これは朗報!地方における人口の維持、移住促進に、放課後児童クラブに期待して投資する自治体の英断を評価します。
放課後児童クラブ(学童保育)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)は子育て支援において重要な社会インフラ機能を果たしている仕組みです。その点を理解した施策を採用した自治体について報道がありました。とてもうれしいことですね、当ブログでも紹介します。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<過疎地域に、放課後児童クラブができた>
YBS山梨放送(NNN。日本テレビ系)が2025年1月21日19時15分にオンライン配信した記事を紹介します。見出しは、「高い買い物ではない」過疎地域に学童新設へ 子育て世帯の流出防ぐ 山梨・笛吹市」です。
記事の一部を引用します。それほど長い記事ではないので、同局のウェブサイトで本記事を直接、閲覧してください。
(「高い買い物ではない」過疎地域に学童新設へ 子育て世帯の流出防ぐ 山梨・笛吹市(2025年1月21日掲載)|YBS NEWS NNN)
「笛吹市の芦川地区に新たに学童施設が新設されることになり17日、竣工式が行われました。児童数が減っている過疎地域への設置は珍しく、これ以上の人口流出を防ぎたい狙いがあります。」
「芦川小体育館に隣接する多目的室を増築、改装します。定員は17人で職員2人が常駐し、放課後の児童を預かります。」
「芦川小の全校児童は現在12人」
「今回の学童施設の設置は地域住民からの要望がきっかけ」
「笛吹市 山下政樹市長 (過疎地域への設置は)効率的じゃないというかもしれないが、さらなる発展をかなえるためには決して高い買い物ではないと思っている。この地域を少しでも維持できるようなことを期待している」
(引用ここまで)
<「高い買い物ではない」とは言い得て妙>
市長のコメントが記事に載っていましたが、私は素晴らしいと感じました。ちなみに笛吹市は、いわゆる「消滅可能自治体」にはリストアップされていないようです。とはいえ、地域によって人口流出が著しい場所は当然あるでしょうから、地域の集落が、限界集落(人口の半数以上が高齢者)になることを防止し、子育て世帯の定住を支える、あるいは流入も期待するのであれば、子育て支援の仕組みを公費を投じて整備することは必要でしょう。
記事では定員17人の児童クラブとあります。運営費の補助では「構成する児童の数が1~19人の支援の単位」に分類され、「2,629,000円-(19人-支援の単位を構成する児童の数)×29,000円」の補助額となるのでしょう。児童の数が20人以上の場合と比べて単純に200万円ほど低い額にはなりますが、補助金がゼロではありません。
難しいのは、補助金の交付要件に関わる有資格者の配置でしょう。人口が少ない地域では、放課後児童支援員がすぐに雇用できるかどうか定かではありません。笛吹市がこのクラブを設置するにあたっては、資格を有していて就労が見込める人がいることを事前に調査していたことと想像します。施設を設置したはいいが、放課後児童支援員を雇用できなければ補助金が交付されませんから。
2020年に、有資格者の配置が「従うべき基準」だったものが「参酌基準」に緩和(あるいは、後退)しました。児童クラブの本筋からすると、実にけしからん規制緩和でしたが、現実に人口が少ない地域における有資格者の配置は困難であるのも事実です。人口が多い都市部ですら、集まらないのですから。もっともそれは、仕事、業務に見合う賃金額が提示されないことが大きく影響しているはずですから、もっと運営費補助額を増やして職員に支給される給与の額を、うんと増やせばいいのです。直ちに国、自治体には実行していただきたいことです。
それはさておき、現状において運営費補助がさほどでもない状況で、あえて人口が少ない過疎地域に児童クラブを新規開所した笛吹市の政策判断は、極めて優れていると運営支援は高く評価します。職員確保の困難はずっとついてまわるでしょうが、市の方針として「地域社会を維持する」として、その方策の1つとして、放課後児童クラブの整備に注目したことこそ、素晴らしいのです。
このことで市の予算は当然増えるでしょう。開設にかかる経費も補助金を活用し、今後の運営費も3分の1が自治体の負担となります。新設されたクラブだけで今後は年間100万円近い経常経費の増額となるでしょうが、それでも市長は「高い買い物ではない」と言い切りました。こういう首長が増えてくれるといいですね。
<街づくりに、子育て支援の仕組みは欠かせない>
私は放課後児童クラブは、ますます重要な社会インフラとなることを信じて疑っていません。すでに小学1年生のおよそ半数に1人が児童クラブを利用しています。小学生全体では4人に1人ですが、これはもっと増えていく可能性が大いにあると考えています。小学3年、4年生になると低学年を優先させるため高学年を中心に「自発的に退所、退会」という行動が全国各地で行われていると私は考えています。すべての学年の児童が、安心して児童クラブの在籍を続けられるようになれば、児童クラブを利用する小学生、利用したいと考える保護者はさらに増えるでしょう。
子どもを安全安心な場所で過ごさせたいという保護者はさらに増えるでしょう。種々の要因で就労が必要な保護者が増えていること、転職に有利とするため、あるいはスキルアップ、キャリアアップのために知識や技術を習得しようと学校に通ったり教育研修の機会を利用したりする保護者も増えるでしょう。家庭での看護、介護が必要な保護者も増えるでしょう。子育て中の保護者を支える仕組みが整っている市区町村であれば、安心して子育て支援のサービスを受けながら子育て世帯がその土地で過ごすことができますし、その評判、評価が話題になれば、子育てと仕事や就学、介護や看護を並立させて過ごしたい子育て世帯の転入も期待できるでしょう。
特に、子育て支援サービスでも見落とされがちな小学生から18歳までの児童に対する子育て支援サービスの充実は、これから「居住地として選ばれる市区町村」になるためには、必要な施策であると運営支援は考えています。小学生の居場所については、私は、放課後児童クラブの整備は市区町村にとって最善の方策であると考えます。曲がりなりにも国が示す児童クラブの事業内容が放課後児童クラブ運営指針という形で用意されていることや、資格としての専門性が貧弱で今後の強化は必須であるとしても一応は放課後児童支援員という専門職の配置が事実上、必要となっていることから、小学生の子どもと、その子どもを育てる保護者への支援、援助が基本的には適切に行えるためです。
とはいえ、児童クラブでないとしても、子どもの居場所をしっかりと整備していれば、子育て世帯の転出を防ぎ、自治体の維持に必要な人口の減少を食い止め、さらに子育て支援サービスに投資すれば、子育て世帯の転入も期待できるのです。ぜひ市区町村には、できれば児童クラブを、それが種々の事情で難しいのであれば子どもの居場所を、しっかりと必要な予算を投じて、整備していただきたい。理想としては、児童クラブがしっかりと整備されて希望する子どもが全員、入所できる状態になることと、児童クラブに入所しない、あるいは中学生以上の児童の過ごす場としての児童館を増やしていただきたい。中学校区に1つの児童館があればいいですね。
全国津々浦々、笛吹市のような考え方で、「高い買い物ではない」とリーダーが強い意思表示を示すことで、地域における子育て支援サービスのより一層の充実を期待します。
<おわりに:PR>
弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。
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弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
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放課後児童クラブを舞台にした小説を完成させました。いまのところ、「がくどう、序」とタイトルを付けています。これは、埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ご期待ください。
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「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)