そろそろ、放課後児童支援員認定資格研修が行われるころでしょうか。クラブ運営事業者はぜひとも「実」を取ろう!

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「運営支援」を行っている「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く、成長ストーリーであり人間ドラマ小説「がくどう、 序」を書きました。アマゾンで発売中です。ぜひ手に取ってみてください! (https://amzn.asia/d/3r2KIzc) お読みいただけたらSNSに投稿してください! 口コミ、拡散だけが頼みです!
 放課後児童支援員の資格を得るために必要な研修、放課後児童支援員認定資格研修(認定研修)が始まるころでしょうか。もうすでにスタートしている地域もあるでしょうか。放課後児童支援員の資格は、放課後児童クラブにとって重要な資格ですから、クラブ運営事業者(つまり雇用する側、使用者)は、まだこの資格を持っていない職員やスタッフが受講の要件をクリアしたら、さっそく認定研修に出席させることになります。そのときに、ちょっとした工夫で事業者は「実」を得るべきだというのが、本日の運営支援ブログの内容です。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。) 

<放課後児童支援員認定資格研修>
 児童クラブで働いている人や運営側の人はご存じでしょうが、そうではない読者さまも多いでしょうから、簡単に放課後児童支援員認定資格研修について説明します。
 放課後児童クラブが開所しているとき(=こどもに対して健全育成事業を実施している時間帯)に、放課後児童支援員という資格を持っている人が放課後児童健全育成事業として業務に従事していることが「基本的に必要」です。放課後児童支援員とは、都道府県知事による公的な資格であって、その資格を持っている人が放課後児童健全育成事業に従事しているときに放課後児童支援員と名乗れるものです。なお、「基本的に必要」と私が書いたのは理由があります。2015年度から2019年度までは、国は厚生労働省令において、この放課後児童支援員の従事を義務としていました。ところが規制緩和の名目でこの基準が緩和され、国の立場としては2020年度からは義務ではなくなりました。「従うべき基準」から、参考としなさいよという「参酌(さんしゃく)基準」とされたのですね。そうはいっても、市区町村が条例でこの資格者の開所時間帯の従事を義務としている自治体はまだまだ多いようです。国も、この資格者の従事は義務とはしていないものの、放課後児童支援員の従事が無い児童クラブへの補助金は大幅に引き下げているので、政策上は放課後児童支援員の従事は必要であるというスタンスを崩していないようにうかがえます。

 つまり、放課後児童クラブには放課後児童支援員という資格とその資格を持っている人がとても大事です。イメージとしては保育所における保育士さんですね(保育士は、国家資格ですけれども)。その放課後児童支援員という資格を手に入れるには、試験はありません。だから「試験で落ちて、不合格」ということが絶対にないという公的な資格です。(=つまり、資格の専門性がさほど深くはないということを意味しています)
 資格を得るには、資格を得るための基本的な条件をクリアしている人が、都道府県等が主催する研修に参加することが必要です。研修と言っても基本的には座学、つまり講師の講義を受講することになります。どんな講義なのでしょうか。埼玉県桶川市のホームページには次のように紹介されています。(以下、引用です)
放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の理解(4時間30分)
子どもを理解するための基礎知識(6時間)
放課後児童クラブにおける子どもの育成支援(4時間30分)
放課後児童クラブにおける保護者・学校・地域との連携・協力(3時間)
放課後児童クラブにおける安全・安心への対応(3時間)
放課後児童支援員として求められる役割・機能(3時間)
※保育士・社会福祉士・教諭資格者は一部免除される科目があります。
(引用ここまで)
全部合計すると24時間です。1日6時間の講義で4日間ですね。8時間ですと3日ですが、8時間ぶっつづけで講義を聴いて、受講者の頭の中にどれだけ残るのでしょうか。
「6時間も座って授業を受けるのは嫌だ!」という人は多いでしょう。眠くもなりますね。でも、「24時間座ることができさえすれば、公的な資格が手に入る!」というのは、そうそうありません。認定研修を受講できる基本的な条件も、さほど難しくありません。例えば高校を卒業している人は児童クラブで2年間(そしておよそ2,000時間の勤務時間)、勤務していれば認定研修の受講ができるのですから。
 放課後児童クラブが開所しているとみなされる、あるいは補助金をしっかり得るためには、そのクラブが位置する市区町村が定めたルール上の条件を満たしていることが必要で、それは放課後児童支援員の配置、勤務である場合はほとんどです。ですから、児童クラブを運営する業者は1人でも多くの資格者すなわち放課後児童支援員の資格保持者を雇いたがります。雇う必要があるのです。すでに働いている人で、認定研修の受講要件を満たしている職員スタッフには、この認定件受講を勧めることは当然ですし、雇用の際に「要件達成後は認定研修を受講する」として雇用の条件としている事業者もあります。

 それだけ大事ということです。開所しているとみなされるために必要とされてる資格であるから当然です。

<事業者はこの認定件の機会を活かそう>
 放課後児童支援員の資格に限りませんが、人が何らかの資格を得ようとして試験を受けたり講義に参加したりするときは、その資格取得を業務命令で命じて受験させたり受講させたりすることを除けば、事業者が何らかの便宜を図ることはまずありません。業務と関係なければ当然ですが、業務と関係のある資格だからと言って雇い主が社員や職員、スタッフに受験料を出したり受講時間分の賃金を支払うことはないでしょう。

 運営支援は、放課後児童クラブの事業者にはぜひとも、雇用している社員や職員、スタッフが、放課後児童支援員資格を得る認定研修に参加するときは、可能な範囲で構わないので費用負担をしていきましょうと、呼びかけます。受講時間24時間の時給(換算額)を支払うことができればベストです。他には受講料、テキスト代金、交通費など、細かな部分でも費用負担ができればいいですね。なお、認定研修のために受講日の勤務を休むことになるでしょうが、その際の年次有給休暇の取得は当たり前ですが妨げてはなりません。年休の取得に条件を付けてはなりません。仮に「認定研修を受けるために年休の使用は認めない」(こんなことを言う事業者があるとは、到底思えませんが)と不思議なことを言い出す事業者があれば、「ではその分の賃金を支払うことを会社は認めるということですね」と言い返してみましょう。

 なぜそこまで事業者が温情を施すのか、個人の利益になることに運営事業者が費用を負担してカネを使わねばならないのか納得できない方がほとんどでしょう。投資した額以上のリターンが得られる見込みが薄い投資はしない、という事業者であれば、この運営支援の勧めはまったくバカバカしいでしょう。そう受け取られても構いません。「絶対に利益をもたらす」とは言い難いのは事実ですから。

 ただ、次のようなことを期待しているだけです。
「放課後児童クラブの開所にとって、こどもへの育成支援という事業にとって、放課後児童支援員という資格と、その資格を持っている人の存在は、極めて重要ということ。事業者が事業を続けられるかどうかを左右するほどの重要性があるから、ということを職員側に理解してほしいから」
「ややもすると、眠気に襲われたり他のことに気を取られてぼんやりとして受講することが多い認定研修であっても、そこに会社からの賃金が出ている=業務遂行中、ということであれば、少しでも気を引き締める効果をもたらす(と期待する)」
「お勉強は嫌いとして認定研修受講にしり込みする人も、事実上お金がもらえるということであれば、受講してくれるかもしれない」

 運営支援としては、認定研修の時間を業務時間として認めて賃金を支払うことに対して、そこにすなわち事業者として、認定研修を受けた人に対するいろいろな指示や命令ができることのメリットを考えます。単に、有資格者が組織における事業運営に必要だから、ということ以上のメリットです。
 例えば、受講した人に対して、その受講を経て学んだこと、自分なりに考えたことを事業者にレポートとして提出させることができますし、職員が集まる会議や集会の場で、認定研修の受講によって学んだことを紹介させることもできます。下品な言葉で言えば「カネを出したんだから、こっちの言うことは聞いてもらうよ」ということです。職員やスタッフにカネを出すから認定研修で得られたことを組織に還元させる「実」をできるだけ得ようじゃないか、ということです。
 しかし、決して理不尽な要求ではありません。認定研修ではその時点で最新の内容を講師陣から学べます。それを受講者を経由するとあっても、事業者の他の職員やスタッフに伝えられることは、良い刺激になるでしょう。このような場が待ち受けているとあれば、受講者もぼんやりと講師の話をただ聞いているだけでは済まないことぐらいわかるでしょう。

 要は、せっかくの機会を無駄とはしない、ということです。ただでさえ職員不足で認定研修といっても丸一日、人が抜けることが大変な状況で数日も人を認定研修に出すのですから、その分はしっかりと事業者で吸収しつくしましょう、ということです。

 「いやいや、認定研修に参加したって、すぐに辞めてしまう人が多いんだよ」という声があるでしょう。そんなの百も承知ですよ。そもそもね、2015年度に認定研修の仕組みがスタートしてその最初の受講者が年度末待たずに退職しまして、年度末近くにやっと県から届いた資格の証明書をすでに退職なされた方のご自宅に郵送差し上げたって経験を私は持っています。人が辞めるのは、それはどうしようもないこと。認定研修に参加させたのにすぐに辞めやがって、と思って腹を立てるようでは、会社経営者、事業の運営者としてはあまりにも器が小さすぎます。向いていませんよ。人が辞める、あるいは人を採用するという「人事」は、なるようにしかなりません。

 少しでも事業者と、事業者で働いているほかの人にとって役に立ちそうなことが少しでもありそうなら、それに貪欲に食いついていってほしいのですね。なお、事業者側は、お金を出そうが出さまいが、認定研修に参加した職員スタッフを励ますことはしっかりしましょう。言葉をかけるには予算がかからないのですからそれぐらいは必ずやりましょう。

<育成支援の底上げを図ろう>
 放課後児童支援員という資格は、改善の余地があまりにも多すぎる資格だと私(萩原)は考えています。放課後児童クラブにおける事業の質の底上げには、放課後児童支援員の業務が必要とする知識や理論の専門性を確立させ、資格が求める深い専門性に関する内容を理解した人に与えられる資格とするべきです。私の持論は国家資格化であり、より具体的には国家資格たる「(児童健全)育成支援士」と現行の「放課後児童支援員」の二本立てです。まだまだ影も形もない空論の段階ですが、社会インフラたる児童クラブの質の底上げには必要な施策と考えています。

 それはさておき、現行は放課後児童支援員という資格しかないわけですからこの資格をもっと活用することです。この資格を得るために必要な認定資格研修では当然、講師の方々がその時点で最新の知見を受講者を伝えてくださっているわけですね。
 一方で、放課後児童支援員という資格は、たった一度の認定研修参加でずっと通用します。ケアマネジャーのように5年ごとに再受講が必要というものではありません。私はケアマネ同様に再受講必須として受講しなかったものの資格を取り消す制度を導入するべきだと考えますがそれもさておき、せっかくの認定研修の仕組みがあるわけですから、同様の講義、研修を、すでに放課後児童支援員である方に向けても行うべきだと考えます。
 認定研修を外部のコンサルや人材派遣業者等に任せている情けない広域自治体があるようですが、私の知る限りでは埼玉県や愛知県は、児童クラブの業界団体が密接にかかわって認定研修を実施しているようです。そのような地域にある有力な業界団体、つまり連絡協議会などが主催して、放課後児童支援員向けに、独自の研修会、学習会を実施することが望ましいでしょう。24時間分を確保するのは難しいとしても、1年に1~2回、時間にして6~12時間分の研修、学習はできるでしょう。参加費1,000円で500人が参加すれば50万円ですよね。十分、収支は成り立つでしょう。自分の地域だけではなく隣接の都道府県を巻き込めばいいのですし。

 認定研修のノウハウを活かして、すでに児童クラブで従事している人や、あるいは認定研修をまだ受講できない人を対象に、少しでも育成支援について学べる場を、積極的に設けることこそ、児童クラブの質の底上げに重要です。連絡協議会のような業界団体だけではなくて自治体が考えて主催するのもいいでしょう。ぜひとも実現してほしい。放課後児童支援員は、常に研鑽が求められています。厚生労働省令第8条にはこうあります。
「第八条 放課後児童健全育成事業者の職員は、常に自己研鑽に励み、児童の健全な育成を図るために必要な知識及び技能の修得、維持及び向上に努めなければならない。
2 放課後児童健全育成事業者は、職員に対し、その資質の向上のための研修の機会を確保しなければならない。」

 自主的な「認定研修」の実施はまさにこの条文が求めることに他なりません。児童クラブに関わる有力な団体や組織はぜひとも「自主的認定研修」に取り組んでいただきたいと運営支援は切に願います。なんなら事務処理ぐらいは弊会が引き受けますから。

<PR>※お時間のある時に、目を通していただければ幸いです。
 弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。

 放課後児童クラブを舞台にした、萩原の第1作目となる小説「がくどう、序」が発売となりました。アマゾンにてお買い求めできます。定価は2,080円(税込み2,288円)です。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員・笠井志援が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。リアルを越えたフィクションと自負しています。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、群像劇であり、低収入でハードな長時間労働など、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。素人作品ではありますが、児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描けた「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作に向いている素材だと確信しています。商業出版についてもご提案、お待ちしております。

 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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