「南海トラフ地震臨時情報 巨大地震注意」。防災減災対応で、放課後児童クラブにおける犠牲者を1人も出さぬように

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。2024年8月8日、国から「南海トラフ地震臨時情報 巨大地震注意」が発表されました。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)は、同情報の対象地域はもちろん、そうではない地域にある施設でも、今日から直ちに防災、減災の対応を必ず行おう。児童クラブで犠牲者が1人たりとも出さないために。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<すぐやること>
 【人命への対策】
※大地震の場合は、「倒壊した家屋の下敷き」「タンスや本棚の下敷き」で死ぬ。これを回避する。
・避難訓練の実施。大事なことは「動線」の確認。外に出る場合は施設のどの場所から外に逃げるのかを確認しながら訓練する。屋外で遊んでいる場合の避難訓練も行うこと。
・基本的には揺れが収まるまで室内に留まることが推奨されるが、古い木造建築(しかも二階建て)によるクラブの場合は、地震動を感じたら外に逃げたほうが良い。すばやく逃げられるために外への出入り口の動線はふさがないこと。古い建物のクラブの職員は「初期微動(縦揺れ)」が激しい場合、例えばドン!と体が浮き上がるような感覚の初期微動を感じたら、震度6以上を想定し、直ちに子どもと職員を屋外に逃がした方がよいだろう。鉄筋コンクリートや鉄骨プレハブのような頑丈な施設や、木造であっても定期的に行政による耐震診断を受けている施設なら、落ち着いて揺れが収まるまで室内で身の安全を図ること。
・室内外における、転倒しやすい家具、本棚、ロッカーなどの対策。転倒防止や固定を実施する。積み上げているカラーボックスなどの積み上げを止める。
・棚の上に載せてある重量物の撤去。または床上への移動。テレビは特に危険。揺れが加速度を上回ったらものすごい勢いで吹っ飛んでくる。人に当たったら死にます。
・本棚も、上の方に重い本を置かない。
・取り急ぎ整理整頓をする。
・転倒防止グッズを使っていても本棚やロッカーは倒れる可能性がある。そのそばに子どもをまったく近づかせない必要はないが「寝転がって過ごす」ことは当面、避ける。昼食後の休憩(午睡)を取り入れている場合、子どもが横になっている場所に注意する。
・水。熱中症防止にも水分は必要。水が無ければこの暑さで短期で脱水症状になりかねないので水はしっかり用意する。
・海や川が近い児童クラブの場合、情報期間中は水辺に近寄らない。
・外遊びの場合、ブロック塀の近くで子どもを過ごさせない。ブロック塀はあっという間に崩れるので、同情報が出ている間はブロック塀には絶対に近寄らない。
・外遊びの場合、がけの下、がけの上には行かない。

【火災防止】
・昼食、おやつの調理を行うクラブでガスを使う場合は火災発生に厳重に留意する。

【短期の避難生活を想定】(余震が頻発するなど外を歩く危険が高い場合、保護者が迎えに来られない、小学校など避難場所にも行けないなどの事態がありえる。一昼夜ほど児童クラブで過ごすことを想定しておく)
・トイレの準備。何はともあれ最優先はトイレ。断水、停電でトイレが使えない場合も想定する。小学校や公共施設のトイレが使えるか、防災用臨時トイレが小学校内に設置されることもあるのでその場所や使用に際して必要な事前準備があれば、済ませておく。段ボールトイレなど緊急用のトイレ使用も念頭に、必要な資材を準備する。とにかくトイレ。避難生活はトイレ対応を最優先に!
・短期なので量は3日間程度の備蓄量があればよいが、様々な物品が必要。女子の生理用品など。この時期は不快害虫がいるので虫よけも。

【情報伝達ルートの確認】大災害時は、命の確保の次に必要なのが情報の確保!情報は命を救う!
・事態の把握のために職員のスマホ保持での勤務を可とする。情報機関中はラジオやインターネットの常時使用を許可してもよい。
・保護者に、大地震発生時の緊急連絡について確実に連絡が取れるように注意を強く促す。
・出欠確認にアプリを使っていてそれに頼り切りになっている場合、インターネットが不通になることも考え代替の連絡手段について確認する。今やアナログだが防災用の伝言ダイヤルを円滑に使えるよう試しておく。
・仮に全く保護者と連絡がつかない時間が長時間に及んだ場合を想定して、そのような場合にどのようにクラブが対応するか決めて保護者と共有しておく。(これは運営事業者が組織的に指示して行うこと)
・非番の職員の安否確認も重要。運営事業者は大地震発生の場合、短期間のうちに全職員の安否確認ができるようにする。専用のアプリが使えるならそのテストを行う。アプリがない場合は職員が運営本部に安否の連絡をするように義務づける。連絡先には専用のメールアドレスを用意するなどで他の情報の中に埋もれないようにする。
・出勤している職員の安否を家族に確実伝えられるような手段の確保、配慮も忘れずに。

【組織運営体制】
・運営本部や小学校側と情報共有、避難について確認しておく。避難場所で学校が活用できるのか。
・防災備蓄品の確認。賞味期限切れの食品があれば直ちに新たなものを補充する。水の確保。
・これを機に、いわゆるBCP(事業継続計画)の具体的実効性の確認を行う。もしBCPの策定がまだなら今回を契機に早急に策定する。
・運営本部は防災、減災のために必要な業務を大至急、具体的に指示し、その指示が実行されたかどうか点検する。
・現場クラブは職員全員による緊急の防災減災のための必要事項確認について協議打ち合わせの時間を取る。1時間ほどなら昼までも確保できる。子どもたちには申し訳ないがその間に「トムとジェリー」でも「アナ雪」でもいいので見ていてもらおう。ネタが古いか。
・所外活動(キャンプやバーベキューなど)を計画している場合、中止するかどうかは事業者の判断。一概にすべてを取りやめる必要はないが、海水浴やハイキングなど津波や地震動による山崩れ、がけ崩れが起こりやすい地域での活動は延期を検討するのは悪いことではない。実施の場合は入念に避難について心がける。なお、中止の場合は現場クラブの職員ではなくて「組織として」判断、決定したことを保護者等に強調すること。楽しみにしていた行事の中止となれば必ず不平不満は出る。いわれなき批判や不満は運営本部で対応し、決して現場クラブ職員に向かわせないこと。

<児童クラブ運営事業者の合否が分かる>
 8月8日にこの「南海トラフ地震臨時情報 巨大地震注意」が出た時、南海トラフ地震の影響が予想される地域にある児童クラブの運営事業者はどう対応しましたか?特に、事業者の役員はどう対応し、行動しましたか?

 私は今年度から愛知県津島市の放課後児童クラブを一括統一運営しているNPO法人の理事を拝命しています。外部の有識者として大所高所から意見を具申することが期待されていますし、具体的に業務のさらなる進化のために活動することを期待されています。私は、この臨時情報が出たことを受け、役員同士をつなぐSNSに、今後必要な対応について意見を出しています。それは当然、役員であるならば児童クラブを利用する子どもと、雇用している職員の安全を確保するために必要な施策を行う義務を負っていることを自覚しているからです。つまり、児童クラブの運営に関わる役員は、事業を確実に実施する義務、子どもと職員の安全を確保する義務、そのために必要なことを注意を持って行う義務があるということです。

 児童クラブを運営する事業者、運営主体には保護者会もあれば保護者主体のNPO、一般社団法人や、社会福祉法人、大手の株式会社など様々ですが、対象地域に存在する児童クラブの運営に当たる責任者は、きょう9日以降、防災や減災の対策のために、これこれこういうことを行おうとさっそく決めて動き出していますか?「9日に出勤したら、さっそく、これから確認していこう」と周囲に伝え、役員間で共有し、組織として臨時情報への対応を行う動きを示していますか?

 仮に、それらの動きがまったくなかったならば、残念ながら、事業者としては失格です。それはとりもなおさず、運営の責任を負っている役員として失格ということです。広域展開事業者でも地域の責任者、地域事業本部等の地域ごとの責任者から、児童と職員の安全を確保するために必要な業務、作業の指示が出ていなかったら、同じです。子どもと職員の生命身体を守る義務を負っているんだ、という自覚がないということです。とりわけ、半ば強制的に役員となっている保護者運営形式の児童クラブや運営主体で、役員になっている保護者は、どう動いたでしょうか、この臨時情報をどう捉えたでしょうか。

 わたしは、児童クラブを運営する事業者に関して、この南海トラフ地震臨時情報への対応の内容が、児童クラブを運営する事業者、役員、事業形態として事業運営に関する意識において適切かどうかを図れる1つの目安になると考えました。読者の皆さんで児童クラブに実際に関わっているのであれば、所属する、あるいは利用する児童クラブが、この臨時情報への対応がどの程度であったかを確認することをお勧めします。それは、児童クラブの事業運営に関する、いわゆるプロ意識、事業運営そのものへの専門性の意識の有無を図る物差しになるからです。

<おわりに:PR>
 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。お近くに書店がない方は、ネット書店が便利です。8月9日時点では楽天ブックスなら在庫が11冊あります。売り切れ間近?です!注文はぜひお急ぎください!また、寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。
(関東の方は萩原から直接お渡しでも大丈夫です。なにせ手元に300冊ほど届くので!書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかぜひ、ご検討ください!また、事業運営資金に困っている非営利の児童クラブ運営事業者さんはぜひご相談ください。運営支援として、この書籍を活用したご提案ができます。)

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)