「酷暑乗り切り緊急支援」は放課後児童クラブにこそ必要。こどもの生命を守る、本当に大事な支援の実施を!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)にとって夏は恐怖の季節になってしまいました。酷暑続きの夏、冗談じゃなく子ども(職員も)の生命身体が危険にさらされているからです。国、市区町村は今こそ「酷暑乗り切り緊急支援」を行ってください。
 ※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。

<酷暑乗り切り緊急支援とは>
 なんで今年になって急にそんなことするんだ、と不思議ですが、それはともかく、電気代とガス代に国が補助をするようです。報じた記事を紹介します。

「政府が標準世帯の使用量として示すケースでは、電気代は月1400円、ガス代は450円安くなる。(中略)電気・ガス代の補助は、ロシアのウクライナ侵攻に伴う燃料価格の高騰を受けて、2023年1月使用分から続いてきた。政府は高騰が一服したと判断し、今年5月使用分でいったん終了したが、岸田文雄首相は今月21日の記者会見で「酷暑乗り切り緊急支援」として再開を打ち出した。」(2024年6月25日17時05分配信 朝日新聞デジタル)

 選挙対策なのか人気取りなのか分かりませんが、補助してくれることは(これは国民のツケ払いだと分かっていても)とりあえずありがたいですね。ですがこの「酷暑乗り切り緊急支援」の決定の裏側を伝える記事を読むと、それが事実だとしたら、なんともテキトーに決まったようです。6月26日07時14分配信の時事ドットコムニュースの記事を一部引用します。
「丁寧な意思決定プロセスを踏まなかった上、猛暑が予想される7月分に間に合わないためだ。自民党総裁選での再選戦略の一環との見方も相次ぎ、政権浮揚へなりふり構わぬ首相の焦りがにじんでいる。」
「検討は官邸幹部ら一握りで進められ、経済産業省内だけでなく、経済対策の司令塔役を果たすはずの新藤義孝経済再生担当相も「知らされていなかった」(内閣府幹部)という。ただ酷暑対策と掲げた割に、対策時期が夏季とずれるなど取って付けた印象は否めない。派閥裏金事件への批判が根強い中、今月からの定額減税に続く「物価高対策」で政権浮揚につなげる思惑がありそうだ。官邸幹部は「補助を再開すれば皆うれしいだろう」とあけすけに話した。」(引用ここまで)

<なぜ児童クラブへの酷暑乗り切り対策が必要か>
 夏の児童クラブは、あまりにも厳しい試練を迎えています。理由は次の通りです。
・児童クラブの冷房設置は満足ではない。近年に新築・整備された施設でエアコンが付いている場合でも、「酷暑」の環境で、熱中症対策のため屋内に何十人もの児童がいると、エアコンをフル稼働させても室温は30度を超える場合がある。熱中症防止のため屋内にとどまったことが逆に熱中症になりかねない。つまりは、「その程度の馬力のエアコンしか設置されていない」。

・児童クラブでも古い民家やテナント利用の場合は、そもそもエアコンが古く、満足に効かない。

・北日本でも真夏日、猛暑日が続くが、北日本の児童クラブはエアコンが設置されていない施設が多い。

・エアコンが付いていても、「電気代高騰」のため、思い切ってフル稼働できない。児童クラブは常に予算不足のためエアコンが満足使えない。

・屋外の活動が制限されるため、子どもにとって必要な「遊び」が不十分になる。それは子どものストレス増大を招く。その結果、子どもがイライラしてクラブ内でトラブルが多発する。楽しめ、かつ、発散できる遊びが制約されることで、夏の児童クラブは子どもにとって「行きたくない場所」になってしまう。しかし、空調が効いた室内の環境をある程度自由に使えるほど児童クラブは関係各機関の中でその活動への理解と尊重がまったくされていない。

・夏休みが始まるまでは小学校から児童クラブへ登所するが、その登所が徒歩の場合、その時点で熱中症に陥る可能性がある。

 つまり、「空調機器の整備の不備」と、「予算不足による使用の制限」と、「児童の過ごし方、育成支援への影響」が、夏季の放課後児童クラブには深刻な懸念事項としてついてまわっているのです。しかもその懸念は年々、悪化しています。

<理由は何でもいい、児童クラブを対象にした支援だってできるでしょ>
 国が唐突に打ち出した酷暑乗り切り緊急支援。それで国民の人気を集めて政権支持率を浮揚したいのでしょうか?まあそれはいいです。この時事ドットコムニュースの記事では、所管の大臣や役所にすら知らされず、つまり根回しどころか、政策の立案すら任せず、官邸の一存で実現したということです。「そりゃ総理大臣なんだからそうでしょ?」では、ありません。よほどの突発事案ならともかく、補助金を出す出さないということについて担当する省庁や大臣を飛び越えて政策を決めて実施に踏み切るのは、やはり異例です。
 しかしその異例のことは「やる気」があればできるということを示したのです。

 であれば、政治が、「これは絶対にやるんだ!」という強い意志をもって動けば、それが放課後児童クラブへの「酷暑乗り切り緊急支援」だって、可能になるということです。ということは、放課後児童クラブへの夏季対策が本当に必要なんだ、それも切迫した危険が迫っているんだ、保護者は事態が改善されることを強く期待している、ということを国のリーダー、あるいは市区町村のトップに理解していただければいいのです。

 このところ、この運営支援ブログをご覧になったという各地の議員さんから、放課後児童クラブについて解説してほしい、問題点を教えてほしい、問題解決に何かヒントをいただきたい、という問い合わせをいただくことが増えてきました。言わずもがな、二元代表制の地方自治において議員が果たす役割は極めて重大です。夏の放課後児童クラブの苦境を救う行動を直接に起こせる立場ですから、ぜひ、議会において、放課後児童クラブの酷暑乗り切り緊急支援について必要性を訴えてほしいのです。

 これは児童クラブ側にも言えます。ただ黙って待っていたところで、援助はやってきません。声を上げなければなりません。とはいえ、現場職員が運営本部に言ったところで事態は早々変わりませんし、というかすでに何年も前から善処を求めているでしょう。(もちろん、それでも現場は常に本部に訴えねばなりませんよ)
 大事なのは保護者です。子どもの親として、子どもが児童クラブで安全を保障されることをクラブ運営事業者と、クラブを設置する市区町村に求める正当な立場にあります。保護者の声を集めて、議会や、市区町村執行部に届けることが大事です。その保護者の動きを起こし、流れを作って取りまとめるのがクラブ職員の役割ともいえます。子どもの命を守るため(そして自らの職場環境を改善するため)職員(もちろん運営本部も加担してよいのです)が、保護者を動かして「児童クラブにも酷暑乗り切り緊急支援を!」という声を挙げてもらうことが肝心です。

 いや、本当に、このままでは、熱中症対策をしていた児童クラブでも、その対策を取ったとしても不十分な内容であったがゆえに子どもや職員が熱中症になって落命する事態が来ますよ。その時、責任をなすりつけても、「もっとエアコンを整備すればよかった」と悔やんでも、失われた人命は取り戻せない。
 こども家庭庁も、放課後児童クラブの熱中症対策の現状を緊急に調査してその結果を発表し、必要な対策を求める動きを作ってください。

<おわりに:PR>
 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されます。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)になる予定です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。アマゾンでは予約注文が可能になりました!お近くに書店がない方は、アマゾンが便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)