催涙スプレーが放課後児童クラブ(学童保育所)で誤って噴射された事案。事業者の運営体制に対する姿勢はどうか。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
兵庫県加古川市の放課後児童クラブで、こどもが誤って施設内にあった催涙スプレーを噴射したということが報道されました。偶発的な事故のようですが、運営支援の視点は、児童クラブ運営事業者のクラブ運営姿勢に関する考え方に向いてしまいます。「事業者が当然に現場に必要事項を指示していれば、この手の事案はまず起きない」からです。
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(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
<報道では>
神戸新聞が2026年4月2日19時20分に掲載配信した、「男児が誤って催涙スプレー噴射 学童保育の児童10人病院搬送 加古川」の見出しの記事を一部引用します。
「2日午前9時40分ごろ、兵庫県加古川市加古川町溝之口の氷丘南小学校の児童クラブ(学童保育)で、男子児童が催涙スプレーを噴射」
「同市教育委員会によると、スプレーは防犯用の携帯タイプで、冷蔵庫上部にあるマグネットフックにぶら下げてあった。」(引用ここまで)
要は、クラブ内の冷蔵庫にぶらさがっていた催涙スプレーをこどもが誤って手に取って噴射した、ということですね。10人のこどもが病院搬送されましたがいずれも軽傷だったとのこと。重い症状にならなかったことは良かったです。
<事業者に求められる考え方>
児童クラブは、物事の考え方を身につけていく過程にあるこどもたちが大勢、一緒に過ごしている場所です。(ごく一般的な判断能力を備えている)大人であれば「そんなことは、起こさない」ということでも、まだ物事の捉え方や事態の判断能力を学びつつある過程のこどもたちであれば、選択して行ったことが結果的にトラブルや失敗となる、ということは、こどもたちが大勢過ごす場である児童クラブでは、それなりにあることです。
今回の事案の催涙スプレーに関して言えば、「こどもが容易に手にすることができる場所に置かないこと。手に届く場所に置かないこと」という、当たり前の基本的な事項を事業者が現場に徹底さえしておけば、絶対とはいえないですがほぼ確実に、こどもによる噴射事案は防止できます。もちろん、事業者が指示しておかなくても現場の施設長主任クラス、正規常勤職員が「この場所ではこどもが手にすることができるから、違う場所に置こう」という判断ができておれば、容易に防げる事案です。
ですので運営支援はとても気になるのです。
「えっ、催涙スプレーをこどもが手にして噴射? 今どきの児童クラブでそんなことが起きるの? こどもが容易に手にすることができる場所に置かない当たり前のことができていなかった児童クラブってどういう運営をしているの?」
<関連はまったく不明ですが>
加古川市のホームページの情報を総合すると、事案が起きた施設は委託事業者運営の施設のようです。加古川市は児童クラブ業界最大手の広域展開事業者が受託運営する民営クラブが増えています。この事業者だからこういう事案が起きた、という因果関係は全く確認できません。どれほど運営事業者が業務マニュアルを整備して、こどもが手にしやすい場所に催涙スプレーを置かないこと、と記しても現場職員がそのマニュアルを無視した運営をしてしまってはこうした事案が起きやすくなりますし、運営事業者がそのような業務マニュアルを整備していなくても現場職員のリスクマネジメントの意識が徹底していれば、このような事案は起きにくいでしょう。
それでもわたくし萩原は気になります。「こんな基本的なトラブル防止のリスク管理ができていないのはこの施設だけの偶然だったのか、あるいは事業者として強く意識されていなかったのかどうか、とても気になりますね。
<児童クラブのあり方からして>
児童クラブは、こどもが将来、社会に出て困らないようになるために身につけておいてほしい様々なことを集団生活を通じて身につけていく場所です。社会規律とか、多くの人が「それは当然」と思う習慣などです。放課後児童クラブ運営指針にはこうあります。
「放課後児童クラブでの生活を通して、日常生活に必要となる基本的な生活習慣を習得できるようにする。
・ 手洗いやうがい、持ち物の管理や整理整頓、活動に応じた衣服の着脱等の基本的な生活習慣が身に付くように援助する。
・ こども達が集団で過ごすという特性を踏まえて、一緒に過ごす上で求められる協力及び分担や決まりごと等を理解できるようにする。」
「こどもが安全に安心して過ごすことができるように環境を整備するとともに、緊急時に適切な対応ができるようにする。
・ こどもが自分で避けることのできない危険に遭遇しないように、遊びと生活の環境について安全点検と環境整備を行う。
・ こどもが危険に気付いて判断したり、事故等に遭遇した際に被害を最小限にしたりするための安全に関する自己管理能力を身に付けられるように援助する。
・ 事故やケガ、災害等の緊急時にこどもの安全が守られるように、対応方針を作成して定期的に訓練を行う。」
催涙スプレーを必要が無いのに噴射したら他の人に影響を及ぼす、ということを、こどもが理解できるようにするのが児童クラブ職員の仕事です。それは刃物を筆頭に、使い方によっては他者に危害を及ぼしてしまう物品に対して当然に児童クラブ側がこどもたちに理解してもらうため努力をすることです。
ここから2つの考え方に分かれがちであるとわたくしは感じてきました。
「危険な物品をむやみに隠したり、こどもから遠ざけたりすることではなく、こどもにその危険性をしっかり伝え説明して理解させることで、こどもたちの判断で危険な物品を手に取らないようにすることを最重視する」が1つ。もう1つは、「いくら説明してもいたずらしたり誤って手に取るこどもはいる。理解の達成度に差異がある以上、物理的にこどもの手が届かない場所に、こどもに触られては困る物品を置くことを徹底すれば、少なくとも偶発的な事案やトラブルの発生を避けることができる」
なお、こどもが意図的に企図して何かを実施しようとしたときは、スプレーや刃物類を隠してあっても、それをこどもが持ち出してしまうことを確実に防ぐことはなかなか難しいものです。施錠したロッカー類にしまう、職員しか入れない事務室の中に片づけて置くことを徹底する必要があります。ですので、限度があるのはやむを得ないものがあります。
さて上記2つの考え方はそれぞれにわたくしは根拠もあり正しい対応と考えますが、わたくしは実務上において2番目の考え方をまず実施することが必要だという立場です。こどもに、「これは許されることではないので、行ってはいけません」ということをしっかりと教え諭すことはとても大切ですし、それは児童クラブ側がしっかりと行うべきことだとわたくしは考えます。しかしながら、数十人いるこども1人1人の理解や考え方には当然に違いがあること、現実的に「これは他の人に迷惑になることだから、やってはいけませんよ」という考え方を軽視する、あるいは無視して平然としているこどもがいても不思議ではないのです。
よって、こどもにいたずらされたり誤作動されたりしては困る物品、用具については、物理的にこどもの手に届かない場所に置く、アクセスを遮断することが児童クラブにおいては必要だ、とする考え方をわたくしは採用します。「強く言い聞かせる」ことを必ずしも否定しませんが、その方向性を極端に推し進めると、それは超管理的なこども集団の統制に及ぶ可能性をわたくしは考えます。つまり、箸の上げ下げも児童クラブ職員の許可を得て行うかのような、徹底的な職員の管理下においてのみこどもの行動を許容するという性質のこども集団の統制、これは実はとても簡単なことーこどもを支配すれば可能になるーなのです。このあたり、「こどもに危険性を理解させることで、こども自らが自制して問題行動を起こさないようにする」ということと、「こどもに強く指示し従わせることでこども自身の意思に関係なくその場の管理としてこどもの問題行動を起こさせないようにする」のは、見た目はとても似ていても、その根本的な方向性は正反対であるということを、児童クラブについて考えるときにはまず理解しておく必要があると、わたくしは考えるものです。
道具や用具の取り扱い方について、こどもにどう教え伝えていくか、それは児童クラブの根本的な運営の在り方にまで直結するものだ、ということをわたくしは指摘したいのです。
<苦い経験談を>
この加古川市の報道を目にした時、わたくしは過去の経験をすぐに思い出しました。わたくしは2014年8月から児童クラブ運営NPO法人の専従役員として勤務を始めましたが、その前数年間は、保護者として児童クラブを利用しつつ非常勤、つまりボランティアとしての立場で運営法人の常任理事の任にありました。その初年度の2011年度のことですが、運営している児童クラブの中で、こどもが意図的に催涙スプレーを噴射した事案が起きたのです。こども同士のトラブルの延長線上で、トラブル相手を威嚇しようとしてスプレーをクラブ内に噴射したというものです。
実はそのことは発生直後には知らず、数日後に開かれた監事会の席で、運営を差配している事務局長(当時はただ1人の専従役員)から報告を受けたのです。救急車を呼んで数人が搬送されたということでした。それを水面下で処理しようとしていたので、わたくしは反対意見を伝え、とりわけクラブの保護者に説明会なり文書なりで事案について説明し再発防止策を提示するよう求めましたが、採用されませんでした。その結果として、数日後にSNSに匿名の方からこの件が書き込まれて行政と運営法人の対応に疑問を示されてしまい、事態収拾が複雑な局面に至ったというものでした。当然です。隠そうとしていたのですから。この場合も、こどもが容易に手にしやすい場所にスプレー缶があったことで事態の発生に至ったのです。それは運営側の失態であって、そのことの反省も正直に示すことなく隠しておこう、触れないでおこうとすれば関係者からの疑念を持たれたり不信感を持たれたりするのは当然です。
こどもが大勢過ごす場所であり、複数の職員の仕事の場でもある児童クラブです。いろいろな事案やトラブルはどうしても起きてしまいます。その1つ1つに真摯に対応し、再発を防止して、総合的に児童クラブが安全安心な場所に少しでも近づけるよう、児童クラブ運営事業者は努力をしなければなりません。「こどもを守る、職員を守る」という意識を児童クラブ運営事業者はしっかりと認識して、児童クラブ運営事業に取り組めているのか。その取り組みは日々、確実に内容の向上を求められているという意識が、児童クラブ運営事業者に必要であると、わたくしは強く訴えます。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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New! 日本版DBS制度について相談したい事業者さんにぜひともお勧めします。さいたま市南区の「エリーネ行政書士事務所」(https://www.eri-ne.com/)さんのご紹介です。行政書士の入澤えりな先生が、日本版DBS制度を中心に児童福祉施設や児童福祉の事業者様からのご相談に対応してくださいます。日本版DBS制度以外にも遺言作成・相続、介護タクシー等をメインにご相談に応じているとのことです。営業時間は平日9:30~17:00で、土日祝は応相談とのこと。ぜひ、困り事がありましたら頼ってくださいね。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)
