放課後児童クラブの運営には「暗部」がある。それを認めて改善しない限り、児童クラブの世界の健全な発達はない!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。弊会に寄せられる意見や相談は放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)のあまりにも残念な現象ばかり。本日はあまりにも残念な状況と、それに対する私の意見を率直につづります。書いていて本当につらいですが、児童クラブに今なお残る暗部、恥部をあからさまにしなければ、問題は解決されないのです。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<現場のまじめな職員と保護者が追いやられる不条理>
 運営支援を掲げて児童クラブに関する相談や困りごとがあれば何でも相談を受けていますが、もう確信に近いことがあります。それは、職員からの相談の場合は、ほとんどが現場の職員や中間管理職の方であること。その内容はほぼ、上司や運営責任者(経営者)の横暴や恣意的な運営に対してその是正が不可能に近いこと、です。ありていにいうと、「所長や施設長クラスの職員が、およそ運営支援とは程遠いひどい運営を行って子どもや部下の職員を抑圧している。改善を求めようにも、ひどい振る舞いを平然と重ねる上司が運営責任者を兼ねていたり、運営責任者が保護者などの保護者会や地域運営委員会形式で現場の実情に全く疎いがために運営についてほぼ手を下すことがない、できないためにひどい上司が好き勝手にふるまう状況が続いていたりする」ということです。
 箇条書きにすると、こういうことが私に寄せられています。
・クラブを統括する立場の職員による、ひどいクラブ運営(子どもへの不当な抑圧、恣意的な態度、法令を無視した勤怠管理)
・上司の問題行動を事業者組織に報告して改善を求めようにも、事業者の経営幹部の一員に、そのひどい振る舞いをする統括的な立場の職員も名を連ねている場合があり、苦情処理の申立てが機能しない。
・事業運営に当たる役員陣が保護者や地域の方が多く児童クラブの業務についてまったく疎いので結果的に事業運営についてはベテラン職員に丸投げで、問題解決において役割を果たせない。
・状況を見かねた保護者が運営本部に苦情を申し立てたところ、翌日から明らかに保護者の子どもに対する問題職員の態度が理由なく厳しくなり子どもが怯えてしまった。それを知った保護者達は口をつぐむようになってしまった。
・(広域展開事業者の運営クラブが多数ある地域で)クラブの統括として異動してきた職員が、前任者が構築した「子どもが自主的に考えて作り上げていく放課後の時間」を「無駄なもの。子どもは大人が管理監督し、大人の指示に従って動く子どもが児童クラブに必要」として職員の指示以外による子どもの行動を一切許さない児童クラブに変えてしまった。

 まだまだ書ききれないぐらい事例が私の手元にあります。本当に残念です。つまり、上記のような状況が今もはびこっている児童クラブが現実にあるのです。問題の1つ目は、児童クラブの事業運営の中心となるべき幹部職員がおよそ法令を無視し、好き勝手に自分たちがやりやすいように児童クラブを支配していることです。放課後児童クラブ運営指針などまったく眼中にありません。そして2つ目は、そのような状況を改善できない、指導できない非常勤の経営陣(保護者や地域の有力者。常勤でも職員であればベテラン職員に意見を言い出せない)である、ということ。2つの大きな問題によって、「これはおかしい」と思った職員が、逆にパワーハラスメントを受けて退職の瀬戸際に追い込まれている、ということです。また保護者にしてみれば「子どもが人質にとられているから、何も言えない」という無残な気持ちに追い込まれてしまっているのです。

 私が適当に書いているのではありません。この1~2カ月に運営支援に寄せられた十数件寄せられた相談や悩み事です。これがほぼすべて、児童クラブが子どもと保護者にとって安心できる居場所になってほしいと真摯に考えている方たちからの相談や悩み事というのが、私にはとても悲しいです。

<間違っていないと思っている>
 運営支援の相談は、運営者、経営者から寄せられるものは補助金や生産性向上、スキルアップについての問い合わせはありますが、「組織が上手く運営できない」という内容はまずありません。運営支援のビジネスとしては残念なのですが、よく考えればその答えが見えてきます。つまり、事業者で運営に向き合う役員や責任者の多くは「自分たちは、間違った運営をしていない」と思っているから、外部に相談することが無いのでしょう。困ることはあります。補助金の種類やスキルアップの手法が分からない。それは手段や知識に関する困りごとであって、そもそも「自分たちの、私たちの組織は、うまくまわっている」と信じて疑わないのでしょう。
 それが上記の、ひどい横暴な運営をして平然としている幹部職員に重なります。問題があると思っていないので、子どもを足蹴にして平然としている、「バカ、クズ、大人の言うことを聞けないガキは将来苦労すんだよ!」などと怒鳴る、正座を長時間平然とさせるなどということを今の時代でも平気で繰り返しているのです。
 また、児童クラブは本来、こういうものだという理解も興味もないのにかかわらず、ただただ、「理事」だの「代表」だの「理事長」「委員長」だのという役職名が得られるのがうれしいので事業運営組織の運営陣の一画に名を連ねているとか、保護者運営制度なので強制的に運営担当の役員に就任してしまって何も分からないのでベテラン職員に丸投げ、全部「問題がなければそれでいいです」と自ら考えて判断しようとしない保護者役員とか、そういう程度の人物がクラブ運営の責任者となっている。それでは、現場からいくら改善を求めても、「そんな難しいことは専門家じゃないので分かりません。ベテラン職員がうまく解決してください」と、ただただ無責任な態度に終始するのです。

 間違っていると思わなければ、どこをどう改善しなければと考えて、第三者に相談することはありませんよね。残念ながら今の児童クラブの世界は、このように「運営は上手く言っている。まあ、予算はいつも足りないけれど、職員はうまくやっているわ」と思い込んでいる運営責任者と、「子どもなんてね、バシッと言わなきゃダメなのよ。目を離すと何をしでかすかわからない。だいたい親がバカすぎるから子どもも親と同じバカになるんだから」と保護者や子どもがいないところで平然と話す幹部職員、ベテラン職員が、のさばっている景色が、残念ながらまだ児童クラブの世界には残っていると言わざるを得ないのです。

 それもこれも、「私たち、間違っていないから」という人たちが、児童クラブ運営組織や、個々のクラブ運営において責任者を務めることができ、その行動やふるまいについて誰も管理監督の責任を負う者がいない、という状況があるからです。

 事業者(会社、組織)が、現場の切実な願いや要望を組織としてなかなか聞き入れないというのは児童クラブの世界だけにある話ではありません。というか、世間に当たり前のようにある話です。映画やドラマの題材になるのはそれが視聴者に容易に感情移入できるだけのありふれた出来事だからです。児童クラブを複数運営している広域展開事業者においての現場と本部の意識のずれ、現場の困りごとを解決しようとしない本部や上司の態度は、まさにこの類型でしょう。

 それはそれで深刻ですが、児童クラブの世界に特有な状況なのが、「業務の遂行者と業務の指揮監督者が同一」だったり「事業責任者がいずれも非常勤で実質的に事業を管理監督せず、業務の遂行者に事業運営の責任を任せるしか他に選択肢が無いため、問題行動を起こす幹部職員の恣意的な事業運営を招く」ことによる運営困難状況です。児童クラブの現場を問題行動を起こす幹部職員が好き勝手に差配しても、誰からも文句は言われない、注意を受けない立場や状況にあるから、やりたい放題ということです。保護者がそれを問題に思っても、そもそも本来なら指揮監督をするべき立場の者がダメだから改善が期待できない上に、事実上の「報復」を、こともあろうに子どもに行う。心ある保護者はそれで児童クラブに幻滅します。そもそも、児童クラブで何が行われているのかに興味関心を向けない保護者なら子どもにクラブの様子を尋ねることもないでしょう。だいたい、子どもに適当な態度で接する職員は保護者には営業スマイルで上手く接する(つまり、ごまかす)ものです。
 また、これも事実としてあるのが一定の保護者において「子どもにはガツンと言ってきかせてやってください。そういう制御役が必要です」と思う保護者が実は多いのです。つまり、子どもの判断力を育てるために必要に応じて暴走しがちな子どもの行動や思考回路を制御をしたり調整したりする職員の声がけや指示、管理と、単に「厳しい態度で子どもに有無を言わさず理解させる」という恐怖抑圧の手法で子どもを従属させるという状態になっていることの区別がつかないので、職員が実は子どもを不当に抑圧していることを「うちの学童の先生はうまく子どもを管理できている」と勘違い、捉え違いしてしまうのです。

<それでも保護者運営や職員運営が最善だと言うのは、有害だ>
 上記のような児童クラブに特有の事情が招く運営困難状況は、実際に業務を行う立場と、業務を行う組織を経営、運営する者が同一であるから起こりうることですが、実はこの「保護者や職員が運営に加わること」を推奨している考え方が児童クラブに根強く残っています。現在もなお、クラブ運営に関わる保護者や職員向けに書かれた手引き的な書籍が発売されているぐらいです。
 実際にクラブを利用する立場の保護者や、クラブで働く職員の気持ちや考え方を事業運営に反映させるのは、悪いことではありませんし、むしろ顧客やユーザーの意見を反映させることはどの業種業態でも当然行っていることです。利用者アンケートやモニタリング調査などはそのために行われています。しかしそれは、事業の経営や運営を「プロ」が行っていることが通常です。また、経営者と従業者が同一なのは個人経営では通常ですが、児童クラブは個人が行う営利の商売ではなく、公共の児童福祉サービスです。補助金(公金)がつぎ込まれていることが通常です。公の企業、公務員と同じく、全体に奉仕するための役割を担っていると考えれば、飲食店など個人でやっている事業とは性質が全く異なることは理解できるでしょう。

 問題は、児童クラブにおいては、その事業の質を確保するためには経営者や職員の高い倫理観が同時に求められるにも関わらず、それが欠けている者が経営者や職員において実質的な事業運営に就くことが多く、また、そのような状況を是正するための手段や規定が機能しないということにあります。そりゃそうですよ。問題行動を起こす職員には、お気に入りの特定の子どもだけに特別なサービスを提供することがあります。それは不当な差別的待遇に当たりますからその問題行動を是正する措置が必要ですが、「是正が必要かどうか」を判断する立場の者や判断する機関を構成する者にその問題行動を起こすものが名を連ねていれば、自浄作用が機能しないのですから。地域の有力者や保護者が運営委員会のトップを務めていても非常勤である限りその組織統治の能力に限界があります。これが、児童クラブにおける自主運営の問題点です。
 保護者や保護者出身の者が職員と一緒に役員を務めている児童クラブの運営組織も同様に、高い倫理感と社会正義の意識、社会に奉仕するというノブレス・オブリージュの意識を欠いてしまっては、自堕落の組織に朽ち果てます。事業者が年度の事業計画で決めた事業方針を、組織のトップが病気や何らかの事情で会議を欠席しているうちに勝手に変えてしまい、トップも了承済みとして自治体に虚偽の報告そしており、そのトップが復帰後、重大な過ちを指摘したところ一斉に反発してトップを事実上追い出してしまうという、信じられない重大なコンプライアンス違反をしでかして平然とふるまっている役員陣や組織が現実にこの児童クラブの世界に存在しているのです。なんと嘆かわしい。

 それでもなお、保護者運営が素晴らしい、職員が運営に加わることが子どもにとってより良い児童クラブを造ることができると言っている勢力がある。現実を見ていないのは、こども家庭庁だけではない。児童クラブ側にも残っています。

<制度の改革が必要>
 この困った状況が続く限り、有望な職員が相次いで児童クラブを辞めていく例が積み重なっていきます。せっかく新しく入ってきた職員も数年たたずに職を変えてしまうなら、なかなか、全体な質の向上に結び付かないでしょう。これを変えるには、外部の団体や組織が、児童クラブの事業の質の評価を下し、悪しき評価の場合は事業の改善について強制力を持って指示することができる制度を構築することです。事業者名の公表はもちろんでしょう。それは育成支援や保護者支援だけでなく、事業内部の運営の問題や労務管理上の問題についても厳しく監査、検査して、その結果が社会に公表されるべきことです。その制度を市区町村が制定するとか地方議会で定期的な監査、検査を義務づける条例を作るなどして、第三者が、児童クラブの事業内容を徹底的に確認する仕組みを早急に造るべきです。その際は、職員への聞き取り調査も合わせて行えばいいのです。その結果として発せられた業務改善の命令や指示を理由として職員への不当な待遇を行うことは厳しく取り締まればいいのです。
 こういう制度が現実となれば、「いくら相談しても主任の問題行動は無くならない」「上に相談したことが筒抜けなのか私への指示が不当に厳しすぎる」という現場職員の悩みはある程度解決するでしょう。

 児童クラブは次世代の社会を支える子どもの健全な育成のために必要な仕組みです。だからこそ税金が投入されています。児童クラブの事業が正しく営まれているか確認する仕組みは、税金の使われ方が正しいものであるかどうかを確認することでもあります。市区町村にはぜひ、早急に、児童クラブに対するより厳しい事業内容の監査、監督の体制を整えていただきたい。ただ単に帳簿や会計上の数次のミスを追うのではなく「児童クラブでどのような事業が行われているか」の質の監査、監督こそ必要です。

 早くそのような制度を実現し、志ある有能な職員や児童クラブの事を真剣に考えている保護者が悩み抜いて消耗し、疲れ切って又は呆れて児童クラブから離れないような時代を作りましょう。

<おわりに:PR>
 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。お近くに書店がない方は、ネット書店が便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。
(関東の方は萩原から直接お渡しでも大丈夫です。なにせ手元に300冊届くので!書店購入より1冊100円、お得に購入できます!私の運営支援の活動資金にもなります!大口注文、大歓迎です。どうかぜひ、ご検討ください!また、事業運営資金に困っている非営利の児童クラブ運営事業者さんはぜひご相談ください。運営支援として、この書籍を活用したご提案ができます。)

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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