学童保育への「苦情、クレーム」問題を考える。実は案外、簡単です。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育事業の質的向上のためにぜひ、講演、セミナー等をご検討ください。

 苦情やクレームは、学童保育の世界では非常によくあることと言えます。といっても、学童保育だけでなくどの業界でもそうかもしれません。学童保育所を利用している保護者さんや地域の方、一般の住民、学校関係者など、多様な方面から意見が届きます。
 なお、今回取り上げる「苦情」は、「ひどく傷ついた等、被害感情や不快感を伴った意見」とし、「クレーム」は「学童保育側が提供する・提供したサービスに対する不満や抗議で改善要求を伴うもの」と、厳密に分けています。

 苦情、クレームについては、対応する側のストレスが極度にたまり、それが原因で体調を崩して仕事に差しさわりが出ることもあるので、本当に大変です。まして学童保育所の場合は、それまで普通に会話をしていた保護者から突然、厳しい態度で非難を浴びせられるということもあって、精神的に参ってしまう現場職員もおります。学童保育で働く人の多くは、子どもや保護者を応援したい、支えたいという、素朴で前向きな考え方の人が多いので、苦情やクレームのような批判や非難には、より過度に深刻に受け止めがちなので、対応がとても苦手、という人が多いと、私は見聞きして感じています。

 どうしたら、苦情やクレームに、うまく対応できるのでしょうか。「こうすれば、すんなり解決」というものは、残念ながらありません。相手は人間です。人である以上、それこそ十人十色で、ネットで示されているクレーム対処法を実践したとて、うまく解決に至るかどうかは分からないのです。
 このことは、がっかりすることではありません。むしろ、こう思いましょう。「苦情、クレームは、すんなりと解決できなくても、いいんだ」。苦情、クレームをその時に解決できなかったから自分は能力が低いんだ、と自分を責める必要はまったくない、ということです。「そうか、クレーム解決はできなくて当然だ」とは、思わないでくださいね。解決する努力をした上で、できなかったことについて自己を過度に責める必要はない、という意味ですからね。(何分、自己肯定感が低い学童保育職員が多いのです)

 ということで、苦情やクレームには当然、解決する努力は必要です。その努力自体は、案外簡単です。
 「丁寧に話を聞くこと」
 「現実的に被害を受けたことが明白であるなら、それについては社会的常識としての謝罪をすること」(注1)
 「姿勢として、相手側の感情に寄り添う態度や口調を示すこと」
 「すぐに解決に取り組む姿勢を見せるが、絶対にその場で、解決策を安請け合いしないこと」
 「自分1人で対応することは絶対に避け、常に上司と連携して対応すること」(注2)

 上記のことを守りつつ、対応することです。

 注1は、たとえば、子どもが他者からけがをさせられた、というような苦情を受けた場合に、「けがをさせられた子どもと、保護者に対して」おわびの気持ちを伝える、ということです。間違ってはいけないのは、「けがをさせてしまったことに組織として非を認めて謝罪する」というものではない、ということ。それを行うのは、管理職の仕事です。

 そのためにも、注2の、上司との連携が重要です。特に電話では、言葉+口調という、2つの方法でしか感情の起伏を探ることができませんので、より慎重に、丁寧な対応が必要です。電話の途中であっても、「はい、そのことについてただいま確認いたします」ということを伝えて、上司に指示を仰いでください。
 内容によっては、上司や管理職に対応を交代するのも良いでしょう。ただしその場合、それまでに聞いた内容をこれから対応者となる上司や管理職に、もらさず伝えましょう。そうでないと、苦情やクレームを寄せてきた人が、また最初から説明することになり、その人の気分はさらに害され、困り感や怒りの感情が増幅されること必至です。

 もちろん、苦情やクレームへの回答は、自分1人の判断で伝えることは絶対にしてはなりません。必ず上司、管理職が提示した内容を返答することになります。苦情やクレームは、それがたとえ自分1人のことについての内容だとしても、「組織」にいる人間に対しての苦情、クレームなのですから、「組織」としての返答、回答になるからです。このあたりが、どうも学童保育業界では、あまり意識が徹底されていないようです。注意しましょう。

 そして、極めて重要なことがあります。それは、「受け取った苦情やクレームには、即座に、そして完全に対応する。解決策の提示に時間がかかる場合は、そのことを丁寧に伝えて、決してほったらかしにしているのではない、真摯に対応するがための時間が必要であるということを明確に伝える」ということです。

 これは特に、子どもが、暴力行為やいじめなどで、けがを負わせられた場合や、所持品を壊された場合など、具体的に被害が生じているときに重要なことです。当然、被害を受けた側の感情は厳しいものがあります。すぐに解決策の提示を求めることが多いでしょう。
 とても重要なことだから、しっかりと調べて解決策を提示する、ということを、管理職は、対応者に確実に伝えるように指示してください。対応している人は、「本当に解決したいからこそ、こういう方針をとらせてください」と迫真をもって伝えてください。

 学童保育所で一番多い、子ども同士のトラブル。「やった、やっていない」「言われた、言っていない」の水掛け論にもなりがちです。でも、解決に向けてすぐに取り組んでいるということをしっかりと保護者に見せれば、それはそれで1つの安心材料にもなります。「絶対に解決する」という姿勢は、必ず見せてください、示してください。

 ほかにもいろいろな方法論がありますが、それを示していたら延々と続いてしまうので、またの機会があればそちらに譲りますが、さらに2つ、箇条書きで紹介します。
 「育成支援の現場における苦情、クレームは、保護者同士、また職員と保護者との関係性によって、苦情やクレームになる、ならないが決まる」
 「運営に関する苦情、クレームは、運営方法改善の重要なヒントとして取り組む」

 よく考えれば「そりゃそうでしょ」の内容ですが、極めて重要な本質なのです。仲が良い人同士では問題にならないことも、仲が悪ければその問題はこじれます。ですので、苦情やクレームを少しでも減らしたいなら、業務をしっかり行うことは大前提として、良好な人間関係構築に普段から努力することです。(このことは改めて論じます)

 最後に、「明らかに常識を逸脱した、根拠や正当性の無い苦情、クレームは、管理職が対応して、断固たる姿勢で拒否する」ことも忘れてはなりません。いわゆるカスハラ問題ですが、法令違反となることが明確な無法な要求にはきっぱり撥ねつける姿勢で臨むべきでしょう。

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 「あい和学童クラブ運営法人」は、苦情やクレーム対応といった、学童保育所の運営について生じる大小さまざまな問題について、取り組み方に関する種々の具体的対応法の助言が可能です。また、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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