利用料(保育料、保護者負担金)の支払いについて考えよう。未納は放課後児童クラブ(学童保育所)を困らせます。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする社労士「あい和社会保険労務士事務所」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!

 放課後児童クラブは一部地域を例外として、ほとんどの場合、利用する世帯が利用料を支払うことになります。児童クラブを運営する側にとって、確実に利用料を支払ってもらうことが重要。しかしそれがなかなか難しい。どうすれば利用料をしっかりと支払っていただけるかを運営支援的な解釈で考えます。
 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)

<児童クラブの利用料>
 児童クラブは保育所と違って制度として無償化されていませんから、一部の例外をのぞいて、児童クラブにこどもが通っている世帯は、金額の多寡はあれど利用料を支払うことになります。当ブログでは利用料と表記しますが、「保育料」「保護者負担金」「育成料」など、地域によって様々な呼び名があります。これもまた児童クラブのカオス状態を現しているでしょう。
 国は、児童クラブの運営に必要な経費(人件費や光熱水費など児童クラブを実施するのに諸々、必要なお金)を、「保護者が半分」「残りの半分を国と都道府県、市区町村が3等分して負担」という方針を定めています。この方針に強制力はありませんし、実際に多くの地域では、児童クラブの運営経費に関する負担は総費用の半分=2分の1を大きく下回る負担にとどめていることが通例です。なぜなら本当に2分の1の負担を保護者に求めるとすると、毎月の利用料が数万円に及ぶ場合があるからです。そんなことをしたら保護者(つまりその地域の住民)から強烈な反発を受けるのは間違いないからですね。ただ、利用料の改定に踏み切る市区町村は、この国の方針を錦の御旗として掲げて、国が求める2分の1の割合に近づけようとすることで利用者を納得させようとすることが多いように見受けられます。
 児童クラブの利用料を無料か、極端に抑えることもできます。子育て支援を掲げて、子育て世帯の流入を目指す、あるいは子育て世帯の流失を防ぐための政策上の目的からです。この場合、利用料を得ている地域と比べると、児童クラブ側の収入は当然に減りますから、市区町村は一般予算から児童クラブ運営に足りないお金を出すことが期待されます。つまり、利用者の受益者負担から、その地域に住む住民が市区町村に支払う税金や、(国から補填を受けない裕福な自治体は除く自治体の場合)国民全体が支払った税金から、児童クラブの運営に対してお金がつぎ込まれるということになりますね。怖いのは、「利用料を徴収しないのでクラブ運営のお金が足りないのは仕方ないから、足りない状態で上手にクラブ運営してくれよ」と市区町村が考える場合です。それは結局、職員の人件費をばっさり削減することになるので、給料が極端に低いワーキングプア状態でしかも児童クラブ職員の人数が少ないという、地獄のような児童クラブの運営を迫られることになります。

 利用料は、児童クラブにおける放課後児童健全育成事業の役務の提供を受けることに対する対価と考えられるでしょう。よって、利用料を支払わない場合は、同事業の役務の提供を受けられないことになるのは当然だと運営支援は考えます。ただ、わたくし萩原が不思議なのは、役務を実施するのに数分の1程度の費用でしかない利用料の未納によって、すべての役務の提供が受けられないのが当然としていいのかどうか、です。しかし、役務の内容を分割してその数分の1の部分に相当するであろうサービスのみ提供しない、というのは現実的に考えられないので、たとえ児童クラブの運営に必要な総費用の数分の1程度しか担っていない利用料の支払いができなくなって全体のサービス提供が受けられなくなることには、別段の不合理はないのでしょう。(ただし児童福祉の観点からこの点について慎重な検討は必要なのは言うまでもないと、運営支援は考えます。)

<未納を防ぐためには>
 児童クラブ利用料について、実の多くの市区町村において、用意している入所のしおり、入所案内などの資料や自治体のホームページに、利用料の未納や滞納がある場合、次年度の入所ができなかったり、下のきょうだいの新規入所ができなかったりするという制限を設けている旨、記載されています。それはすなわち、多くの市区町村において、利用料の未納や滞納が発生していることを裏付けていることでしょう。未納や滞納がなければ、わざわざそんな注意喚起をする必要がないからです。
 わたくしも児童クラブの運営法人の長を長らく務めていましたが、利用料滞納は常に悩みの種でした。多い月には全体の数パーセントに及びましたね。当時は30クラブから年々増えて40クラブに届くほどの規模であり、利用料収入が毎月数千万円単位なので、数パーセントといっても数十万円台。それが12か月ですと数百万円台になるのですから重大な問題でした。

 未納を防ぐにはいくつかのポイントがあると運営支援は考えます。
・未納は、心理的な障害(面倒くささ、忙しさ)の要因があるので、「納付、納入手続きが簡単」。
・未納は、金銭的な負担にてもたらされる場合があるので、「支払い能力に応じた適正な負担額の設定」。
・未納は、児童クラブ利用に対する評価との釣り合いの側面があるので、「児童クラブへの高評価の達成」。

 「未納があると困ったことになる」という点での抑止力は当然に必要でしょう。「数か月未納があると退所退会となる」という規定が代表的です。しかし実のところ、こういった抑止力に大きな効果はさほどないと運営支援は考えます。「未納、滞納が続くと児童クラブの利用ができなくなる」というのは、多くの利用者が当たり前に連想することですが、現実的に未納や滞納を(繰り返し)する人は、そういう不利益について考えないか、重要視しないからです。先に記したように、児童福祉の観点から、こどもの安全安心な居場所を提供する公の事業である児童福祉サービスとしての児童クラブの利用の制限や不許可は、なるべくの場合、限定的にする必要があると運営支援は考えています。

 利用料未納には、次の3タイプが考えられます。
・うっかり(失念、手続きの失敗、思い込み)での未納。
・未納になるのを予想していたか、確信していたが、たいしたことではないと割り切っている(開き直っている)=積極的未納選択。
・未納になるのを予想していたが金銭的に苦しく納入ができず、未納になることについて本当はひどく辛い思いをしているが、どうしようもない状態にある=消極的未納選択。
 表にしてみます。

心理的な障害金銭的な負担児童クラブへの評価
うっかり未納防止の呼びかけ
失敗が少ない容易な納入方法
お得感のある納入方法
考慮不要(利用料負担に困っていない)児童クラブへの感謝や高評価でミス減少を期待できる
積極的未納選択未納時のペナルティ強調
面倒でも手続き必要との理解
お得感のある納入方法
さほど考慮不要(利用料負担にあまり困っていない)児童クラブ利用の対価、役務の対価であるとの理解向上
消極的未納選択未納のおそれがある場合の相談呼びかけ適正な負担額の設定
減免制度の充実
さほど考慮不要(児童クラブに感謝している場合が多い)

 表の中のいくつかの点について解説します。
「容易な納入方法」は、利用者がうっかりしていても未納を防ぐことができる方法を含み、忙しい状態でも未納にならないような簡単な手順で納入、納付ができることを指します。手元のスマートフォンで納入ができるようになればいいのですが、スマホなどの機器を持っていない場合でも容易に納入できる手段を確保することも重要でしょう。かつてはそれがクラブ職員への直接的な支払いだったり保護者会のときの納入だったわけですが。
「お得感のある納入方法」とは、例えば年間の利用料一括払いのときへのサービス上乗せです。毎月の引き落とし作業が減ることと、毎月の未納のおそれが減るだけでも、年額一括払いに対する児童クラブ事業者のメリットは極めて大きいものがあります。ただし、公の事業である児童クラブでは、年額一括払いだからといって料金を減額(割引)するというのは、そう簡単ではないでしょう。少なくとも補助金を出す市区町村の了承は必要でしょうし、減額(割引)は事業者が独自に提供する役務に関する対価としてのみ認められることになるでしょう。また年度途中での退所における手続きを定めて置くことも必要です。当然、利用しない月についての利用料は返還することになります。しかし、国民年金保険料はまとめて払うと割引があるんですから、もっと柔軟に考えたいですね。
 減額サービスが難しくて実施できなくても、支払う保護者側が自身で利用しているポイント制度への貢献(ポイ活)においてメリットがあるなら、それをアピールすることもよいでしょう。そのためにはクレジットカード納付やバーコード決済といった電子的決済を導入する必要があり、それには事業者の手数料負担が生じます。2~3パーセントですが、財政事情が苦しい児童クラブ事業者にはおいそれと無視できません。この点においても、児童クラブの事業者の規模が大きくなれば数パーセントの決済手数料負担もたいしたことがなくなるので、とりわけ地域に根差した児童クラブであればこそ、同じ理念を共有できる事業者と合流合体していくことが必要です。

<適正な負担額の設定が重要>
 児童クラブは、子育てしながら働く世帯(全世帯の8割に及ぶとされます)の命綱とも呼べる社会インフラです。しかし、その事業の運営には現状、利用する世帯の費用負担が求められています。受益者負担の観点から利用者が費用の一部を負担することは否定できないと運営支援は考えます。ただその費用の負担の額は、公の社会インフラである児童クラブの存在の必要性を考慮して設定されるべきであるとも考えます。

 減免制度は多くの市区町村で取り入れられています。最も目にすることが多いのは「生活保護世帯(要保護者世帯)」「就学援助を受けている世帯(準要保護世帯)」、「多子減免(兄弟姉妹の2人以上を対象)」というものです。また、公営クラブを中心に民営クラブ(入所判定を自治体が行っている場合)には、住民税の課税額によって利用料を決める応能負担を取り入れている地域もあります。
 こういった減免制度の充実、つまり保護者の所得に応じたきめ細やかな利用料設定は、金銭的な負担で利用料を支払うのが困難な世帯の支えになるであろうと運営支援は考えます。就学援助の世帯と、ギリギリの水準で就学援助の認定を受けられなかった世帯では、認定を受けられなかった世帯が毎月の利用料支払いに苦しんでいるという実態を多く見てきたわたくしの個人的な感想です。
 かといって、世帯所得が単純に多い世帯なら暮らしに余裕があるかどうかは、その世帯それぞれですからなんとも言えません。家計が苦しいか苦しくないかは個々の世帯、個々の保護者しだいで感じ方も異なりますからね。ただ、そういった個々の事例をもれなく配慮しての利用料設定というのは実際ではほぼ不可能です。可能性としては、一律、ごく低額に設定するしかありませんが、自治体の一般財源からの支出がないと児童クラブ運営は困難になります。その点からも、国の児童クラブへの補助金の額がもっと増えることは必要ですね。

<具体的な未納防止策を考える>
1 こまめな呼びかけ
 当然ですが、口座の引き落とし日が近づくタイミングで、口座への入金忘れを防ぐために周知を徹底することは必要です。1年間のうち、年に1~2回は「未納防止強化月間」とでも名付けて徹底した周知を行うことも良いでしょう。ただし、人間は「慣れ」があります。いつも口うるさく言われてしまうと、最初は緊張したり身構えたりしますが、それが続くと慣れてしまって何とも感じなくなるものですね。適度な間隔で呼びかけを強化するのが良いでしょう。交通安全防止は春と秋にキャンペーンを行っていますが、そんなようなことです。今の時代、連絡アプリでメッセージを送れるようにしている運営事業者も多いでしょうから、口座引き落とし日の数日前に注意喚起のメッセージを送るようにしたいものです。

2 口座の設定の工夫
 児童クラブで金融機関の口座引き落とし設定では、かつては郵便局の口座、その後はゆうちょ銀行ですが、圧倒的な手数料の安さから、定番となっていました。学校の給食費がゆうちょ銀行という地域もあります。通常の感覚では、「こどもが通う大事なクラブのお金」「学校でいただく給食のお金」という価値観から、口座引き落とし不能にならないよう、こまめに引き落としの口座に入金して残高不足を防ぐことがあたりまえ、ということになりますが、それが当たり前と思わない世帯も当然ながらあります。世の中すべての人が「当たり前」と思う事柄は、そうそう無いという現実を、児童クラブ運営者側は念頭におくべきでしょう。
 できることなら、保護者が生活上において多用している金融機関の口座を、利用料引き落としの口座に設定してもらう工夫を取りたいものです。保護者が勤め先からもらう給与の振込先口座(=生活口座)を、児童クラブの利用料引き落とし口座に指定することです。しかし、多くの保護者が使っている生活口座の金融機関はそれこそ多岐にわたります。それらを一斉に網羅して引き落としができるサービスもありますが、口座引き落としの手数料は高めになる傾向があります。それでも、事業者としては残高不足になりにくい口座を引き落としの口座として設定してもらうことが都合が良いのですから、保護者に丁寧に説明して理解を得て、生活口座からの引き落としを選択してもらう環境を醸成する努力が必要でしょう。

3 電子決済の導入
 今の時代はペイペイとかd払いとか楽天ペイとか、いろいろあります。クレジットカード決済も含めて、利用者が少しでもポイントがたまるなどのメリットを感じられるような支払い方法を工夫することも、必要でしょう。ただ全クラブに決済に使う機械を置くことも難しいでしょうから、運営本部や事務局を設置している、やや大きめの児童クラブ運営事業者であれば、本部や事務局に決済の機械を置いて対応するということでも良いでしょう。

4 適正な利用料額の設定
 2つの意味があります。1つは、多くの世帯において無理なく支払える額の利用料を設定すること。もう1つは、「受けるサービスに見合った額であるという理解を得ること」です。前者は分かりやすいですね。応能負担もその一例ですし、生活保護世帯は0円、就学援助世帯は1.000円、それ以外は2,000円程度ですと、確信的に支払いたくないと考える世帯以外は、まず支払いが滞ることはないでしょう。もちろん、運営に困らない十分な予算を市区町村が用意することが前提です。それがなければあまりの低額な設定はできません。
 後者は、実は非常に重要であると運営支援は考えます。簡単に言えば「児童クラブを利用できて本当に助かっている。こどもも喜んでいる」と保護者が思えば思うほど、児童クラブを困らせるような行動を本質的に保護者は選択しない、ということです。わたくしの児童クラブ運営経験に限ったことですが、「やむを得ない事情とはいえ職員の異動や退職が多く、こどもたちの集団も落ち着かない。児童数も多くて、トラブルが目立つクラブ」と、「常勤も非常勤も職員の顔ぶれがそれなりに長い期間、変わらずにいて、児童数も適正規模で、保護者会にはいつも大勢の保護者が参加しているクラブ」では、圧倒的に後者の、保護者と職員との間の関係性が良好なクラブの方が、未納額は圧倒的に少額でした。しかも未納が生じたのは本当にうっかりで、未納を指摘すると直ちに振り込んでくれていました。
 いま、わたくしが運営に関わっている愛知県津島市の児童クラブは9つの支援の単位がある事業所ですが、わたくしの感覚からすると本当に素晴らしく未納、滞納が発生していないのです。特別な場合をのぞけばほぼ0円に近い。「まあだいたいどんな世界でも未収は5~6%ぐらいは生じるだね」という事業経営者の感覚からすると異例ともいえます。やはりそれは保護者からの信頼がとても厚いことによるのでしょう。

 「児童クラブをとても信頼しています」「児童クラブの先生たちが本当に頼りになります」という保護者の気持ちが募れば募るほど、利用料の未納は減ると考えてよいでしょう。これはつまり、事業者側の努力次第によって達成できる可能性があるということです。そのためには、こどもが「あしたも学童に行く」「学童が楽しい」と親に話してくれるようなクラブになること(=こどもの最善の利益が保障され、こどもにとって居心地が良い場所になっていること)であり、保護者にとっても利便性を含めた利用ニーズをできる限り満たしていること、が必要です。

5 未納防止の呼びかけでは配慮が必要
 未納を防止するために周知徹底することは必要ですが、同時に、「支払いたいと思っていても、金銭的な余裕がどうしても無い」という世帯への配慮も同時に必要です。というのは、支払わねばならないことは知っているがその日に口座に入れておくお金がどうしてもない世帯は、未納防止を強く呼びかけるメッセージを目にするたびに、メッセージが届くたびに、自責の念にかられるからです。それが続くと、経済的に困難な中で過ごしている保護者にはいたたまれなくなり、本来は児童クラブを利用しておくことがこどもの最善の利益であるのに未納を苦にして退所、退会の選択をすることがあるのです。それは結局、こどもにとって最善の選択とは言い難い状況になります。

 「だからこそ、利用料納付に関して難しい場合は遠慮なく相談してくださいねと何度も丁寧に呼びかければよい」というのはその通りではあるのですが、なんでも同じことですけれども「いくら周知を図っても、相手に届かなければ意味がない」のです。クラブ内に張り紙をする、連絡アプリで呼びかけるとしても、金銭的に困った世帯はその状態に陥っていることがすでに自分自身を責める状況に陥りがちなので、クラブ側に申し出る選択をなかなかしないということは、大いにあると考えましょう。
 この点においては、児童クラブ職員が、個々の世帯の状況を把握できる可能性が高いですし、運営本部側の職員も過去の納付状況から「この人は未納になりがち、納付が遅れがち」ということで家計の状況を推察することもできますから、個別の対応をちゅうちょなくするべきであると運営支援は考えます。つまり「積極的に声掛けをしよう」ということです。
 納付が遅れる場合のルールも事業者側は定めておきましょう。納付ができない場合に事前に申出や相談を行った人と、申出なく納付せず、納付の催促にも応じなかった人の場合には取り扱いに差をつけて当然ですし、後日の分割納付の場合の遅延損害金の取り扱いや利子を決めておき、保護者に知らせておきましょう。

6 行政や専門家との連携
 公設民営クラブや、民設民営でも放課後児童健全育成事業の業務委託や事業補助を受けている場合は、公の事業を任されて運営している立場です。利用料の未納に対する対応は市区町村も含んで対応策を決めることが必要です。
 いくつかの自治体では、児童手当から未納分の児童クラブ利用料を差し引くことを定めています。ただし児童クラブ利用料は法律で児童手当から天引きできる料金とはなっていません。あくまで児童手当を受け取る保護者の了承が得られないと児童手当から徴収はできない仕組みです。しかしこの点は、自治体が前面に出て、「あくまで任意ですが、児童クラブ利用料の未納が重なると、児童手当からいただくことを相談することになりますので、ご了承ください」と保護者に理解を求める構えが望まれます。

 意図的に利用料を支払わない保護者には、強硬な手段は当然に必要です。事業者が取りうる強硬な手段とは「内容証明」「支払督促」「少額訴訟」「利用制限」「強制退所」があります。ただし利用制限と強制退所は事業者独自で判断できるかどうか、運営支援は自治体の了承が必要であろうと考えます。公の事業であるということを考慮します。程度の問題にもなりますが、1回や2回の未納では利用制限や強制退所は難しいでしょう。ただし生活保護世帯が、おやつ料金など実費負担分の未納滞納をする場合は、公的な支援をより強く受けていることから迅速な対応が必要です。

 内容証明はわたくしも何回と送ったことがありますが、手間がかなりかかります。受け取っても無視するツワモノもいますし、未納額を貯めこんだまま急に転居してしまう場合もあります。そうなると内容証明は届けられず、未納分の納付はほぼ不可能となります。支払督促も司法書士に依頼して行ったことがありますが、全面的な効果はありませんでした。法律的な手続きを踏めば転居先も分かりますし、そもそも利用料引き落とし口座の情報を事業者が持っているので、法的な続きの一環としてその口座を差し押さえることはできますが、そもそも口座にカネが入っていないので未納になるのですから、ほぼ無意味です。その点からも生活口座を引き落としの口座とすることは意味があります。
 ただし、「いざとなったら、わたくしどもは公平な利用の観点から法的措置を講じますし、その実績はあります」と、そっと掲げておくのはそれなりに意味があることと運営支援は考えます。何より行政担当課は財政部局や首長、議会、議員に「事業者はしっかり未納分の回収に勤しんでいます」と説明できます。
 児童クラブにも法律的な顧問が必要だと運営支援は考えます。弁護士や、取り扱う額がさほど多くはないので司法書士にも顧問に就いてもらう価値はあるでしょう。ただし費用がかかりますし、1人2人の未納でも運営に重大な影響を及ぼす零細規模の児童クラブ事業者は、法律家の顧問料をそもそも準備できないというジレンマはあります。

<利用料に関する注意点>
 わたくしが運営者時代だったときに直面した問題で、運営支援を掲げて活動している今もそうですが、特に保護者運営系の児童クラブから「年度途中で退所する人が出た。年間の利用料収入を見込んで予算を組んでいるので、退所した人から引き続き利用料を受け取ることはできないのか」「年間払いの保護者会費は途中退所した人に一切返還しないで大丈夫か」という問い合わせや相談を受けます。
 年度途中で退所した人に、こどもが在籍していない月の利用料支払いを求めてはなりません。それを強要すると深刻な法的トラブルとなります。そもそも「年度途中の退所を認めない」という規定を設けている事業者もあるようですが、児童クラブを利用するしないは保護者が任意に決めることです。児童クラブ側が退所をさせない規定を設けたところでその効果は認められません。そのような規定は権利の濫用と判断される可能性が高いと運営支援は考えます。保護者会費も同様です。ただし保護者会費の場合は、年間会費分の一括徴収でその徴収した額が年度前半に行うイベント(キャンプなど)に使う目的であると保護者に説明をしてあって、そのイベントがすでに終了した場合であれば、月割りの返還について検討する余地はあるでしょう。ただしトラブルにはなりがちですので、仮に特定のイベントに使うことが明確であればそのイベント費用として徴収することがトラブル防止に資するでしょう。

 児童クラブと言えども事業です。事業とはビジネスであり、商いです。商いであるからには、年度途中の利用の増減は当然にあります。利用者が減って収入が減ることがあれば途中入所者が現れて収入が増えることもあります。それが事業でありビジネスであり商いです。ですから、途中の退所者が現れたとしてもその年度、次年度以降も安定して児童クラブ事業を続けられるように運営責任を負う立場の者が尽力しなければならないというのが、運営支援の考え方です。
 ただし収入が限られる脆弱なビジネスですから、補助金の充実は必要です。大幅な予算不足が突然に生じた場合の緊急事態に自治体が即座に運営を支援することが当然である、という思考も姿勢も必要です。また限られた収入から事業者の利益分を先に差っ引いて「残りの金で現場責任者はクラブ運営をよろしく頼むよ」という仕組みの補助金ビジネスは許されません。

 今は小学1年生の2人に1人が利用する児童クラブです。将来的にもっと多くのこども、子育て世帯が当たり前に利用する仕組みとなれば、社会インフラとしての基盤を強固にするため児童クラブ事業者の収入の安定に工夫が必要でしょう。子育て世帯への支援の観点から補助金増額や一般財源からの支出増による児童クラブ用料の無償化を最終目標にしつつ、利用料の納付が滞りなく進むような知恵や工夫をこらしながら、事業者も利用者も負担を負うことなく毎月、無事平穏に利用料を徴収でき納付できるような環境を目指していきましょう。 

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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