「朝の小1の壁」問題で波紋。放課後児童クラブ(学童保育所)も無関係ではいられません。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士でもあります。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
こどもが、安全安心な環境で過ごせるかどうかは、保護者にとって重大な問題です。やむを得ない理由で家庭を留守にしなければならないとき、こどもの安全安心な居場所を確保できねば、保護者は安心して自身の活動に集中できません。放課後や長期休業期間中にその居場所となるのが放課後児童クラブですね。小学校の登校日の朝の居場所を巡ってこの数年、あちこちで試行錯誤が続けられている中、群馬県高崎市では波紋が広がっているようです。
(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
<朝の小1の壁>
ことの次第は、ヤフーニュースに2026年2月8日9時に配信された、集英社オンラインの「高崎市「小学校7時開門」で校務員が次々と退職…「教員の人権を無視している」と現場は激怒、教職員組合も猛反発する「朝の小1の壁」対策」の記事をぜひご覧ください。
なおわたくし萩原は、この記事が取り上げている高崎市の個別の施策にマルかバツかを付けようとは思いませんし、そもそも付けられません。しかし、記事を読みまして驚きました。「朝早くに小学校に来たこどもの、安全確保に従事する人員の配置を行政はしっかりと決めていないの? 本当に? うそでしょう?」ということです。ここを、小学校側でなんとかしてよね、ではそれは現場小学校側の人たちが抗議の声を上げるのはそりゃ当然でしょう。この記事は教職員側、現場学校側の不安の声を取り上げていますが、わたくしの立場からでは「こどもをしっかりと見守る人員を予算を割いて確保していないのは、こどもの安全を確保する上で重大な欠陥で、直ちに是正するべきです」と訴えます。
朝の小1の壁とは、保護者の出勤等の時刻が小学校へこどもが登校する時刻よりも早いので、こどもの監護の時間が確保できないことです。保育所は午前7時から開所することが多いので保護者が出勤途中に保育所にこどもを託して出勤できますが、小学校の登校時刻は保育所での受け入れ可能開始時刻より遅いので、こどもをこどもだけで過ごさせる時間帯が生じてしまいがちです。それを、朝の小1の壁と呼んでいます。壁とは「障害」のこと、つまり子育て上の問題や課題を指します。どうしたら、朝に生じる、保護者が不在の時間帯にこどもを安全安心に過ごさせることができるかが、問題となっているのです。
朝の小1の壁をめぐっては大阪府豊中市が、午前7時から小学校でこどもを受け入れることが報じられ、かなり話題(というか、議論)になりました。豊中市は市のホームページで「午前7時からの小学校見守り事業」として紹介しています。かなり詳細にこの事業の説明をしている点は評価できます。登録したこどもの受け入れであり、こどもの見守りの態勢については「校門前に警備員1名、見守り場所に見守り員2名を配置します。
児童の見守り及び簡単なけがの対応を行います。」とあります。教職員や校務員にこどもの見守りをさせてはいないようですね。事前登録しているこどもを対象、ということも現場の安心につながりますね。人数の確認やこどもの人定確認が容易になりますし、見知ったこどもを受け入れているのですからこどもと見守り員との関係性も構築できます。
豊中市のこの事業が公表されたときには、SNSでも「こどもの安全はどうするんだ」「そんなに長くこどもが学校で過ごすと疲れてしまうよ」という懸念の声が、この事業を歓迎する声よりも多く投稿されていたというのが、わたくしの印象です。安全については少なくとも高崎市よりもしっかり手当されていますね。高崎市は先行事業の豊中市の事業を研究しなかったのかしら。
「こどもが疲れてしまう。朝早くに学校、夕方から学童では、こどもがかわいそうだ」という感情的な意見は共感を呼びやすいですね。なんていっても「こどもを守りたい」という誰もが理解する立場からの発言と理解できるからです。しかしわたくしはその考え方に賛同しません。まず、朝の時間、プラス30分か40分、長く小学校で過ごすことでこどもの肉体的精神的疲労がとてつもなく増えるというのは、そういうこどももそりゃいるでしょうが大多数ではなかろうと考えているからです。早起きさせるのがかわいそうだ、というのは論評に値しません。2時間ほど学校で過ごす時間が増えてしまうならそりゃ疲労も増すでしょうが、30~40分では心配する必要はない。何より、「家で留守番させ、1人で学校に登校させることへの不安、それは保護者の不安感だけではなく、こどもが事故や事件に巻き込まれるリスクを考えると、保護者が朝に小学校へこどもを連れていくことのほうがより利益をもたらす」と考えているからです。
<保護者がもっと長く家にいればいいんだ、という理想論であり現実的に無責任な意見>
朝の小1の壁についてわたくしは、2つの観点で常に考えています。理想論として、「中長期的に、小学生の保護者が朝早くに出勤しなくても、ある程度の所得補償ができるような雇用労働施策を国が義務化すること」は必要でしょう。今も時短勤務の施策はいろいろあります。しかし問題は、私企業が、そのような施策を採用するかどうかは私企業の判断であり、企業がコスト面を考えた時に小学生の保護者に配慮した措置を採用できるかどうかは、中小企業を中心に難しいであろうとも考えます。
なにより、始業時刻が早いの遅いのいろいろありますが、始業時刻が早い会社や団体で働こうと思ったのは当の保護者の判断ですからね。個人の自由意志で生じた不利益に公共がどこまで補填するのかは、意見が分かれると考えます。
また、誰しもが嫌々、朝早くに出勤しているわけではありません。朝早くに出勤して仕事をしたいと考えている人、専門的な職種に就いているので朝早くから働いている人だっているでしょう。誰もが嫌々、朝早くに出勤しているわけでもない。朝早い代わりに、午後は早く退勤して家族で過ごす時間を確保しているかも、しれませんね。
ですので、理想論として、小学校のこどもを養育する子育て世帯になるべく寄り添うような施策、もっと子育て世帯も、子育て中の保護者を雇用する企業や団体にとって使い勝手の良い施策が、知恵と工夫で実現することが必要だとわたくしは考えますし、そういう時代が早く来てほしいと考えますが、それで全て解決するとは思えません。
やはりもう1つ、現実的な対応は欠かせないだろうとわたくしは考えます。であれば、朝早くに小学校で過ごす「こども」の最善の利益を確保できるような工夫を一緒に導入するべきです。その点において、高崎市の施策は欠点があったのではないでしょうか。
現実的に、「朝、こどもを残して出勤するのが不安」な保護者がいる。その保護者にまず寄り添うことは必要です。そういう保護者に「なんでこどもを残して朝早くに出勤するのだ。保護者としてそれはどうでしょうかね?」という意見を投げつけていては、「いま」の問題は解決できません。いま心の中に葛藤を抱えている保護者を追いつめるだけです。こどもが大切、こどもを守りたいということで「朝早くに出勤する方がおかしい」と言っているその言動が、いま子育てに必死で向き合っている保護者を責め立てることにつながるという、諸刃の剣になっていることを、特に児童福祉関係の中の人たちは心するべきだと私は考えます。
<要は、こういうこと>
自治体が、こどもの安全安心をしっかり確保できるような態勢を、カネを投じて構築しなさい、ということです。「こどもを見守る人を高い賃金をもって雇用すること」であり、「職務として、小学校が始まるまでの時間、責任をもってこどもの安全を確保する」ことです。
カネをケチるから、波紋が広がるのです。問題視されるのです。
「有償ボランティア」なんて変な仕組みはやめてほしいですね。こどもの命、人の命を守るという最終的に絶対的な重要な任務を担うのですから、しっかりと賃金を支払って、労働者として処遇するべきです。労働者ですから労働災害のときも保障が受けられます。こどもと相対する仕事というのは、けががつきものですからね。
高崎市が責められているのは「こどもをどうやって守るのか」の視点が、はっきりと確認できない制度設計だからなのでしょう。豊中市への施策の批判が今は全くメディアで取り上げられないのは、その点が見えているからでしょう。
朝の小学生の壁をめぐっては、神奈川県大磯町の取り組みが先駆者の立場としてメディアで取り上げられてきました。「けしからん!」という報道は見たことがありません。朝、こどもを見守る人員体制が明確になっているからでしょう。
朝早くにこどもを受け入れることそのものに批判を向ける方々はどうしたっています。理想論を現実に今すぐ落とし込めという人たちに現実を説いてもなかなか苦労します。ですから、そこは「はいそうですね」でいいのです。「いま、子育てしている保護者を支え、こどもを何が何でも守るために、朝の受け入れ施策が必要だ」という判断をわたくしは強く支持しますし、同時に「こどもをしっかりと守る人員体制を、カネを投じて構築せねばなりませんよ」と強く言いたい。こどもに関わる人への待遇はいつも軽視されがち。それこそが問題なのです。
<放課後児童クラブも無縁ではない>
大磯町の場合は放課後児童クラブの運営事業者が朝の受け入れ施策に関わっています。大磯町のHPに、事業の概要が紹介されています。(asa_r8.pdf)
とても丁寧に説明されていますね。資料を見ると確かに児童クラブ運営事業者が朝の受け入れ事業を町の依頼で行っていることが分かります。なお1点、重箱の隅を楊枝でほじくることをしますと、説明資料に「◆本事業は「お子さんをお預かりする事業(保育)」ではありません。地域の皆さんにご協力いただき、小学校始業前に安心・安全な居場所を提供する事業です。」とありますが、この説明文は変更したほうがよいでしょう。お預かりする事業(保育)というのが間違いです。安心・安全な居場所を提供する事業こそ、預かりです。託児です。そもそも保育や育成支援は、外形上は確かに預かりですがそれは事業目的を達するための手段です。よってここは「本事業は保育や児童の健全育成事業によるこどもの受け入れではありません。地域の皆さんにご協力いただき、小学校始業前に安心・安全な居場所を提供する預かり事業です」と、変えるべきでしょう。
朝のこどもの居場所づくりのニーズは、「働いて働いて」の人が国のトップにいますしね、これからもさらに増大するでしょう。冗談ではなく、かつては朝、親が出勤した後にこどもが自分だけで学校に行くというのは、案外当たり前でした。それが今の時代は、こどもの安全を守るという、絶対的に素晴らしい意識が醸成されたために、朝のこどもだけの時間を無くそうという社会になりつつあるのです。ですから素晴らしいのです。
その対応について、小学校側に丸投げできませんよ、というのが高崎市の現場の教職員の方々の率直な反応です。教職員の過重労働は重要な社会問題です。となると、朝のこども受け入れ事業を自治体が行うにあたっては、「別途、警備員や見守り員を確保する」のほかに、「既存のこどもの受け入れ施設である放課後児童クラブの施設と人員を活用しよう」という考えが自治体に浮かんでも不思議ではありません。実際、大磯ではそうしているのですから。
ここでわたくしは言いたい。雇用労働条件の待遇をしっかりと自治体に受け入れさせることができれば、朝の受け入れ事業を拒むことはできる限りしてほしくない、と。放課後児童クラブは、こどもと、子育て世帯を支える社会インフラです。子育てを支える目的があることを児童クラブ側の世界が拒むことはするべきではありません。もっともっと活動の幅を広げていくべきです。いずれ少子化で、一部の都市部を除けば十数年もすれば放課後児童健全育成事業だけでは「食えない」事業になるかもしれません。わたくしはその時代をにらんで、児童クラブの事業の幅を広げておきたい。カネが手に入る事業を増やしておきたい。そうすることで、児童クラブで働いている人の雇用を守れるからです。「児童クラブがあってよかった」とより多くの人に言われたい。もちろん、児童クラブ側だけが負担を背負うような、職員にタダ働きをさせねば引き受けられないようではいかんですよ。
児童クラブ職員の中には、個々の事情で朝の勤務が難しい人がいるのは当然ですから、児童クラブ事業者は、そういう人に朝の受け入れ事業の勤務を押し付けてはなりません。事業者が、朝の勤務をできる人や、朝の勤務だけをする人を雇用すればいいだけのことです。大磯町の朝の事業に従事する人が有償ボランティアかどうか、今すぐ分かりませんが、朝のこどもの受け入れに従事する人もしっかりと労働者として処遇するべきです。
いずれは、「子育て中の期間だけでも朝、ゆっくり出勤したい。こどもが元気に学校に行ったのを見届けてから出勤したい」という保護者の希望がすんなりとかなえられるように、そういう保護者を当たり前に受け入れる社会になるように、声を上げていきつつも、いま困っている保護者とこどもを見捨てるような意見に安易に肩入れはしません。こどもが長時間預けられてかわいそうだ? だったら児童クラブ職員が「クラブで過ごせてリラックスできたよ!」とこどもに言わせるように頑張りましょう。そして国や自治体も、そうやって頑張っている児童クラブにしっかりと、カネを出してください。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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New! いわゆる日本版DBS制度を専門分野の1つとして事業者の取り組みを支えたいと事業活動を始めた新進気鋭の行政書士さんをご紹介します。「行政書士窪田法務事務所」の窪田洋之さんです。なんと、事務所がわたくしと同じ町内でして、わたくしの自宅から徒歩5分程度に事務所を構えられておられるという奇跡的なご縁です。窪田さんは、日本版DBS制度の認定支援とIT・AI活用サポートを中心に、幅広く事業所の活動を支えていくとのことです。「子どもを守り、あなあたの事業も守る。」と名刺に記載されていて、とても心強いです。ぜひ、ご相談されてみてはいかがでしょうか。お問い合わせは「日本版DBS導入支援センター | 行政書士窪田法務事務所」へどうぞ。
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