放課後児童クラブの収益はいくらですか

 放課後児童クラブ1つについて、およそ年間で平均165万円の利益が確保できるという調査結果があります。「令和4年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 放課後児童クラブの運営状況及び職員の処遇に関する調査報告書」(みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社、令和5(2023)年3月)には、児童クラブの運営形態によっても収益に違いがあることが示されています。

 165万円は、「児童クラブの施設を設定したのは行政で(=公立)、施設を利用して児童クラブの事業運営を民間企業が行っている(=民営)」の場合の平均の値です。民間企業には、社会福祉法人やNPO法人、任意団体である保護者会や株式会社などすべてを含みます。また、「児童クラブの施設を民間が設置し(=民立)、民営で行っている」場合の1年間の利益の額は平均87万6000円になります。また、公立民営で、株式会社を中心とした運営者が行う児童クラブでは利益の額が平均285万円にもなります。

 1つの施設で考えると、「うまみ」が無い事業と思われますが、放課後児童クラブは非常に多くの施設があり、しかも1つの地域に複数ある児童クラブを1つの事業者がまとめて運営することが効率的に考えて得策なので、複数の児童クラブを運営すれば、それだけ利益が増します。1クラブ280万円でも100クラブなら3億円近い収益が毎年、確保できます。極めつけは、特別区(東京23区)にある公立民営の児童クラブで、1クラブあたりの利益の額は平均869万9000円です。仮に都内で10クラブを運営していればそれだけで9,000万円近い利益を上げられます。税金からなる補助金が多く投入されている放課後児童クラブですが、その補助金が民間企業の利益に化けている可能性が高いと言えます。

 ビジネスの観点で重要なのは「安定性」です。モノを作って売るビジネスは、当たり外れがあります。ヒット商品だけ開発できるわけではありません。在庫を抱えれば経営のピンチになります。一方、児童クラブのビジネスは、集客面にまったく費用をかける必要がありません。毎年4月になれば新1年生が入所します。黙っていても「お客」は集まるのです。少子化といえども、児童クラブ入所者数は右肩上がりで増えていますし、その傾向は今後も続くとされています。しかも事業者の収入の6割程度は補助金という安定財源です。この補助金の額がこの十数年で急激に増えていて、人件費を徹底的に管理することによって利益を確保しやすくなっているのです。このため、放課後児童クラブをアウトソーシング事業として事業の柱とする企業が急激に増えています。

 公的な事業の民営化そのものが問題というよりも、必要以上に利益を確保できる構図が放課後児童クラブにはあります。納税者にとっては不利な状況ですから、補助金を得て事業を行っている事業者の経営状況について常に監視することが必要でしょう。

(運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)