ください。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ぜひご連絡、お待ちしております。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)