学童の離職率は?
学童保育所に限定した離職率の公的な調査結果はありませんが、かなり離職率は高い職種であると言えます。10人採用したら3年後も勤務を続けている方は3~5人程度、という感覚です。「令和4年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 放課後児童クラブの運営状況及び職員の処遇に関する調査 報告書」では、令和3年度における放課後児童クラブの職員の雇用状況を調査していますが、それによると放課後児童クラブに従事する職員の1人当たり給与(手当・一時金込)は、月給払いの常勤雇用者が 285.7 万円(平均勤続年数 6.1 年)、月給払いの非常勤雇用者が 146.1 万円(平均勤続年数 6.2 年)となっています。
放課後児童クラブで働く人は、ずっと長く働き続けている少数の人が給与の平均額や平均勤続年数を引き上げている傾向が見られます。平均勤続年数が6年少々というのは、30年前後勤務している人が少数いて、10年前後はそれなりいて、数年前後が多いというイメージでほぼ間違いないでしょう。
「こども家庭庁 令和5年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業 放課後児童支援員等の人材に関する調査研究報告書」では放課後児童クラブの職員の人材定着状況について分析をしています。それによると、「人材定着に係る課題の内容は、公立公営では「肉体的負担が大きい」「精神的負担が大きい」「職場の人間関係に課題がある」と回答した市区町村が2~4割程度と多い。公立民営・民立民営でも「肉体的負担が大きい」「精神的負担が大きい」が3割半ば~5割程度と多いが、「定着に向けた取組に十分な体制・費用を用意することができない」「放課後児童支援員等として長期的に働く意志のある人材が少ない」「定着に必要な賃金設定にすることが難しい」との回答も3割半ば~4割半ばと多い。」とあります。
学童の仕事は、低賃金(ワーキングプアに等しい)、かつ慢性的な人手不足による個々の職員の業務量の過重さ、身体的な疲労といった仕事自体の過酷さに加え、職場の人間関係で嫌気がさして退職する職員が相当多いのです。子どもや保護者、同僚と常に濃密なコミュニケーションを重ねる「コミュニケーション労働」で、心理的な負担は肉的な負担を上回るほどの疲労蓄積をもたらします。
さらに児童クラブは個々に独立した職場で、少人数の職員がある程度の裁量をもって仕事に取り組むことになる職場(=子どもと向き合うときに職員個人がその場その場で判断して行動するという趣旨)ですから、おのずと、職員個人の価値観が他の職員とぶつかりあう局面があります。そこでうまく互いの価値観を調整できたりあるいは修正、妥協ができればいいのですが、こと、子どもの育成支援に関する方針は個々の職員の価値観に強く根差しているところがあり、自分の方針を曲げない職員もいます。そうした場合、それを受け入れられない職員はやがて退職の選択をすることになってしまうのです。逆にいえば、職員数が充足し、職場における円滑なコミュニケーションに配慮している事業者であれば、離職率は相当低くなるといえ、実際にそのような事業者もあります。定期的に求人状況を確認して、ほぼ求人を出していないか事業規模と比べて求人数が少ない事業者はそうした良質な事業者であるといえるでしょう。
(運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)