公立学童のメリットとデメリットは?

 学童保育所(この場合、放課後児童健全育成事業を行う学童保育所、すなわち放課後児童クラブのことを指すとします)は公立が優れている、という声を聞くことがあります。安心だし費用が安い、ということが理由です。果たして本当にそうでしょうか。

 実はこの問いには注意が必要です。「公立学童」と対峙するものとして「民間学童」を思い浮かべる人が多いと思いますが、学童保育所を考えるときには「誰が設置しているのか」と「誰が運営しているのか」の2つの要素に加えて「放課後児童健全育成事業を主な目的にしているかどうか」の判断、つまり3つの局面で考えることが欠かせないからです。つまり、こういう組み合わせになります。
A市区町村が設置して、市区町村が運営していて、放課後児童健全育成事業を行っている=公立(公設とも)公営学童
B市区町村が設置して、民間組織が運営していて、放課後児童健全育成事業を行っている=公立民営学童
C民間組織が設置して、民間組織が運営していて、放課後児童健全育成事業を行っている=民立(民設とも)民営学童
D民間組織が設置して、民間組織が運営していて、放課後児童健全育成事業を行わない=民間学童保育所

 上記のうち、Cは民立(民設)クラブですが、AとBと同じく放課後児童健全育成事業(児童への育成支援を主に行う事業)を行っていますから、実質的に利用者の観点からは大差ありません。つまり、A~Cと、Dとの対比が重要となります。

 A~Cについてはおおよそ次のようなメリットがあります。
・費用が(Dと比べて)低額。数千円から高くても1万数千円程度。費用の高さはA<B≦Cの順で変化します。公立公営学童はおおむね数千円です。8月には1万円近くになることがあります。B、Cは1万円から1万円半ばになることも珍しくありません。
・Aについては公営なので、急な倒産や事業閉鎖がない。B~Dは運営は民間組織(企業や法人)なので倒産や事業は入りのリスクはゼロにはならない。(しかし滅多にないことではあります)
・小学校の建物内や、敷地内の別棟といった、交通事故防止や防犯面で安心な場所に立地していることが多い。なおCについては学校から離れた場所に立地したり、広域学童といって複数の小学校の子どもが通える放課後児童クラブでは、学校ではない公民館や児童館などに設置されている場合もあります。

 デメリットとして次のようなことがあります。
・学習支援について限界がある。放課後児童健全育成事業には児童の学力増進は盛り込まれていないので宿題程度の時間しか確保していないことがほとんど。
・開所時間が短かったり、盆期間の閉所があったり、土曜日に閉所したりする施設が未だに多い。夏休み期間中など朝から夜までの利用が必要な期間において、児童クラブが午後6時台で閉所したり朝は午前8時前後の開所だったりすると、保護者は勤務との兼ね合いで十分にクラブを利用することが難しくなります。
・昼食提供を行う施設はまだまだ少ない。
・職員の雇用労働条件が著しく悪いので職員の退職が後を絶たず、毎年のように職員が入れ替わる事業者が多い。子どもにとって信頼できる児童クラブの職員に出会えないことが多い。
・職員の離職率が高いこととあいまって、職員の資質に問題がある施設が多い。

 民間学童保育所は、事業者がそれぞれ保護者に事業の特徴を訴えて利用者を集める、いわば学習塾の要素を大きく含んだ事業です。英語力や計算力、ダンスの技能などの向上をアピールし、保護者の要求に叶えるような事業を行います。夕食の提供や送迎サービスを備えた事業者も多い一方、放課後児童健全育成事業ではないため国の補助金が無く、利用者の月謝、利用料で運営するために月額5万円程度かそれ以上の利用料となります。また大都市圏や人口集中の地域にしか進出していないことがほとんどです。

 最近こそ、放課後児童健全育成事業を行いながら英会話や計算能力といった学力増進をうたう混合系の児童クラブ、学童保育所も増えています。放課後児童健全育成事業を主に行う育成支援系の児童クラブや学童保育所においても、民間学童保育所のメリットである部分を取り入れる事業内容となるので、保護者からも歓迎される傾向があります。混合系については今後、待機児童が生じている地域を中心に数が増えていくものと思われます。
運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)