学童保育所はどうして勉強をさせないのですか?

 学童保育所(放課後児童クラブである場合も、そうでない場合も含まれます)について説明している市区町村や事業者の「入所のしおり」「入所案内」などには、「児童クラブは学習をさせる場ではありません」という趣旨の記述がよくあります。学童保育所、児童クラブでは宿題をする時間を確保しても、それ以上の勉強、例えば予習や復習を児童クラブ職員が教えることはほとんどありません。宿題にしても、子どもの意欲に任せることが多く、職員が強制的に宿題を全部片づけさせる、ということをしないクラブは結構多いものです。

 その理由としては、放課後児童クラブは「生活及び遊びの場」であり「放課後児童健全育成事業」を行う場所であって勉強や学習の場ではない、と国が定義づけているからです。実際、国は市区町村に対して、放課後児童クラブが塾やスポーツクラブのように放課後児童健全育成事業以外の事業を行う施設に対しては補助金を交付しないと通知しています。この考えの延長線上で、「児童クラブでは勉強や学習は宿題程度」としている施設が多いのです。

 もう1つの理由として、放課後児童健全育成事業とはすなわち児童の健全育成であって、それは「子どもが伸び伸びと過ごし、自由に遊ぶこと」という理解が拡大解釈され、「児童クラブ(学童保育所)は子どもが遊ぶ場所。勉強の場所ではない」という理解が固定観念として広まっていることがあります。特に、保護者たちが運営する、比較的歴史が長い児童クラブに、おおむねそのような傾向があるようです。一方で、近年開所する児童クラブは、積極的に子供に勉強や学習の時間を取り入れる施設も増えています。保護者の要望を取り入れた結果です。近年の貧困世帯の増加をふまえると、学習機会の格差が問題となっていることから、児童クラブにおいて一定程度の学習機会を設けることは、子どもの体験格差、学習機会格差の解消の点で有効だと考えられます。

 なお、放課後児童健全育成事業の趣旨を超えて勉強、学習を行う施設は「民間学童保育所」と通称されるジャンルに入ります。
 (運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)