三原じゅん子・こども政策担当大臣が誕生。放課後児童クラブの大改革で政治的レガシーを打ち立ててください

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。10月1日、石破茂内閣総理大臣率いる石破内閣が発足しました。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)を担当する、こども家庭庁は、初入閣の三原じゅん子こども政策担当大臣が担うことになります。三原大臣にぜひとものお願いを申し上げます。なお、児童クラブにおける仕事、業務量を減らすために後編は「業務の棚卸しの必要性」は後日掲載します。。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<三原大臣、誕生>
 すでに組閣前から名前が取りざたされていましたが、三原じゅん子参院議員が、こども政策担当大臣で初入閣しました。こども政策以外にも少子化担当、男女共同参画など合計7分野の担当大臣となります。10月1日21時14分配信の日刊スポーツ記事を引用します(元記事は共同通信でしょうか?)
「この日、官邸で首相からの指示を問われると「重要な政策なので、しっかりと取り組んでほしいと。石破政権の中でしっかり頑張ってまいりたい」と、口元を引き締めた。」(引用ここまで)

 三原氏は神奈川県選挙区選出の参議院議員で、神奈川県ですから今回の自民党総裁選では小泉進次郎氏を支援しました。決選投票では石破氏に投票したとのこと。神奈川県といえば今回、副総理となった菅義偉・元首相の影響力が大変強い地域と聞きますから、そのことも好影響になったのかもしれませんね。私個人としては、ツッパリ系アイドルだったりレーシングドライバーだったりの記憶がありますが、そこには、これをやりたいと思えば後退しない前向きの姿勢を感じていました。また記者時代に、三原氏が結婚したお笑い芸人の改名騒動?では当時のご夫婦に取材をしたこともありました。だからどうだということはまったくありませんがね。政治家に転身してからは、元芸能人政治家の宿命ゆえ、なんだかんだと言われながらも地道に頑張っていたのだろうと想像します。
 今回の入閣予想リストに三原氏の名前が取りざたされるとさっそく手厳しい批判がSNSで飛び交いましたが、あえて皮肉な見方をすれば、ものすごい高学歴を誇ろうが法令遵守を守れない、あるいは倫理的にダメな政治家はダメであって、元俳優、元歌手だから政治家の資質がないということはまったくない。政策に関して詳しく正しい知識は必要であり、論理的な思考、合理的な思考は必要ですが、それを身に付けるのはその人がたどってきた経歴には関係ありませんからね。

<放課後児童クラブの大改革に挑むべし>
 三原大臣はこれから少子化対策、こども政策という極めて難しい問題、超難題に挑むことになります。少子化対策はこの国が1990年代以降、ずっと取り組んでいながら成果を上げられていない問題です。いまなお社会に残る男女の差別的構造の解消にも取り組まねばなりませんね。
 より具体的には、2年後に施行となる、こども性暴力防止法(日本版DBS)が重要な課題となるでしょう。政府は具体的な制度設計に入りましたが、内容的にこれまでにないきわどい制度だけに、今後の国会でも取り上げられることになるでしょう。三原大臣にはしっかり勉強していただいて、安定的な答弁を通じて国民にしっかり制度の内容を説明していただけることを期待します。前任の大臣は国会答弁の危うさでかなりの批判を浴びました。あやふやな答弁ということは答弁を求められた事柄について本質的な理解をしていないということです。そのようなことがないように頑張っていただきたいと期待します。

 さて私が三原大臣に大いに期待したいのは、放課後児童健全育成事業の抜本的な見直し、制度の再構築です。これは大変な問題ですが、これこそ他を押しのけてでも、成し遂げていただきたい。放課後児童健全育成事業とはつまり放課後児童クラブ、いわゆる学童保育所(で行われる事業)ですが、多くの小学生が利用する制度ながら、不完全な制度設計ゆえに現実に運営されている状況もまた不安定です。児童クラブは重要な社会インフラですから、ぜひとも、抜本的な改革に取り組んでいただきたい。それこそ三原大臣が政治家として残せる功績ですし、この国の財産にもなるのです。

 具体的には次のことに取り組んでいただきたい。
(1)任意である「事業」から、市区町村が設置の義務を負う「児童福祉施設」への変更。これにより、多くの事柄も同時に変わることになるので、児童クラブの制度がかなり改善されていくことになるでしょう。
 ・有資格者の配置が義務化となる。施設設置が義務となれば有資格者の配置は義務となる。
 ・各種補助金は増額となる。
 ・市区町村の裁量による補助金利用の有無が無くなる。
 ・新しい国家資格(児童育成支援士)の新設もしくは放課後児童支援員資格の強化が必要となる。保育士と同等水準への改善。資格取得に試験制度や指定養成校制度を取り入れる。
 ・日本版DBSにおける取扱いの変化。認定事業者から学校、保育所と同じ区分とすることが可能となる。
(2)効率的なクラブ運営を行うための仕組み、制度の整備
 ・「補助金ビジネス」への規制強化。民営化、民間企業の進出は構わないとしても、事業者に交付される補助金が実際の事業運営に使われることを半ば必然とさせる仕組みの導入。補助金は職員人件費、施設整備、子どもへの教材費・行事費などに必要十分に使われること。それを行ったうえで、効率的な事業運営の結果として剰余金が出た場合のみ事業者の利益計上を可能とする。
 ・公募プロポーザル、指定管理者選定の審査基準に適用となる「公正ルール」の導入。具体的には、単に事業規模や資本金の額といった全国展開の事業者が必然的に有利となっている現状に対して、地域で継続的に安定した運営をしている事業者への評価も審査基準に反映させること。育成支援事業の「質」にもっとも高い配点がなされるように国が各市区町村を指導すること。
(3)抜本的な制度改革に先行する形での「職員の雇用状況の改善」
 小1の壁に象徴される放課後児童クラブの待機児童は地域差があるものの、すでに保育所を超える人数となって年々深刻となっています。その要因は需要増に応じられる施設数の不足ですが、単に建物や施設の不足だけでなく、「従事する職員が確保できない」ことで施設を増やしても開所できる見込みがないことも原因です。それは、職員に配分できる人件費が少ないことと、必要以上に運営事業者が利益として計上してしまうことができる仕組みがあって、職員が低賃金で過重労働を強いられる現状を招いているからです。ここは直ちに、それこそ暫定的な措置でいいので改善策が必要です。
 石破首相はかねて持論で非正規雇用の蔓延の是正を訴えてきましたが、放課後児童クラブでの仕事はまさにその非正規雇用が圧倒的に多い職種です。公営は言うに及ばず、急激に勢力を拡大している株式会社系の広域展開事業者はクラブ現場の職員はほぼすべて有期スタッフです。地域に根差した非営利法人も人件費が確保できない(昇給ができないなど)ために有期スタッフが多い。
 これでは、安心して長期間、継続して勤務しようという有能な人材は児童クラブの世界にやってきません。非正規雇用が圧倒的に多い業界の構造を変えるために、クラブ運営事業者を選ぶ際に、現場クラブ職員が無期限雇用である又は一定の割合以上であることを事業の安定性、継続性として高く評価する審査基準を原則とすることや、無期限雇用を可能とするだけの運営費の大幅な増額が必要です。やろうと思えばできるはずです。令和7年度の概算要求は出ていますが、放課後児童クラブの予算は圧倒的に足りていません。現状の2,000億円台ではいかにも不足です。日本の小学1年生の半分が利用する社会インフラですよ! まずは6,000億円台を目指していただきたい。もちろん、現状では補助金の多くが広域展開事業者の利益に化けてしまいますからそれを制限する仕組みも恒久的な制度を導入する前に臨時で組み込むことが必要ですね。

 上記(1)と(2)は一朝一夕にはできません。数年でも困難ですし、三原大臣の任期中には確実に完了しないでしょう。しかし、着手することはできます。また(3)は、三原大臣が強いリーダーシップを発揮すれば道筋が就きます。大臣が先頭に立って改革のレールを敷けば、あとは有能なこの国の官僚が上手に制度を設計してくれるでしょうし、中長期的な取り組みについては、こども家庭庁の方々がうまく引き継いでくれるでしょう。

<まずは、現場を見てくださいね>
 歴代の2人の大臣はそれぞれ子どもが過ごす現場を視察しておられました。それ自体は当然、評価できることですが、三原大臣には持ち前の機動力で、ぜひとも前例を突破して、「真にリアルで、日々、悪戦苦闘している放課後児童クラブの現場」を見たいと要望し、実施してください。警護の関係で突然その日に行く、ということはもちろんできないでしょうが、「ありのままを見たい」と強く念を押して、実際に日々行われている児童クラブの様子を見に行くことは必ずできます。
 大規模状態でクラブ職員が頭を抱えながら子どもたちに怒鳴りたくもないのに大声を上げざるを得ない現場、施設がボロボロでとても快適ではない現場、職員同士がギスギスして市区町村もろくにクラブの管理に向き合っていない現場。悲惨な児童クラブの現場は、それこそたくさんあります。そういう現場に三原大臣は足を運んでみてください。

 真に効果的な対策を考えて実行し効果を生み出すには、本当の現状を知ることが欠かせません。周囲が「そんたく」して、丁寧に整えられた、形だけの現場を見ても何ら効果がありません。いや、組織のトップが現場を見たからといって官僚機構とその機構が生み出す施策が劇的に変わることはない。それがあったらむしろ不安定な組織や意志政策の決定構造だということになりますから。しかし、トップが本当のことを知っていることは、その後の方針決定に間違いない正しい影響を及ぼすのです。

 ぜひとも社会を驚かせる豪快なハンドルさばきを三原大臣にはご披露いただきたい。なかんずく、放課後児童クラブの大改革に挑むことで政治家・三原じゅん子の政治的レガシーを打ち立てることを大いに期待します。

 <おわりに:PR>
 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。お近くに書店がない方は、ネット書店が便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。
(関東の方は萩原から直接お渡しでも大丈夫です。なにせ手元に300冊届くので!書店購入より1冊100円、お得に購入できます!私の運営支援の活動資金にもなります!大口注文、大歓迎です。どうかぜひ、ご検討ください!また、事業運営資金に困っている非営利の児童クラブ運営事業者さんはぜひご相談ください。運営支援として、この書籍を活用したご提案ができます。)

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)